IRON MAIDENから放逐された二代目フロントマンのブルース・ディッキンソンは、盟友ロイZとのコンビを中心としたプロジェクトによって創り上げた驚異的完成度のヘヴィメタルサウンドで完全に本家をひれ伏させる!!
BRUCE DICKINSON(ブルース・ディッキンソン)は、80年代英国の伝説的メタルムーヴメントNWOBHM出身バンドとしては最大の成功をおさめたIRON MAIDENの二代目ヴォーカリストとして、そのパワフルなハイトーンでIRON MAIDEN黄金期の様式美メタルサウンドの形成に貢献したバンドの顔ともいえる存在でした。
ディッキンソンはIRON MAIDEN在籍時の1990年よりすでにソロ活動をスタートして、アルバムもリリースしていましたが、1993年に前年にJUDAS PREASTを脱退したロブ・ハルフォードと同様に、自身のソロ活動を巡るバンド/マネージメントとの対立を原因に、自分の望む音楽性を追求するためにバンドを脱退してソロプロジェクトに専念。結果程にメヴィメタルシーンの象徴ともいえる英国二大ヘヴィメタルバンドのフロントマンが抜けて活動中止になるという事態を招きます。
ディッキンソンはIRON MAIDEN脱退後、のちに腕利きギタリスト/プロデューサーしてヘヴィメタルシーンで引っ張りだこになるロイZ(Roy Z)を見出してタッグを結成、基本的にはこのコンビを中心としたメンバー構成により、本人名義(SKUNKWORKS名義の時期もある)のプロジェクトとして活動してゆきます。
時にIRON MAIDEN時代のエッセンスも感じさせるオーソドックスなヘヴィメタルを基調としつつも、グランジ, 90年代ドゥームメタルなど同時代的な最先端ヘヴィミュージックを取り入れたスタイルで活動を続け、当時〜現在のIRON MAIDENよりもクオリティでは上回ると評される完成度の高いアルバムを次々とリリースしてゆきます。
しかし、新ヴォーカリストのブレイズ・ベイリーとの相性が合わず、音楽的にもスランプに陥り低迷して困窮を極めていたIRON MAIDENに請われ、1999年にはIRON MAIDENへの復帰を果たしソロ活動は終焉を迎えます。しかし、復帰以降IRON MAIDENとしてソロ時代を超える作品は生み出していません。
BRUCE DICKINSON|DISCOGRAPHY
Tattooed Millionaire|タトゥード・ミリオネア
オリジナルアルバム – 1作目 (1990年)
冒頭のT-01こそヘヴィでダークなナンバーですがそれ以降は明るくポップなナンバーが中心で、IRON MAIDEMではできない音楽性をいろいろと試みたような楽曲が並んでおり、IRON MAIDEM風のドラマティックな正統派のヘヴィメタルを期待すると裏切られます。。
作風はやや80年代を引きずっているようで、AC/DC風のT-04, AEROSMITHやGUNS N’ ROSESが思い浮かぶT-08などをはじめ、ニューウェイヴ/ポストパンクの影響を感じさせる楽曲も見られるなど、比較的バリエーションに富んでいます。T-07はMOTT THE HOOPLEの名曲のカバー。
ダーク度:★☆☆☆☆|オルタナ度:★★★☆☆|総合評価:★★★☆☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Balls to Picasso|ボールズ・トゥ・ピカソ
オリジナルアルバム – 2作目 (1994年)
不本意ながらIRON MAIDENを離れざるをえなくなった、複雑な心情が反映されているとも伝えられ、それがグランジ全盛期ならではの内省的なヘヴィなサウンドと相まって、ポップで陽性的だった前作とは異なる重々しいダークでシリアスなエモーションにあふれた作品に仕上がっています。
IRON MAIDENにも通じるダイナミックな躍動感やドラマティシズムを感じさせる楽曲をはじめ、表情豊かでバラエティに富んだ高品質な楽曲が並び、同時期から現在に至るIRON MAIDENにの作品を楽々と上回る充実度で、オルタナティヴな作風がイケる口のリスナーのみならず、一般のメタルリスナーまでを満足させうる傑作です。
ダーク度:★★★★★|オルタナ度:★★★★☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作
Skunkworks|スカンクワークス
オリジナルアルバム – 3作目 (1996年)
1stやロブ・ハルフォードのFIGHTと同様の若手ミュージシャンを集めた編成となり、今回はロイZは不参加。
ダークな前作から一転して1stに近いやや明るい雰囲気も漂わせるようになっており、前作からヘヴィメタル的な過剰さを薄めたようなややナチュラルな作風は同時期のRUSHにも通じるものですが、基本的な音楽性に大きな変化はありません。
当時はメタルバンドがオーガニックな音作りのヘヴィサウンドになっただけで、やれグランジん転んだのとバッシングの嵐を受けた時代で、本作も例外ではありませんでした。確かにグランジー楽曲もありますし、前作で注目を集めたロイZの欠席も重なって評価ははかんばしくなくセールスも振るいませんでしたが、高品質なアルバムであることは確かだったため、後年再評価が改められています。
ダーク度:★★☆☆☆|オルタナ度:★★★★★|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Accident of Birth|アクシデント・オブ・バース
オリジナルアルバム – 4作目 (1997年)
再びロイZとのタッグを中心とした編成ですが、これまでとは一転してIRON MAIDENの新作として通じるようオーソドックスなヘヴィメタルスタイルでも高水準な作品が作れることを証明した力作。
当時ブレイズ・ベイリーをフロントマンに据えて低迷していたIRON MAIDENを、軽々と上回るヘヴィメタルアルバムを作り出したことで、両バンドの間にはヴォーカルの資質以前にコンポーザーとしての技量に大きな差があることが明白となり、IRON MAIDEN完全にお株を奪われ面目丸つぶれとなってしまいました。
この時点でIRON MAIDEサイドが、「ディッキンソン復帰待ったなし!」の空気になっていたことは。間違いないところでしょう。
ダーク度:★★★☆☆|オルタナ度:★☆☆☆☆|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤
The Chemical Wedding|ザ・ケミカル・ウェディング
オリジナルアルバム – 5作目 (1998年)
大作度:★★★★☆|マニア度:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 通好み スルメ盤 実験作
Tyranny of Souls|ティラニィ・オブ・ソウルズ
オリジナルアルバム – 6作目 (2005年)
ディッキンソンがIRON MAIDENに復帰したの制作されたゆうつのソロアルバムで、おなじみロイZ以外の顔ぶれもラテンメタルバンドTRIBE OF GYPSIESのメンバーなどロイZ人脈が中心。
前2作同様のヘヴィメタリックサウンドですが、IRON MAIDENとの二足のわらじとなった兼ね合いからか、Accident of Birth(4th)のようなIRON MAIDENそのものでその存在を殺しかねないナンバーは自粛され、パワーメタル, メロディックスピードメタル, ダークメタルなど、IRON MAIDENとバッティングしないスタイルで構成されています。
これまで同様、ディッキンソン復帰後のIRON MAIDENの作品アベレージなど軽々と飛び越えた上質なアルバムではあるのですが、本隊に気を使ったたことも影響しているのか、やや小さくまとまった印象は拭えません。
ダーク度:★★★☆☆|オルタナ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み