Contents
- 1メロディックデス, デス&ロールと、類い稀な個性と先見性で常にニューモードを生み出し続け、90年代のエクストリームメタルをリードした革新的なブリティッシュ・グラインドコア/デスメタルバンド!
- 1...1NAPALM DEATHのファミリーバンド!?
- 1...2元祖ゴアグラインド!?
- 1...3グラインドコアからデスメタルへ!?
- 1...4マイケル・アモット参加でメロディ強化!?
- 1...5メロディックなデスメタルのパイオニア!?
- 1...6ハードロッキンなデスメタルを開発!?
- 1...7解散と再結成!!
- 1.1CARCASS|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Reek of Putrefaction|リーク・オブ・ピュートゥリファクション:腐乱屍臭
- 1.1.2Symphonies of Sickness|シンフォニー・オブ・シックネス:真・疫魔交響曲
- 1.1.3Necroticism - Descanting the Insalubrious|ネクロティズム - ディスキャンティング・ザ・インサルーブリアス:屍体愛好癖
- 1.1.4Heartwork|ハートワーク
- 1.1.5The Heartwork E.P.|ハートワークEP
- 1.1.6Swansong|スワン・ソング
- 1.1.7Surgical Steel|サージカル・スティール
- 1.1.8Despicable|デスピカブル:鬼メスの刃(キメスノヤイバ)
- 1.1.9Torn Arteries|トーン・アーテリーズ
- 1.1.9.1◎ CARCASSはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 1.1BLACKSTAR|ブラックスター|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Barbed Wire Soul|バーブド・ワイアー・ソウル
- 1.2Bill Steer's FIREBIRD|ファイアバード|DISCOGRAPHY
- 1.2.1Firebird|ファイアバード
- 1.2.2Deluxe|デラックス
- 1.2.3No. 3|ナンバー・スリー
- 1.2.4Hot Wings|ホット・ウィングス
- 1.2.5Grand Union|グランド・ユニオン
- 1.2.6Double Diamond|ダブル・ダイアモンド
CARCASS|DISCOGRAPHY
Reek of Putrefaction|リーク・オブ・ピュートゥリファクション:腐乱屍臭
オリジナルアルバム – 1作目 (1988年)
40分弱で22曲! オーセンティックなグラインドコア以外の何モノでもありません。スカスカな音質と荒々しいサウンドに勢い重視の作風は、まさにハードコア的……というかハードコアマニア好みのサウンドではありますが、ややデスメタルに近い整合感も見られます。
楽曲については、アイデアに光るものが見られる曲もあれば、勢いだけの曲もありといった塩梅で玉石混交ながらも、出落ち的な一発ネタで終わっていないのはさすがと言えます。
この「初期衝動の塊のようなサウンドこそが至高!」という性癖の人がいるのも確かですし、実際これはこれでアリではあるのですが、だからといって延々続けられても困るのでコレ1枚で十分でしょう。
バンドのキャリアにおいてはオンリーワンの1枚であるとはいえ、クリエイティヴ面ではまだまだ発展途上であり、あくまで過渡期の作品と言わざるを得ません。
メロディ度:★☆☆☆☆|スピード:★★★★★|総合評価:★★★★☆
代表作 通好み 実験作
Symphonies of Sickness|シンフォニー・オブ・シックネス:真・疫魔交響曲
オリジナルアルバム – 2作目 (1989年)
作風こそ現在とは異なるものであれど、ヒネクレた楽曲の構成、変則的でテクニカルな要素、メロディックなギターソロなど、これ以降のCARCASS作品において基調となる構成要素がひと通り出そろったアルバム。
曲の長さも2〜3倍(バンド比)ほどのボリュームへと拡張され、「パンク的な初期衝動での勢い一発ではなく、あくまでアイデアと構成で勝負する!」というミュージシャン・シップも、曲中の各所ではっきりと見て取れます。
音楽性はいわゆるデス・グラインドといったところで、デスメタル度合いは彼らの全カタログ中で最も高くなっているため、前作のプリミティヴなパンク的チープさを偏愛するマニアはここで離れてしまう傾向も見られます。
しかし、そうでない多くのリスナーにとっては、CARCASSとしてのスタイルが本格的に確立された、初期のグラインドコア・スタイルにおける到達点ともいえる名盤となるでしょう。
メロディ度:★★☆☆☆|スピード:★★★★★|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み 実験作
Necroticism – Descanting the Insalubrious|ネクロティズム – ディスキャンティング・ザ・インサルーブリアス:屍体愛好癖
オリジナルアルバム – 3作目 (1991年)
ギターヒーローのマイケル・アモット加入でツインギターとなり、流麗なギターソロが増し増しになっただけのことで、『Heartwork』の登場以前では最も高いメタラー人気を誇っていた1枚。
単なるデスメタルでもグラインドコアでもなく、ハードコアやスラッシュメタルなどの枠にも縛られない異色のサウンドは、彼らをひときわユニークな存在としていますし、楽曲もアイデア豊かで曲もよくつくりこまれており、一聴してCARCASSとわかる強烈なオリジナリティにあふれています。
この新たな音楽的なアプローチはある程度成功に至っており、当時の感覚ではかなり聴きやすい仕上がりであることも事実ですが、作風自体は展開の妙でミッドテンポ主体の曲をじっくり聴かせるスタイルということもあり、どちらかというと通好みな“スルメ系”で万人向けとは言いかねるところがあります。
また、UKエクストリームメタルのバンドが真面目に作品をつくった時に顔を出しがちな、突き抜けきれない“煮えきれなさ”が足を引っ張っている面もあります。
そのため、デスメタル本来のエクストリームな魅力では前作に、ケレン味や完成度においては次作にあと一歩及びませんが、そんなアルバム中においてT-05は、次作につながるキャッチーなフックが活きた名曲です。
メロディ度:★★★☆☆|スピード:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Heartwork|ハートワーク
オリジナルアルバム – 4作目 (1993年)
オーソドックスなヘヴィメタル/ハードロックのエッセンスを振りかけ、さらに大胆にメロディを強調したことで、楽曲のフックやケレン味が段違いに増したCARCASSのブレイク作品。
メタル業界がメロデスを新ムーヴメントとして盛り上げようとしていた時期のリリースというタイミングと、マイケル・アモット(Gt.)の影響によるベタなメタル的分かりやすさがアピールしたことも相まって、日本でもデスメタルとしては異例の大ヒットとなりました。
メロディ要素の強いデスメタルではありますが、ベースとなるスタイルは前作までを踏襲しており、メロディはあくまで一要素として用いているのも従来通りなので、いわゆる“メロデス”(=スウェディシュ・スタイルのメロディック・デスメタル)とは全く異なります。
あくまで、全編泣きまくりのタイトルチューンT-05が異色曲というだけであり、「メロデスの最高峰」などという的外れのアオリを意識しすぎるとアルバム全体を捉え損ねかねません。
これも評価の分かれる面のある作品で、特にオールドファンからは不評気味な傾向もありますが、曲単位でもアルバム単位でも文句なしの見頃な完成度ですし、後年毀誉褒貶が著しくなるマイケル・アモットも、ここでは役割をわきまえているため、その存在が楽曲の魅力アップに効果的に寄与しています。
メロディ度:★★★★☆|スピード:★★★☆☆|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
The Heartwork E.P.|ハートワークEP
ミニアルバム:EP (1994年)
『Heartwork(4th)』アルバムのタイトル・トラックに、アルバム未収録の2曲を加えたEP。
特筆すべきはT-03「Rot’n’Roll」。そのロックンロール色の強い作風は次作“Swansong(5th)”の作風を予感させるもので、オールタイムベスト入りは確実の名曲です。
日本盤は、『Necroticism〜(3rd)』からのシングル「Tools of the Trade」とのカップリングなので、値付けに差がなければこちらがオススメです。
メロディ度:★★★★☆|スピード:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み 実験作
Swansong|スワン・ソング
オリジナルアルバム – 5作目 (1996年)
黄金期のメンバーが抜け解散が決まった状況でリリースされた作品で、前作を上回る問題作として賛否両論なのがこのアルバム。
前作からのEPに収録されていた『Rot’n’Roll』にその予兆はありましたが、ヘヴィメタリックなハード・ロックンロールといったスタイルへと変貌を遂げています。
その結果、T-01, T-03, T-08, T-10といった強力なアンセムをも含む力作にもかかわらず、初期のグラインドコア路線の支持者だけでなく、前作から入ってきたメロデスファンにまで総スカンを食らう結果となります。
とはいえ、個性的なセンスは相変わらずで、派手さはないものの名盤と呼べる出来栄えですし、のちにはデス&ロール(デスロール)の元祖的な作品としても再評価を受けることになります。
メロディ度:★★★★☆|スピード:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み 実験作
Surgical Steel|サージカル・スティール
オリジナルアルバム – 6作目 (2013年)
リユニオンには参加したものの、歌姫商法で人気爆発の〈ARCH ENEMY〉がウハウハでこちらまで手が回らなかった、マイケル・アモットを除くメンバーが集結した再結成アルバム。
ザックリいえば、『HeartWork(4th)』と『SwanSong(5th)』を足したような作風で、意外性や新鮮味については皆無ではあるものの、多くのファンに求められているものを高品質/高品位で形にした作品と言う見方は可能です。
CARCASSの作品と考えると、あまりにも“置きに行った”感の強い作風に不満が残ることは否めないとはいえ、再結成の名刺代わりという意味では申し分のない完成度の1枚ではあります。
『HeartWork』でブレイクした頃には、「この名作の成功はマイケル・アモットの功績」などとズレたことを言うリスナーも少なからず存在していたほどなので、音楽性も完成度も基本は従来のメンバーによるものだということを、ハッキリと証明できただけでも価値があったと言えるでしょう。
メロディ度:★★★★☆|スピード:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論
Despicable|デスピカブル:鬼メスの刃(キメスノヤイバ)
ミニアルバム:EP (2020年)
“Torn Arteries(7th)”からの4曲入り先行EPで、T-03『Under the Scalpel Blade』以外はアルバム未収録。
スロー&ファストが混在するT-01は及第点ですが、総じてアルバムへの期待がふくらむどころか、むしろ不安だけが募る出来栄え。界隈でも、人気漫画/アニメをもじった邦題のダサさだけが話題になっていました。
邦題はミュージシャン『掟ポルシェ』のアイデアとのことですが、クレバーで知られる人物にしては致命的な大ハズし。確かに、ふざけた邦題は往年のCARCASS名物ではあるのですが、その方向性を完全に誤解しています。
日本盤ボーナストラックは無しなので、安く手に入るなら輸入盤で十分でしょう。
メロディ度:★★☆☆☆|スピード:★★☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤
Torn Arteries|トーン・アーテリーズ
オリジナルアルバム – 7作目 (2021年)
先行EP『DESPICABLE:鬼メスの刃』の邦題があまりに不評だったのか、アルバムタイトルについては原題そのままでのリリースとなった8年ぶりの新作。
本作も、前作“Surgical Steel(6th)”と同様の過去の集大成的な作風ですが、キャッチーなフックやギターソロを含めたメロディを強調した前作とは異なり、変則的な凝った構成で曲をもたせる手法でじっくり聴かせるアルバム。その意味では“Necroticism〜(3rd)”を想起させる側面が強まっています。
解散以前のように新作の度に独自の新機軸を導入し、新鮮なサプライズを与えてシーンをリードするような展開は、今後も期待できないかもしれません。
とはいえ、大きく拡大したシーンの中でも一聴してソレとわかる個性や、類を見ない独自路線を確立しているのは確かなので、高い水準さえ維持できるのならば、ソレはソレでと割り切ることもできなくはありません。
その意味では、本作は一応ボーダー越えは果たせています……が、欲を言えば、キャッチーなキラーチューンで勝負するつもりはないにしても、もうひとつふたつくらい強烈なインパクトをもたらすヒキやヒネリが欲しいところです。
メロディ度:★★☆☆☆|スピード:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤
◎ CARCASSはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
メイン記事でも触れたようにCARCASSはアルバムごとに作風が大きく変わるので、自分の好みに合ったものを選部必要があります。
ストレートな王道デス/グラインドなら“Symphonies of Sickness:真・疫魔交響曲(2nd)”、彼らのアクの強い個性と美麗なメロディが調和した作風なら代表作の“Heartwork(4th)”、オーソドックスなヘヴィロックならドライヴィンな元祖デッスンロール“Swansong(5th)”…、お好みのスタイルで選びましょう。
2ndが気に入ったらよりプリミティヴな“Reek of Putrefaction:腐乱屍臭(1st)”、4th, 5thにハマったら“Surgical Steel(6th)”に進むといいでしょう。“Necroticism:屍体愛好癖(3rd)”は一時期は代表作とされていましたが、やや通好みなつくりで好みは分かれます。