- 80年代メインストリームのバブリーなファンクミュージックをポップなハードロック/ヘヴィメタル取り入れた“ファンクメタル”と、テクニカルギターの鬼才ヌーノ・ベッテンコートの存在が、アイドル人気優先のグラムメタルシーンで異彩を放った通好みバンド!!
80年代メインストリームのバブリーなファンクミュージックをポップなハードロック/ヘヴィメタル取り入れた“ファンクメタル”と、テクニカルギターの鬼才ヌーノ・ベッテンコートの存在が、アイドル人気優先のグラムメタルシーンで異彩を放った通好みバンド!!
EXTREME(エクストリーム)はアメリカのグラムメタルバンドで、1980年代末期のグラムメタルムーヴメント爛熟期にデビューした、かなり後発組に属するグループ。彼らは、そのポップメタルとバッドボーイ系ロックが全盛のグラムメタルシーンで、ファンクミュージックを取り入れつつややテクニカルな“ファンクメタル”を展開したグループとして知られています。
またEXTREMEは、現在のメタルシーンでも有数のテクニカルギタリストとして知られ、グラムメタル/ヘヴィメタルの枠をコアてあオルタナティヴなシーンで活躍している、ヌーノ・ベッテンコート(Nuno Bettencourt)が在籍したいるバンドでもあります。
デビュー当初は、比較的類型的なメインストリーム系ポップメタル寄りのサウンドをサウンドを展開していましたが、作品を重ねるごとによりファンク色を押し出した作風へと変化してゆき、自らも“ファンクメタル”を標榜するようになります。
他のグラムメタルバンドと同様ポップなアイドルバンド的なアプローチをとりつつも、職人的な可視化な作曲能力と演奏力を備えていたことで、通好みなリスナーやミュージシャンにも支持され“ミュージシャンズ・ミュージシャン”として名を上げて行きました。
しかし、90年代になるとグランジやグルーヴメタルに代表されるオルタナティヴロック/メタルの台頭による、ヘヴィメタル/ハードロックシーンの大変革の波にのまれ、方向性の転換を余儀なくされます。
EXTREMEは、グランジに通じる70年代ロックの再構築的なアプローチによる、レイドバックしたハードロックサウンドを試みますが、オールドファンの不評を買ったことと新規リスナーを獲得できなかったことで低迷、ベッテンコートの脱退を契機に解散を決定します。
解散後、ヴォーカリストのゲイリー・シェローンはVAN HALENに加入、ベッテンコートはいくつかのソロプロジェクトのほか、セッションギタリストとして様々なバンドやプロジェクトに参加しています。
その後2004年のリユニオンを経て2007年に再結成し、翌年には新作スタジオアルバムもリリース。2017年にリリースとアナウンスされていたニューアルバムはまだ実現していませんが、現在も活動は継続中です。
EXTREME|DISCOGRAPHY
Extreme|エクストリーム
オリジナルアルバム – 1作目 (1989年)
グラムメタルシーン全盛期の名残を残した、キラキラ系のライトな80年代メインストリームポップメタルサウンドで、いくぶんグルーヴやファンクネスも感じられますが、それはAEROSMITHらアメリカンハードロックにはあたり前に見られるレベルで、特筆するほどのものではありません。
フラッシーなギターはギターファンにとってはは聴きどころでしょうし、今となっても一定の支持がある作風なのは確かなので、そういった『ファニー&ニッチ』の枠で愛でることは可能でしょうが、正面きっての再評価は一周回ってどころか2〜3周回っても難しいでしょう。
プログレ度:★☆☆☆☆|チャラい度:★★★★★|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 お布施
Pornograffitti|ポルノグラフィティ
オリジナルアルバム – 2作目 (1990年)
多くのファンにとっては3rdアルバムとともに最高傑作の座を争う作品で、もっともセールスを上げてヒット曲も生み出したことから一般的には代表作。このあたりからファンクメタルを標榜するようになり、ベッテンコートもテクニカルなギターセンスをアピールしたことで、通好みなギターヒーローとして注目されるようになります。
新世代ファンクロック/メタルとしては、オルタナティヴロックシーンのRED HOT CHILI PEPPERSやFAITH NO MORE, LIVING COLORなどがすでに先行していましたが、ここで聴けるオーソドックスなハードロックサウンドとテクニカルなギターワークは、あえていえばLIVING COLORに近いとも言えます。とはいえ、本作も前作と同様にメインストリームポップロックの枠から一歩も出ないので、ファンクロック/メタルの肩書きに過剰な期待を寄せるともの足りなさが残ります。
前作と比較するとほんのわずかにサウンドが力強さを増してキラキラ感が薄れた印象があるものの、この時期の新世代バンドしては過剰にバブリィなポップメタルを引きずっており、良くも悪くもそこが評価の分かれ目となるでしょう。
プログレ度:★☆☆☆☆|チャラい度:★★★★★|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤
III Sides to Every Story|III サイズ・トゥ・ストーリィ
オリジナルアルバム – 3作目 (1992年)
三分構成という体裁でそれぞれテーマ性を持った、ある種のコンセプトアルバム。各部によってサウンドの傾向が変わり、第1部「Yours」はややヘヴィ&ハードなファンクメタル中心、第2部「Mine」がメロウなバラード中心、第3部「The Truth」は組曲形式で20分超のプログレ風です。
「Yours」で聴けるファンクメタルは前作とはやや毛色が異なりますが、オルタナティヴ世代の登場で次のフェーズに移行したファンクロック/メタルではなく、80年代メインストリームのバブリーな産業ファンクサウンドに近い質感を漂わせたもの。前年にRAGE AGAINST THE MACHINEがデビューしていたことを考えると、同時代性を感じられないこのサウンドは、さすがに古色蒼然とした印象が否めません。
「Mine」も同様で、職人的に真面目につくり込まれた良質の楽曲ではありますが、トレンディな80’sメインストリームサウンドで、“特大肩パット入りジャケットとターミネーターサングラスのうしろ髪のばし隊”が、現代にタイムスリップしてきたような気恥ずかしさと違和感が際立ってしまいます。
この、時に散漫と評価される作風からは、ミュージシャンシップとマーケティングと成功体験の間で身をよじっているような歪さも感じさせます。
プログレ度:★★★☆☆|チャラい度:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤 実験作
Waiting for the Punchline|ウェティング・フォー・パンチライン
オリジナルアルバム – 4作目 (1995年)
オールドファン間に物議をかもす作風でバッシングを受けるというには、何度も語っている“80’sバンドの90年代アルアル”。それは本作も同様なのですが、古参ファンの思惑はどうであれ、本作でようやく産業ポップからひと皮むけたロックミュージックに成長しました。
俗にグランジ化サウンドと呼ばれる、LED ZEPPELINあたりを意識した“70年代ハードリバイバル”テイストで、レイドバックしたグルーヴハード/ヘヴィロックが基本。時にレッチリ/レイジなどを思わせるヘヴィグルーヴも感じさせますが、EXTREME本来のポップネスと職人的な楽曲へのこだわりも失ってはいません。
ここでのアプローチは根本的にリバイバルでしかありませんし、当時としても旬は逃しており「この後に及んで」という印象さえありましたが、過去作と比較してどちらがブームを過ぎても風化することなく時代に左右されない強度と普遍性を持ったサウンドなのかは、その後を見れば明白でしょう。
プログレ度:★★☆☆☆|ヴィンテージ度:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Saudades de Rock|サウダージ・デ・ロック
オリジナルアルバム – 5作目 (2008年)
現時点では復活後の唯一のアルバム。前作“Waiting for the Punchline(4th)”と同様に、70年代テイストが強いリバイバル系サウンドですが、そこにソロ時代の経験をフィードバックして、多様性をもたせたともいえる作風です。ミッドテンポ主体だった前作と比較すると、同時代的なヘヴィネスを持ちながらもアップテンポで躍動感をもったナンバーを含まれ、より幅広くカラフルなアルバムとなりました。
セールスポイントのテクニカルギターはやや控えめに思えますが、ヘヴィなファンクロックアンバーからメロウなポップナンバーまで、多彩な楽曲はいずれもよく練られてツブぞろい。前作で逃げたメタルファンから一般のロックリスナーに対してまで間口を広げてあり、バブルの呪いが解けないリスナー以外なら上質なハードロックアルバムとして楽しめるでしょう。
プログレ度:★★☆☆☆|ヴィンテージ度:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
NUNO[ヌーノ]|DISCOGRAPHY
EXTREME解散後のベッテンコートによるワンマンプロジェクトで、このNUNO(ヌーノ)名義としてはアルバム1枚のみを残しています。基本的には全パートをベッテンコートが担当していますが、EXTREMでの盟友ゲイリー・シェローン’Gary Cherone)が1曲、現在DREAM THEATER所属でANNIHILATORにも参加していたマイク・マンジーニ(Mike Mangini)が2曲ゲストとして色を添えています。
基本は適度にヘヴィでポップなハードロックですが、ポップメタルバンドEXTREMEというカセから解き放たれたためか、これまではできなかった作風にも挑戦してが幅広い作風くなっており、オルタナポップ/ストレンジポップ的なギターポップ風の楽曲も目立ちます。
メタルファンにわかりやすくいうなら、THE WILDHEARTS(ワイルドハーツ)とGALACTIC COWBOYS(ギャラクティック・カウボーイズ)の間のどこかといった印象です。
Schizophonic|スキゾフォニック
オリジナルアルバム – 1作目 (1997年)
ポップ度:★★★★★|プログレ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
MOURNING WIDOWS[モーニング・ウィドウズ]|DISCOGRAPHY
NUNO名義に続くソロプロジェクトで、EXTREME時代には結局実現できなかったモダンなファンクメタルサウンドを展開しており、ベッテンコート関連の中ではもっともヘヴィでメタル度の高いプロジェクトです。
とはいえ、ヘヴィグルーヴ〜ニューメタル系のゴリゴリのヘヴィサウンドよりは、TM STEVENS(TM スティーヴンス), STEVIE SALAS(スティーヴィー・サラス), VERNON REID(ヴァーノン・リード : exLIVING COLOR)などのプロジェクトに近い多様性を持ったもので、あえていうならそれらとEXTREMEの中間に位置するサウンドといったところです。
Mourning Widows|モーニング・ウィドウズ
オリジナルアルバム – 1作目 (1998年)
ポップ度:★★★☆☆|プログレ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み 実験作
Furnished Souls for Rent|ファーニッシュド・ソウルズ・フォー・レント
オリジナルアルバム – 2作目 (2000年)
ポップ度:★★★☆☆|プログレ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み
POPULATION 1[ポピュレーション ワン]|DISCOGRAPHY
次のDRAMAGODSの直接的な前身にあたるプロジェクト。ここではヘヴィネスやメタルエッジな質感は感じられず、テクニカルギターも全編にフィーチャーされているわけではなくかなり控えめです。
あえていうならオルタナポップともストレンジポップとも呼べそうな、ギターポップサウンドを主体とした作風ですが、楽曲によっては異なるアプローチをとっており比較的変化に富んでいます。
Population 1|ポピュレーション ワン
オリジナルアルバム – 1作目 (2002年)
ポップ度:★★★★★|プログレ度:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Sessions from Room 4|セッション・フロム・ルームフォー
ミニアルバム:EP (2004年)
ポップ度:★★★★★|プログレ度:★☆☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤
DRAMAGODS[ドラマゴッズ]|DISCOGRAPHY
前身に当たるベッテンコートのプロジェクト『POPULATION 1』の名称が、諸事情で使えなくなったため名義を改めたバンド。とは言っても、オルタナポップ系のサウンドに傾いていたPOPULATION 1とは異なり、ヘヴィなサウンドも交えたバラエティに富んだ楽曲が並び、ベッテンコートのこれまでのキャリアの総集編といった作風です。
ライヴではサポートメンバーを迎えていましたが、アルバムではほぼ全パートをベッテンコートひとりで録音していています。
Love|ラヴ
オリジナルアルバム – 1作目 (2005年)
ポップ度:★★★★☆|プログレ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み スルメ盤
PERRY FARRELL’S SATELLITE PARTY[ペリィ・フェレルズ・サテライト・パーティ] |DISCOGRAPHY
USオルタナティヴシーンのビッグネーム、JANE’S ADDICTION(ジェーンズ・アディクション)やPORNO FOR PYROS(ポルノ・フォー・パイロス)のフロントマンンにして中心人物、ペリー・ファレル(PERRY FARRELL)とベッテンコートによるプロジェクト。
ファレルは上記バンドて活躍したほか、米国を代表するオルタナティヴ・ロックフェス『ロラパルーザ』の創始者でもある、アメリカンオルタナシーンの顔役的存在。
デビュー当時の両者の立ち位置を知るならかなり予想外の組み合わせですが、90年代以降グランジとは異なるアプローチでの、ハードロック/ファンクロック/プログレッシヴロックの再構築を行っていた点では共通しています。グラマラスなメイクでパフォーマンスしていたJANE’S ADDICTIONを異形のグラムメタルと捉えるならば、これも納得の組み合わせではあります。
バンドメンバーは、ファレル人脈からは奥方のエティ(コーラス)、ベッテンコート側からはマイク・マンジーニ人脈のケビン・フィゲイレド(Dr.)。他にもゲストとしてRED HOT CHILI PEPPERSのジョン・フルシアンテほか、多彩な顔ぶれが参加しています。
アーティスト肌と職人肌のすれ違いからか、方向性の不一致を理由にベッテンコートは1年足らずで脱退。EXTREMEのを再結成することになります。ファレルもJANE’S ADDICTION再結成に動いたためバンドは活動を終えました。
Ultra Payloaded|ウルトラ・ペイローデッド
オリジナルアルバム – 1作目 (2007年)
どちらかというとファレル主導の印象が強く、楽曲面にも持ち前のアート感覚とサイケデリックテイストや、ツイストの効いたポップセンスが強く出ていますが、ベッテンコートもほぼ全曲にギターかベースで参加、(Dr.)も身内のフィゲイレドということで、演奏面で職人ぶりを発揮しています。
予想外のケミストリーは生まれていませんし、良くも悪くも余裕のあるつくりからか、音楽メディアからは評価はあまり振るいませんでしたが、オルタナシーンのベテランならではの、リラックスしつつもスキのない高品質のハードロックアルバムで、このサウンドはEXTREMEやベッテンコート単身ではつくり出せなかったものです。
ポップ度:★★★★☆|プログレ度:★★★★☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作