Contents
- 1ロッキンなニューヨーク・パンクから究極の様式美ヘヴィメタルへと大変身を遂げた、世界最大(!?)のボリュームと筋肉量を誇るアメリカン・マッチョ・エピックメタルのカリスマ!!
- 1...1アメリカン・ヘヴィメタルのパイオニア!?
- 1...2MANOWARのサブジャンル『エピックメタル』とは!?
- 1...3MANOWARはエピックメタルの帝王!?
- 1...4MANOWARの創始者は元パンクス!?
- 1...5MANOWARの音楽性の変遷!!
- 1...6MANOWARのトピックと評価は!?
- 1.1MANOWAR|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Battle Hymns|バトル・ヒムズ:地獄の鎮魂歌
- 1.1.2Into Glory Ride|イントゥ・グローリー・ライド:地獄の復讐
- 1.1.3Hail to England|ヘイル・トゥ・イングランド
- 1.1.4Sign of the Hammer|サイン・オブ・ザ・ハンマー
- 1.1.5Fighting the World|ファイティング・ザ・ワールド
- 1.1.6Kings of Metal|キングス・オブ・メタル
- 1.1.7The Triumph of Steel|ザ・トライアンフ・オブ・スティール:勝利の鋼鉄
- 1.1.8Louder than Hell|ラウダー・ザン・ヘル
- 1.1.9Warriors of the World|ウォーリアーズ・オブ・ザ・ワールド
- 1.1.10Gods of War|ゴッズ・オブ・ウォー
- 1.1.11Battle Hymns MMXI|バトル・ヒムズ MMXI
- 1.1.12The Lord of Steel|ザ・ロード・オブ・スティール
- 1.1.13Kings of Metal MMXIV|キングス・オブ・メタル MMXIV
MANOWAR|DISCOGRAPHY
Battle Hymns|バトル・ヒムズ:地獄の鎮魂歌
オリジナルアルバム – 1作目 (1982年)
このデビューアルバムにおいては、ロス・ザ・ボスのカラーが強く出ているのか、まだ方向性が固まっていないのか、ロックンロール/ハードロックをベースとした、後の作風とは全く異なるサウンドを展開しています
そのスタイルは、ミッドテンポ主体のアメリカンなヘヴィロック/ヘヴィメタルで、ロス・ザ・ボスの古巣THE DICTATORSに通じる部分もありますし、曲によってはGRAND FUNK RAILROADあたりをメタリックにしたような印象も受けます。
過渡期の作品で往年のスタイルとは異なり、またメタルファンに受けのいい作風でも無いので、一般に評価はかんばしいものではなく、MANOWAファンからも無かったことにされがちな不遇1枚ではあります。
しかし、完成度においてはMANOWARのカタログ中でも確実に上位に位置する作品なので、様式美サウンドにこだわりがなければ要チェックですし、従来のコテコテMANOWARサウンドに抵抗がある人も一聴の価値があります。
|様式美度:★☆☆☆☆
|ロッキン度:★★★★★
|エピック度:★☆☆☆☆
|演出装飾度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Into Glory Ride|イントゥ・グローリー・ライド:地獄の復讐
オリジナルアルバム – 2作目 (1983年)
チープなファンタジー風衣装を身につけたコスプレ・ジャケットからもわかるように、本格的なエピック路線に足を踏み入れてそのイメージを押し出してきたアルバム。
アップテンポの曲が少ないのは前作同様で、MANOWAR流メタルナンバーの原点ともいえるT-01やT-06といった程度。それ以外の大半は前作より更にダウンテンポなミッド〜スローのヘヴィな楽曲で占められています。
これらは、1stでのヘヴィロック路線をベースに、重厚で勇壮な…そしてむやみに大仰なメタル様式美との融合を試みたような作風と言えるのですが、これがどうにも食い合わせがよく無い仕上がり。
そんな中、プログレ風味のT-05あたりはそれなりに聴きどころはあるものの、どうにも全体的に変化に乏しく単調に流されています。
近年では、スロー&ヘヴィな作風の本作をプロト・ドゥームと捉える向きもありますが、ドゥームロック的なヘヴィネスやグルーヴがあるわけでもなく、アイデアも貧困で凡庸な曲がダラダラと続くだけ。
これを重厚と言えれば聞こえはいいのですが、残念ながら鈍重という表現がふさわしいでしょう。
|王道メタル度:★★★★☆
|様式美度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|エピック度:★★☆☆☆
|演出装飾度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤 実験作
Hail to England|ヘイル・トゥ・イングランド
オリジナルアルバム – 3作目 (1984年)
どうにも消化不良だった前作から驚くほどの成長を遂げ、MANOWARのターニングポイントにもなったアルバム。
1stでの作風とヘヴィメタル様式美の融合という意味では、前作の延長線上にあることは確かなのですが、ここではそのアプローチを完璧に近いかたちで達成しています。
パワーメタルに近いファストチューンから、ミッドテンポのヘヴィで重厚なナンバー、ドラマティックで叙情的なナンバーまで、よく練られてフックの効いたオールタイムベストに加わるレベルの楽曲が並ぶ、文字通り一分のスキも無い出来栄え。
MANOWAR流ヘヴィメタルの雛形を完成させた重要作でだけでなく、全カタログ中でも屈指の完成度を誇るアルバムで、一般には次作の“Sign of the Hammer(4th)”が最高傑作とされることが多いためにその陰に隠れがちですが、バリエーションの多彩さと曲ごとの完成度の高さにおいては本作の方が上回ると言ってもいいでしょう。
|様式美度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★☆☆☆
|エピック度:★★★☆☆
|演出装飾度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Sign of the Hammer|サイン・オブ・ザ・ハンマー
オリジナルアルバム – 4作目 (1984年)
一般的にはMANOWARの代表作とも見なされ、ファンに支持も高いアルバム。
基本的には前作を踏襲した作風ですが、これまで以上にオーソドックスなヘヴィメタルに接近して、アップテンポでアグレッシヴなパワーメタル・チューンもこれまで以上に増えています。
それを考慮すれば、クオリティにおいては本作と肩を並べる前作よりも、メタラー人気が高い傾向も納得と言えるでしょう。
また、まだこの時点では、MANOWAR特有の暑苦しさはあっても、オーソドックスなメタル・メソッドに準処した、ドラマティックなヘヴィメタルとして聴ける作風ですし、後にアルバムの大半を占めるようになる、SE扱いの間奏曲や演出のみの役割でしかない曲は見られません。
そのため、ロス・ザ・ボス脱退後に様式美への傾倒が激しくなってからの、演出効果優先で装飾過多な自己満足サウンドとは異なり、純粋に充実度の高いヘヴィメタル・サウンドだけを楽しむことができるアルバムに仕上がっています。
|様式美度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★☆☆☆
|エピック度:★★★☆☆
|演出装飾度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤
Fighting the World|ファイティング・ザ・ワールド
オリジナルアルバム – 5作目 (1987年)
NYパンクのカルトヒーローにしてMANOWARの基礎をつくったバンドの創始者、ロス・ザ・ボス在籍時の最後のアルバム。
MANOWAR作品としてはやけに明るい雰囲気を持った、ポップでキャッチーな作風が異彩を放っており、これは、グラムメタル/ポップメタル全盛の時流を反映したものとも言われており、一般的にあまり評価の高い作品ではありません。
とはいえ、ポップメタル一辺倒従来の作風というわけではなく、スタンダードなヘヴィメタルから、ジャーマン風のパワーメタル、ポップなフォークメタルまで、バリエーション豊かな楽曲がそろっており、楽曲重視のオーソドックスなヘヴィメタル・アルバムとしては、00年代以降の作品よりもはるかに聴き応えのある1枚です。
また、今後いい意味でも悪い意味でも“MANOWARらしさ”として顕著になってゆく、演出過多の傾向も見られるようになっています。
|様式美度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★☆☆☆
|エピック度:★★★★☆
|演出装飾度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
入門盤 賛否両論 実験作
Kings of Metal|キングス・オブ・メタル
オリジナルアルバム – 6作目 (1988年)
勇壮な大仰なメタル様式美とエピック様式美を、これまで以上に本腰を入れて追求し始めたアルバムで、ファンの中には本作を最高傑作に推す向きもあります。
確かに彼らの美意識が存分に発揮された作風は、それに共感できるファンにはたまらないものがあるでしょうし、本作で完成を見せ今後の主力となる、同時代的なアグレッションを持ったスピーディーなパワーメタル・ナンバーはなかなかの存在感。
その、T-01は名曲ですし、それらを含むT-08などのメタル・ナンバーは、それなりの佳曲がそろっています。
しかし、収録曲には間奏やSEに近い扱いの演出目的の曲がこれまでにも増して多く、ヘヴィメタルの体をなしている楽曲はせいぜいアルバムの半分程度いう密度の薄さで、楽曲主体のヘヴィメタル・アルバムとしては疑問の残るつくりです。
そのため、本作から前面に押し出してきた、このMANOWAR特有のエピック様式美に、どれだけ心酔できるかで評価は大きく変わるでしょう。
|様式美度:★★★★★
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|エピック度:★★★★★
|演出装飾度:★★★★★
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 実験作
The Triumph of Steel|ザ・トライアンフ・オブ・スティール:勝利の鋼鉄
オリジナルアルバム – 7作目 (1992年)
30分近い超大作T-01に加え、それ以降だけでも7曲40分あまりのフルアルバム級のボリュームという、CD主体の大容量時代ならではの強烈な物量攻撃を繰り出してきたアルバムですが、さすがにトゥーマッチ過ぎて胃にもたれたか前作と比較すると評判はイマイチの様子です。
実際、複数曲をつなげたようなつくりのT-01は、いくつか耳を引くパートもありるものの、1曲として考えると単に冗長なだけで、言ってしまえばこの手のバンドにありがちな大作志向にセンスや力量が追いついていない自己満足に過ぎません。
ただし、エピック・フリーク以外のリスナーには、端々に挟まる無駄な演出曲がノイズでしかなく、密度も低かった前作と違い、こちらはT-01さえスキップしてしまえば、水準以上のメタル・ナンバーの数々を余すことなく楽しめます。
聴き手によるカスタマイズが必要な構成は評価が分かれるかもしれませんが、「おバカだけどカッコいいメタル・アルバム」として楽曲の数々を楽しめる分だけ、前作よりも間口の広さを持ったオススメしやすい仕上がりと言えます。
|様式美度:★★★★☆
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|エピック度:★★★★★
|演出装飾度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
Louder than Hell|ラウダー・ザン・ヘル
オリジナルアルバム – 8作目 (1996年)
前々作の“Kings of Metal(6th)”と同じようなスタイルで、アルバム中わずか数曲の、訴求力を持ったヘヴィメタル/パワーメタルナンバーを主軸に、単体で成立させるのは難しいエピック演出だけがを目的としたトラックが挿入されるという構成。
メタルナンバーだけを取り出して個別に聴けくなら、その楽曲は良質で魅力的な出来栄えであり、T-01などはオールタイムのベストに欠かせな名曲です。
しかし、全編通して楽しむのは、彼らの美意識や思想性に共感できるリスナー以外には敷居が高く、まさに彼らの言うところの「選ばれし真のメタル民」でないと100%は堪能できないアルバムかもしれません。
|様式美度:★★★★★
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|エピック度:★★★★★
|演出装飾度:★★★★★
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤
Warriors of the World|ウォーリアーズ・オブ・ザ・ワールド
オリジナルアルバム – 9作目 (2002年)
前作や“Kings of Metal(6th)”と比較すると、直接的な演出目的の曲はやや少なめですが、結局のところバラード曲など雰囲気づくりのための曲が多く、純粋なヘヴィメタルナンバーは多くありません。
問題は、その数少ない貴重なヘヴィメタル・チューンのクオリティにかなりの劣化が見られることで、これではダイナミズムあふれるパワーメタル/ヘヴィメタルナンバーを主軸に据えたアルバム構成が成立しません。
これが現在の“MANOWARの流儀”として支持されているのなら、ファン層は初期から大きく変動して大幅に入れ替わっているか、よほど“カルト化”が進んでいるとしか考えられないでしょう。
|様式美度:★★★★★
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|エピック度:★★★★★
|演出装飾度:★★★★☆
|総合評価:★★☆☆☆
賛否両論 お布施
Gods of War|ゴッズ・オブ・ウォー
オリジナルアルバム – 11作目 (2007年)
本作の特徴的な要素は、擬似オーケストレーションを大きくフィーチャーしたシンフォ系様式美サウンド。
世界観は従来通りですが、コンセプトアルバムということもあって、明記されてはいないものの実質的には組曲形式のアルバムになっています。
ロス・ザ・ボス脱退後に極端なほどに進行した、自己満足に近いナルシスティックな美意識と世界観に、どこまで共感できるかが評価の分かれ目になるでしょう。
そして、これもいつも通りではあるのですが、16曲と曲数は多いものの大半がインストやSEによる間奏やナレーションで、いつにも増してメタルナンバーは少なく、せいぜいがアルバムの3割ほど。
しかも困ったことに、本来の持ち味であるはずの、そのメタルナンバーがかなり低調で、パワフルなヘヴィメタル/パワーメタルを聴きたいリスナーには、あまりオススメ致しかねる出来栄えとなっています。
|様式美度:★★★★★
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|エピック度:★★★★★
|演出装飾度:★★★★★
|総合評価:★★☆☆☆
賛否両論 お布施
Battle Hymns MMXI|バトル・ヒムズ MMXI
リレコーディングアルバム (2010年)
記念すべき1作目ながら、あまり顧みられることのない“Battle Hymns”を、現在の体制で再録したリレコーディング・アルバム。
“オリジナルBattle Hymns”は、メタル寄りのサウンドとはいえ基本はロックンロール・ベースのアメリカン・ヘヴィロックでした。
本作では、それがよりヘヴィメタリックなサウンドに変貌を遂げていることもあって、オリジナルの作風に馴染めない様式美メタルファンには馴染みやすいかもしれません。
反面、“Battle Hymns”アルバム本来の魅力は完全に失われている上に、アレンジも面白みに欠けるので、オリジナル盤を評価するリスナーにとっては、単なる蛇足以上のものにはなりえないでしょう。
|ハード度:★★★★☆
|メロディ:★★★★☆
|大作度:★★★★☆
|マニア度:★★★★☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 実験作 お布施
The Lord of Steel|ザ・ロード・オブ・スティール
オリジナルアルバム – 13作目 (2012年
Kings of Metal MMXIV|キングス・オブ・メタル MMXIV
リレコーディングアルバム (2014年)
デビュー・アルバム“Battle Hymns”のリメイクに続いて、MANOWARフリークの中では最高傑作という譽れもある6作目“Kings of Metal”をリメイクした再録アルバム。
確かに、“Battle Hymns”については現在と大きく作風が異なることもあって、やり方次第では意義のある試みになった可能性もありました。
しかし、この“Kings of Metal”についていえば、そもそも現在の作風の基礎となったアルバムであり、近年の音楽性がこの頃からほとんど変化が見られないということもあって、あえてリメイクする意義は全く無いと言っていいでしょう。
これは、例えば現在のJUDAS PREASTが『Painkiller』をリメイクするようなもので、正直なところ、音質の向上以外の全ての面で劣化/後退している状況が、仕上がりにもそのまま反映されており、マイナス面だけが目立つリスキーな企画としか言いようがありません。
|様式美度:★★★★★
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|エピック度:★★★★★
|演出装飾度:★★★★★
|総合評価:★★☆☆☆
賛否両論 お布施