Contents
- 190年代の北欧ポストメタルシーンから世界規模のデビューを果たしたダーク&グルーミィなデプレッシヴ・インダストリアルメタルは20年近い歳月を経て第一線に返り咲く!?
- 1.1MISERY LOVES Co.|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Misery Loves Co.|ミザリィ・ラヴズ・カンパニー
- 1.1.2Not like Them|ノット・ライク・ゼム
- 1.1.3Your Vision Was Never Mine to Share|ユア・ヴィジョン・ワズ・ネヴァー・マイン・トゥ・シェア
- 1.1.4Zero|ゼロ
- 1.1.4.1◎ MISERY LOVES Co.はコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
90年代の北欧ポストメタルシーンから世界規模のデビューを果たしたダーク&グルーミィなデプレッシヴ・インダストリアルメタルは20年近い歳月を経て第一線に返り咲く!?
90年代中期のスウェーデンのヘヴィミュージックシーンでは、ヘヴィグルーヴ/グルーヴ系,インダストリアル系,ハードコア系など、当時の米国最新メインストリームメタルの波が押し寄せており、その影響を受けたサウンドがが続々と登場して賑わいを見せましたが。
MISERY LOVES Co.(ミザリィ・ラヴズ・カンパニー)はその中で登場したグループで、インダストリアルメタルとPANTERAなどのグルーヴメタルをミックスしたような作風を持ったヘヴィな新世代インダストリアルサウンドを持ち味としていました。
MISERY LOVES Co.の音楽スタイルは、楽曲の端々にMINISTLY(ミニストリィ)やFEAR FACTORY(フィアー・ファクトリィ)などの影響がかいま見えるものでしたが、単なるイイトコ取りには終わらない完成度は、スウェーディッシュモダンヘヴィ勢の中でも、個性的なインダストリアルラップメタルで知られたCLAWFINGER(クロウフィンガー)に次ぐほどの突出したレベルにありました。
また、英国の名門エクストリームミュージックレーベルイヤーエイクからアルバムがリリースされただけでなく、米国でまでもデビューを果たすほどのプッシュを受けており、日本でもそれなりの注目を集めていたグループでした。
デビュー当初からダークな作風が持ち味でしたが、アルバムリリースを重ねるにつれてより内省的な作風にシフトしてゆきます。それにつれて、初期のエクストリームメタルとしてのアグレッションやダイナミズムを減退させてゆくことになりますが、その作風の変化に合わせたリスナーの入れ替えがうまく運ばなかったことで次第に失速して活動停止となりました。
しかし、2015年には後期のスタイルで活動がアナウンスされ、2019年には新作アルバムもリリースして活動継続中です。
MISERY LOVES Co.|DISCOGRAPHY
Misery Loves Co.|ミザリィ・ラヴズ・カンパニー
オリジナルアルバム – 1作目 (1994年)
MINISTLYを中心としたインダストリアルメタルの先人たちの影響をかなりストレートに反映しつつも、グルーヴメタルやデスメタルなどエクストリームメタルのアグレッションを持つサウンドとミックスさせたスタイル。そのアプローチ自体はこの時点でもさほど目新しいものではありませんでしたが、それらの多くがクオリティや独創性の点で欠陥を抱えていたのに対し、彼らはパイオニアにして出世頭でもあるFEAR FACTORYあたりと比較でき、今後に期待を持たれるレベルに達しています。
イイトコ取りでやや独自性を欠きますし、やや仕上がりにムラが大きいという弱点はありますが、のちに幅を利かせるニューメタル系やエクストリームメタル系のインダストリアルと一線を画したサウンドとしては一級品のアルバムでした。
ポップ度:★★★★☆|ヘヴィネス:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論
Not like Them|ノット・ライク・ゼム
オリジナルアルバム – 2作目 (1997年)
基本的には前作を踏襲して大きな変化はないものの、かなりダークで陰鬱なイメージだった前作以上に内省的でグルーミーな作風となり、米国インダストリアルメタルでいえばNINE INCH NAILSやMARILYN MANSONあたりの系譜に接近しました。それにつれてヴォーカルもシャウト系よりもクリーンヴォイスの比率が増しています。
問題なのは、それによって新しい境地に達するにはややアイデアを欠いており、単にメリハリを欠いてフラットな作風になっただけにとどまっていること。エクストリームメタル由来の攻撃性を持ったヘヴィな楽曲も残されているので曲順によって印象が左右されている面もありますが、それらのヘヴィナンバーも躍動感やダイナミズムが後退したわりにそれを補うほどの圧倒的なヘヴィネスを獲得したわけでもないので、前作ほどのインパクトは残せていません。
フォトショップのフィルタ一発のアートワークは、当時としても手抜き感が強くマイナス印象。
ポップ度:★★★☆☆|ヘヴィネス:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤
オリジナルアルバム – 3作目 (2000年)
前作でのアプローチをさらに推し進めたアルバムで、エクストリームサウンドはさらに大幅に影を潜めたニューウェイヴリバイバル系のスタイルとなり、シャウト系ヴォーカルもほとんど聴かれなくなりました。陰鬱で内省的な作風にも変化はありませんが、いくぶん温もりも感じさせる穏やかさを持ったサウンドになっています。
生真面目なつくりではあるのですが、耽美性にもエモーションにもキャッチネス/ポップネスにも特化できず、独創性も希薄な楽曲はフックを欠いてフラットな印象だけが残るもので、結果的には異形性と変態性の薄いMARILYN MANSONとでもいった風情の中庸なサウンドに落ち着いてしまいました。
ポップ度:★★★☆☆|ヘヴィネス:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験
Zero|ゼロ
オリジナルアルバム – 4作目 (2019年)
基本的には解散前の3rdと大きな変化は見られない作風で、初期のヘヴィネスやアグレッションは望めませんが、作風についてはいくぶん曲調や雰囲気などの幅が広がった印象があります。
20年弱を経てこの作風ということは本人たちはこれが本領という認識なのかもしれませんが、特に質的に格段の工場は見えないのでなんとなく釈然としない煮え切らなさだけが残ります。
ポップ度:★★★★☆|ヘヴィネス:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
◎ MISERY LOVES Co.はコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
とりあえず“Misery Loves Co.(1st)”を聴いておけば間違いありません。やや個性に欠けるもエクストリーム寄りのインダストリアルメタルとしては名曲レベルの楽曲も含む上ランクの仕上がりで聴いて損なしです。
他の作品も水準以上の仕上がりでメジャーアーティストの凡作よりは確実に上なので、1stが気に入れば“Not like Them(2nd)”を聴いてみるのもアリでしょう。“Your Vision Was Never Mine to Share(3rd)”と“Zero(4th)”もNINE INCH NAILSフォロアーの鬱系ニューウェイヴ路線がイケるリスナーなら楽しめるかもしれません。