Contents
- 1UKハードコアシーンから登場した欧州スラッシュメタルのパイオニアにもかかわらず世間的には過小評価MAXな流転のUKスラッシュメタルバンドは00年代スラッシュリバイバルで花開いたのか?
- 1.1ONSLAUGHT|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Power from Hell|パワー・フロム・ヘル
- 1.1.2The Force|ザ・フォース
- 1.1.3In Search of Sanity|イン・サーチ・オブ・サニティ
- 1.1.4Killing Peace|キリング・ピース
- 1.1.5The Shadow of Death|ザ・シャドウ・オブ・デス
- 1.1.6Sounds of Violence|サウンズ・オブ・ヴァイオレンス
- 1.1.7VI|フォー
- 1.1.8Generation Antichrist|ジェネレーション・アンチクライスト
UKハードコアシーンから登場した欧州スラッシュメタルのパイオニアにもかかわらず世間的には過小評価MAXな流転のUKスラッシュメタルバンドは00年代スラッシュリバイバルで花開いたのか?
ヘヴィメタル発祥の地で、ヘヴィメタル黎明期の伝説的ムーヴメントNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティシュ・ヘヴィ・メタル)が世界的に大きな影響を波及させた英国ですが、スラッッシュメタルについては“不毛の地”というしかない状況でした。
それなりに数は存在していたのですが、本場の米国やそれに次ぐドイツには及ぶべくもなく、また独自性や完成度の点でも歴史に名を残すほどの存在感や影響力を持つバンドは生み出せていません。そんな中メタル史に記すべき重要性を持つ数少ない英国産スラッシュメタルグループが、このONSLAUGHT(オンスロート)です。
彼らは英国のスラッシュメタル/デスメタルシーンに多い、ハードコアバンドとしてキャリアをスタートしたグループのハシリのような存在。
当初はUKハードコアの頂点DISCHARGEのサウンドをベースにNWOBHM系の先鋭的なヘヴィメタルと取り入れた、英国流クロスオーバースラッシュに近い位置にあるクラスト/クラストコアと呼ばれるスタイルで活動していましたが、メタル要素を増してゆきスラッシュメタルとしてアルバムデビューを果たします。
ハードコアとVENOMをルーツにしたサウンドを持つ彼らは、いうなれば英国のSLAYERとでも呼ばれるような存在で、アルバムデビューこそ遅れをとったもののキャリアも変わらない同じスラッシュのパイオニア世代。スタイルの面でもかなりSLAYERと重なるところの多いコンセプトの作風を、ほぼ同時期に完成させていました。
その後はよりオーソドックスなメタル色を増してゆくもののブレイクには至らず、スラッシュメタルムーヴメントの収束とともにフェイドアウトしてしまいますが、00年代オールドスクールスラッシュリバイバルの波に乗って活動再開。新作リリースも含めたコンスタントな活動を続けています。
ONSLAUGHT|DISCOGRAPHY
Power from Hell|パワー・フロム・ヘル
オリジナルアルバム 1作目 – (1985年)
クラストコアのバックボーンを持つだけあって、現在D-ビートと呼ばれるDISCHARGE系のリズムを持ったハードコア要素が色濃い作風。構成要素やコンセプトでSLAYERと大きく重なるものの、目指すところは異なるような印象があります。UKスラッシュメタル史ではトップクラスに位置するアルバム。
ハードコア度:★★★★★|独自性:★★★★☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 賛否両論 通好み
The Force|ザ・フォース
オリジナルアルバム 2作目 – (1986年)
ヴォーカルがメタル寄りのサイ・キーラーにチェンジし、サウンドも大幅にヘヴィメタル色が強まって、よりオーソドックスなスラッシュメタルに。
楽曲もほぼ全てが6分オーバーという長尺になりますが、それを聴かせるだけのアイデアと構成力を見せているので、スラッシュメタルによく見られる単なるリフの垂れ流しには終わらず、作風は変われど前作に匹敵するアルバム。
ハードコア度:★★★☆☆|独自性:★★★★☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論
In Search of Sanity|イン・サーチ・オブ・サニティ
オリジナルアルバム 3作目 – (1989年)
ベーシクなサウンドは前作から続くものですが、NWOBHMシーンでも“歌える”ヴォーカリストとして知られたGRIM REAPERのスティーブ・グリメットをフィーチャーした曲もさらに長尺志向に。初期ANTHRAXに通じるオールドスクールなヘヴメタルやパワーメタルに近い印象になりました。
歌唱力至上主義な日本のメタルクラスタには高評でしたが、声質はともかく歌唱スタイルが作風にマッチしていないことで本来の魅力が相殺されており、スラッシャーには評価は分かれがちな作品です。
ハードコア度:☆☆☆☆☆|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤 実験作
Killing Peace|キリング・ピース
オリジナルアルバム 4作目 – (2007年)
ややテクニカルな作風でSLAYER meets ANNIHILATORといた作風。
曲調はオールドスクールだが音質が、グルーヴメタル後ネオスラッシュ系サウンド。リスナーが考える最大公約数的スラッシュサウンドを現代的なサウンドで再現したようなリバイバル組に多い作風だが、ここまではかろうじて全盛期を思わせる要素も残っておりクオリティも高い。
ハードコア度:★★☆☆☆|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論
The Shadow of Death|ザ・シャドウ・オブ・デス
初期音源集 – (2008年)
ハードコア時代の音源を集めたもので、ヴォーカルが流動的なため時期によって異なります。DISCHARGEの影響下にありNWOBHMにも影響を受けたクラストコアスタイルだが、比較的整合感が強く当時としてはヘヴィで厚みのあるサウンドは、メタルクラスタが苦手とするハードコア特有のエッセンスが薄く、クラスト/ディスコアの入り口にも最適な1枚。
ハードコア度:★★★★★|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤
Sounds of Violence|サウンズ・オブ・ヴァイオレンス
オリジナルアルバム 5作目 – (2011年)
ヘヴィグルーヴなポストスラッシュ風や最近のDESTRUCTIONっぽい曲、デスメタルを意識したような曲など楽曲が多彩になった。フックも効いて単純にカッコイイと思わせるが、借り物感は拭えずニーズにおもねたようにも感じられる。
ハードコア度:★★☆☆☆|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論
VI|フォー
オリジナルアルバム 6作目 – (2013年)
前作のヘヴィネスは薄れ突進力優先のスタイルに。やはり最近のDESTRUCTIONを思わせるモダンサウンドの最大公約数的スラッシュで、作風に大きな変化はないが楽曲が低調でインパクトが弱い。
ハードコア度:★☆☆☆☆|独自性:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
賛否両論 お布施
Generation Antichrist|ジェネレーション・アンチクライスト
オリジナルアルバム 7作目 – (2020年)
8月リリース予定。先行曲を聴く限り、基本的には再始動後のサウンドを踏襲したものだが、やや初期に近い勢いを取り戻しつつあるようにも思える。