Contents
- 1クロスオーバースラッシュからヴルーヴメタルの代表的存在になって、再びスラッシュメタルに接近した通好みの個性派バンドは今が最盛期?
- 1.1PRONG|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Force Fed|フェイス・フェッド
- 1.1.2Beg to Differ|ベッグ・トゥ・ディファー
- 1.1.3Prove You Wrong|プルーヴ・ユー・ロング
- 1.1.4Whose Fist Is This Anyway?|フーズ・フィッツ・イズ・ディス・エニウェイ - (1992)
- 1.1.5Cleansing|クレンジング
- 1.1.6Rude Awakening|ルード・アウェイキング
- 1.1.7Scorpio Rising|スコーピオ・ライジング
- 1.1.8Power of the Damager|パワー・オブ・ダメージャー
- 1.1.9Carved into Stone|カーヴド・イントゥ・ストーン
- 1.1.10Ruining Lives|ランニング・ライヴス
- 1.1.11Songs from the Black Hole|ソング・フロム・ザ・ブラック・ホール
- 1.1.12X-No Absolutes|エックス-ノー・アブソリューテス
- 1.1.13Zero Days|ゼロ・デイズ
- 1.1.13.1◎ PRONGはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
クロスオーバースラッシュからヴルーヴメタルの代表的存在になって、再びスラッシュメタルに接近した通好みの個性派バンドは今が最盛期?
ニューヨーク出身のPRONG(プロング)は、スラッシュメタルとハードコアのクロスオーバーからスタートして、90年代にはインダストリアルメタルの要素を取り入れたグルーヴメタルとしてPANTERA(パンテラ)やHELMET(ヘルメット)に次ぐグルーヴメタルの代表的存在となります。
5作目をリリース後活動停止しますが00年代には復活、スラッシュリバイバルに機運に乗っかるかたちで次第にスラッシュメタル色を強めていきます。
PRONG|DISCOGRAPHY
Force Fed|フェイス・フェッド
オリジナルアルバム – 1作目 (1988年)
完全なクロスオーバースラッシュなサウンドだったデビュー作。
ハードコアとスラッシュメタル両方の要素を持ったスタイルで、どちらかというとメタルサイドに針が振れた作風ですが、そのクロスオーバー具合が絶妙。
他とはひと味違う個性はこの頃から健在で、その後に通じる独特の重量感、インダストリアル的とも言われるクールネスやソリッドな質感などもすでに感じられます。
突進力とグルーヴが同居したサウンドはメリハリもあって完成度は高いのですが、無愛想でフックが弱く聴いているうちは心地いいけれど後に残らないのが弱点。音質はイマイチです。
なお、現在廃盤のようで中古でも高値が付いています
スルメ盤
Beg to Differ|ベッグ・トゥ・ディファー
オリジナルアルバム – 2作目 (1990年)
基本路線は前作を踏襲していますが、ヘヴィネスとグルーヴを強調したグルーヴメタル寄りのサウンドに傾きつつあるアルバム。
わかりやすいスラッシュメタル/ヘヴィメタル色はやや後退して、オルタナティヴロックを的なエッセンスが大幅にアップしました。
ソリッドでマシーナリーな感触、無愛想でクセの強い作風とフックの弱さは相変わらずですが、楽曲の幅は大きく広がり印象的なパートも増えており、その意味での成長は感じられます。
前半は勢いがあるけれど後半までそれが続かず次第にダレてくるのは、この頃からの悪いクセですね。
通好み スルメ盤 実験作
Prove You Wrong|プルーヴ・ユー・ロング
オリジナルアルバム – 3作目 (1991年)
前作までは健在だった疾走感のあるスラッシュテイストはさらに薄れ、NYオルタナティヴ系を思わせる実験的な要素が全編を支配しています。
次作につながる要素も目立つようになり印象的なフレーズも増え、楽曲のバリエーションは豊富になりましたが、表情に乏しくいまいちフックの欠けるという点では前作以上。
トータルで見ると実験性を重視しすぎてピントが定まらず、ややとっ散らかった印象があります。
T-11はUKパンク/ニューウェイヴバンドTHE STRANGLERS(ザ・ストラングラーズ)のカバーですが、次作以降につながる要素が詰まったターニングポイント的な重要曲。このカヴァーで彼らなりのポップネスとフックの折り込み方をつかんで、次作での覚醒につながったとも言えます。
通好み スルメ盤 実験作
Whose Fist Is This Anyway?|フーズ・フィッツ・イズ・ディス・エニウェイ – (1992)
ミニアルバム (1992年)
Prove You Wrongアルバム収録曲のリミックスバージョンを収録したミニアルバム。
オーストラリアの鬼才FOETUS(フィータス)ことジム・サーウェル(Jim Thirlwell)やKilling Joke(キリング・ジョーク)に在籍していて次作からPRONGに加入するポール・レイヴン(Paul Raven)らがリミックスを手がけています
取り立てて印象に残る大胆なリミックスがあるわけではないですが、これ以降のインダストリアル路線につながる契機ともなる記念碑的な作品です。
通好み スルメ盤 実験作
Cleansing|クレンジング
オリジナルアルバム – 4作目 (1994年)
ヴルーヴメタルスタイルでのPRONGサウンドがひとつの完成を迎えた作品で、通好みなポジションながらPANTERA(パンテラ)やHELMET(ヘルメット)に並んでヴルーヴメタルを代表しうる存在になりました
このアルバムから元Killing Joke(キリング・ジョーク)のポール・レイヴン(Paul Raven)がベーシストとしてが加入したほか、キーボード,プログラミングの専任メンバーを加え本格的にインダストリアルメタルのエッセンスを取り入れます。
今作ではのちにMinistry(ミニストリィ)に加入したりFear Factory(フィア・ファクトリー)と仕事をするジョン・ベクデル(John Bechdel)を迎えています。
ヘヴィでダンサブルなグルーヴとソリッドでマシーナリーなサウンドにピントを合わせ、今までの積み重ねをそこに全て溶かし込んで鋳造したようなスタイルですが、今までとは違いフックがあり強く印象に残る仕上がりになっています。
インダストリアル要素は彩り程度に抑えられて基本は今まで通りのバンドサウンドですが、明らかにひと皮むけて非常に完成度の高い先鋭的なヘヴィメタルを完成させています。強靭な個性がありながらりポップさすら感じさせる楽曲は今までにない魅力にあふれたものです。
方向性が定まって筋が通ったのはいいですが、反面一本調子に感じられる部分もありで、そこは痛し痒しというところですね。
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み
Rude Awakening|ルード・アウェイキング
オリジナルアルバム – 5作目 (1996年)
前作の路線を踏襲しつつサウンドの幅を広げ、ソリッドでありながらしなやかさとポップネスを持ったサウンドに仕上がったアルバム。
今作ではNINE INCH NAIKLS(ナイン・インチ・ネイルズ)をはじめ様々なバンドと活動するチャーリー・クローザー(Charlie Clouser)を打ち込み担当に迎えています。
楽曲の幅が大きく広がりましたしクオリティも文句のつけようがありませんが、よりダンサブルなインダストリアルサウンドになった上にチャートを狙えるようなキャッチーなナンバーまであるあたりが、ファンが前作派と今作派に別れる分水嶺となるポイント。
どちらにしてもこの2作がPRONGのキャリアの頂点にある代表作であるだけでなく、グルーヴメタルと90年代ヘヴィメタルを語るのに欠かせない作品なのは確かです。
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
Scorpio Rising|スコーピオ・ライジング
オリジナルアルバム – 6作目 (2003年)
Power of the Damager|パワー・オブ・ダメージャー
オリジナルアルバム – 7作目 (2007年)
Carved into Stone|カーヴド・イントゥ・ストーン
オリジナルアルバム – 8作目 (2012年)
Ruining Lives|ランニング・ライヴス
オリジナルアルバム – 9作目 (2014年)
Songs from the Black Hole|ソング・フロム・ザ・ブラック・ホール
カバーアルバム (2015年)
全曲がPRONGが影響を受けた80年代バンドのカヴァー曲で構成された、PRONG版メタルガレージといったアルバム。
取り上げているバンドは、DISCHARGE(ディスチャージ),THE SISTERS OF MERCY(ザ・シスターズ・オブ・マーシー),BUTTHOLE SURFERS(バットホール・サーファーズ),ADOLESCENTS(アドルセンツ),BLACK FLAG(ブラック・フラッグ) ,KILLING JOKE(キリング・ジョーク),HÜSKER DÜ(ハスカー・ドゥ),FUGAZI(フガジ),BAD BRAINS(バッドブ・レインズ),NEIL YOUNG(ニール・ヤング)と、メタル/ハードロック系はひと組もなくハードコア系が中心のラインナップ。
DISCHARGEやBLACK FLAGのような、メタルオンリーのリスナーでも名前くらいは聞いたことある大物バンドもありますが、全体的にはメジャー/マイナー問わずPRONGと同じくオルタナティブ色が強い通好みの個性派バンドがほとんどです。
どの曲も原曲を生かしたストレートなアレンジながら完全にPRONG色に染まった仕上がりで、彼らのサウンドの地力と個性の強さを再確認させられます。
生粋のメタラーが楽しめるかどうかは微妙ですが、選曲やアレンジのセンスは数あるカヴァーアルバムの中でもかなりハイレベルですし、全曲PRONG流のヘヴィミュージックに変身しているのでファンならば必聴の一枚です。
入門盤 賛否両論 通好み
X-No Absolutes|エックス-ノー・アブソリューテス
オリジナルアルバム – 10作目 (2016年)
Zero Days|ゼロ・デイズ
オリジナルアルバム – 11作目 (2017)
◎ PRONGはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
基本的に彼らの作品にハズレはありませんが、最も脂が乗った時期の名盤としてなら、彼らのソリッドなヘヴィネスが確立した重要作“Cleansing(4th)”とポップネスを増して完成度で上回る“Rude Awakening(5th)”は外せません。
しかし、一般的なメタラーならスラッシュの延長線上として聴けるメタリックな作風の再結成後がオススメ。どれも高品質ですが、スラッシュリバイバル全盛期だった時期の“Carved into Stone(8th)”か“Ruining Lives(9th)”あたりから入ると馴染みやすいかもしれません。