Contents
- 1SEPULTURAを脱退したマックス・カヴァレラがトライバル・メタルとモダン・スラッシュの第一人者としての意地を見せたバンドは、父子中心とした何が起きても安心のファミリー・バンド!?
- 1...1家庭問題が原因でSEPULTURAから分裂!?
- 1...2SEPULTURAのトライバル・メタルを踏襲!?
- 1...3SOULFLYはニューメタル・ブームの波に乗って!?
- 1...4SOULFLYはスラッシュ・リヴァイヴァルの波にも乗って!?
- 1...5マックス・カヴァレラはファミリーバンドに専念!?
- 1.1SOULFLY|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Soulfly|ソウルフライ
- 1.1.2Primitive|プリミティヴ
- 1.1.3ॐ|3
- 1.1.4Prophecy|プロフェシー
- 1.1.5Dark Ages|ダーク・エイジス
- 1.1.6Conquer|コンクァー
- 1.1.7Omen|オーメン
- 1.1.8Enslaved|エンスレイヴド
- 1.1.9Savages|サヴェージズ
- 1.1.10Archangel|アークエンジェル
- 1.1.11Ritual|リチュアル
- 1.1.12Toteml|トーテム
SOULFLY|DISCOGRAPHY
Soulfly|ソウルフライ
オリジナルアルバム – 1作目 (1998年)
〈SEPULTURA〉時代の革新的な最高傑作『Roots』を、KORN&ロス・ロビンソン系のニューメタル風に仕上げたような印象のデビューアルバム。
プロデューサーには、まさにそのロス・ロビンソンが起用され、さらには、ニューメタル,ハードコア,ヒップホップ,ラテンオルタナなど、各界のトップアーティストをゲストとしてフィーチャリングしているなど、当時のSOULFLYへの期待のほどがうかがえます。
『Roots』でのヘヴィ&トライバル路線の踏襲は、方向性としてはあまりにも無難過ぎることは否めませんが、大成功を収めた作品として期待されるであろうサウンドではあり、マーケティングの面では間違ってはいないのでしょう。
しかし、“CD容量フル活用時代”に特有の全15曲にも及ぶ大容量ボリューム主義は、曲づくりのムラが激しくボキャブラリー/引き出しが少ないカヴァレラにとっては致命的であり、完全に足を引っ張るだけの結果に終わっています。
特に、定番のアグレッシヴなヘヴィグルーヴメタルについては、余分な駄曲があまりに多過ぎるため、アルバム単位では通しては聴くに堪えない残念な仕上がりとなっています。
とはいえ、ヘヴィチューンにもT-01をはじめ佳曲は存在しますし、ゲストとのコラボによるエスニック&トライバル路線については、ダンサブルなものからアンビエントなものまでなかなか魅力的な出来ばえ。
根本的に本作は、ボリュームでお得感を演出するよりも、シェイプしてアベレージを高める方向を選択すべきだったアルバムであり、それが実現していれば印象は全く違っていたハズだけに、何とも惜しいところです。
なお、多彩なゲストの中では、ブラジリアン・ミクスチャー〈NAÇÃO ZUMB〉のメンバー参加も重要トピックですが、やはりUKミクスチャー〈DUB WAR〉〜〈SKINDRED〉でフロントをつとめる、ベンジーのレゲエ・ディージェイ・スタイルのヴォーカルは圧巻。
その声が聴こえた途端に、カヴァレラの存在が完全に食われるほどの強烈な存在感を示しています。
|トライブ度:★★★☆☆
|スラッシュ度:★★☆☆☆
|プログレ度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 賛否両論
Primitive|プリミティヴ
オリジナルアルバム – 2作目 (2000年)
全体的には、前作をブラッシュアップ&シェイプしたような仕上がりで、全12曲(ボーナストラック除く)と曲数が抑えられ、同時に楽曲ごとの作風が多彩になったことによって露骨な駄曲が姿を消し、全編にわたってストレス無く聴き通せるバランスの良いアルバムとなりました。
ヘヴィなブラジリアン・トライバル・テイストを、作品のひとつのキモとして用いているのは今までどおりですが、メタラーにもわかりやすいストレートにアグレッシヴなヘヴィ・チューンは、ここでは相対的に控えめ。
ヒップホップ. レゲエ, ラテン, エスニック, プログレ, アンビエントなどをメインに据えた曲を取りそろえた、ミクスチャー・テイストの強い多面的な作風となっています。
アンセム級の名曲の連発という方法論が、まったく現実的な選択肢にならないバンドとしては、このアルバム・オリエンテッドな方向性は最善の選択といえますし、無駄を排したことによる純粋なハイクオリティの獲得という意味では、ベストと呼べるアルバムかもしれません。
さすがに前作には及ばないものの、ゲスト陣については今回もなかなか豪華な顔ぶれで、その中でも特に〈SLAYER〉のトム・アラヤは、さすがの存在感を見せてます。
Toby Wrightプロデュース
|トライブ度:★★★☆☆
|スラッシュ度:★☆☆☆☆
|プログレ度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験
ॐ|3
オリジナルアルバム – 3作目 (2002年)
本作からは、マックス・カヴァレラ自身によるセルフ・プロデュースとなっており、それに伴ってプロジェクトとしてのスケールも、かなり小ぢんまりとしたものとなっています。
これまでは豪華ゲストが大きなセールス・ポイントとなっていましたが、本作においては、比較的知名度が高いといえるのは、〈SACRED REICH〉組の2名と、〈LȦȦZ ROCKIT〉から〈M.O.D.〉〜〈MERAUDER〉〜〈PRO-PAIN〉と、クロスオーバー界隈を渡り歩いたデイヴ・チャベリら〈ILL NIÑO〉組の2名程度と、知名度においては地味にもほどがある顔ぶれ。
その他は、主に実の家族をはじめとした身内集で固められており、プロジェクトとしてのスペシャル感は大きく減退しました。
その影響か、楽曲を構成する要素が多彩なわりにはそれを使いこなせておらず、むしろ、やや持て余し気味な傾向が目立つこともあり、ゲストも含めた周囲からのヘルプやインプットが望まれるところです。
音楽的な方向性については、基本的には前作から大きな変化は見られませんが、今回は、グルーヴ・スラッシュ寄りの作風とはいえ、過去作には例のないファスト・チューンがいくつか見られます。
これは、スラッシャーには朗報と言えるかもしれませんが、実のところは、手癖感が強く型で抜いたような曲が目立ち、「早ければそれでOK!」というリスナーでもなければ、満足度の点では今ひとつでしょう。
また、前作からの揺り戻しか、曲数が増えた分だけ無駄も増えているので、アルバムの密度は前作よりも薄まっています。
なお、T-08は今回メンバーも参加したスラッシュバンド〈SACRED REICH〉の、T-13は前作でメンバーが参加したラテン・オルタナ・バンド〈CHICO SCIENCE & NAÇÃO ZUMBI〉のカバー。
|トライブ度:★★★☆☆
|スラッシュ度:★★★☆☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤
Prophecy|プロフェシー
オリジナルアルバム – 4作目 (2004年)
過去作と比較すると、メタラー…というよりも、アンチ・ニューメタル界隈からの人気の高いアルバム。
それには、ややオールドスクールなメタル・テイストを取り込んでの、SEPULTURA時代に回帰したようなグルーヴ・スラッシュ寄りの音づくりや、当時〈MEGADETH〉を脱退していたデイヴ・エリフソンが、収録曲の半数近くに参加していることが影響しています。
エリフソン以外のゲストは、セルビアン・コミュニティのミュージシャンが数名参加している程度で、本作もほぼ身内で固められています。
確かに本作では、“モロ〈KORN〉”なリズムやラップメタル・テイストは見られなくなりましたが、基本的には、ヘヴィグルーヴ〜ニューメタルというトレンドの流れから、一歩も逸脱できてはいません。
またここでは、各曲ごとに完全にテイストを変えるのではなく、ヘヴィチューンの中盤や締めに、部分的にアンビエントやレゲエ/ダブ調のパートをかませる…という作法が目立ちます。
これが、長尺気味の楽曲を飽きずに聴きとおすための、アクセントとして働いている点は評価できるのですが、そのパターンが多用され過ぎで、アルバムの中で繰り返されているためにさすがに食傷気味。
また、曲単位で何度もリピートするようなキラーチューンは皆無ですが、長尺曲が目立つとはいえ全12曲でコンパクトにまとまっているので、ひとつのアルバムとして見るならば、アラが少な目に収まった無難な仕上がりとも言えます。
なお、T-10は〈HELMET〉の名曲のカバーで、他の収録曲とは格段のレベルの差を見せつけているだけでなく、10年ちょい前の曲とはいえ、その間ヘヴィミュージックの基本スタイルに大きな変化が無いため、古さは一切感じられません。
逆にいうと、この選曲は、シーンの停滞ぶりだけを浮き彫りにする結果しか招かないので、それを意図したのでなければ、ここで取り上げる意義はありません。
|トライブ度:★★☆☆☆
|スラッシュ度:★★★☆☆
|プログレ度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 実験作
Dark Ages|ダーク・エイジス
オリジナルアルバム – 5作目 (2005年)
この時期の、スラッシュメタル・リバイバルの背景もあってか、SOULFLYもこのあたりからスラッシュ/ハードコア・テイストを強めていきますが、基本的には過去の作風と大きく変わるわけではありません。
スラッシュ的なリフワークや、メロディアスなピロピロ系ギターソロのフィーチャー度はアップしていますが、基本となるスタイルは、過去作…特に前作の延長線以上にある、ヘヴィグルーヴ系の『ポスト・スラッシュ』サウンド。
そこに、構成要素として欠かせないトライバル/エスニック・テイストに加え、スペーシー&マシーナリーなインダストリアル・サウンドや、アンビエント, プログレなどのエッセンス使った小ネタをアクセントとして活用することで、一本調子を回避しようとしています。
しかし、ここではその塩梅が微妙で、あまり効果を上げておらず、マンネリ気味に感じられます。
さらに言えば、際立ったキメ曲が無いのも相変わらずであり、今作はアルバムとして見てもあらゆる面で及第点止まり。
特に、無意味に多い曲数に加え、メリハリをつける役割となるはずの変化球2曲を、まとめてラストに押しやったことが裏目に出て、全体的にフラットで一本調子気味な仕上がりになっており、光る部分は多々見られるもののバランスの悪さが足を引っ張っています。
|トライブ度:★★☆☆☆
|スラッシュ度:★★★☆☆
|プログレ度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤
Conquer|コンクァー
オリジナルアルバム – 6作目 (2008年)
前作から、さらにスラッシュ回帰が進んだアルバムで、トライバル, エスニック, アンビエント, プログレといった、これまでアクセントとして活用されていたエッセンスの使用はかなり控えめです。
それ自体は良しとしても、分裂してソロ状態になった上に、初期のような強力なゲストの参加も無いため、外部からの刺激を得られなくなったこと、そして、その状態で同じネタをこすり過ぎたことの弊害で、アイデア/インプット不足とクリエイティヴ面の劣化が著しくなっています。
その結果、単にこれまで以上に単調で平板な“ニューメタルmeetsハードコアスラッシュ”に仕上がっており、全11曲というコンパクトな内容にもかかわらず、聴き通すのが辛い凡庸な出来ばえと言わざるを得ません。
新人やマイナーB級バンドならいざ知らず、SOULFLYのポジションを考えるとさすがに甘い評価を下すわけにもいかないでしょう。
|トライブ度:★★☆☆☆
|スラッシュ度:★★★★☆
|プログレ度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★☆☆☆
賛否両論 お布施
Omen|オーメン
オリジナルアルバム – 7作目 (2010年)
SOULFLYの持ち味のひとつだった、トライバル・テイストはかなり払拭され、ニューメタル系のサウンドを用いてハードコア・スラッシュを展開したような、“モダン・スラッシュ”系のスタイルが、アルバムの主軸を占めるようになりました。
こういったアプローチについては、この時期のスラッシュ・リバイバル界隈ではベテランから新人まで広く見られており、一概に否定すべきとも言えませんが、問題はやはりそのクオリティです。
そもそも、古参ファンからはマックス・カヴァレラのキャリア黄金期とみなされている、スラッシュメタル時代のSEPULTURAからして、それほど引き出しが豊富とも、懐が深いともいえないバンドだった…というのが実態でした。
そこに来て、バンドを脱退して実質的にソロ状態となった影響で、SEPULTURA時代にも増して手札が減ってしまった事実と、ゲスト頼りの余裕もなくなった事態はいかんともしがたく、本作もかなり苦しい仕上がりになっています。
単純に「速い曲が増えた!バンザイ!」と喜べる程度の、素朴過ぎるリスナーでもなければ、本作から価値を見出すことは困難でしょう。
|トライブ度:★★☆☆☆
|スラッシュ度:★★★★☆
|プログレ度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★☆☆☆
賛否両論 お布施
Enslaved|エンスレイヴド
オリジナルアルバム – 8作目 (2012年)
Savages|サヴェージズ
オリジナルアルバム – 9作目 (2013年
Archangel|アークエンジェル
オリジナルアルバム – 10作目 (2015年)
Ritual|リチュアル
オリジナルアルバム – 11作目 (2018年
Toteml|トーテム
オリジナルアルバム – 12作目 (2022年)
あくまでも、グルーヴメタル〜ニューメタルを経由したヘヴィなグルーヴスラッシュを基調としつつも スラッシーでハードコアなファスト・パートを織り込んで、〈SEPULTURA〉時代からのオールドファンやスラッシュ・リヴァイヴァル以降の新規スラッシャーへも色目を使うことを欠かさない、…という意味では00年代以降の一連の作品と同様です。
しかし本作は、SOULFLYとしては最も真剣にオールドスクールなスラッシュへの原点回帰に取り組んだアルバムでもあり、過去作品ではやや手癖のヤッツケ感が拭えなかったファストチューンも、本作ではアルバムの主軸に据えているだけあって、かなり本気で頭を使ってつくり込んだ様子が窺えます。
スタイルとしては、純粋なオールドスクール・リヴァイヴァルというわけではなく、従来のグルーヴスラッシュはもちろんのこと、オールドスクールなデスメタル、90年代~00年代の北欧型モダンデスラッシュなどの要素も取り入れて、作風にバリエーションを意識しています。
また、〈SEPULTURA〉時代の名盤『Roots』以来、SOULFLYでも特徴的な要素となっていた“トライバル”テイストはかなり希薄になっていますが、“トライバル”要素の扱いについては、は00年代後半からは申し訳程度…というよりも、むしろ惰性に近い扱いになっていたので、イマサラというところでしょう。
|トライブ度:★☆☆☆☆
|スラッシュ度:★★★★☆
|プログレ度:☆☆☆☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤