Contents
- 1デスヴォイスとソプラノヴォイスが織り成す“美醜コントラスト”スタイルを打ち捨て、エレクトロニックなインダストリアル/エレポップスタイルを確立した、歌姫メタルの一大メッカオランダを代表するフィメイルゴシックメタルバンド!!
- 1.1THEATRE OF TRAGEDY|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Theatre of Tragedy|シアター・オブ・トラジェティ
- 1.1.2Velvet Darkness They Fear|ヴェルヴェット・ダークネス・ゼイ・フィアー
- 1.1.3Aégis|イージス
- 1.1.4Musique|ミュジック
- 1.1.5Assembly|アセンブリィ
- 1.1.6Storm|ストーム
- 1.1.7Forever Is the World|フォーエヴァー・イズ・ザ・ワールド
デスヴォイスとソプラノヴォイスが織り成す“美醜コントラスト”スタイルを打ち捨て、エレクトロニックなインダストリアル/エレポップスタイルを確立した、歌姫メタルの一大メッカオランダを代表するフィメイルゴシックメタルバンド!!
THEATRE OF TRAGEDY(シアター・オブ・トラジェティ)は、デスヴォイスを交えた男女のツインヴォーカルをフィーチャーしたノルウェーのゴシックメタルバンド。
かつてのゴシックロックシーンがそうであったように、ゴシックメタルでもパ女性ヴォーカル/コーラスをフィーチャーするケースが黎明期より見られました。しかし最初期はPARADISE LOSTやANATHEMAらのようにゲストとしての起用が主流で、その後Moon of SorrowやThe Third and the Mortalのようなパーマネントなメンバーとして在籍しているグループが登場するもののマイナーな存在にとどまっていました。
その後、以前は部分的に女性ヴォーカを用いていたTHE GATHERINGが専任ヴォーカリストを女性をに切り替えて大ブレイクしたことから、女性ヴォーカルをフロントに据えた“歌姫系バンド”が一気に増加し、その影響はゴシックメタルシーン以外にまで波及します。
THEATRE OF TRAGEDYはが特徴的だったのは、ソプラノ歌姫系の女性ヴォーカルをフィーチャーしただけでなくデスヴォイスの男性ヴォーカリストとツインヴォーカル体制だったことです。男女ツインヴォーカル自体は、それこそ80年代のゴシックロックから見られる手法ですが、それが以後のメタルシーンにひとつの典型パターンとして定着したことに対する彼らの影響は無視できないでしょう。
デビュー当初はゴシックメタル黎明期の主流だったドゥームデスベースに耽美テイストを加えたスタイルでしたが、メンバー交代を機に上質のポップセンスを軸に据えた作風に移行。
さらには、エレクトロニックサウンドを取り入れた耽美派エレポップ/インダストリアルゴシックであブレイクして注目を集めますが、のちにゴシックメタルスタイルへ回帰しています。
THEATRE OF TRAGEDY|DISCOGRAPHY
Theatre of Tragedy|シアター・オブ・トラジェティ
オリジナルアルバム 1作目 – (1995年)
ディストーションの効いたドゥームデス系のヘヴィなバッキグに、トラッド/フォーク調の叙情的なメロディが乗るスタイルに、キーボード, ピアノ, ヴァイオリンなどもフィーチャーされることでシンフォプログレ的な雰囲気も漂わせ、 ヴォーカルは男性デスヴォイスと歌姫系の繊細な女性ヴォーカルによるるオペラティックともいえる掛け合い調。
……と、要素を書き出すと何やらスゴそうですが、簡単に言ってしまえば初期〈ANATHEMA〉+初期〈THE GATHERING〉のひと言で片付くもの。
様式化が極まったこれ以降の主流派フィメイル系ゴシックメタルよりはよほど評価できますが、この時点では単なるいちフォロアーの域を超えるものではありませんし、技術的には水準程度ではあるもののアイデアやセンスについてはあと一歩です。
エレクト度:★☆☆☆☆|独自性:★☆☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
スルメ盤
Velvet Darkness They Fear|ヴェルヴェット・ダークネス・ゼイ・フィアー
オリジナルアルバム 2作目 – (1996年)
基本的な作風は前作を踏襲されていますが、徹頭徹尾ドゥーミィな作風だった善徳と比較すると、ややアップテンポな楽曲も含むなどいくぶん楽曲の幅が広がりを見せています。
この当時、彼らはパイオニア勢に続く次世代としてクローズアップされ、知名度を大きく伸ばしていた時期ですが、それは、まだデスメタルがメロディーやクリーン・ヴォイス, 女性ヴォーカルをフィーチャーするだけで、一般メタラーにとっては十分に斬新に感じられた時期であり、それだけで目新しがられ注目されていたということが大きいでしょう。
前作からいくらか成長を見せた本作ですが、実のところゴシックメタルのトップグループと比較すると、根本的な作曲能力と独創性、アイデアにセンスと、全てにおいて不足が見られます。
エレクト度:★☆☆☆☆|独自性:★☆☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
代表作 賛否両論 スルメ盤
Aégis|イージス
オリジナルアルバム 3作目 – (1998年)
創始メンバーのうちギタリストが総入れ替えになっており、ヴォーカルも兼ねるレイモンド・イシュトヴァーン・ロホニ中心の体制になったアルバム。
ドゥームデスサウンドは払拭され、ロホニもデスヴォイスを封印してノーマルな歌唱となりました。
そのメンバーチェンジが影響したのかは不明ですが、これまでとは見違えるほどに大化けして数段上のステージに達しています。
当時の英国系と北欧系のゴシックメタルの中間に位置するような作風で、時に〈PARADISE LOST〉を想起させるような部分も見られるなど、特に独創的な作風に開眼したわけでもないのですが、とにかく作曲センスが大幅に向上しています。
過去作ではドゥームデスとしてのエクストリミティとゴシック的アトモスフィアの表現だけに意識がいって、それにとらわれているようでしたが、本作ではポップネスとキャッチネスに重点を置いた作風となっており、結果的にこれが本作での楽曲クオリティの大幅な向上につながっています。
エレクト度:★★☆☆☆|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Musique|ミュジック
オリジナルアルバム 4作目 – (2000年)
すでにゴシックメタルのパイオニアの多くが、メタルサウンドからの脱却もいとわない実験的な試みを追求していた時期のアルバムで、ここでは彼らもさらに大胆に初期路線からの逸脱を試み、ヘヴィな耽美派シンセポップ/エレポップともライトなインダストリアルゴシックとも表現できる、エレクトリックなサウンドへと大きな変貌を遂げています。
メタル色は大きく後退しつつも楽曲によっては要所ではメタルギターをフィーチャーしており、ヴォーカルは当時の女性ヴォーカリストのリーヴ・クリスティンがメインで、ロホニによる男声ヴォーカルはバッキング扱いとなっています。
楽曲は前作で開眼したポップセンスを軸にした作風で、アンビエントやダンスミュージックはエッセンスとしての導入にとどめ、ゴシックの名を冠しつつも純粋に高品質なポップミュージックとして聴ける楽曲が並んでいます。
〈RAMMSTEIN〉ほか既存の楽曲に近いものもあったりと、独自性については必ずしも高評価はできませんが、メインストリームで勝負できるクオリティは認めざるをえないでしょう。
エレクト度:★★★★★|独自性:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み 実験作
Assembly|アセンブリィ
オリジナルアルバム 5作目 – (2002年)
基本的な作風は完全に前作を踏襲したもので、80sリバイバル風の「インダストリアルメタルmeetsテクノポップ」とでも表現すべきテイストですが、さらにポップセンスに磨きがかかっており、楽曲によってはアメリカのメインストリーム系女性シンガーが持ち曲にしていてもおかしくないレベルにあります。
メタルリスナーや初期のゴシックメタルサウンドにこだわる向きには不評ではあるものの、同じフィメイルヴォーカル路線でも、この時期増殖していたシンフォゴシック系の様式美ネオクラメタル勢よりははるかに高く評価できます。
エレクト度:★★★★★|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み 実験作
Storm|ストーム
オリジナルアルバム 6作目 – (2006年)
基本的には直近の2作を踏襲したポップネス重視なスタイルですが、エレクトロニックなアレンジは継承しつつも、大幅にヘヴィメタリックなバンドサウンドへと回帰しており、再びゴシックメタルと呼んでも差し支えない作風になりました。
結果的に、凡百の類型的なシンフォ系様式美ゴシックメタルバンドとの差別化を図る要素が薄れ、それらと彼らを隔てる垣根が格段に低くなってしまいましたが、過剰で華美な装飾を極力抑えたタイトな美意識と音楽性でによって、それらの類型的グループかろうじて一線を画しています。
エレクト度:★★★☆☆|独自性:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
入門盤
Forever Is the World|フォーエヴァー・イズ・ザ・ワールド
オリジナルアルバム 7作目 – (2009年)
ゴシックメタルのパイオニア勢が初期のメタリックなサウンドへの回帰を見せていた時期で、彼らもまた、本格的にゴシックメタルスタイルへの回帰を試みています。
とは言っても、最初期のドゥームデス路線ではなく、最高傑作『Aégis(3rd)』のスタイルを基調に同時代的なのエレポップ・リヴァイヴァル・サウンドをミックスしたようなスタイルで、まさに総決算と呼ぶにふさわしいアルバム。
やはり、楽曲の主軸となるのは彼らの最大の持ち味であるポップネスで、安易な耽美ギミックやアトモスフィアに流されない彼らならではのゴシックメタルサウンドに仕上がっています。
男性ヴォーカルのロホニは相変わらず引っ込んでいますが、楽曲によっては久々にデスヴォイスを本格解禁し、ツインヴォーカルでの掛け合いも聴かせます。
エレクト度:★★☆☆☆|独自性:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作