NSHC(ニュースクール・ハードコア)シーンで頭角を現しメタリックグルーヴを極めたバンドは、PANTERAの魂を受け継ぎ90年代以来の伝統のグルーヴメタルサウンドを継承したPANTERAクローンバンドとしてインスパイア街道をゆく!!
THROWDOWN(スロウダウン)は、ハードコアやスケートカルチャーのメッカとして知られる米国カリフォルニア州のオレンジカウンティを拠点とする、ストレートエッジ系のメタリックハードコアバンド。
彼らは、90年代版のクロスオーバースラッシュともいえるジャンルで、現在まで続くメタルコアの原点でシーンの母体でもある、NSHC(ニュースクール・ハードコア)シーンから登場したバンドですが、その中ではかなり後発のグループにあたり、LAMB OF GOD, AS I LAY DYING, ILLSWITCH ENGAGEといったのちのメタルコアムーヴメントの中軸となるグループとほぼ同時期にデビューしています。
メロデスコアやスクリーモなどの叙情メロディ路線や、ポストハードコアやマスコアなどのプログレ路線、そしてメインストリームのニューメタルなど、最新トレンドに接近するものが大半を占める同時期のバンドの中では例外的に、グルーヴメタル/グルーヴコアをベースにしたオーソドックスなストロングスタイルを展開しており、その後もむしろ彼らの前の世代にあたるグルーヴメタル/グルーヴコアのサウンドに意識的に逆行していくかのようなアプローチを展開してゆきます。
彼らはグルーヴメタルのパイオニアであるPANTERAから多大な影響を受けており、2000年代に入ってリードヴォーカルを担当することになるデイヴ・ピーターズ(Dave Peters)はPANTERAフィル・アンセルモのに近い歌唱スタイルで知られています。
そのPANTERAの活動停止とタイミングを合わせたるのように、音楽性からヴォーカルスタイルまで意識的に“PANTERAクローン”と呼ばれるようなスタイルへと以降してゆきます。
一時は、ヴォーカルスタイルのみならず音作りからギターのフレージングたリフワークに至るまで、徹底的にPANTERAスタイルをコピーし尽くした作風のアルバムをリリースし、リスナーの間に賛否両論を巻き起こします。その後もPANTERAテイストは維持しているものの、ヴォーカルスタル以外は通常のグルーヴメタル/グルーヴコアスタイルに戻っています。
現在、メンバーは全パートが完全に代替わりしており、すでにオリジナルメンバーは1人も残っていませんが、現在もアルバムリリースを重ねつつ活動中です。
THROWDOWN|DISCOGRAPHY
Beyond Repair|ビヨンド・リペア
オリジナルアルバム – 1作目 (1999年)
NSHC(ニュースクール・ハードコア)系に多いドゥーム/スラッジ的なスローな展開やメロディアスなギターソロなどは見られず、ファストパートの比率も多めなストロングスタイルのメタリックハードコア。ある意味ではHATEBREEDあたりにも近いともいえますが、スラッシュメタルテイストは薄いハードコア寄りのサウンドで、ヴォーカルもデスヴォイス寄りではなく、生声に近いダーティーなハウリングシャウトです。
同様のバンドの水準はクリアしているものの、特筆するほどのポイントが見られないサウンドは、王道というよりは無難と呼ぶのがふさわしいでしょう。
グルーヴ度:★★★☆☆|ヘヴィネス:★★★☆☆|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 通好み
You Don’t Have to Be Blood to Be Family|ユー・ドント・ハヴ・トゥ・ビー・ブラッド・トゥ・ビー・ファミリィ
オリジナルアルバム – 2作目 (2001年)
前作と同路線ですが、ファストパートが控えめでミッドテンポ主体となり、ニューメタル的なヘヴィネスが感じられるようになっており、若干ながらクリーンヴォイスも混じるようになりました。好み分かれますが、前作より工夫も見られ飽きずに聴きとおせるのは確かで、全体的に成長のあとはうかがえます。
グルーヴ度:★★★★☆|ヘヴィネス:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤
Haymaker|ヘイメーカー
オリジナルアルバム – 3作目 (2003年)
本作からヴォーカルが、アンセルモスタイルのデイヴ・ピーターズに変わっています。当然アンセルモを意識してるのは確かでしょうが、ここではあえて似すぎないようにセーブしているのか、クローンレベルにまではいかない程度にとどまっています。
作風はこれまで通りのNSHC以降のグルーヴコアなので、楽曲自体にはPANTERAっぽさは感じさせませんし、さらなる工夫も見られます。ただ、ヴォーカルが主張しすぎて、バックとのバランスが良くないところが気になります。
革新度:★★★★☆|過剰度:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論
Vendetta|ヴェンデッタ
オリジナルアルバム – 4作目 (2005年)
いよいよヴォーカルが本格的に開き直って、アンセルモクローンぶりをアピースしています。楽曲自体はこれまでを踏襲して、まだまだハードコア色が強いものですが、ヴォーカルラインに引っ張られてかPANTERAのモードに近づいている印象もあります。
この時期に上質なグルーヴメタルアプローチはなかなか貴重で、半端なニューメタルやメタルコアを聞くよりはるかに充実感がありましたが、評価ポイントもその一点集中となります。
グルーヴ度:★★★★☆|ヘヴィネス:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論
Venom & Tears|ヴェノム・アンド・ティアーズ
オリジナルアルバム – 5作目 (2007年)
ヴォーカルだけでなく楽器隊のプレイから楽曲のつくりまで、完全にPANTERAクローンをコンセプトとしてつくったアルバム。ただし、末期のサザンメタル/サザンスラッジテイストはオミットされ、全盛期のグルーヴメタルサウンドに的が絞られています。クローンとしての出来は90年代のPANTERA風サウンド全盛期にも見当たらなかったほどのレベルで、あまり詳しくない人にPANTERAのアウトテイクと言って聴かせたら、真に受けるかもしれない曲まであります。
当然、批判も少なくありませでしたんが、ここまで徹底クローン路線はこれ1作で終わることから、ダイアモンド・ダレルの死でもはや帰らぬバンドとなったPANTERAへのトリビュートとも考えられますし、何より珍盤/奇盤好きならネタとして是非とも抑えておきたいところです。
クローン系の作風でバッシングを受けないためには、完成度は勿論のこととして、ニッチなバンドを狙うこととパロディ/インスパイアの意思をアピールすることがポイントとなります。
古典レベルの“ビートルクローン”や伝統芸能の“パープルクローン”は置いといても、この期に及んで“レッドクローン”などはベタ&あからさますぎて失笑ものですし、“サバスクローン”も80年代こそニッチな存在でしたがもはや飽和状態です。ところがうまくニッチを突いて開拓できれば、“ヴィンテージ系”や“リバイバルの火付け役”ともてはやされることにもなります。
この点で“PNTERAクローン”は、ムーヴメントのスパンやバンドの寿命が長期化したため“いにしえ感”はありませんが、ギリギリニッチとしてアリかもしれません。しかしコンセプトについては明言していないため、ジャケットやロゴをパロディ風にするなどわかりやすくしておけば、バッシングはかわせたしれません。
グルーヴ度:★★★★★|ヘヴィネス:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
Deathless|デスレス
オリジナルアルバム – 6作目 (2009年)
本作も引続き“PANTERAクローン”路線ですが、ヴォーカルスタイル以外の音作りの面は前作ほどダイレクトではなく、楽曲もPANTERA風一本やりではなく、従来のグルーヴメタルサウンドやニューメタル/メタルコアテイストも加えられており、当時の歌もの系ニューメタルにありがちなエモーショナルな歌い上げパートも導入しています。
“独創的”や“新奇性”という言葉とは無縁ですが、この時代において高品質なグルーヴメタルアプローチを展開していつ、という一点においてはでは貴重な存在ではあります。
グルーヴ度:★★★★☆|ヘヴィネス:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
入門盤
Intolerance|イントレランス
オリジナルアルバム – 7作目 (2014年)
PANTERAインスパイアなアプローチからは距離を置き、ニューメタル色も薄れており、またスラッシーな疾走パートも増えてやや初期に回帰した印象もあります。ヴォーカルスタイも相変わらず発声法は近いものの、アンセルモクローンからは距離を置こうという意識が見えます。
“PANTERAクローン”というセールスポイントが薄れた今、このキャリアで明確な独自性を確立していない弱点が再度浮かび上がりますが、狭い範囲の中でも試行錯誤の跡は見えますし、高品質なグルーヴメタルコアという事実は変わりません。
グルーヴ度:★★★☆☆|ヘヴィネス:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 実験作
Take Cover|テイク・カヴァー
カヴァーアルバム (2020年)