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【Wikiに無い!】ゴシックメタル紹介:第1世代 編【ビギナー必見・必聴|ヘヴィメタルジャンル徹底解説】

ヘヴィメタルライヴ中にメロイックサインを掲げるオーディエンスのイメージ ゴシック
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激しくも耽美的で叙情的なゴシックメタル第1世代、そのヘヴィでメランコリックなサウンドはどうやって生まれた?

ゴシックメタルはニューウェイヴロックの一派として1980年代に誕生した、ゴシックロックのサウンドや手法を取り入れたヘヴィメタルのことです。

従来のヘヴィメタル様式とは一線を画したニューウェーヴ/ゴシックロック由来の耽美的なメロディや曲調、欧州的な陰鬱でダーク、メランコリックな雰囲気が特徴です。
ゴシックロックが持っていたエレクトリックな処理を施したサウンド、アンビエントでサイケデリックな音像、民族音楽/宗教音楽的な要素などを取り入れるケースも少なくありません。

また、従来のヘヴィメタルでは重視されることがなかった、女性ヴォーカル/女性コーラスを起用したバンドが多いのも特徴です。

過激で苛烈なエクストリームメタルから生まれたゴシックメタル!

ゴシックメタルはもともとポストデスメタル的な流れから、デスメタルの分派/サブジャンルのひとつとして生まれたジャンルです。

少し詳しく言うと、従来のスピード優先のスタイルとしてはほぼ行き着くところまで行って完成系を迎えたデスメタルのシーンから、逆張り的に速さより遅さ/重さを追求する音楽、いわゆるドゥームメタル/ドゥームデスが生まれます
さらにその中からゴシックロック由来の欧州耽美派的エッセンスを取り入れたバンドが出現して、耽美派ドゥーム、ゴシック・ドゥーム・デスなどと呼ばれるようになりますが、これがゴシックメタル黎明期の第一世代バンドとなるわけです。

荘厳な女性コーラス、メランコリックな女性Vo.陰鬱/悲痛なエモーションを感じさせる曲調、バイオリンや宗教音楽的SEの導入といった今でも受け継がれるゴシックメタルの特徴的要素は、全てこの時点で取り入れられていました。

この黎明期から活躍している代表的なバンドとしては、PARADISE LOST(パラダイスロスト),ANATHEMA(アナシマ),MY DYING BRIDE(マイ・ダイイング・ブライド),THE GATHERING(ザ・ギャザリング),TIAMAT(ティアマト),PYOGENESIS(パイオジェネシス)などが挙げられます。
これらのバンドが、それぞれ独自の手法でダークで耽美的なメタルサウンドを追求していく中で、数々のフォロアーも生まれゴシックメタルと呼ばれる一大ジャンルに成長するわけです。

ゴシックメタルの音楽性とニューウェイヴリバイバル

ゴシックメタルを語る上で無視するわけにはいかないのが、ヘヴィメタルフィールドでのニューウェイヴ・リバイバルという側面。
ゴシックメタルの“ゴシック”は、いわゆる美術様式としてのゴシック要素を指すと同時に、80年代ニューウェーヴロックのいちジャンル“ゴシックロック”の影響を意味するものなのです。

ゴシックメタルのスタイルは、バンドによって90年代エクルトリームメタルによるゴシックの再解釈だったり、もっとストレートに80年代ゴシックサウンドをメタルに寄せたものだったりといった違いはありますが、いずれにしても90年代エクストリームメタルと、80年代ゴシックロックのクロスオーバーミュージックという点は変わりません。

ゴシックメタル勢がニューウェイヴ/ゴシックロックとのクロスオーバーを進めた結果、メロデス勢やスラッシュ勢など新人/ベテラン問わずそれに追随し、ニューウェイブリバイバル的な空気がメタル界に広がりました。

ゴシックメタルのアプローチの変化と初期ゴシックメタルバンドの矜持

初期ゴシックメタルバンドのほとんどはドゥーミーなデスメタルからスタートしていて、徐々に耽美性を強めメロディアスな要素を取り入れるていきます。

その際、いわゆる様式美メタル的な泣きのメロディーやネオクラシカル的なメロディーには背を向け、ニューウェーヴロックや宗教音楽・民族音楽など非メタルの音楽にそれを求め、そのエッセンスを再構築したりもっと直接的に接近することで、ゴシックメタルと呼ばれるスタイルを確立するわけです。

初期ゴシックメタル勢がこういったスタイルを切り開いたのは、彼らのほとんどがデスメタル出身だったことが大きいでしょう。

当時のデスメタルバンド、デスメタルファンには従来のメタル様式美から逸脱した先鋭的/前衛的なエッジィな音楽を求めた結果、デスメタルにたどり着くケースも少なくありませんでした。

ことろが、デスメタル自体がメタルの先鋭化という役割を終え、いつしか前衛的な存在から硬直化した新たな様式美に成り下がってしまうわけで、初期ゴシックメタルバンドにはそんなデスメタルシーンに風穴をあける目的もあったということ。

言ってみれば「ベタな様式美や泣きメロなんか絶対やるもんか!」という矜持がゴシックメタルを生んだということです。

ゴシックメタル第二世代以降のバンドが先達が作った定形をなぞるだけだったり、メロディックパワーメタルと融合したりという安易さや無邪気さとは対照的ですね。

ゴシックメタル黎明期を代表する第一世代の重要バンド

ここではゴシックメタルの黎明期から活動を続けて、ゴシックメタルの基礎となるスタイルを築いたオリジネイターと言える第一世代のバンドを紹介していきます。

これらのバンドに共通する特徴として、当初はデスメタルとしてスタートしたことと、メタル以外の音楽からの影響を反映させた音楽的探求とサウンドの変遷を重ねて、一度は脱メタル的なスタイルを極めたことが挙げられます。

ここが、すでに出来上がったゴシックメタル的な様式美の安易なトレースを繰り返したり安易にメタル様式美を持ち込むバンドが多い、ゴシックメタル第2世代以降との大きな違いです。

90年代ゴシックムーヴメントの始まり…英国ゴシックメタルBIG3

英国はゴシックメタル発祥の地。
中でも、ムーヴメントに先鞭をつけたPARADISE LOSTと、ほぼ同時期にそれを追うように活動を始めたANATHEMAMY DYING BRIDEの3バンドは、英国ゴシックメタルBIG3とも言える存在です。

3バンドともデビュー時は『ドゥームデス』と呼ばれたように、ドゥーミーなデスメタルからスタートしましたが、徐々に音楽性を広げてそれぞれが個性的な独自のゴシックメタルサウンドを作り上げムーヴメントを牽引してきました。

PARADISE LOST|パラダイス・ロスト

PARADISE LOSTは、そのものズバリのGATHIC(ゴシック)というタイトルをつけた1991年の2ndアルバムでゴシックメタルの始まりを告げた、ゴシックメタルの代名詞的な存在と目され黎明期からムーヴメントを牽引してきたバンド。

女性コーラスやオーケストレーション、耽美的なSEなどのゴシック的なギミックは用いていますが、スタイル的にはハードロック/メタル的なダイナミズムを重視したドラマティックな楽曲を基本としています。

作曲センスの高さにも定評があり、楽曲クオリティはゴシックメタルバンドとしては間違いなく1、2を争うレベルで、特に2作目からの初期の作品は粒ぞろいで捨て曲ナシといってもいいでしょう。

作品を重ねるごとにソフィスティケートされた作風に移行し、1999年7作目Host(ホスト)DEPECHE MODE(デペッシュモード)風のニューウェイヴリバイバルなエレポップスタイルに行き着きますが、その後はメタルサウンドも取り戻して過去の作風を組み合わせた集大成的なスタイルに落ち着きます。

近年は初期のドゥームデス的なスタイルまで復活させ、原点回帰的な楽曲も取り入れるようになりました。

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ANATHEMA|アナシマ

ANATHEMA(アナシマ)は耽美派ドゥームデスと呼ばれていたスタイルでデヴューした頃から驚異的な作曲センスの高さを発揮し、PARADISE LOST(パラダイス・ロスト)に匹敵するポテンシャルを見せていました。

また女性ヴォーカルを起用したアコースティックな小品を入れるなど、のちのギャザリングなどのフィーメイル系ゴシックメタルにも影響を与えています。

その後はヴォーカル脱退を契機にリフ中心でダイナミズム重視のロック的な作風から、耽美的なアトモスフェアとプログレ的な構築美に重点を置いた作風に変化します。

さらに、REDIOHEAD(レディオヘッド)などの方法論にヒントを得たオルタナティヴ/ポストロック的なアプローチを展開し、PORCUPINE TREE(ポーキュパイン・ツリー)ANEKDOTEN(アネクドテン)などと比較されるダークプログレ的な作風にたどり着き、プログレファンからも支持されるようになります。

路線変更後はデスメタル要素などルーツ回帰的なものは見せていませんが、1stの曲を今のサウンドでセルフカバーするなど原点を忘れていないこともアピールしています。

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MY DYING BRIDE|マイ・ダイイング・ブライド

MY DYING BRIDE(マイ・ダイイング・ブライド)はプログレバンドばりにパーマネントメンバーとしてバイオリンとキーボードを擁するユニークな編成のグループ。
やはりドゥームデススタイルからスタートしますが、たゆたうような陰鬱なメロディに気だるいヘタウマヴォーカルと特徴的な、独自のアトモスフェリックなゴシックメタルスタイルを作り上げます。

他のゴシックメタルバンドの変化と歩調を合わせるように、トリップホップなどを取り入れるなどの試みも見せていた時期もありますが、同郷のPARADISE LOSTANATHEMAと比べるとキャリアを通してラディカルな音楽的変化はあまり見られません。

作品によってデスヴォーカルを織り混ぜてメタル度を強めていたり、それが抑えめだったりという程度の変化にとどまっていて、UKゴシックメタル第一世代のバンドとしては良くも悪くも最も音楽性にブレがないバンドではあります。

そこをバンドのアイデンティティ重視で安定感があると解釈するか、アイデアが貧困なマンネリバンドと捉えるかが評価の分かれ目となるでしょう。

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ムーヴメントに多様性を与えた…欧州ゴシックメタルバンドBIG3

英国以外でゴシックメタルが盛んだったのはスウェーデンやフィンランドなどの北欧エリア。

特にスウェーデンはブームが起こるとフォロアーがネズミ並みの勢いで増殖するお国柄もあって、のちには本場英国を上回る数のバンドを排出することになります。

それ以外のエリアではそれほど大きな流れは生まれませんでしたが、ムーヴメント初期はドイツ,オランダなど各国で個性的なゴシックメタルバンドが誕生しました。

その中でもキャリアが長さや独自性の強さで上位に位置する重要バンドを紹介していきます。

TIAMAT|ティアマト(スウェーデン)

ゴシックメタルの中では珍しくデスラッシュ寄りのスタイルから転身したバンド。
次第にエスニックテイストもある耽美的でドゥーミーなサウンドに移行して独自のエクストリームゴシックを完成させます。

その後ゴシックメタルを基本にしつつPINK FLOYD(ピンク・フロイド)に例えられるプログレ的なサイケデリック感を押し出したアプローチ、フォーキーなアプローチ、エレクトリックなアンビエントアプローチ、ポップなニューウェーヴアプローチで優れた作品を発表。

その後はクラブミュージック的な要素は減退しますが、曲ごとに様々な表情を見せつつも全体的にはゴシックロックをベースに多様性を保ちつつも統一感のある個性的サウンドを確立させます。

Clouds
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THE GATHERING|ザ・ギャザリング(オランダ)

プログレッシブでシンフォニックな耽美派ドゥームデスとしてスタートして、クオリティの高いデビュー作が話題になります。

のちに女性ヴォーカリストを迎えてALL ABOUT EVE(オール・アバウト・イヴ)にインスパイアされた歌モノ路線のスタイルでブレイク。歌姫メタルブームの火付け役として、ヘヴィミュージックシーンに大きな影響を与えます。

それ以降は、メタル度を抑えてアンビエント色やサイケデリック色を強め、オルタナティブ/ポストロック寄りでポップさを増したサウンドへと移行しつつ、女性ヴォーカルの歌唱頼りの歌モノ路線から、楽曲の構成やサウンドの質感を主体にしたスタイルに転身していきます。

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PYOGENESIS|パイオジェネシス(ドイツ)

パイオジェネシスはデスメタルベースのスタイルからスタートして、オルタナティヴロック的な感性を基調とした個性的なアプローチに移行していったバンド。

ゴシックメタル第1世代の中ではやや影が薄く通好みな存在にとどまっていましたが、デビュー当初から他と一線を画した独自のスタイルを作り上げおり、個性という点ではかなり突出したバンドでした。

掛け合いの男性ツインヴォーカル(初期は女性Vo.も)生かした、ゴシック的な耽美性とひねくれた軽妙なポップさが同居するサウンドは、まさに他に類を見ないオンリーワンの域に達したユニークなスタイルです。

現在も現役で活動中ですが、もともといちエッセンスとして持ち合わせていたパンキッシュな要素を強めてポップパンク的なスタイルに移行しており、その音楽性の変遷もゴシックメタルバンドとしてはかなり特殊です。

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