Contents
- 1とりあえずグルーヴメタル,インダストリアル,グランジがなぜ毛嫌いされるかについてまとめてみた!
- 1.1グルーヴメタル,インダストリアル,グランジの全盛期ってどんな時代だったの?
- 1.2オワコンへと一直線のグラムメタル/スラッシュメタル、新世代バンドに完全敗北・屍累々!
- 1.3新たな音楽性を模索するメジャー系メインストリームメタル!
- 1.4保守派メタラーの憎悪を集めるヘイテッド・ミュージックの誕生!
- 1.580年代メタルバンドは新世代バンドにのモードを模倣してサバイヴ!
- 1.6嫌悪されるヘイテッド・ミュージックこれだけじゃない!?
- 2対立の裏にはそれを煽るヤツらがいる!
- 2.1余計なこと言うアーティストたち
- 2.2信者を念仏で躍らせる音楽雑誌
- 2.3まとめ
この記事のテーマは“メタラーにとってのヘイテッド・ミュージック”。
ヘイテッド・ミュージック(Hated Music)というのは、その名の通り“嫌われ音楽,憎まれ音楽”のことです。つまりメタラーが憎むほど毛嫌いしている音楽について語ろうというわけです。
このサイトの記事…特に“問題作”系などについて語るときには、一般的なメタルリスナーの音楽的な趣味嗜好を理解しておいてもらわないと話が見えてきません。そのため、何度も繰り返し同じような補足的説明をする必要があります。
それが少々面倒臭くなってきたし、いちいち話が長くなるのもどうかと思うので、サクッと参照してもらえるように改めて別記事でまとめることにしたわけです。
とりあえずグルーヴメタル,インダストリアル,グランジがなぜ毛嫌いされるかについてまとめてみた!
そう、特に重要なのが、グルーヴメタル,インダストリアル,グランジなどが90年代に一般メタルファンに親の仇のように憎まれ蛇蝎のように嫌われていた件です。ついでに言えば、この3つにミクスチャーやオルタナティヴロックとデスメタルを加えることもできます。
これらの音楽は、当時の新世代ヘヴィメタル/ハードロックとして高く評価されていた反面、保守的なメタルファンからの嫌われ方は政治/宗教の対立や野球/サッカーのサポーター抗争レベルの悪意と苛烈さがありました。
ヘヴィメタルクラスタ内では、まさにヘイテッド・ミュージック(Hated Music/嫌われ音楽,憎まれ音楽)と呼ばれるような扱いを受けてたのです。
ここでは、それらのヘイテッド・ミュージックが『どんな理由でメタルファンに嫌われているのか?』『どうしてそんなことになってしまったのか?』について解説していきます。
グルーヴメタル,インダストリアル,グランジの全盛期ってどんな時代だったの?
少し遠回りになりますが、これらの魅力的な音楽がメタルファンにとって嫌悪すべき“ヘイテッド・ミュージック”になってしまった理由を知るには、当時のメタルシーンと背景を知っておかないといけません。
1990年前後(80年代後半から90年代前半)という時期は、ヘヴィメタルシーンにとっても大きな変革期でした。
まず、80年代初頭に英国で生まれたヘヴィメタルが、最先端のハードロック/ヘヴィミュージックとしてムーヴメントとなります。
さらにそれが海を渡って、巨大なアメリカ音楽シーンで大ブレイク。米国向けに大幅にチューニングされて、ポップでキャッチーなアリーナロックや能天気で下世話なパーティーロックンロールへと変貌を遂げます。
このUSスタイルヘヴィメタルは、ケレン味あふれるビジュアル系ファッションから“グラムメタル”と呼ばれ米国メインストリームを席巻します。
一方で、ポップ化/商業化の一途をたどるメインストリームメタルへの反動から、メタル本来の“重・速・激”を追求する正統進化系とし登場した“スラッシュメタル”。
アンダーグラウンドなエクストリームメタルとして登場し、保守的なリスナーからは“単なる雑音”,“ゴミ以下”と蔑まれていたスラッシュメタルですが、ポップメタルに対するアンチテーゼとして多くの支持を集め瞬く間にシーンも拡大。
最終的にはグラムメタルの対抗馬として、メインストリームの一角を占めるまでになります。
オワコンへと一直線のグラムメタル/スラッシュメタル、新世代バンドに完全敗北・屍累々!
ところが、どちらも1990年前後に一気に失速してしまいます。
グラムメタルはバブリーな80年代カルチャーの終焉とともに賞味期限切れを起こし、そのシーンにいたアーティストの大半にとっては「いやぁ、こういう時代だったんだよ(笑)」的な“イタい過去”となります。
スラッシュメタルはというと、自分たちもメジャー化/メインストリーム化したことで初期のアンチコマーシャリズム的な役割を見失い、さらにはデスメタルやグルーヴメタルの登場によって、シーンの最先端を走る先鋭的エクストリームメタルというポジションからも転落。存在意義を喪失してしまいます。
そのため解散や活動休止を選択するバンドも続出しましたし、契約を失わずメジャー/準メジャーでの活動を続けて行きたいバンドたちは、トレンドの変化から業界サバイヴのために音楽性の転向を余儀なくされます。
新たな音楽性を模索するメジャー系メインストリームメタル!
そこで新たなモードとして選択肢に上がるのが、ヘヴィミュージックシーンの最先端に位置し、魅力あふれる革新的サウンドでメインストリームや非メタル音楽シーンからも認めらるほどの成功を収めていた、最新型ヘヴィミュージックのグルーヴメタル,インダストリアルメタル,グランジだったのです。
ハードロック寄りのスタイルが多いグラムメタルは、グランジ的なラフでロウな質感のヘヴィサウンドとダークな雰囲気を強調したハードロックサウンドへ…。
ソリッドでアグレッシヴなスラッシュメタルは、多くがグルーヴメタルやインダストリアルを取り入れたスタイルへ…。
というのがありがちな流れでした
保守派メタラーの憎悪を集めるヘイテッド・ミュージックの誕生!
この流れはもはや止められません。
80年代の華やかなメインストリームメタルブームは、なまじイケイケで増長していたこともあり、もはや完全に恥ずかしいだけの過去の遺物と見なされます。そして、バンドはレーベルから見捨てられないために、上で語ったような音楽性の改革を迫られます。
80年代にブイブイ言ってた世代が愛してやまない、ポップで華やかなグラムメタル、イキった享楽的パーティロック、職人的な構築美の産業ロック、欧州的なクラシカル様式美、テクニカルな早弾きギター、疾走感重視のスラッシュメタル。
これらは、ダークでシリアス、ヘヴィでグルーヴィー、アーシーで大陸的、ダンサブルでマシーナリー、こんな新世代サウンドに塗り替えられていきます
蛍光色のスパッツやフリンジ付きの原色ジャケット、モリモリヘアやアニマル柄のテンガロンハットも、ハーフパンツにネルシャツのストリートファッションやオーソドックスなアメカジ、シンプルな黒づくめへと様変わりします。
80年代メタルバンドは新世代バンドにのモードを模倣してサバイヴ!
こうやって、新世代ヘヴィメタル/ハードロックが注目を集め評価されるのとはウラハラに、それを横目で見る80年代リスナーにとっては、リアルタイムで慣れ親しんだ音楽が衰退していき、自分が愛した大物バンド達が新世代バンドをマネて微妙な作品をドロップするという絶望的時代に突入。
自分たちの愛してきた音楽が世界中に全否定され滅びに向かうという状況に対するヤルセナイ思いが、グルーヴメタル,インダストリアル,グランジに対するバッシングの根底にあるわけです。
まぁ、そんな同情すべき理由があるとはいえ、俗悪な商業主義やトレンドへのスリ寄り丸出しだった80年代メインストリームメタルを棚に上げて、新世代サウンドを試みるバンドたちを「トレンドに魂を売った!」などとコキ下ろしにかかったのですから、ヤルセナさスパイラルでしかありません。
嫌悪されるヘイテッド・ミュージックこれだけじゃない!?
当時のヘイテッド・ミュージックとしては、上の3つに加えてオルタナティヴロック,ミクスチャーロック,デスメタルを付け加えることもできます。
これらもヘイテッド・ミュージックにふさわしい嫌われぶりでしたが、ヘイテッドBIG3と大きく違うのは、メタル系バンドがこれらのジャンルへ移行したりエッセンスを取り入れたりするケースが少なかった点。
そのため、BIG3と比べるとそこまで取り沙汰され、槍玉に上がることが少なかっただけのことです。
対立の裏にはそれを煽るヤツらがいる!
上で挙げたようなメタラーにとってのヘイテッド・ミュージックが嫌われたのは、アーティスト同士の対立からくる発言や、雑誌などのマスコミが意図的に煽ったことも大きな原因です。
余計なこと言うアーティストたち
例えば、新世代アーティスト中には、80年代ヘヴィメタルシーンに対するヘイトめいたDis発言をするバンドもあり、マスコミもそれを面白おかしく取り上げたりしていました。
と言っても、それは必ずしもヘヴィメタル全体をDisっていたわけではありません。
70年代ハードロックや最初期のヘヴィメタルなどは最大限にリスペクトされていましたし、スラッシュメタルやデスメタルには関心を持って評価するアーティストも多数いました。
多くの場合、Dis対象だったのはアグレッションを無くした産業ロックや商業主義のグラムメタルのシーンで、それら80年代メインストリームメタルをざっくりと“メタル”と呼んでしまったために誤解を生んだ部分もあったと思われます。
信者を念仏で躍らせる音楽雑誌
かと思えば、雑誌などのマスコミがいたずらに対立構造を煽るケースもありました。
日本だと、様式美至上主義を啓蒙したカルト的メタル専門誌『Burrn!』、「時代と寝る」がキャッチフレーズの厨二系トレンド音楽誌『ロッキンオン』、民族音楽,ルーツ音楽,歌謡曲中心に全般を扱う通好み系の『ミュージックマガジン』という特に信者の多い3誌は、互いに不可侵を建前にしながらも何かにつけてヘイトをまき散らす光景がよく見られました。
『ロッキンオン』は一貫して“メタルヘイト”の立場で、ニューメタルを“メシのタネ”にし始めた時は驚きを持って迎えられたほどですし、『ミュージックマガジン』はご苦労にもディスクレビューでわざわざ様式美メタルをピックアップして、アンチメタルのライターにコキ下ろさせるのが名物になっていました。
『Burrn!』にしても「スラッシュはゴミ」、「グランジ/オルタナはクソ」、「デスメタルはゲロ以下」、「聖飢魔Ⅱ,人間椅子はメタルをナメてる!」と、ファナティックな様式美メタル絶対主義の啓蒙を長年続けてきました。
とはいえ、どの雑誌にしてもジャンルのバッシングには単なる編集部/記者の本音のみならず、読者=信者の選民意識を刺激して先鋭化/狂信化させカモに育てるという、ビジネス的な思惑があったのは間違いないところです。
それに、『酒井康(メタル保守)×渋谷陽一(アンチメタル)』あたりの同期ベテランライターによる泥沼の抗争などには、曲者同士とはいえ明らかに炎上目的の“プロレス”的な側面が見え隠れしていました。
まとめ
このようにイロイロと余計な要素が絡み合って、ヘヴィメタルクラスタにとっての“ヘイテッド・ミュージック”が確立されてきたわけです。
次回は“ヘイテッド・ミュージック”のジャンルとその特徴、嫌われる理由などについて語ってみたいと思います。
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