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音楽用語|ぎ|『ギミック:Gimmick』【演出・コンセプト】
『ギミック』とは、英語で“仕掛け”を意味する言葉。
この『ギミック』というワードは、プロレス業界でレスラーの“キャラクター設定”を意味する用語として、一般にも広く知られています。
近年ではロック/メタルシーンでもコスプレ系/ビジュアル系のグループを指して『ギミックロック/ギミックメタル』などと表現される傾向が見られるようになりました。
プロレスの『ギミック』とは!?
プロレス業界では、エンタメ性を強く押し出したアメリカやメキシコのプロレス団体を中心に、その黎明期からレスラーに特殊な『ギミック=キャラ設定』が用いられていました。
“格闘家”,“オリンピック選手”,“ギャング”,“ビジネスマン”,“バイカー”,“ブルーカラー”, “ロックスター”などの日常的な定番ギミックから、“ナチス”,“日本軍”,“中東系”などの敵対国の“元軍人”、未開の部族や野人、精神病患者やゲイ、ホラー映画のクリーチャーまで、現在はポリコレで採用不可なものまで何でもアリでした。
2000年代に、アメリカのプロレス団体『WWE(旧WWF)』が日本でも爆発的なブームとなったことをきっかけに、『ギミック』という言葉の日本における認知度が高まりました。
ロックシーンに『ギミック』ブーム到来!?
音楽シーンでも、ホラーキャラクターの扮装などは古典的なギミックとして60年代から用いられており、これはのちのショックロック/ホラーパンクなどに受け継がれます。
こういったギミックはコンセプト重視のプログレッシヴ・ロック、またグラムロックなどアート色の強いグループにも見ることができましたし、ヘヴィメタルシーンでは、中世の戦士や貴族, バイキング, 神や悪魔などといった歴史/ファンタジー系のギミックは定番でした。
ロックシーンのエンタメ志向が極まった80年代には、これらのグループもそれなりに認められてシーンの表舞台に姿を表すようになります。
エンタメ系『ギミック』の衰退!?
エンタメとは対極のイメージを持つパンクやハードコアに見られる、“怒れる若者”, “戦う労働者”, “反体制”などもその全てがリアルなものとは言い切れません。実際に『ギミック』として演じていたバンドもあったでしょう。
しかし、こういった虚飾を好まないムーヴメントが主流になると、ケレン味あふれる露骨なエンンタメ系『ギミック』は“色物”,“子供ダマシ”として敬遠されるようになります。90年代に入ってパンクの再来と呼ばれるグランジが覇権を握り、ハードコアリバイバルの機運なども生まれると、その傾向が強まってゆきました。
エンタメ系『ギミック』の復権!?
その後90年代の中盤になると『MARILYN MANSON』や『ROB ZOMBIE(WHITE ZOMBIE)』といった、スタイリッシュなサブカル系『ギミック』アーティストがメインストリームに食い込む人気を獲得し、新世紀『ギミックメタル』の基礎を築きます。
一方で、アングラでマニアックな存在だったブラックメタルから、ゴシックホラー風のショックロック系のエンタメ路線に振り切ったグループが登場し、“ビジュアル系”という土壌のある日本でも人気を増してゆきます。
エンタメ系『ギミック』の一大ブーム!?
これらの新世紀『ギミックメタル』の流れは、90年代へのアップデートができず活動を終えていたWASPやLIZZY BORDENらの80年代組の復活や、ALICE COOPERなどのレジェンド勢の活性化や原点回帰のみならず、時代の徒花として忘れ去られたGWARの再評価までをも招きます。
その流れは、再びメインストリームでのエンタメ要素が高まった00年代ニューメタルブームの中での、『SLIPKNOT』『RAMMSTEIN』ら大掛かりなコスプレバンドの大ブレイク。そして、それによるフォロアーの大量増殖とヘヴィメタルブームの再燃、サブカル情報の均質化によるコスプレブームをも背景にした、“エンタメ系ギミック天国”状態となり現在に至ります。