Contents
- 1ヘヴィメタルシーン広がるドゥームインパクト -ドゥームメタル/ストーナーロックを一般メタラーにまで浸透させた立役者は?-
- 1.1CATHEDRALショックに席巻された英国ヘヴィロックシーン!
- 1.2個性派ヘヴィサウンドが蠢く米国ストーナーロック時代の夜明け!
- 2ドゥーム/ストーナー革命を後押ししたメジャーアーティストのムーヴメント参入!
- 2.1メジャーアーティストによるドゥーム/ストーナー系バンドBIG3
- 2.1.1SPIRITUAL BEGGARS|スピリチュアル・ベガーズ
- 2.1.2DOWN|ダウン
- 2.1.3BLACK LABEL SOCIETY|ブラック・レーベル・ソサイアティ
- 3その他のドゥームインスパイア系バンド
- 3.1英国ヘヴィメタルの二枚看板もドゥーミーなサウンドを追求!
- 3.2一方、アンダーグラウンドシーンでは?
- 3.2.1ゴシックメタルとドゥームメタルの深い関係!
- 3.3スラッシュメタル/クロスオーバー/ミクスチャーからドゥーム化したバンドも!
ヘヴィメタルシーン広がるドゥームインパクト -ドゥームメタル/ストーナーロックを一般メタラーにまで浸透させた立役者は?-
CATHEDRALショックに席巻された英国ヘヴィロックシーン!
ドゥームメタルムーヴメントの創始者CATEDRAL(カテドラル)が創り上げた1991年の記念碑的1作目Forest Of Equilibrium(この森の静寂の中で/フォレスト・オブ・エクリヴリウム)は、間違いなくメタルシーンに変革をもたらした革命的な作品。
しかし、その音楽性は万人ウケしづらい上に示去れた方法論も難易度が高いものだったので、即追従するフォロアーもアンダーグラウンドのかなり狭い枠に限定されていました。
しかし、多様性のあるキャッチーな楽曲をそろえた2作目The Ethereal Mirror(ジ・エセリアル・ミラー/デカダンス)で格段にポピュラリティーがアップした結果、リスナー/アーティスト含めた保守的なメタルクラスタからも受け入れられます。
そこで示されたのが、前作と比べてわかりやすい温故知新的な方法論だったこともあり、これ以降ORANGE GOBLIN(オレンジ・ゴブリン),ELECTRICl WIZARD(エレクトリック・ウィザード),ACRIMONY(アクリモニー)などのフォロアーが続々と現れるようになります。
個性派ヘヴィサウンドが蠢く米国ストーナーロック時代の夜明け!
一方、その頃の米国ではCORROSION OF CONFORMITY(コロージョン・オブ・コンフォーミティ),SLEEP(スリープ),KYUSS(カイアス),MONSTER MAGNET(モンスター・マグネット)らが、ポストグランジ的なポジションでヘヴィサイケ系のオルタナティヴロックを発展させた、ドゥームメタルとも大きく重なるサウンドを作り出していました。これらがのちのストーナーロックのハシリになるムーヴメントの中核を担うことになるわけです。
ドゥーム/ストーナー革命を後押ししたメジャーアーティストのムーヴメント参入!
このように、先駆者による革新的な作品が後続に道を示しドゥーム/ストーナーシーンを大きく活発化していくわけですが、これらの音楽が一般のメタルリスナーに受け入れられるようになったのは、メタル界の大物がシーンに参入してきたことが大きな起爆剤になっています。
UKグラインドコア/デスメタルバンドCARCASS(カーカス)のクサメロギタリストとして名を売り、メロデスバンドARCH ENEMY(アーチエネミー)でブレイクしたマイケル・アモットのSPIRITUAL BEGGARS、革命的グルーヴメタルバンドPANTERA(パンテラ)のヴォーカルとして時代の顔となった、フィル・アンセルモによるスーパープロジェクトDOWN(ダウン)、オジー・オズボーンに見出されギターヒーローとして人気を得ていたザック・ワイルドのソロユニット、BLACK LABEL SOCIETY(ブラック・レーベル・ソサイアティ)の3バンドがそれです。
メジャーアーティストによるドゥーム/ストーナー系バンドBIG3
SPIRITUAL BEGGARS|スピリチュアル・ベガーズ
スウェーデンのギタリストマイケル・アモット(Michael Amott)は、以前在籍していた英国を代表するグラインドコア/デスメタルバンドCARCASSが4作目Hart Work(ハートワーク)で生み出した方法論をそのまま拝借したARCHENEMYで、世界的な人気を誇るメロディックデスメタルバンドに成り上がります。
その一方でマイケルはやはりUKバンドのCATHEDRALにドゥームサウンドの洗礼を受け、またまたその方法論をそのまま拝借したドゥームメタルバンドSPIRITUAL BEGGARS(スピリチュアル・ベガーズ)の活動を同時期にスタートさせます。
1作目Spiritual Beggars(スピリチュアル・ベガーズ) ,2作目Another Way to Shine(アナザー・ウェイ・トゥ・シャイン )リリース時はマニア以外にはほとんど注目されていませんでしたが、CATHEDRALやストーナーロックの認知度の高まりとのARCHENEMYのブレイクの影響もあって、3作目のマントラIII(Mantra III)では偏狭な保守層を含めた一般メタルファンにも広く支持され、それらのリスナーに限るならば人気度はCATHEDRALをも凌ごうかという勢いとなります。
SPIRITUAL BEGGARSが一般メタラーからのウケが良かったのは、よりトランシーでオルタナティヴな非メタル的スタイルに移行していく傾向が強いドゥームメタル/ストーナロックの中で、例外的にオーソドックスで耳馴染みのいいヘヴィメタル/ハードロックの様式美とわかりやいダイナミズムを守り通していたことが理由でしょう。
ハードコアなストーナーフリークには刺激や深みに乏しいサウンドかもしれませんが、単なるハードロックとして割り切るならばクオリティはかなりのものですし、昨日今日のビギナーにも馴染みやすい作風はビジネス的には正解だったのかもしれません。
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グルーヴメタルのパイオニアにして90年代USメタルシーンの顔として一世を風靡したPANTERAのヴォーカリストフィル・アンセルモ(Phil Anselmo)は、大ブレイクでステイタスを確立してからというものPANTERAの活動はそっちのけで、そこで得た知名度や人脈,資金を元にした趣味性の高い数々のお遊び的サイドプロジェクトの活動に比重を置くようになります。
その中でも、もっとも古く長期間にわたって活動を続けたドゥーム/ストーナーメタル系のDOWNは、もうひとつのパーマネントバンドと呼んでも差し支えない力の入れ方です。
何しろ、ストーナーロックのパイオニアCPRROSION OF CONFORMITY,スラッジメタルのパイオニアEYE HATE GOD(アイ・ヘイト・ゴッド),グルーヴィーなハードコアヘヴィロックバンドCROWBAR(クロウバー)といった、サザンメタルシーンのカリスマバンドのメンバーが集結したスーパードリームバンドなのです。
曲作りはフィル・アンセルモを中心にCPRROSION OF CONFORMITYのペッパー・キーナン(Pepper Keenan)が加わっているので、PANTERAにCPRROSION OF CONFORMITYのフレーヴァーをかけてBLACK SABBATHに寄せたような、ストーナー風味がほんのり漂うサザングルーヴメタルに仕上がっています。
メンツから期待されるようなアングラ臭プンプンのマニアックでアクの強いサウンドではなく、メジャー感もあってキャッチーでわかりやすいヘヴィメタルにとどまったことで、逆に幅広いメタルファンに受け入れられドゥーム/ストーナーの認知度向上に貢献しました。
BLACK LABEL SOCIETY|ブラック・レーベル・ソサイアティ
ザック・ワイルドを見出した元BLACK SABATTHのオジー・オズボーンは、新しいギターヒーローの発掘に定評がありランディ・ローズ(Randy Rhoads)やジェイク・E・リー(Jake E. Lee)といった人気ギタリストを輩出していました。
今でこそ“オジーバンドといえばザック”というイメージが定着してますが、ザックのスタイルは前任者たちのようなフラッシーでテクニカルものではなかったため当時は異端視されがちでした。しかし、その一方で“BLACK SABATTH初期のヘヴィネスを取り戻した”という好意的な評価もありました。
独立後、完成度の高いモダンサザンロックのソロプロジェクトPRIDE & GLORY(プライド&グローリィ)でスマッシュヒットを飛ばした後、結成したのがBLACK LABEL SOCIETYです。
やはりサザンロックをベースに、グルーヴメタルとBLACK SABBATH風のドゥームテイストをミックスさせたサウンドは、PANTERA界隈の南部グループ勢ともひと味違うサザンメタルスタイルに仕上がっています。
初期はファンの多い日本のみのリリースでしたが、00年代からは復帰したオジーバンドでの活動もブースターとなって、英米欧でもそれなりの結果を残しています。
残念なのは、ザックがこういったサウンドのコンポーザーとしては、取り立てて秀でたレベルにないことです。
それでもオジーの右腕という肩書きや、愛すべき“豪快さんキャラ”による日本人気もあってコンスタントな活動が続いていますし、この“ビッグ・イン・ジャパン”だったギタリストがドゥーム/ストーナー寄りのサウンドで活動していたことが、日本の一般メタラーにこの手の音楽を馴染みやすいものにしたのは確かでしょう。
その他のドゥームインスパイア系バンド
新たにバンド/プロジェクトを結成してまで本格的にドゥーム/ストーナー系サウンドを追求したメジャー系アーティストとなると上記の3バンドくらいですが、同様のアプローチのマイナーバンドや一時的にまたは部分的にドゥーム/ストーナー要素を取り入れた有名バンドは他にも数え切れないほど存在します。
ここではそれらのバンドをザックリ紹介していきますが、米国シーンを中心にしていたアーティストの場合、オワコン化対策の延命措置としてグランジやグルーヴメタル系のヘヴィネス路線を強いられた結果、それっぽいサウンドになってしまっただけのケースも多々あり、上げていくとキリがないので特筆すべきバンドだけピックアップします。
英国ヘヴィメタルの二枚看板もドゥーミーなサウンドを追求!
超メジャーどころではIRON MAIDEN(アイアン・メイデン)を脱退してソロ活動をしていたブルース・ディッキンソンは、ヘヴィ&グルーヴィーなポストグランジ的サウンドを追求したBalls to Picasso(ボールズ・トゥ・ピカソ)の時点で、ところどころにドゥーミィな要素を漂わせていましたが、1998年のThe Chemical Wedding(ケミカル・ウエディング)では本格的にドゥーミィなエッセンスが香るヘヴィでダークなサウンドを創り出します。
もう一人のメタル界の重鎮ロブ・ハルフォードも同じ頃JUDAS PRIEST(ジューダス・プリースト)を脱退して結成したFIGHT(ファイト)でグルーヴメタルを極めていましたが、1995年の2作目A Small Deadly Space(ア・スモール・デッドリィ・スペース)でよりヘヴィネスを追求した結果、ドゥームメタルにも通じるヘヴィサウンドに行き着きます。
一方、アンダーグラウンドシーンでは?
前述したCARCASSは、マイケル・アモット以外のメンバーもロッキンなヘヴィロックサウンドへの志向を持っていました。
もう一人のギタリストビル・スティアーは解散後はストーナー風のメタリックヘヴィブルーズバンドFIREBIRD(ファイア・バード)を結成しますし、ジェフ・ウォーカー(Ba.)とケン・オーウェン(Dr.)はCATHEDRALのマーク・グリフィスを迎えたBLACK STAR(ブラック・スター)で、ドゥームにも通じるデスロックサウンドを推し進めます。
北欧デスメタルシーンの顔役ENTOMBED(エントゥームド)は、グルーヴィーでロッキンなデスメタルを生み出し、デスロール(デッスンロール/デスロック)や北欧爆走R&Rの火付け役となりますが、その後ドゥームメタルのエッセンスも取り入れつつ独自のヘヴィサウンドの追求をします。
オランダのデスメタルバンドGOREFEST(ゴアフェスト)は、最近ではENTOMBEDと並ぶデスロールのパイオニアとされていますが、タネを明かすとこれは意図的にそういったサウンドを狙ったわけではなく、単にCATHEDRALに影響を受けてドゥームメタル風グルーヴサウンドを中途半端に取り入れた結果、たまたまロッキンなデスメタルサウンドになっただけのことでした。
ゴシックメタルとドゥームメタルの深い関係!
初期のゴシックメタルバンドはドゥームメタルの一派とされ、サウンドも共通要素が多いためいわば兄弟ジャンルとも呼べるものでした。
さかのぼってみれば、80年代のゴシックロック,ポジティヴパンク自体が、ネオサイケと呼ばれるサウンドも多いサイケデリックなエッセンスがつきもののジャンルだったので、元来が相性の良い間違いなしのマッチングだったのも確かです。
ゴシックメタルの大御所ANATHEMA(アナシマ)の初代ヴォーカリストDarren J. White(ダーレン・J・ホワイト)が結成したThe Blood Divine(ブラッド・ディヴァイン)は、初期ゴシックテイストを保ちつつに70年代エッセンスを強く感じさせるドゥームメタルに接近したスタイルでしたし、ギター&キーボードetcのDanny Cavanagh(ダニエル・キャバナ)も、サイドオプジェクトのストーナーバンドLID(リッド)で完成度の高いアルバムを残しています。
他の欧州エリアでは、オランダのCELESTIAL SEASON(セレスティアル・シーズン)が、初期の耽美性重視のゴシックドゥームから次第に70年代風グルーヴを強め、1995年のミニアルバムSonic Orb(ソニック・オーブ)で独自のストーナーゴシックを完成させましたし、フィンランドのAMORPHIS(アモーフィス)も、出世作となる1996年の3作目Elegy(エレジー)では、ドゥームメタル風のヴィンテージ感のあるサイケデリックなグルーヴを取り入れます。
スラッシュメタル/クロスオーバー/ミクスチャーからドゥーム化したバンドも!
ドゥームメタルとは縁が薄そうなヒップなストリート系のバンドの中からも、ドゥームメタルに影響を受けるバンドが現れます。
PANTERAと互いに影響を与え合ったというスラッシュメタルバンドEXHORDER(エグゾーダー)は、BRACK SABBATHに影響を受けてスロー〜ミッドテンポをのヘヴィスラッシュを持ち味にしたバンドですが、解散後Kyle Thomasを中心にストーナー/スラッジ系バンドFLOODGATE(フラッドゲイト)を結成。
また、クロスオーバースラッシュのM.O.D.のメンバーが結成したミクスチャーバンドMINDFUNK(マインドファク)も、次第にドゥーム/ストーナー寄りのヘヴィロックに移行していきます。
英国では、バングラ系の個性派ミクスチャー・レイヴメタルバンド、SENSER(センサー)のHeitham Al-Sayedらが結成したLODESTAR(ロードスター)が、ストーナー要素も持った独創的でユニークなヘヴィロックを創り上げていました。
北欧では、今は解散したスウェーデンのPANTERA系グルーヴメタルバンドB-THONG(B-ソング)の中心メンバーが、サイドプロジェクトTRANSPORT LEAGUE(トランスポート・リーグ)でドゥーム/ストーナー系のサウンドを展開し、こちらは今も活動を続けています。
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