Contents
- 11990年代のヘヴィミュージックシーンにグルーヴ&ヘヴィネス革命を起こし、現在もアンダーグラウンドからメインストリームで限りない影響力を持つ歴史的ロック/メタルムーヴメント!
- 1.1グルーヴメタルの音楽的な特徴
- 1.1.1グルーヴメタルはアメリカンハードロック進化系?
- 1.2そもそもグルーヴメタルのグルーヴって何?
- 1.2.1ヘヴィメタルにとってのグルーヴとは?
- 1.3ヘヴィグルーヴサウンド登場の背景と全盛期
- 1.4グルーヴメタルの第1世代の登場
- 1.4.1ヘヴィグルーヴサウンドのブレイクと保守リスナーの反発
- 1.4.1.1ヘヴィグルーヴミュージックのどこまでがメタルなのか?
- 1.5グルーヴメタルの第2世代とポストスラッシュの登場
- 1.5.1意地を見せたベテランバンド!
- 1.1グルーヴメタルのルーツと音楽的系統?
- 1.2グルーヴメタルの終焉からのニューメタルへの移行とスラッシュ回帰
- 1.3グルーヴメタルの名称問題と誰が元祖なのか?問題!!
- 1.3.1スラッシュリバイバルとEXHORDER再評価!?
- 1.3.1.1EXHORDERが元祖グルーヴメタルなのか?
- 1.3.1.2スラッシュのスロー〜ミッド路線は同時多発的!?
- 1.3.1.3メタラー/スラッシャーは“ポストスラッシュ”推し!?
- 1.3.2結局グルーヴメタルの名称はどれが適切なの!?
グルーヴメタルのルーツと音楽的系統?
グルーヴメタルは、その音楽性や音楽的なルーツやバックグラウンドが多岐にわたっているので、グルーヴィーなヘヴィロックという1点で共通しているだけで、音楽性のかなりの広範囲にわたるジャンルでした。
ここではその中から、ヘヴィグルーヴサウンドの代表的なスタイルをピックアップして紹介します。
PANTERAらサザングルーヴメタル勢に代表されるスタイルで、BLACK SABBATH由来のヘヴィネルのみならずサザンロックなどのレイドバックしたUSルーツロックサウンドを、エクストリームメタルのメソッドで組み立てたサウンドが特徴です。
PANTERA,WHITE ZOMBIE,RAGE AGAINST THE MACHINE,EYE HATE GOD …etc
BIOHAZARDに代表される、主にニューヨークハードコアシーンから登場したスタイルで、ヘヴィメタリックなサウンドにHIPHOPから影響を受けたパーカッシヴなリズムとラップ風のヴォーカルが特徴。
グルーヴコアとも呼ばれ、のちのメタルコアのルーツでもあります。
BIOHAZARD,PRO-PAIN,THROWDOWN,MERAUDER,CANDIRIA,DOWNSET …etc
SWANSに代表されるヘヴィなオルタナティヴロックや、それに類するニューヨーク系のポストハードコアシーンなどから登場したグループで、HELMETなどを筆頭にかなりの層の厚さを誇ります。スラッジコアにも通じる音楽性から、後に同列にとして語られるようになるグループももあります。
HELMET,UNSANE,-(16)-SIXTEEN,FUDGE TUNNEL,TOOL,ROLLINS BAND …etc
グルーヴスラッシュとも呼ばれるスラッシュメタルから派生した純メタル系の一群で、後年ではポストスラッシュとも呼ばれるようになります。第2世代以降の主軸となりますが、その多くはムーヴメント便乗組だったことから収束後にはスタイルを回帰させています。
SEPULTURA,MACHINE HEAD,FACE DOWN,ACCU§ER,SOULS AT ZERO,MESHUGGAH …etc
スラッシュメタルのみならずデスメタルやグラインドコアの中からもグルーヴメタルに接近するケースはありました。多くは基本的に本来のジャンルに腰を据えエッセンスとして取り入れる程度でしたが、中には本格的にグルーヴメタルシーンに乗り込むグループもありました。
NAPALM DEATH,OBITUARY,ENTOBED,ATROCITY,GRAVE,KONKHRA,FEAR FACTORY …etc
オールドスクールなEBM系などではあまり見られませんが、インダストリアル系のグループの中にもグルーヴメタルに接近するものもありました。特にインダストリアルメタルの後発組では、両者をミックスしたスタイルも目立つようになります。
PRONG,PITCH SHIFTER,MISERY LOVES CO.SKIN CHAMBER,BEYOND,CLAWFINGER,DIE KRUPPS …etc
グルーヴメタルの終焉からのニューメタルへの移行とスラッシュ回帰
勃興期には、ジャンルの壁を越えたヘヴィロックムーヴメントの様相を呈していたグルーヴメタルですが、第2世代の時期にはスラッシュ上がりのポストスラッシュ系グループが増えたこともあり、メタルシーンで完結しがちでやや内向きな印象が強くなります。
オルタナティヴ志向のグループは独自の活動を続け、90年代の半ばになるとそこからKORNをはじめとしたニューメタルのパイオニアグループが登場して注目を集め始めました。
グルーヴメタルから派生したこれらのグループは、その延長戦上にありながらもより幅広い音楽性を内包しており、さらにエモーションを重視した作風が時代にマッチしたこともあり、メインストリームのヘヴィミュージックシーンを刷新してゆきます。
また、2000年代に入るとスラッシュリバイバルなどでその再評価の機運が高まったことから、スラッシュメタルからグルーヴメタルへの接近を試みていたグループの多くも、オールドスクールなスラッシュ路線へ回帰してゆくようになります。
これらの動きに加え90年代末期にからパイオニア勢が相次いで活動停止したことで、グルーヴメタルは実質的にムーヴメントの終焉を迎えます。グルーヴメタルはニューメタルの礎となったともそこに取り込まれたとも言えますが、いずれにせよあえて当時のグルーヴメタルサウンドを追求するグループはほぼ途絶えています。
グルーヴメタルの名称問題と誰が元祖なのか?問題!!
前述のとおり、グルーヴメタルという名称は後年便宜的につけられた多岐にわたるジャンルにまたがるもので、普遍的なジャンル名ではなということもあり、新たなジャンル名への呼び換えやジャンルの再定義も時折行われています。
スラッシュリバイバル以降は、「ポストスラッシュ」というラベリングでスラッシュメタルの下位ジャンルに押し込もうとする動きもありました。
スラッシュリバイバルとEXHORDER再評価!?
EXHORDERは、80年代のスラッシュムーヴメント末期に登場した、アメリカのスラッシュメタルバンドですが、近年これを元祖グルーヴメタル/ポストスラッシュに認定しようという動きがあります。
このEXHORDERと、グルーヴメタルのパイオニアとされるPANTERA、「両者のスタイルに共通点があり、それを世に出したのがEXHORDERの少しだけ早い。」という点と、「EXHORDERが自分たちががPANTERAに影響を与えた」とほのめかす発言をしたことがその根拠となっています。
EXHORDERが元祖グルーヴメタルなのか?
この両バンドは、かねてよりBLACK SABBATHフリークという共通するバックグラウンドを持った交友関係にあり、双方向的に双方向的に影響を与え合っていました。
歌唱法やサウンドメイクなどには共通点が見られるのは確かで、前記の説には一定の信憑性があります。しかし。それを持ってEXHORDERを元祖グルーヴメタルとできるかは疑問があります。
しかし、表面的な共通点はあれど、両バンドのサウンドは根本的に異なるものです。あくまでも、“スロ〜ミッドテンポを多用したをスラッシュメタル”の域を一歩も超えず、シーンを変革する存在になりえないEXHORDERに対して、PANTERAは“アメリカンハードロック/ヘヴィロックのグルーヴの、現代的エクストリームサウンドによる再構築”という明確な新機軸たるコンセプトを打ち出しています。
これこそが、PANTERAサウンドの革新性であって、グルーヴメタルのパイオニアと認められる大きな理由です。むしろ、PANTERAブレイク後にはEXHORDER自体がそのサウンドに大接近するという展開も見せています。
スラッシュのスロー〜ミッド路線は同時多発的!?
そもそも、スラッシュシーンを俯瞰すれば、スローダウン/グルーヴ化はスラッシュのスピード追求が飽和状態となった80年代中盤あたりから、頻繁に見られる動きでした。
METALLICAは、大ヒット作Master of Puppetsで既にグルーヴィーなミッドチューンを導入していますし、やはりBLACK SABBATHフリークとして知られるOVERKILLもグルーヴスラッシュやドゥームスラッシュと呼べそうな作風を試みていました。
スピードスラッシュ権化と思われたSLAYERも一転スローな楽曲を取り入れて物議をかもしましたし、EXODUS,ANTHRAX,TESTAMENTといった第一線のグループらも、スローダウンしたミドル〜スローな作風を試みています。EXHORDERが火ぶたを切というのは、少なく見積もっても言い過ぎでしょう。
メタラー/スラッシャーは“ポストスラッシュ”推し!?
このいざこざからは、かつてグルーヴメタルに壊滅させれれたスラッシュメタル一派が、グルーヴメタルへの逆襲とスラッシュ復権のために、当時のシーン時の状況を無視したメタル至上主義による歴史改変を行うとするような歪さがうかがえます。
純メタル系ヘヴィグルーヴのパイオニアPANTERAが、スラッシュメタルサウンドに影響を受けているのは事実ですし、この複雑で多岐にわたるジャンルを再定義することでわかりやすくなるという面はあるかもしれません。
しかし、それをもってグルーヴメタルをスラッシュメタルを安易に“ポストスラッシュ”と呼び換えたり、スラッシュの下位ジャンルに押し込むのは、かなり乱暴で雑と言うほかありませんし、PANTERAサウンドの革新性や独自性、シーンへの影響力を過小評価するに至っては本末転倒です。
それは、ジャンルの垣根を超えた初期のヘヴィグルーヴムーヴメントの、多様性とを奥の深さを無視することにつながり、ムーヴメントとジャンルの全体像を捉えそこなってしまいまうため、積極的に推奨すべきことではないでしょう。
結局グルーヴメタルの名称はどれが適切なの!?
当サイトではもっともメジャーな呼称ということでグルーヴメタルを使用していますが、本来であればより自然な形でジャンル定義と細分化を行うためにも、持ったヘヴィなグルーヴを持った多様なヘヴィロック全体を総括するものとしてとして「ヘヴィグルーヴ」を置き、その下位ジャンルとしてメタル色の強い「グルーヴメタル」、さらにその下にスラッシュメタルからの派生形としての「ポストスラッシュ」を置くのがベストと考えています。