Contents
- 1インダストリアル・メタル第1世代|その衝撃と影響
- 2インダストリアル・メタル第一世代の代表的バンド
- 2.1アメリカ編|AMERICAN INDUSTRIAL BAND
- 2.1.1MINISTRY|ミニストリー
- 2.1.2NINE INCH NAILS|ナイン・インチ・ネイルズ
- 2.2ドイツ編|GERMAN INDUSTRIAL BAND
- 2.2.1KMFDM
- 2.2.2DIE KRUPPS|ディー・クルップス
- 2.3イギリス編|BRITISH INDUSTRIAL BAND
- 2.3.1KILLING JOKE|キリング・ジョーク
- 2.3.2GODFLESH|ゴッドフレッシュ
- 2.3.3SCORN|スコーン
- 2.4スイス編|SWITSS INDUSTRIAL BAND
- 2.4.1THE YOUNG GODS|ザ・ヤング・ゴッズ
- 2.4.2SWAMP TERRORISTS|スワンプ・テロリスツ
- 2.5北欧編|SCANDINAVIAN INDUSTRIAL BAND
- 2.5.1KLUTE(KLUTÆ)|クルート
インダストリアル・メタル第1世代|その衝撃と影響
インダストリアル・メタルをザックリ説明するなら、プログラミングやサンプリングを曲作りに多用したヘヴィメタルといったところ。
それははサウンドにそのまま表れていますが、SEやエフェクトでバンドサウンドを装飾する程度だったり、楽曲制作は打ち込み主体でライブの時だけバンド編成になったりと、バンドによってスタイルは様々です。
80年代のニューウェイヴ・ロックの一派にインダストリアル(ロック)と呼ばれるジャンルがありましたが、これは電子音や工場音/機械音のサンプリング,クズ鉄や鋼材を打楽器にするメタルパーカッションなどを使った、テクノやノイズミュージックフィールドの音楽です。
インダストリアル・メタルが初期インダストリアルもルーツに持つのは確かですが、その間に横たわる河は向こう岸が遥か遠くでゴシックメタルとゴシックロックの間の河が側溝に思えるくらいです。
インダストリアル・メタル直接的なルーツとなるのは、エレクトリック・ボディミュージックと呼ばれるロック要素の強いダンスミュージックのアーティスト。
それに、ニューウェイヴ/初期インダストリアル畑で活動していたアーティストの中からダンスミュージックやテクノポップに近づき、そこにメタルギターやメタル系のサンプリングをフィーチャーするなど、楽曲にヘヴィメタルエッセンスを取り入れ始めた一派。
それがインダストリアル・メタルの元祖とされるMINISTRY(ミニストリー),NINE INCH NAILS(ナイン・インチ・ネイルズ),K.M.F.D.M.、PIG(ピッグ),DIE KRUPPS(ディー・クルップス)といった存在です。
これらのアーティストたちの、ダンスミュージック的な肉体性を持つ上に攻撃的で破壊力のあるサウンドが、多くのメタルバンドに大きな衝撃と影響を与えました。
インダストリアル・メタル第一世代の代表的バンド
アメリカ編|AMERICAN INDUSTRIAL BAND
米国は、インダストリアル・メタルをメジャーな存在へと押し上げ、大きな注目を集めることに成功した、インダストリアル・メタルの本場のひとつ。
アメリカのメインストリームシーンでの大ブレイクがなければ、これほどまで大きな存在に成長して、様々なヘヴィメタルアーティストに絶大な影響を与え続けるという、その後の状況はありえ無かったでしょう。
MINISTRY|ミニストリー
デジタル・スラッシュとも呼ばれたMINISTRYは、ハードコア的なポリティカルなメッセージや強烈なキャラクターで知られるアル・ジュールゲンセンによるユニット。
幅広い音楽的バックグラウンドを持つアーティストですが、メタルとは異質の音楽性ながらメタルギターをフィーチャーし、スラッシュメタルを上回る攻撃力・破壊力を持つ楽曲には、多くのメタルバンドが衝撃を受けました。
MEGADETH(メガデス)ら大物メタルバンドがフェイバリットに挙げ、ライブの客入れSEに使ったりもしたことで、一気にメタルリスナーの注目を集めるようになります。
のちの「ブッシュ三部作」と呼ばれる政権批判アルバムでは、曲の構成もデスメタル/スラッシュメタル的なスタイルにとシフトし、よりメタル度を高めたサウンドで再びメタルファンの心をつかみます。
Amazon Musicで『MINISTRY』の聴き放題をチェック!NINE INCH NAILS|ナイン・インチ・ネイルズ
NINE INCH NAILSはトレント・レズナーによるユニット。今のイカついビジュアルからは想像できない端正なルックスと内省的な文系キャラで、アンチマッチョでセンシティブな、今でいうゴスっ子や文系ロックファンたちのカリスマ的な存在でした。
内省と激情が入り混じった、静と動のメリハリが極端すぎる躁鬱的作風が特徴ですが、躁状態でのハードコアな爆発力は強烈で、メタルバンド/メタルリスナーにも大きなインパクトを与えましたが、今では内省的なサウンドに傾いています。
プロデューサー/エンジニアとしても数多くのアーティストとコラボしていて、ロブ・ハルフォードやマリリン・マンソンをはじめとしたメタルアーティストも手がけています。
ドイツ編|GERMAN INDUSTRIAL BAND
ドイツはテクノやダンスミュージック、インダルトリアルミュージック発祥の地、アメリカがインダストリアル・メタルがメジャー化・大衆化した本場とするなら、こちらはそのルーツにつながる聖地と言ってもいいでしょう。
ポップミュージック色が強い米国サウンドと比べると、ダンスミュージック色や実験音楽性が強いのが特徴です。
KMFDM
KMFDMはメタルギターをフィーチャーした初期インダストリアル・メタルの中でも、ダンスミュージック要素が強いと同時にポリティカルな姿勢も持ったユニットです。
ブレインのサシャ・コニエツコを中心に、PIGとして活動するインダストリアルのアーティスティックなカリスマレイモンド・ワッツ、グラムメタルから独創的なインダストリアル・メタルに転身したSHOTGUN MESSIAH(ショットガン・メサイア)のティム・スコルドなど、個性的で強力なメンバーで固めたバンドです。
アクが強くで才能あふれるアーティストが入れ替わり立ち替わり参加しながらも、一聴してそれとわかる個性を失わない、ヘヴィでキャッチーかつアッパーなサウンドは強烈な存在感がありますが、作品リリースが多すぎて最近はややマンネリ気味の印象もあります。
DIE KRUPPS|ディー・クルップス
ニューウェーブ/初期インダストリアルとして活動していた、ドイツのベテランバンド。
前衛的な要素が強いバンドでしたが、USスラッシュバンドHEATHEN(ヒーゼン)のギタリストリー・アルタスを迎えて、よりヘヴィなインダストリアル・メタルに接近します。
さらには、METALLICH(メタリカ)のインダストリアル・カバーアルバムを発表したり、メタルバンドのリミックスを手がけるなどしてメタルシーンと縁を深めます。
ドイツ語ロック「ノイエ・ドイチェ・ヘァテ」の代表格でもあるRUMMSTEIN(ラムシュタイン)の直接的ルーツとなったバンドでもあります。
Amazon Musicで『DIE KRUPPS』の聴き放題をチェック!イギリス編|BRITISH INDUSTRIAL BAND
英国もダンスミュージックが盛んな土地柄であり、UKロックもダンスミュージックや英国お家芸のダブから大きな影響を受けていて、バンドサウンドに打ち込みでEDMテイストを加えたグループも存在しており、中にはインダストリアル・メタル的な質感も感じさせるバンドも存在します。
EMF(イーエムエフ),JESUS JONES(ジーザス・ジョーンズ),CARTER USM(カーターUSM)がその代表格ですが、これらはあまりインダストリアル・メタルに括られることはなく一線を画しており、どちらかというとビッグビート(デジタルロック)の前身といった扱いを受けていました。
また、エクストリームミュージックに多大な影響を残した真にプログレッシヴなバンド、NAPALM DEATH(ナパームデス)人脈の存在感は大きく、後のヘヴィミュージックシーンへの影響力も絶大な革新的なバンド/ユニットが登場します。
KILLING JOKE|キリング・ジョーク
KILLING JOKE(キリング・ジョーク)はMETTALICHがカバーアルバムメタルガレージで取り上げたことで、メタルファンにも名が通った存在のニューウェイヴ/ポストパンク系のバンド。
70年代末から活動を続ける超ベテランですが、当初からニューウェーヴ特有のエレクトロニックサウンドの導入に加え、メタリックな質感もあるヘヴィサウンドを持ち味としていて当時としては異色な存在でした。
長らくやや通好みなでマニアックなポジションにいましたが、インダストリアルメタルのムーヴメント期に、そのルーツ的存在として再評価され注目を集めます。
残念ながらその波には乗り切れずやや活動が不安定な時期がありましたが、今ではサウンドもよりヘヴィメタリックテイストを増して、その称号にふさわしいスタイルへと変貌を遂げコンスタントな活動を続けています。
また、彼らはサイケデリックトランスのルーツでもあり、メンバーのユース(Youth)はサイケデリックトランス/アンビエントミュージックのDJ/アーティストとしても活躍、それは一時期はKILLING JOKEのサウンドにも反映されていました。
GODFLESH|ゴッドフレッシュ
GODFLESHは、グラインドコアバンドNAPALM DEATHのメンバーでもあったジャスティン・ブロードリックが結成した、ドゥーミーでウルトラヘヴィなインダストリアルバンド。
スロー&ヘヴィなニューウェイヴバンドSWANS(スワンズ)のスタイルをヒントに、ダブなどのヘヴィなダンスミュージックを取り入れた重低音インダストリアルサウンドは、エクストリームミュージックのみならず後のポストロック/ポストパンクシーンへも影響力絶大です。
SCORN|スコーン
SCORNはNAPALM DEATHのミック・ハリスが、ナパームデスの先輩だったGODFLESHのジャスティン・ブロードリックと組んだユニット。
アンビエントミュージックやダブをエクストリームミュージック的に再解釈した、他に類を見ない早すぎたスタイルは、GODFLESHと同様にポストロック/ポストパンク系をはじめとした多くのバンドに影響を与えました。
スイス編|SWITSS INDUSTRIAL BAND
CORONER(コロナー)やCELTIC FROST(セルティック・フロスト)など、アート志向で先鋭的な個性を持った通好みのメタルバンドが特徴的なスイスは、インダストリアルメタルの隠れた名産地。他のは大きなシーンを持つエリアとはひと味異なる個性的なバンドが存在しています。
THE YOUNG GODS|ザ・ヤング・ゴッズ
スイスを代表するインダストリアルメタルバンド。
ニューウェイヴ的な実験性/前衛性の強いアート的な作風と、アグレッシヴなヘヴィメタル的サウンドを併せ持っています。
スイスで同時期に活動していたCORONERやCELTIC FROSTなど、インダストリアルアプローチを試みたオルタナティヴなスラッシュメタルにも刺激を与えた存在です。
SWAMP TERRORISTS|スワンプ・テロリスツ
THE YOUNG GODSと並んでスイスを代表するインダストリアルメタルグループ。
基本はとなるのはドイツ系のダンサブルで実験的な作風と、アメリカ系のハードコアでアグレッシヴな作風をミックスしたようなスタイル。
ただそこは一筋縄ではいかず、ミクスチャーロック的なセンスでファンク/HIPHOP/ディスコなどブラックミュージック的要素も加わえることで、特徴的なサウンドを作り上げています。
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北欧では、初期のインダストリアルムーヴメント期に影響を与えるほどの動きは見られませんでした。
のちにグルーヴメタルやゴシックメタルがブラックメタルなどが勢いを伸ばしてきたあたりから、それらから派生する形でインダストリアル系のバンドも登場しますが、やはり独立した独自のインダストリアルシーンやスタイルが形成されるほどではありませんでした。
KLUTE(KLUTÆ)|クルート
デンマークのKLUTEは初期のインダストリアル数少ない北欧系のグループ、Leæther Strip(レーザー・ストリップ)の Claus Larsenによるユニット。ジャーマンスタイルに近しいサウンドを基調としつつも、本体よりもメタリックでハードコアな作風を持ち味としていました。
第二世代のニューメタル的な高密度/高圧力なサウンドとは異なるオールドスクールなサウンドながら、初期のインダストリアルメタルの中では特にエクストリームなサウンドでメタル色も濃厚です。
近年ではJürgen Engler (DIE KRUPPS), Dino Cazares (FEAR FACTORY) とのコラボユニットDIE KLUTE(ディ・クルート)としても作品をリリースしています。