Contents
- 1INDUSTRIAL METAL 2nd Generation|インダストリアル・メタル第2世代
- 1.1インダストリアル・メタル第2世代|ヘヴィメタルからインダストリアルへの返答
- 1.2インダストリアルメタル第2世代バンド - アメリカ
- 1.2.1FEAR FACTORY|フィア・ファクトリー
- 1.2.2MARILIN MANSON|マリリン・マンソン
- 1.2.3WHITE ZOMBIE/ROB ZOMBIE|ホワイトゾンビー/ロブ・ゾンビ
- 1.2.4PRONG|プロング
- 1.2.5STABBING WESTWARD|スタッビング・ウェストワード
- 1.2.6FILTER|フィルター
- 1.3インダストリアルメタル第2世代バンド - ドイツ
- 1.3.1RAMMSTEIN|ラムシュタイン
- 1.4インダストリアルメタル第2世代バンド - イギリス
- 1.4.1PITCH SHIFTER|ピッチ・シフター
- 1.4.2SKYSCRAPER|スカイスクレイパー
- 1.5インダストリアルメタル第2世代バンド - 北欧
- 1.5.1Misery Loves Co.|ミザリィ・ラヴズ・カンパニー
- 1.5.2CLAWFINGER|クローフィンガー
- 2メタルシーンへの影響
INDUSTRIAL METAL 2nd Generation|インダストリアル・メタル第2世代
インダストリアル・メタル第2世代|ヘヴィメタルからインダストリアルへの返答
インダストリアル・メタルの第1世代は、その多くがニューウェーヴ、テクノロック、ダンスミュージックといった非メタルフィールドからのアプローチでしたが、それらの影響を受けたヘヴィーメタルフィールドの第二世代グループたちが、独自の解釈で新たなインダストリアル・メタルのスタイルを作り出すようになります。
その結果、プログラミング/サンプリング主体で創作する本格的なバンド以外にも、楽器のみでで人力インダストリアル的なサウンドを演奏するバンドや、基本はバンドスタイルでメンバーにサンプラーを迎えて、サウンドのテクスチャーだけを加工したりSEなどの装飾を施すだけといったバンドも増え、むしろそちらの方が主流といえるような状況になります。
さらに、インダストリアル・メタルはスラッシュメタルやデスメタルなどの現役バンドにも大きな影響を与え、その中からもインダストリアル要素を取り入れた作品を作るバンドが現れてきます。
一方、第1世代のグループに目をやると、引き続きメタリックサウンドの導入を続けるグループもありましたが、EDM(エレクトリック・ダンスミュージック)のビートを取り入れたり、いわゆるエレクトロニカというジャンルにくくられる実験的なサウンドに接近したり、80年代的なニューウェイヴサウンドに回帰したりという、新たな展開を模索して多様化/拡散する動きが目立つようになりました。
そのため、インダストリアル・メタル第2世代は、主にバンド体制でバンドサウンドを基本とした、ニューメタル系インダストリアルに代表されるヘヴィメタルルーツのスタイルや、メインストリームロックを電子音で装飾しただけのようなサウンドが主流をなすようになります。
インダストリアルメタル第2世代バンド – アメリカ
米国シーンでの第2世代の登場はグルーヴメタルの隆盛と初期ニューメタルバンドの登場とも重なり、それらのサウンドとクロスオーバーして過去にないサウンドを確立した、ニュースクールインダストリアルとでもいうべき刺激的なバンドが続々と登場します。
一方で、メインストリーム向けにポップロック化した世俗的なサウンドも増加して、まさに玉石混交の状態となります。
FEAR FACTORY|フィア・ファクトリー
インダストリアル・メタル第2世代の中で、ヘヴィミュージックシーン全体に最も大きな影響を与えたバンドがFEAR FACTORYです。
インダストリアル・メタルとデスメタルやグルーヴメタルを独自のセンスで融合させたサウンドを作り上げた彼らですが、デスメタル色がより濃厚だった最初期の頃から、サイバーでスペーシーなSF的サウンド、デスヴォイスを基調にサビではクリーンヴォイスでキャッチーなメロディーを歌い上げるスタイルは健在でした。
その路線を推し進めつつ音楽性を洗練させ、のちにニューメタルのひとつの定形ともなる独自のスタイルを生み出します。
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インダストリアル・メタルにショックロック,ゴシック,グラム,ニューロマンティックなどの要素を取り入れた、マリリン・マンソンも影響力の大きなバンドです。
KORN(コーン)と並ぶトラウマ・ロックの代名詞にして、WHITE ZOMBIE(ホワイトゾンビー)と並ぶ自己演出型アート系サブカルメタルの双璧でもあり、ヘヴィミュージック界のアイコンとして一時代を築きます。
果ては厨二世代のカリスマとして大いにもてはやされてナードのゴス化を進めただけでなく、アリス・クーパー,W.A.S.P.,リジィ・ボーデンなどの先輩ショックロッカーにも刺激を与えて活動再開させるといった副産物も生みました。
名曲ビューティフル・ピープルのリフのパクられ度の高さは、歴史的なレベルかもしれません。(まぁ、元ネタはあるんですが…。)
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今ではホラー映画監督として知られるロブ・ゾンビ率いるWHITE ZOMBIEは、ビジュアル含めたコンセプチュアルな演出が売り物という点でも共通する、マリリン・マンソンと並び称されるサブカルバンドのカリスマでした。
WHITE ZOMBIEはジャンクなヘヴィメタルからスタートして、メジャーデビュー時はレイドバックした生っぽいグルーヴを持ち味としていましたが、インダストリアルサウンドに乗り換えた次作で大きくブレイク。
結果的にこれが好評を得てリミックスアルバムまでリリースするほどでしたし、ソロ転向後もそのスタイルは継承されていきます。
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PRONG|プロング
スラッシュメタルとハードコアのクロスオーバーからスタートして、ニューヨークヘヴィオルタナティブ、ヴルーヴメタルといったスタイルを経て、現在はスラッシュメタルリバイバル的なサウンドで活動するバンド。
本来がソリッドで無機質なインダストリアルに通じる質感のサウンドが持ち味のバンドでしたが、彼らがキャリアのピークにあったヴルーヴメタル時期にはキーボード/打ち込みの専属メンバーを迎えてインダストリアルメタルに大きく接近していました。
実際のところはインダストリアル的なサウンド処理は申し訳程度なのですが、ダンサブルな要素も強まったサウンドはインダストリアルメタルとしてカテゴライズされることもありました。
STABBING WESTWARD|スタッビング・ウェストワード
結成自体は古く80年代後半から活動を続けていましたが、94年にようやくメジャーデビューを果たし、そこでニューウェイヴ要素の濃い内省的な作風を披露したことで、ポストNINE INCH NAILS的なポジションの最右翼としてブレイクします。
その後、盤を重ねるごとに彼ら本来の志向を反映させて、ゴシック的な耽美性とメランコリーを強調してゆくと同時に、バンドサウンドを主体としたロック色を強めた作風へとシフトします。
同時期に増殖していたメインストリームロック寄りのスタイルとしては、トップクラスの完成度の作品を相次いでリリースするも、USシーンでのゴシックサウンドのメインストリーム化に先んじすぎたため、傍流へと追いやられ失速してフェードアウト。現在は、ややインダストリアル色を強めたサウンドで活動再開しています。
Amazon Musicで『STABBING WESTWARD』の聴き放題をチェック!FILTER|フィルター
元NINE INCH NAILSのギタリストRichard Patrickが結成したバンド。その出自とプログラミングによるインダストリアルサウンドも導入していることから、インダストリアスメタルの文脈で語られていますが、基本的にはバンドサウンド主体でハードロック色の強いポストグランジに近い作風です。
USメインストリームシーンでは、EBM/インダストリアルサウンドを前面に押し出すスタイルよりも、こういったオーソドックスなバンドサウンドを主体としたスタイルが中心になってゆきますが、FILTERがデヴューした90年代中期は特にそういったサウンドが増えていた時期。彼らはその中でも特にメインストリームロックに接近していたグループの代表的な存在です。
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ドイツシーンでは、主に第1世代のアーティストがよりヘヴィネスを強化しつつ活躍を続ける中、RAMMSTEIN(ラムシュタイン)がヘヴィネスを重視した重厚なサウンドとエンターテイメント性の高いステージで世界的に活躍。新世代「ノイエ・ドイチェ・ヘァテ(ドイツ語ロック)」の騎手となり、いくつものフォロアーも生み出して新たな潮流となります。
RAMMSTEIN|ラムシュタイン
RAMMSTEINは、ライブステージ上でのコンセプチュアルな演出、大道具/小道具を駆使した手の込んだパフォーマンスで一躍話題になった旧東ドイツのインダストリアル・メタルバンド。
耽美的で重厚なドイツ的サウンドは、USバンドとは一味も二味も異なった魅力があり熱心なファンを産みました。
大先輩格のDIE KRUPPS(ディ・クラップス)からも影響が濃いサウンドで、その音楽性を強くを受け継いだドイツ語ロック「ノイエ・ドイチェ・ヘァテ」の代表的なポジションに位置するグループとなります。
インダストリアルメタル第2世代バンド – イギリス
イギリスシーンではをロック色の強いEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)のビッグ・ビートがメインストリームを席巻する中、インダストリアルメタルはアンダーグラウンドな存在であり続けていました。
第1世代のアーティストも本来のサウンドは維持しつつEDM要素を導入してゆく中、古参のPITCH SHIFTERが突如ビッグ・ビート色を強めたサウンドに様変わりしてブレイクしたのが目立つ程度で、他にはインダストリアルHIPHOPのFAN DA MANTALがメタル色を強めたり、SKYSCRAPERのような期待の新人が登場するという動きもありましたが、インダストリアルメタル第2世代と呼べるような大きなムーヴメントには育ちませんでした。
PITCH SHIFTER|ピッチ・シフター
PITCH SHIFTERは英国のインダストリアル・メタルバンド。
キャリア的には第1世代に近いバンドで、当初はレーベルメイトでもあるGODFLESHの影響を強く受けたスロー&ヘヴィなインダストリアル・メタルとしてスタートしますが、ヘヴィさはそのままに文字通り次第にピッチを上げてゆき、グルーヴ重視のオリジナリティの強い作風へと変化していきます。
最終的にはデス色を薄めさらにピッチを上げてゆき、メタリックでパンキッシュなロックサウンドにビッグ・ビート的なEDM色サウンドを導入した、他に類を見ない独自のインダストリアルメタルへとたどり着きます。
知名度やセールスも大きくアップしますが、音楽的な進化はそこで止まってしまいマンネリに突入。その後はアルバムリリースごとに大きく失速して行くことになります。
ユニークなバンドだっただけに、進化が続かずピークが短命に終わったのは残念ですが、近年ではシングルリリースを続けるなど復活の兆しを見せています。
SKYSCRAPER|スカイスクレイパー
1995年にデビューして注目を集めた、英国のインダストリアルバンド。
US系のメインストリームインダストリアルに近いサウンドと、UKらしいクセの強いポップネスがミックスされた強力な個性的サウンドが特徴です。
ロックミュージックのフォーマットにのっとりつつダンサブルな要素を加えた作風は、インダストリアルということを意識せずに聴くことができるサウンドは幅広いリスナーにアピールできるもので、英国では高い評価を得ていたようですがなぜか日本盤リリースされずじまいでした。
それでも、1stの新人離れしたあまりにも完成度の高すぎる仕上がりから、輸入盤店ではかなりプッシュされてアンテナが敏感なリスナーに支持されましたが、残念ながら2ndで見る影もないくらい失速してしまい、そのまま解散を迎えてしまいました。
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インダストリアルメタル第2世代バンド – 北欧
インダストリアルメタルムーヴメントとは隔絶していて、ビッグネームも大きなシーンも生まれなかった北欧シーンですが、グルーヴメタルムーヴメントの波に乗るグループが登場しだしてからは、そこにインダストリアルテイストを導入したスタイルで知名度を高めたバンドも少ないながら登場します。
Misery Loves Co.|ミザリィ・ラヴズ・カンパニー
Misery Loves Co.は、グルーヴメタル系のヘヴィサウンドとインダストリアルメタルクロスオーバーさせた、ある意味ではFEAR FACTORYにも通じるスタイルで登場。
第1世代アーティストに影響を受けフレーズがあちこちに見られるも、単なるフォローにはとどまらないセンスを持った完成度の高いデビューアルバムを作り上げたことと、大手エクストリームメタルレーベルイヤーエイクのバックアップを得たことでメタルリスナーからも注目を集めます。
しかし、アルバムごとにヘヴィネスとアグレッションを減退させ、代わりに内省的な要素を強めてニューウェイヴ/ゴシック的ともいえる作風に変化します。
水準には達していたものの、失った初期の持ち味を惜しませないほどの説得力を持つレベルには至らず、ファンの支持を失い失速していきます。
CLAWFINGER|クローフィンガー
スウェーデンのCLAWFINGERは、ラップメタル色の強いインダストリアルメタルグループ。
アメリカのCONSOLIDATED(コンソリデイテッド)やイギリスのFUN DA MENTAL(ファン・ダ・メンタル)などに通じるインダストリアルHIPHOP的なスタイルと、ヘヴィなグルーヴメタルを絶妙なセンスでクロスオーバーさせたサウンドが特徴です。
その、先鋭的で独創的なインダストリアルサウンドが注目を浴び、DIE KRUPPSのリミックスアルバムにも起用されます。
また、同時期にデビューしたRAGE AGAINST MACHINE(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)とも、新世代のミクスチャーサウンドとして、よく比較されていました。
後に初期のグルーヴメタル寄りのスタイルから、EDM色を強めたスタイルへと移行しますが、現在に至るまで追随するバンドがいない唯一無二の個性派です。
メタルシーンへの影響
バイオレントなエクストリームメタルとも相性抜群なインダストリアル・メタルは、当時一線で活動しいていたスラッシュメタル、デスメタルなどの中堅/若手から、レジェンド級のベテランまで、様々なアーティストの創作活動に大きな影響を与えました。
ベテランでは、先に紹介したギーザー・バトラーやロブ・ハルフォードなどがその代表です。
スラッシュメタルでは、CORONER(コロナー),KREATOR(クリエイター),VOIVOD(ヴォイヴォド)などがインダストリアル的な質感でクリティの高い作品を発表したほか、インダストリアル・メタル全盛期には解散していましたがCELTIC FROST(セルティック・フロスト)も初期インダストリアルの影響を受けています。
デスメタル系ではNAPALM DEATH(ナパームデス),MORBID ANGEL(モービッド・エンジェル),ATROCITY(アトロシティ)、ブラックメタルではSAMAEL(サマエル)といったバンドがインダストリアル要素を取り入れた作品を生み出し、リミックス曲なども発表していました。