INDUSTRIAL METAL 2nd Generation|インダストリアル・メタル第2世代
インダストリアル・メタル第2世代|ヘヴィメタルからインダストリアルへの返答
インダストリアル・メタルの第1世代は、その多くがニューウェーヴ、テクノロック、ダンスミュージックといった非メタルフィールドからのアプローチでしたが、それらの影響を受けた第二世代のバンドたちが、独自の解釈で新たなインダストリアル・メタルのスタイルを作り出すようになります。
また、プログラミング/サンプリング主体で創作する本格的なバンド以外にも、楽器のみでで人力インダストリアル的なサウンドを演奏するバンドや、基本はバンドスタイルでメンバーにサンプラーを迎えて、サウンドのテクスチャーだけを加工したりSEなどの装飾を施すだけといったバンドも増えます。
さらに、インダストリアル・メタルはスラッシュメタルやデスメタルなどの現役バンドにも大きな影響を与え、その中からもインダストリアル要素を取り入れた作品を作るバンドが現れてきます。
インダストリアルメタル第2世代バンド – アメリカ
米国シーンでの第2世代の登場はグルーヴメタルの隆盛と初期ニューメタルバンドの登場とも重なり、それらのサウンドとクロスオーバーして過去にないサウンドを確立した、ニュースクールインダストリとでもいうべき刺激的なバンドが続々と登場します。
一方で、メインストリーム向けにポップロック化した世俗的なサウンドも増加して、まさに玉石混交の状態となります。
FEAR FACTORY|フィア・ファクトリー
インダストリアル・メタル第2世代の中で、ヘヴィミュージックシーン全体に最も大きな影響を与えたバンドがFEAR FACTORYです。
インダストリアル・メタルとデスメタルやグルーヴメタルを独自のセンスで融合させたサウンドを作り上げた彼らですが、デスメタル色がより濃厚だった最初期の頃から、サイバーでスペーシーなSF的サウンド、デスヴォイスを基調にサビではクリーンヴォイスでキャッチーなメロディーを歌い上げるスタイルは健在でした。
その路線を推し進めつつ音楽性を洗練させ、のちにニューメタルのひとつの定形ともなる独自のスタイルを生み出します。
FEAR FACTORYの影響
FEAR FACTORYにインスパイアされたアーティストの元祖にして筆頭と言えるのがBLACK SABBATHの(Ba.)ギーザー・バトラー御大。
なんと、Vo.のバートン・C・ベルを迎えてユニットを結成、まさにBLACK SABBATHをFEAR FACTORYの方法論でアップデートさせたような強力な名盤を生み出し、一方で全く異なる個性でバートンの歌唱スタイルも広げるという、ベテランらしからぬ先鋭的なセンスとベテランらしい卓越した手腕を見せます。
その後も、STATIC X(スタティックX)やSPINESHANK(スパインシャンク)といったダンスメタル方向に特化させたニューメタルバンドや、デヴィン・タウンゼンドのユニットSTRAPPING YOUNG LAD(ストラッピング・ヤング・ラッド)のような、情報量を増やした以外はほぼ丸パクリのバンドから、ハードコアテクノと融合されたバンドまで数多くのフォロワーを生み出し続けます。
MARILIN MANSON|マリリン・マンソン
インダストリアル・メタルにショックロック,ゴシック,グラム,ニューロマンティックなどの要素を取り入れたマリリン・マンソンも影響力の大きなバンドです。
KORN(コーン)と並ぶトラウマ・ロックの代名詞にしてWHITE ZOMBIE(ホワイトゾンビー)と並ぶサブカルメタルの双璧でもあり、ヘヴィミュージック界のアイコンとして一時代を築きます。
果ては厨二世代のカリスマとして大いにもてはやされてナードのゴス化を進めただけでなく、アリス・クーパー,W.A.S.P.などの先輩ショックロッカーにも刺激を与え活動再開させるといった効果もありました。
名曲ビューティフル・ピープルのリフのパクられ度の高さは、歴史的なレベルかもしれません。
WHITE ZOMBIE/ROB ZOMBIE|ホワイトゾンビー/ロブ・ゾンビ
今ではホラー映画監督として知られるロブ・ゾンビ率いるWHITE ZOMBIEは、ビジュアル含めたコンセプチュアルな演出が売り物という点でも共通する、マリリン・マンソンと並び称されるサブカルバンドのカリスマでした。
WHITE ZOMBIEのメジャーデビュー時はレイドバックした生っぽいサウンドが持ち味でしたが、インダストリアル色を強めた次作で大きくブレイクました。
結果的にこれが好評を得てリミックルアルバムまでリリースするほどでしたし、ソロ転向後もそのスタイルは継承されていきます。
PRONG|プロング
スラッシュメタルとハードコアのクロスオーバーからスタートして、ニューヨークヘヴィオルタナティブ、ヴルーヴメタルといったスタイルを経て、現在はスラッシュメタルリバイバル的なサウンドで活動するバンド。
本来がソリッドで無機質なインダストリアルに通じる質感のサウンドが持ち味のバンドでしたが、彼らがキャリアのピークにあったヴルーヴメタル時期にはキーボード/打ち込みの専属メンバーを迎えてインダストリアルメタルにも接近していました。
実際のところはインダストリアル的なサウンド処理は申し訳程度ですが、ダンサブルな要素も強まっていてインダストリアルメタルとしてカテゴライズされることもありました。
インダストリアルメタル第2世代バンド – ドイツ
ドイツシーンでは、主に第1世代のアーティストがよりヘヴィネスを強化しつつ活躍を続ける中、RAMMSTEINがスヘヴィネスを重視した重厚なサウンドとエンターテイメント性の高いステージで世界的に活躍。新世代「ノイエ・ドイチェ・ヘァテ(ドイツ語ロック)」の騎手となり、フォロアーも生み出して新たな潮流となります。
RAMMSTEIN|ラムシュタイン
RAMMSTEINは、ライブステージ上でのコンセプチュアルな演出、大道具/小道具を駆使した手の込んだパフォーマンスで一躍話題になった旧東ドイツのインダストリアル・メタルバンド。
耽美的で重厚なドイツ的サウンドは、USバンドとは一味も二味も異なった魅力があり熱心なファンを産みました。
大先輩格のDIE KRUPPS(ディ・クラップス)からも影響も強く受けており、ドイツ語ロック「ノイエ・ドイチェ・ヘァテ」の代表的なポジションを受け継ぐことになります。
インダストリアルメタル第2世代バンド – イギリス
イギリスシーンではをロック色の強いEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)のビッグ・ビートがメインストリームを席巻する中、インダストリアルメタルはアンダーグラウンドな存在であり続けていました。
そんな中で、古参のPITCH SHIFTERが突如ビッグ・ビート色を強めたサウンドに様変わりしてブレイクします。
他に第2世代と呼べる動きはありませんが、第1世代のアーティストも本来のサウンドは維持しつつEDM要素を導入していきました。
PITCH SHIFTER|ピッチ・シフター
PITCH SHIFTERは英国のインダストリアル・メタルバンド。
キャリア的には第1世代に近いバンドで、当初はレーベルメイトでもあるGODFLESHの影響を強く受けたスロー&ヘヴィなインダストリアル・メタルとしてスタートしますが、ヘヴィさはそのままに文字通り次第にピッチを上げてゆき、グルーヴ重視のオリジナリティの強い作風へと変化していきます。
最終的にはデス色を薄めさらにピッチを上げ、ビッグ・ビート的なダンスミュージック色が強いインダストリアルサウンドへとたどり着きます。
知名度やセールスも大きくアップしますが、音楽的な進化はそこで止まってしまいマンネリに陥り、その後はアルバムリリースごとに大きく失速して行くことになります。
ユニークなバンドだっただけに、短命に終わったのは残念です。
インダストリアルメタル第2世代バンド – 北欧
インダストリアルメタルムーヴメントとは隔絶ていて独自のシーンも生まれなかった北欧シーンですが、グルーヴメタルムーヴメントの波に乗るグループが登場しだしてからは、そこにインダストリアルテイストを導入したスタイルで知名度を高めたバンドも少ないながら登場します。
Misery Loves Co.|ミザリィ・ラヴズ・カンパニー
Misery Loves Co.は、グルーヴメタル系のヘヴィサウンドとインダストリアルメタルクロスオーバーさせたスタイルで登場。
第1世代アーティストに影響を受けフレーズがあちこちに見受けれれるも、単なるフォローにはとどまらないセンスを持った完成度の高いデビューアルバムを作り上げたことと、大手エクストリームメタルレーベルのイヤーエイクのバックアップを得たことでメタルリスナーからも注目を集めます。
しかし、アルバムごとにヘヴィネスとアグレッションを減退させ、代わりに内省的な要素を強めてゆきニューウェイヴ/ゴシック的ともいえる作風になるも本来の持ち味を補うには至らず、ファンの支持を失い失速していきます。
CLAWFINGER|クローフィンガー
CLAWFINGERはスウェーデンのインダストリアル・メタルバンドで、アメリカのCONSOLIDATED(コンソリデイテッド)やイギリスのFUN DA MENTAL(ファン・ダ・メンタル)などに通じるインダストリアルHIPHOP的なスタイルと、ヘヴィなグルーヴメタルを絶妙なセンスでクロスオーバーさせたサウンドが特徴です。
その、先鋭的で独創的なインダストリアルサウンドが注目を浴び、DIE KRUPPSのリミックスアルバムにも参加します。
また、同時期にデビューしたRAGE AGAINST MACHINE(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)ともよく比較されていました。
後に初期のグルーヴメタル寄りのスタイルから、ダンスミュージック色を強めたスタイルへと移行しますが、現在に至るまで追随するバンドがいない唯一無二の個性派です。
メタルシーンへの影響
バイオレントなエクストリームメタルとも相性抜群なインダストリアル・メタルは、当時一線で活動しいていたスラッシュメタル、デスメタルなどの中堅/若手から、レジェンド級のベテランまで、様々なアーティストの創作活動に大きな影響を与えました。
ベテランでは、先に紹介したギーザー・バトラーやロブ・ハルフォードなどがその代表です。
スラッシュメタルでは、CORONER(コロナー),KREATOR(クリエイター),VOIVOD(ヴォイヴォド)などがインダストリアル的な質感でクリティの高い作品を発表したほか、インダストリアル・メタル全盛期には解散していましたがCELTIC FROST(セルティック・フロスト)も初期インダストリアルの影響を受けています。
デスメタル系ではNAPALM DEATH(ナパームデス),MORBID ANGEL(モービッド・エンジェル),ATROCITY(アトロシティ)、ブラックメタルではSAMAEL(サマエル)といったバンドがインダストリアル要素を取り入れた作品を生み出し、リミックス曲なども発表していました。