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なめらかなクリーンヴォーカルから激しく力強いシャウトまでスタイルは様々、表現力豊かな歌唱を武器に独自のスタイルを確立した“歌モノ”系ニューメタルグループ!
ここでは、デスヴォイス系やハードコア系のダーティーヴォイスやラップヴォーカルなど、ヴォーカルスタイルの異形化や特異化が進むニューメタルシーンで中、オーソドックスにメロディを歌い上げるスタイルを推し進めたしたいたバンドについて解説します。
強大すぎるジョナサンインパクト!!
ニューメタルシーンのヴォーカルスタイルは、新たなモードとなったKORNのジョナサンスタイル、スラッシュ/デスメタル系の咆哮型シャウト、そしてHIPHOP系のラッピングスタイル、ほとんどがこの3種で占められて、メロディーを持った歌唱はサビなどで部分的に導入している程度でした。
しかし、オーソドックスな歌モノロックの需要はやはり無視できないものらしく、メロディーラインを重視した歌モノ系のニューメタルも続々と登場して、次第にシーンで幅をきかせるようになってきます。
メロ/エモ需要には逆らえない!?
一時は隆盛を極めていたエクストリームな咆哮型ディストーションヴォイスや、HIPHOP調のラッピングスタイルを売りにしていたバンドの多くもこの流れは無視できず、サビの部分でエモーショナルな歌メロをフィーチャーするスタイルが急増、楽曲中の歌メロの比重を大幅に高めて表現に幅を広げてゆきます。
同時に、METALLICAのヘヴィロック路線の影響やCREEDなどのブレイクを受けた、グランジサウンドをニューメタル風にリバイバルしたポストグランジ系のグループや、ニュウェイヴ/ゴシック系のルーツを持つグループ登場して、エモーショナルな歌唱を軸にしたスタイルで売り出します。
ダーティヴォイスでも歌メロは活かせる!?
これらのヴォーカルスタイルは必ずしもクリーンヴォイスとは限らず、シャウト/スクリームで歌い上げるスタイルも少なくありませんが、いずれにせよメロディとエモーショナルな歌メロを重視するスタイルは、ニューメタルシーンの一大潮流に成長て定番スタイルとなります。
こういった“エクストリミティ追求→メロディ回帰”の揺り戻し現象自体は、“デスメタル→メロデス登場”の流れや“メタリックハードコアのメロデス導入”などにも見ることができるものです。
これらの中でも、シーンの潮目が歌メロ重視に変わった後で歌メロ/歌モノ路線に乗り換えたものではなく、比較的早い時期に活動を始め、当初からそのコンセプトで活動してきた先駆的グループを紹介します。
歌モノ系ニューメタルの代表的アーティスト
DISTURBED|ディスターブド
DISTURBEDのデイヴィッド・ドレイマンのヴォーカルスタイルは基本的にはエクストリームなダミ声シャウト系で、一般受けのいいエモいクリーンヴォイスではありませんが、PANTERAのフィル・アンセルモと同様に確かな歌唱力と表現力を持った“歌える”エクストリームヴォーカル。
KORNのジョナサンのような、ヴォーカルシーンを一変させるほどの革命的で斬新な存在ではないものの、確かな個性と存在感を持ったヴォーカリストとして後続にも影響を与えています。
彼らはSLIPKNOTやSYSTEM OF A DOWN同様第3世代にあたるグループで、その2バンドほどのインパクトを持った登場ではありませんでしたが、息の長い活動を経て米国のみならず他の欧米各国でも高い評価を受け、各国チャート上位に食い込むほどの人気を持つトップバンドに成長しました。
歌唱力至上主義のメタラーも納得の技量と熱量を持ったヴォーカルだけでなく、オールドスクールなヘヴィメタルに通じる音楽性も持っており、ニューメタル全否定のメタル極右を除けば比較的幅広いメタルリスナーから支持される稀有な存在でした。
STAIND|ステインド
STAINDはKORNの登場から即座にその影響を受けて登場した、ニューメタルとしては古株の第1世代に当たるグループです。
デビュー当初から、ジョナサン(KORN)スタイルを意識しつつも、どちらかというとメロディを歌い上げるスタイルを意識しいた、歌モノ路線のハシリともいえるグループのひとつ。
その作風から時にはポストグランジ系にもくくられることもありますが、ソリッドなヘヴィネスや怒号系シャウトも交えたヴォーカルスタイルでそれらとは一線を画しています。
しかし卓越した部分や独自性には欠けており、米国人気はそれなりに高く今も一線で活動しているものの、世界的に高評価を受けるほどではなくシーンの中ではやや影が薄い印象があります。
SEVENDUST|セブンダスト
ニューメタルとしては第2世代にあたるSEVENDUSTは、基本はKORN以降のラップメタル色も持った定番スタイルですが、黒人ヴォーカリストラホン・ウィザースプーンの、ブラックミュージックのバックグラウンドを感じさせるソウルフルなでエモーショナル歌唱が最大の武器。
サウンドも比較的オーソドックスなハードロック要素が色濃く、ある種プログレ的とも言えるやや変則的な曲展開を持ち味としたもので、当時のニューメタルシーンではやや異色の存在。
当時はそのオールドスクール寄りのサウンドがやや古臭くもありましたが、結果的には1周まわって情感あふれる歌メロと歌唱を重視したのちの歌モノ系ニューメタルや、ポストグランジ系ニューメタルに先駆けた存在と認められるような立場になりました。
ある意味、ニューメタル界のKINGS Xとでも呼べそうなスタイルは、決して派手さのあるではないですし、キッズの食いつきの良いキャラやギミックを持ち合わせているわけでもなく、日本でもさほど人気があったわけでもありません。
常にトップグループに次ぐ二番手として、ニューメタル番付的には小結クラスの位置につけていましたが、トレンドの移り変わりや上位陣が抜けたことも手伝い、現在ではやや番付を上げている印象です。
KILGORE|キルゴア
KILGOREは、ニューメタルバンドとしては比較的キャリアが古いこともあり、KORNフォロアーというよりはグルーヴメタルを中心にグランジ,ストーナー,ハードコアなどの要素を持った、オルタナティヴメタルとでも呼ぶのがふさわしい独自のサウンドが特徴的でした。
あえて言えば、ストーナーロックに分類されるCLUTCHに近いエッセンスが見て取れ、ジェイ・バーントのスタイルもそのCLUTCHのニール・ファロンを思わせるものがあります。そのジム・モリソン〜グレン・ダンジグ〜エディ・ヴェダーの系譜に当たる、力強く高い表現力を持った低音の効いたディープな歌唱はなかなか魅力的なものでした。
ニューメタルのその他大勢として片付けるにはもったいない、一筋縄ではいかない通好みでユニークな個性を持っていましたが、かといって強烈なインパクトも欠いていたため、ムーヴメントの波に飲まれてしまった感があります。
ツアーメイトでもあったSLAYERに認められそのプッシュも得ていましたが、SLAYERファンアンチオルタナティヴロック/アンチニューメタルの傾向が強いこともあり、それによるあまり効果はなかったようです。
EVANESCENCE|エヴァネッセンス
名実ともに、エモーショナルな歌モノ路線を追求したゴシック系ニューメタルと、女性ヴォーカリストを主軸に据えた歌姫系ニューメタルの頂点に位置したグループ。
欧州のフィメイルヴォーカル系ゴシックメタルをルーツに持つのは間違いなく、その隆盛を背景に登場したグループですが、THE GATHERINGや3RD ANR THE MORTALといった実験性の強いゴシックメタル黎明期のサウンドではとは全く異なるもの。
それ以降に登場したLACUNA COIL,WITHIN TEMPTATION,NIGHTWISHといった、ビジュアル系エピックメタル的なメタル様式と悪魔合体した、第2,第3世代の様式美系ゴシックメタルが、彼らのサウンドの基盤となっています。
それらをUSメインストリーム対応にチューニング/ローカライズしたポップで完成度の高いサウンドを武器に、一気にメインストリームのトップグループに躍り出ました。
近年ではシーンでの存在感は薄れましたが、よりエイミー・リー(Vo.)の趣味性を強めた欧州色の濃い作風を追求しています。
ORGY|オージィ
ニューメタルの先駆けであるKORNやFEAR FACTORYらの影響によって、当時の米国メジャーシーンに広がったの80年代ニューウェイヴリバイバルをも背景に、メインストリームメタルにもニューウェイヴ/ポストパンクを取り入れたものが目立ち始めますが、ORGYはそこにポイントを絞っていったグループの先駆け的存在。
80年代のグラマラスなエレポップサウンドを、ニューメタル時代ならではのマシーナリィなヘヴィサウンドと融合させたスタイルは、NINE INCH NAILSからSTABBING WESTWARDやマリリンマンソンに受け継がれた、エモ・ゴス・ナード・ビジュアル系のメインストリーム・インダストリアルを思わせるものです。
彼らもまた、歌モノ派ニューメタルのパイオニアであり、そのひとつのスタンダードと呼べるスタイルを作り上げた存在でしたが、いつの時代のどんなジャンルにも入り込んで、一定のシェアを獲得していて根を張る様式美を持った一派とも言えます。
COLD|コールド
ORGYなどと並んで、ニューウェイヴリバイバル要素をサウンドの柱にしたニューメタルスタイルの先陣を切ったグループ。
ビジュアル的にはORGYほどエモ・ナード・ビジュアル系のイメージではなく、歌声もフェミニンなエレポップに寄せているわけでもありません。ポストグランジやストーナーロックをも意識したよりヘヴィで力強いロックサウンドを主体にしつつも、内省的でエモーショナルなヴォーカルラインと耽美性を持ったサウンドを作り上げていました。
その耽美的サウンドはニューメタル系ゴシックメタルとでも呼べそうなものですが、DANZIGやTYPE O NEGATIVEなどのUSヘヴィゴシックとはまた趣向を異にしており、その根底には、80年代のゴシックロックのみならず、間違いなく英国/欧州系のゴシックメタルがあります。
ただし、その基調になっているのはEVANESCENCEがヒントにしたような、シンフォニックメタル系の装飾過多なゴシックサウンドではなく、もっとシンプルでオールドスクールなゴシックメタル第2世代あたりのサウンドです。