Contents
- 1一部の有力バンド以外は有象無象!?インディーズバンドがほとんどで実力も音楽性も両極端な超格差ムーヴメントというNWOBHMの実態!
- 1.1スラッシュメタルにつながるスタイルを作り上げた尖鋭的バンド
- 1.1.1SATAN|セイタン
- 1.1.2RAVEN|レイブン
- 1.2独自の視点でハードロックリバイバルを実践した個性派バンド!
- 1.2.1DIAMOND HEAD|ダイアモンドヘッド
- 1.2.2WITCHFINDER GENERAL|ウィッチファインダー・ジェネラル
- 1.2.3PRAYING MANTIS|プレイング・マンティス
- 1.3モーターヘッドファミリー
- 1.3.1TANK|タンク
- 1.3.2GIRLSCHOOL|ガールスクール
一部の有力バンド以外は有象無象!?インディーズバンドがほとんどで実力も音楽性も両極端な超格差ムーヴメントというNWOBHMの実態!
伝説的な奇跡のムーヴメントとして祭り上げられているNWOBHMですが、そこに身を置いていたバンドは米国進出や海外盤のリリースを果たしたごく一部のビッグネームと、英国内で数作の7インチシングルやデモテープをリリースした程度のインディバンドに二極化されていました。
一部のトップクラスとその他大勢という構造は他の時代やジャンルにも当てはまるものですが、NWOBHMシーンは実力的にもセールス的にもその格差が極端で、マイナーレベルの一群はまさにメタル史にも残らない有象無象といったものでした。
BIG4以外で日本で知られているバンドや今でも語り継がれるバンドとなると、フルアルバムを完成させて日本盤もリリースされたバンドや、スラッシュメタルムーヴメント時のNWOBHM再評価で名を知られるようになったバンドなどに限られてしまいます。
よく言われる“NWOBHMの実態を理解しているのは、当時の英国でシーンをリアルタイムでチェックしていた人だけ!”というのは、選民思想などではなく現実的な話だったりするわけですね。
ここでは IRON MAIDEN(アイアン・メイデン),SAXON(サクソン),DEF LEPPARD(デフ・レパード),VENOM(ヴェノム)のBIG4を除いた中で、比較的知名度が高く音源も手に入りやすいものから、無視することができない実力と個性を持った重要バンドを紹介します。
スラッシュメタルにつながるスタイルを作り上げた尖鋭的バンド
一般的にNWOBHMは、初期ヘヴィメタルとスラッシュメタルをつなぐ存在と言われていますが、その中には実際にそのポジションにふさわしい先鋭的でまさにニューウェーブなバンドと、オールドスクールなハードロックリバイバル系のバンドが混在していました。
先鋭的バンドの代表が前の記事で解説したVENOMですが、それ以外にもすでにスラッシュメタル/パワーメタルの原型と言えるようなサウンドを完成していた、革新性を持ったバンドの存在もわずかながら確認することができます。
SATAN|セイタン
SATANは英国的な湿り気のある雰囲気と、暗黒趣味にあふれたダークなサウンドが特徴的なバンド。
明らかにこれまでのヘヴェメタルを超えた疾走感とアグレッションを持ったスタイルには、スラッシュメタルの原型と呼んでも差し支えない先鋭性が感じられます。
彼ら自身ものちにバンド名をPARIAH(パライア)と改め、独創的なスラッシュメタルを作り出します。
さらにその後中心人物のスティーヴ・ラムゼイ(Steve Ramsey)はパーマネントパートにフィドル(バイオリン)を加えたSKYCLAD(スカイクラッド)を結成してトラッドメタルの始祖となり、マイナーな存在ながらシーンの最先端で後続に影響を与え続けます。
RAVEN|レイブン
RAVENは疾走感を強調したパワフルなサウンドを持ち味として、スラッシュメタルにも影響を与えたスピードメタルのパイオニアとも呼ばれるバンド。
基本はハードロックをベースにしたストレートなヘヴィメタルですが、サウンドからはパンクの影響も感じられ、MOTORHEAD的なドライヴ感のあるロックンロールのエッセンスも持ち合わせています。
米国向けサウンドへとローカライズを施してのアメリカシーン進出を狙いますが、やはり多くの米国進出組と同様に失敗して失速。
勢いと熱量を感じさせるサウンドは魅力的ですが、スピードメタルと呼ばれる理由たる疾走感以外には音楽的な革新性や強烈な独自性が見られないのが、後世にあまり再評価されることがない原因でしょう。
独自の視点でハードロックリバイバルを実践した個性派バンド!
NWOBHMシーンには、実のところ時代にクサビを打ち込むような革新性を持ったバンドは少なく、そのほとんどが単なるハードロックリバイバルに終わっていましたが、そんな中にも独自のスタイルとユニークな個性を持ったバンドがいくつも存在していました。
DIAMOND HEAD|ダイアモンドヘッド
METALLICA(メタリカ)やMEGADETH(メガデス)らのスラッシュメタルバンドが、音楽的な影響を公言したことで注目を集めたバンド。
間違いなくLED ZEPPELIN(レッド・ヅェッペリン)の影響下にあるサウンドですが、KINGDOM COME(キングダム・カム)やGRETA VAN FLEET(グレタ・ヴァン・フリート)などの、ゲイリー・ムーアにディスられそうないわゆる“レッドクローン系”のサウンドとは明らかに一線を画した、フォロアーには収まらないスタイルです。
特筆すべきはその独創的なリフワーク。彼らの基本的な作風は疾走感よりもミドルテンポでのうねりを重視したものですが、そこに印象的なリフワークが加わり独自の質感のサウンドを作り上げています。
初期のスラッシュメタル勢は特にこのリフワークに惚れ込んでいるグループが多く、確かにMETALLICAやMEGADETHの楽曲を聴いてみると、その影響がダイレクトに現れているのを確認できます。
WITCHFINDER GENERAL|ウィッチファインダー・ジェネラル
オジー・オズボーンに代わってロニー・ジェイムス・ディオを新ヴォーカルに迎えた第二期BLACK SABBATH(ブラック・サバス)が、独自の最新ヘヴィメタルを作り上げていた時代に、あえて初期のBLACK SABBATHのスタイルを大々的に押し出した奇特な逆張りバンド。
初期のBLACK SABBATHをヘヴィメタル寄りのサウンドで再構築した楽曲と、メタル的なキワモノ感満載で自国の歴史の恥ずべき暗部「魔女狩り」をテーマにして、キリスト教の闇と独善を露悪的にあぶり出すコンセプト、なによりシアトリカルで悪趣味なアートワークが大きな特徴です
この路線は当時としてはNWOBHMシーンでは類がなく、まさに独占状態だったこともあってカルト的な人気を獲得。
後のドゥームメタルムーヴメントでは、米国のTOROUBLE(トラブル),北欧のCANDLEMASS(キャンドルマス)にも先駆けたルーツ的な存在として再評価されることになります。
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シーンの中では特に個性的でも革新的でもないただ日本のマニアに受けただけ、いわゆる「ビッグ・イン・ジャパン(Big in Japan)」を絵に描いたようなバンドです。
ところが、のちに日本向けに再結成した後さらに人気が高まり、今では世界的にも再評価を受けて活動を続けている、NWOBHMムーヴメントでも異例な存在。
基本の音楽性はオールドスクールな叙情派ブリティッシュハードロックリバイバルで、日本のメタルファンに琴線に触れる哀愁と情感にあふれたいわば“演歌メタル”とでもいった作風と、これまたやたら日本人が好む盛り上がりどころでのコーラスワークが特徴です。
JUDAS PRIESTやMOTORHEADを思わせる疾走曲も数曲ありますが、ハードな曲とコーラスワークのミスマッチがなかなか珍妙な味を醸し出しています。
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MOTORHEADは、英国のサイケデリックバンドHAWKWIND(ホークウィンド)のレミー・キルミスター(Lemmy Kilmister)率いるグループで、すでにベテランの域にあったヘヴィメタル第一世代グループの中ではBADGHIEなどと並んでもっともNWOBHMムーヴメントの後押しを受けたバンド。
NWOBHMのカルトなカリスマVONOMもMOTORHEAD直系のバンドと言える存在ですし、さらには強烈な個性を持つ弟分/妹分的なファミリーバンドまでも活動しているほどで、当時のNWOBHMシーンでの影響力がうかがえます。
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弟分のTANKは、MOTORHEADが盟友と認める数少ないバンドで英国3大パンクのひとつDAMNED(ダムド)の元メンバー、アルジー・ワード(ALGY WARD)が結成した第一線のパンクスによるメタルバンドという異例の存在。
パンキッシュでロッキンなスタイルからスタートして、次第にメタル様式色を強めていきますが、現在ではアルジー・ワードのロッキンTANKと、残りメンバーの様式メタルTANKに分裂して活動中です。
GIRLSCHOOL|ガールスクール
妹分のGIRLSCHOOLは、世界初となるメンバー全員が女性の“フルレディース”メタルバンドというこれまた異色の存在。
とはいえレミーのお墨付きだけのことはあり、今も存在するアイドルバンドやイロモノ的なバンド、コマーシャルな歌姫商法バンドとは根本から全く異なる、筋金入りで実力派の本物です。
NWOBHMの多くが影も形もなくなった中、いまだ変わらぬスタイルで現役で活動を続けていることがその何よりの証でしょう。