Contents
- 1オーソドックスなヘヴィメタルをよりヘヴィでスピーディーな強靭なサウンドにパワーアップさせた、正統派ヘヴィメタルの新たなスタンダード。
- 1.1パワーメタルってどんな音楽?
- 1.1.1スピードメタルとパワーメタルは何が違うの?
- 1.2パワーメタルの歴史は?
- 1.3パワーメタルが盛んな地域は?
- 1.4パワーメタルのサブジャンル/関連ジャンルを紹介
- 1.4.1UKパワーメタル
- 1.4.2スピードメタル
- 1.4.3USパワーメタル
- 1.4.4オールドスクール系
- 1.4.5メロディックパワーメタル(ジャーマンパワーメタル)
- 1.5ネオクラシカル/シンフォニックパワーメタル
- 1.5.1スラッシュ系パワーメタル
- 1.5.2ダークメタル系パワーメタル
- 1.5.3プログレッシヴ・パワーメタル
- 1.5.4グルーヴ系(パンテラ系)パワーメタル
- 1.5.5ニュースクール・パワーメタル系
オーソドックスなヘヴィメタルをよりヘヴィでスピーディーな強靭なサウンドにパワーアップさせた、正統派ヘヴィメタルの新たなスタンダード。
パワーメタルってどんな音楽?
パワーメタルというジャンルは非常に音楽性の幅が広いのでひと言では言い表しづらいのですが、ザックリと説明するならいわゆる正統派ヘヴィメタルと呼ばれるオーソドックスでオールドスクールヘヴィメタルの様式と、スラッシュメタル以降のエクストリームサウンドを融合して、ヘヴィネス,スピード,アグレッションをパワーアップしたまさに“パワーあふれる”メタルサウンドのこと。
基本となる音楽性も、オーソドックスなヘヴィメタルをベースとしたものから、スラッシュメタルなどエクストリーム色が濃いものまで様々ですが、ヴォーカルはオーソドックスなハイトーンだったりディープな低音やダミ声だったりという声質の違いこそあれ、多くの場合は普通にメロディを追って歌い上げるスタイルです。
いわゆる正統派ヘヴィメタルと呼ばれるバンドも、今では初期ヘヴィメタル的なオールドスクールスタイルは減少して、正統派扱いされるバンドでもパワーメタルと呼ぶべきサウンドが主流になっていますし、ヘヴィメタル黎明期から活動するベテランバンドの多くもパワーメタル寄りの作風に移行しています。
当初はNWOBHMなど初期のヘヴィメタルとスラッシュメタルの折衷的なサウンドがスタンダードでしたが、のちにはグルーヴメタルやニューメタルのヘヴィグルーヴや雑食性、デスメタルのブラストビートやゴシックメタルの耽美性などを取り入れるバンドも現れました。
スピードメタルとパワーメタルは何が違うの?
スピードメタルというジャンルはよくパワーメタルと混同されたり微妙に使い分けられたりと、その定義と差異がはっきりしないので、特にビギナーは「???」となってしまいがちです。
個人的にはどちらも“オールドスクール・ヘヴィメタル(初期の古典的ヘヴィメタル)がエクストリームに進化/強化されたもの”ということで一緒にしてもいいかなとも思うのですが、あえてその違いを説明するなら…
よりオールドスクールなヘヴィメタルサウンドに近いものや、シンフォニック系/ネオクラシカル系など様式美色の強い英国系/欧州系のスタイルが主流です。
通常のヘヴィメタルよりも、スピード/疾走感を強化していることが必要条件。
オールドスクールとスラッシュメタルの折衷的なスタイルが基本で、強化される要素はスタイルによってスピード,ヘヴィネス,アグレッション,ブルタリティなど多岐に及ぶので、スピードメタルと異なり一概にスピード重視とは限りません。
一般的にはパワーメタルはスピードメタルを包括したカテゴリーとして使われていますが、特に米国系,ドイツ系のスタイルが代表的です。
パワーメタルの歴史は?
パワーメタルは80年代初頭の英国NWOBHMシーンで活動していた、初期のヘヴィメタルサウンドをスピード重視で発展させたスピードメタル呼ばれる当時のUKエクストリームメタルがルーツとなります。
それが米国へと渡ってUSロック的マナーでなヘヴィネスを強化しつつ、さらにその当時黎明期を迎えていたスラッシュメタルシーンとも連動する形で影響を与えあってエクストリーム化し、スラッシュメタルとの折衷的なスタイルを確立させます。
また、80年代中期にはドイツでも、欧州系のオールドスクールメタル/スピードメタルをベースにスラッシュメタルとクロスオーバーしたジャーマンパワーメタルが登場、ヨーロッパと日本を中心に人気を獲得しパワーメタルの新たなスタンダードとして各国のメタルシーンに影響を与えます。
90年代になると、北欧やブラジルなどでジャーマンスタイルをベースとしたサウンドのバンドが登場し、独自のシーンを形成します。
さらに、デスメタル,ブラックメタル,ゴシックメタル,プログレッシヴメタル,エスノメタルなどの、新世代メタルサウンドとクロスオーバーしたサウンドも登場して多様化が進みます。
パワーメタルが盛んな地域は?
パワーメタルがオールドスクールヘヴィメタルからスラッシュメタルへの進化の過程に生まれた音楽ということもあり、ヘヴィメタルが生まれた英国よりも、スラッシュメタル発祥の地で世界最大のシーンでもあるアメリカやドイツこそ、その進化の過程で生まれたパワーメタルバンド多数存在する本場となっています。
現在ではそのシーンは世界的に広がっていますが、中でも北欧やブラジルは古くからパワーメタルが盛んなエリアで、ジャーマンパワーメタルのメジャー化以降それをローカライズしたスタイルのバンドが多数登場し、シーンの活性化に貢献しています。
パワーメタルのサブジャンル/関連ジャンルを紹介
UKパワーメタル
英国系のパワーメタルの多くは、NWOBHMシーンで特にアグレッシヴなスタイルを持っていた、スピードメタルにもカテゴライズされるバンドや、初期のヘヴィメタルバンドがスラッシュメタルなどに刺激を受けてパワーアップしたものがほとんどです。
UKメタルシーンはNWOBHMムーヴメント〜スラッシュメタルの登場以降デスメタル/グラインドコアなどエクストリームメタルの登場まで低迷期に入るので、その間のパワーメタルムーヴメントにもあまり関与していません。
スピードメタル
パワーメタルのカテゴリが確立される以前のNWOBHMシーンを中心に生まれた、従来のヘヴィメタルからスピード/疾走感,過剰さがより強化されたスタイルのこと。
ほぼUKパワーメタルと同じと考えて問題ありません。様式美症の強い疾走曲主体のパワーメタルをこう呼ぶこともあります。
USパワーメタル
アメリカのパワーメタルをザックリと分類すると、NWOBHMなどの影響を受けた欧州スタイルのベテランヘヴィメタルバンドがエクストリーム化してパワーメタルスタイルになったパターンと、スラッシュメタルへの進化の過程でオールドスクールなヘヴィメタル色の強いパワーメタルサウンドを選んで、そこにとどまっているパターンがあります。
いずれにしてもオールドスクールとスラッシュメタルの折衷的スタイルが主流ですが、ミドルテンポ人気の高い米国ロックシーンの特性上、スピードだけに特化しないバンドも数なくありません。
オールドスクール系
70年代から活動しているヘヴィメタルムーヴメント黎明期の第1世代や、そのサウンドを踏襲していた80年代のバンドが、新世代バンドのよりエクストリームなサウンドに刺激を受けてパワーメタル化したもの。
スラッシュメタルなどが当たり前な新世代バンドがオールドスクールなヘヴィメタルを創ろうとした結果、パワーメタル寄りのスタイルに落ち着くケースもあります
メロディックパワーメタル(ジャーマンパワーメタル)
主に、ドイツで生まれたいわゆるジャーマンパワーメタルを指すサウンドで、これを基調としたスタイルが北欧/南米をはじめとして世界的に広がり、各地でジャーマンパワーメタルをベースにしたバンドが登場したことから、“ジャーマン”を取り払ってこう呼ばれるようになりました。
オールドスクールなヘヴィメタルやスピードメタルにスラッシュメタル的なアグレッションを導入しつつも、時にアニソン的とも表現されるキャッチーなメロディとポップネスを同居させたサウンドが持ち味です。
ネオクラシカル/シンフォニックパワーメタル
リッチー・ブラックモア〜イングヴェイ・マルムスティーンと連なる、クラシック音楽を導入した様式美ヘヴィメタルとパワーメタルを融合したスタイル。
キャッチーなパワーメタル/スピードメタルにクラシカルな早弾きギターをフィーチャーしたスタイルが主流ですが、キーボードを導入するケースもよく見られます。歴代アーティスト同様にナルシスティックで貴族趣味的な傾向があり、中世コスプレ系バンドも少なくありません。
近年では、ゴシックメタル風のダーク耽美派系の様式美やメロディラインを取り入れるバンドも目立ちます。
スラッシュ系パワーメタル
スラッシュメタルに近いエクストリミティを持つパワーメタル。パワーメタル色の濃いスラッシュメタルも含みます。
ハードコア色の濃いものが多い英国/欧州系のスラッシュメタルと比較すると、USスラッシュメタルはパワーメタル寄りのサウンドが主流となっていました。
スラッシュメタルをシーン代表するバンドにも、デビュー当初はパワーメタル寄りの作風だったものが少なくありませんし、スラッシュメタルにカテゴライズされているバンドでも、実質的にパワーメタルと呼ぶ方がふさわしいものが多数存在しています。
ダークメタル系パワーメタル
パワーメタルをベースに、ドゥームメタルのダークでダウナーなヘヴィネス、ゴシックメタル的な耽美性や叙情性を取り入れたスタイル。
サウンドの特徴的な要素はゴシックメタルと共通しますが、デスメタルからスタートしてヘヴィメタルの様式美を払拭したゴシックメタルとは異なり、スラッシュメタル/パワーメタルをルーツにしたバンドによる、よりオールドスクールなヘヴィメタル様式に近い作風が主流。また、プログレ的なアプローチのバンドが多いのも大きな特徴です。
デスメタル/メロディクデスメタルからスタートしてゴシックメタルに接近したバンドの中にも、音楽性によってはコレにカテゴライズされるものがあります。
プログレッシヴ・パワーメタル
プログレッシヴ・パワーメタルとでも呼んで差し支えないような、プログレ的な作風のバンドは多数存在します。
しかし、現在のプログレッシヴ・メタルの主流サウンド自体が、パワーメタルがジャンルとして確立されてヘヴィメタルのスタンダードとなった後にそれをベースに生まれたものなので、それらのバンドはパワーメタルよりもプログレッシヴ・メタルに分類される傾向があります。
そのため、プログレッシヴ・パワーメタルというカテゴリはあまり使われません。
グルーヴ系(パンテラ系)パワーメタル
90年代に活動していたパワーメタルグループが、PANTERAらグルーヴメタルムーヴメントの影響でミドルテンポ中心のヘヴィネス重視な作風となったスタイルを指す呼称。
総じてグルーヴメタルのポイントを理解/咀嚼仕切れず中途半端な仕上がりとなった低クオリティな作品が多いことと、メラルクラスタのグルーヴアレルギーが強いことから、一般に揶揄的な意味で使われることが多く正式なサブジャンルとまではいえません。
多くは一時的なスタイル変更にとどまり、のちに軌道修正を行っています。
ニュースクール・パワーメタル系
従来の“スラッシュメタルmeetsオールドスクールメタル”のスタンダードにとどまらず、デスメタル,ブラックメタル,ニューメタル/メタルコア,ゴシックメタル,インダストリアルメタル,ポストプログレメタルなど、スラッシュメタル以降のエクストリームメタルのエッセンスを取り入れたスタイル。
新世代バンドが多いこともあって、各ジャンルの持ち味を殺さないような最適化クロスオーバーを実現するバンドが増えているのが、90年代のグルーヴ系(パンテラ系)とは異なるところです。