Contents
- 1グラインドコア発祥の地イギリスではやや影の薄い、オールドスクール・デスメタルを代表するBIG4の一角から、同時代的なセンスと独創性を持ったサウンドへと進化を続けたベテランバンド!!
- 1...1UKデスメタル・シーンを代表するグループ!!
- 1...2フロリダン・テック・テイストのUKデス!?
- 1...3積極的なポスト・デスメタルの模索!?
- 1...42度の解散を経てなお活動を再開!!
- 1.1CANCER|DISCOGRAPHY
- 1.1.1To the Gory End|トゥ・ザ・ゴリィ・エンド
- 1.1.2Death Shall Rise|デス・シャル・ライズ
- 1.1.3The Sins of Mankind|ザ・シンズ・オブ・マンカインド
- 1.1.4Black Faith|ブラック・フェイス
- 1.1.5Corporation$|コーポレイーションズ
- 1.1.6Spirit in Flames|スピリット・イン・フレイムス
- 1.1.7Shadow Gripped|シャドウ・グリップド
- 1.1.8Ballcutter|ボールカッター
- 1.1CANCERはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
グラインドコア発祥の地イギリスではやや影の薄い、オールドスクール・デスメタルを代表するBIG4の一角から、同時代的なセンスと独創性を持ったサウンドへと進化を続けたベテランバンド!!
CANCER(キャンサー)は、イギリス代表するデスメタル・グループのひとつ。
UKデスメタル・シーンを代表するグループ!!
CANCERは、イギリスのデスメタル・シーンを代表格として、BENEDICTIONやBOLT THROWERと共に、ブリティッシュ・デスメタル・シーンのBIG3の座に位置していたグループ。
また、後年グラインドコアからデスメタルへと移行したCARCASSをそこに加え、UKデスメタルBIG4と称されることもあります。
フロリダン・テック・テイストのUKデス!?
CANCERの音楽性は、多くのブリティッシュ・エクストリーム・メタルと同様にハードコア/クラストからの影響を強く受けていますが、それと同等以上にスラッシュメタル色の強い、オールドスクールなデスメタル・スタイルが基本的な作風です。
また、多くの英国勢と同様に、一筋縄ではいかないクセの強い個性を持っており、彼らの場合は、やや変則的なセンスとテクニカルなエッセンスを持った、スラッシーなスタイルでその存在感が際立っていました。
また、英国勢の中でも特にアメリカン・デスメタルに通じる音楽性を志向しており、USデスメタルの聖地フロリダシーンとも交流があることから、USシーンのミュージシャンのゲスト加参加やスポット加入も見せています。
積極的なポスト・デスメタルの模索!?
デスメタルの一般化/メジャー化が進む一方で、ムーヴメントとしては飽和から収束に向かっていた90年代中期には、先進的なデスメタル・グループの多くが、様式化/類型化/硬直化した音楽性からの逸脱を試みます。
それらは、ヘヴィグルーヴ, インダストリアル,ドゥームメタルなどの周辺ジャンルから、それ以前の70年代,80年代のヘヴィ・ミュージックまでを取り入れつつ、新たなサウンド構築に向けてのアクションを起こしていました。
CANCERもその動きの同調して音楽性の模索に取り掛かり、従来のデスラッシュ・サウンドにヘヴィグルーヴやデスンロール、70年代ヘヴィロック/ハードロックを取り入れたの独自スタイルを創り出します。
しかし、結果はかんばしいものではなく、多くのオールドスクール・デスメタル・バンドと同様に、活動を終えてしまいます。
2度の解散を経てなお活動を再開!!
CANCERは、2003年に再結成を果たし、さらに実験的な作品をリリースしますが、やはりそれも振るわず、再度活動停止となってしまいます。
しかし、2013年にはオールドスクール・デスメタル・リバイバルの機運に乗って再始動。初期に近い作風に回帰した新作もリリースして、現在も鋭意活動継続中となっています。
CANCER|DISCOGRAPHY
To the Gory End|トゥ・ザ・ゴリィ・エンド
オリジナルアルバム – 1作目 (1990年)
まだ、CANCERがパワートリオ=3人体制だった時期に、リリースされたデビューアルバム。
VENOMやクラストコアからの影響も強く感じさせるロッキンなテイストも持ち合わせた、オールドスクールなハードコア・デスラッシュは、CANCERのカタログ中でも最も荒々しく勢いがあり、疾走感と突進力に満ちたものです。
とはいえ、単なる突撃一直線な単純な作風ではなく、スロー〜ミッドのダウンテンポも交えて緩急をつけるなど、UKバンドらしいヒネリを加えています。
ダウンテンポは効果的に用いられており、同様の手法にありがちな疾走感を阻害して勢いを削ぐだけ…というような失策はありません。
ケレン味を欠き、地味で通好みな作風が多いことから、やや上級者向けの印象があるブリティッシュ・デスメタル勢の中では、比較的ビギナーにも馴染みやすいフックの効いた高品質なアルバムです。
プロデューサーはフロリダシーンの重鎮スコット・バーンズ。また、ゲストとしてT-09ではOBITUARYのジョン・ターディ、T-06, T-09ではインダストリアル界隈で知られたティム・ルイスが参加しています。
ドラマーのカール・ストークスの手による、B級感あふれるアートワークはご愛嬌。元ネタはおなじみ映画『ゾンビ』のワンカットです。
|スラッシュ度:★★★★☆
|ハーコー度:★★★★★☆
|ドゥーム度:★★☆★☆☆
|グルーヴ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤
Death Shall Rise|デス・シャル・ライズ
オリジナルアルバム – 2作目 (1991年)
DEATHやOBITUARYなどのデスメタルから、TESTAMENTなどのスラッシュメタルまで、様々なバンドのサポートを務めてきた、フロリダ・シーンのテクニカルな腕利きギタリスト、ジェームズ・マーフィ(James Murphy)が参加した唯一のアルバム。
オールドスクールなデスラッシュサウンドという意味では前作と変わりはありませんが、ハードコア色がやや薄れて、大きくデスメタル/ヘヴィメタルに寄ったサウンドとなりました。
また、マーフィの参加からも想像できるように、楽曲も変則的でテクニカルな展開を見せるようになっており、ギターソロのフィーチャー度合いもアップしています。
前作のストレートな突進力は失われたあたりは評価が分かれますが、サウンドの独自性は確実に増しており、こちらも代表作に挙げるリスナーの多い名盤です。
|スラッシュ度:★★★★☆
|ハーコー度:★★★★☆
|ドゥーム度:★★☆☆☆
|グルーヴ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤 実験作
The Sins of Mankind|ザ・シンズ・オブ・マンカインド
オリジナルアルバム – 3作目 (1993年)
適度にテクニカルで時折変則的な展開を見せる、スラッシーなデスメタル・サウンドは、前作の作風から大きな変化はありません。
しかし、ここではフロリダの老舗バンドDEATHの、チャック・シュルディナーのプレイを意識したようなフレーズが目立つなど、前作でのジェームズ・マーフィ参加と同様に、UAテック(テクニカル)デスへの傾倒ぶりはうかがい知ることができます。
完全に別のステージへ上がってしまった同時期のDEATHと比較すると、まだまだストレートな作風と言えるもので、従来のデスメタル・ファンにも聴きやすいサウンドです。反面、テクニカルに振り切ったことによって生じる、異形性や新規性を感じさせるには至っていません。
とはいえ、これまでと同様に良質なデスメタル・アルバムであることは確かです。
|スラッシュ度:★★★★☆
|ハーコー度:★★★★☆
|ドゥーム度:★★★☆☆
|グルーヴ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤
Black Faith|ブラック・フェイス
オリジナルアルバム – 4作目 (1995年)
変動期を迎えたオールドスクール・デスメタル・シーンを背景に、デスメタル・スタンダードからの離脱を試みたアルバム。
簡単に言うと、ENTOMBEDの“Wolverine Blues(3rd)”に始まり、CARCASSの“Swansong(5th)”へとつながるデスンロール路線と、グルーヴ・スラッシュ路線の中間というところ。
これだけならば、当時のポスト・デスメタルの手法としては比較的メジャーな選択肢ですが、本作の場合、そこにスペーシーなサイケデリアを感じさせるドゥーミィなテイストが加わり、それらの中でもひときわ独自性の強いサウンドに仕上がっています。
ハードロッキンなデスメタルとしては、CARCASSの“Rot’n’Roll”の後ながらも“Swansong”には先駆けており、ほぼ同時期と言っていいでしょう。
にもかかわらず、「Swansongの出来損ない」と揶揄され、不当に過小評価を受けがちな不遇のアルバムですが、そもそも、本作の場合“デスンロール”というより“ドゥーム・スラッシュ”や“ストーナー・スラッシュ”とでも呼ぶべきサウンドで、根本的なベクトル自体がやや異なっています。
過去作と同様にケレン味に欠け、やや地味な点だけは否めませんが、T-01やT-03などはポスト・スラッシュの名曲ですし、独創的なエクストリーム・メタルに興味があれば一聴の価値はあります。
|スラッシュ度:★★★★★
|ハーコー度:★★★★☆
|ドゥーム度:★★★★☆
|グルーヴ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Corporation$|コーポレイーションズ
EP:ミニアルバム (2004年)
前作のリリース後に一度解散したのち、間をおいて活動を再開したタイミングで、手始めにドロップされたミニアルバム。
インダストリアル・ミックスなども含む実験的な作風で、デスメタラー/デスラッシャーの受けは良くありませんが、類型的なスタイルに陥るまいとする心意気は感じられます。
|スラッシュ度:★★★☆☆
|ハーコー度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★☆☆☆
|グルーヴ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Spirit in Flames|スピリット・イン・フレイムス
オリジナルアルバム – 5作目 (2005年)
再結成後初のフルレンスとなる本作も、CANCERらしさともUKシーンの特性とも言える、ケレン味の無さが際立った、やや地味なスタイルは解散前と同様。
グルーヴ・スラッシュにもハードコア・デスラッシュにも感じられる作風は、“Black Faith(4th)”に近い印象もありますが、よく聴くとそれともひと味違った、かなりユニークで独創的なサウンドを確立しています。
とりわけテクニカルというわけではないものの、変則的なセンスが光る彼らの持ち味が生きており、楽曲自体もスラッシュ/デスを含むヘヴィメタル文法ともハードコア文法とも、大きく異なるアン・スタンダードなものです。
スタイルこそ異なりますが、米国南部系の変態オルタナ・プログレ・メタルに通じる部分もあり、なかなかつかみどころのないサウンドは、好事家向けでで好みの分かれる面は否めませんが、ストレンジでオルタナティヴなエクストリーム・メタルを好み、通人を自認するリスナーなら要チェック。
本作リリース後に再度活動停止となるので、第2期CANCERとしては唯一のアルバムとなります。
|スラッシュ度:★★★★☆
|ハーコー度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★★☆☆
|グルーヴ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Shadow Gripped|シャドウ・グリップド
オリジナルアルバム – 6作目 (2018年)
二度目の再結成を果たした第3期CANCERの幕開けを飾るアルバム。
直近数作での実験的な試みは棚上げにして、初期のオールドスクールなデスメタルに回帰した作風ですが、現代的な音づくりと過去には見られなかったエッセンスも詰め込んで、単なるセルフ・リバイバルにはとどまらない作品に仕上げています。
作風は、MORBID ANGELを思わせるような、わかりやすいアメリカン・デスメタル・テイストがかなり強まっており、彼らが好むダウンテンポも、心地よい疾走感を邪魔しない程度に効果的に用いられています。
ブリティッシュ・デスメタルの中では、かなり一般受けを意識したアプローチですが、それはかなりの成功を見せており、やや“置きに行った感”が強いものの、高品質で完成度の高いアルバムです。
本作には、ゴシックメタル・バンドによるデスメタル・ユニットBLOODBATHにも参加している、KATATONIA(カタトニア)のアンダース(Anders Nyström)らもゲスト参加しています。
|スラッシュ度:★★★★☆
|ハーコー度:★★★★☆
|ドゥーム度:★★★☆☆
|グルーヴ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み
Ballcutter|ボールカッター
EP:ミニアルバム (2019年)
CANCERはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
CANCERのアルバムで人気が高いのは、やはり初期の3作品ということになるでしょう。
この3作品は、アルバムごとにアメリカン・テイストやフロリダ的なテクニカル要素を強めてゆき、やや作風にも変化が見えるので、その度合いによってお好みの1枚をチョイスするといいでしょう。
ブリティッシュ・テイストが強めの、疾走感あふれるストレートなデスメタル・サウンドが好みなら、『To the Gory End(1st)』。
また、カリスマ・ギタリスト、ジェームズ・マーフィのテクニカルなギタープレイが聴けるのは、『Death Shall Rise(2nd)』だけです。
フロリダのDEATHの中期サウンドを思わせるような、テクニカル・デスに接近したサウンドなら、『The Sins of Mankind(3rd)』ということになります。
ただし、オーソドックスなデスメタルを楽しむならば、(1st)を現代的にブラッシュアップしつつ、フロリダ風味を増したような『Shadow Gripped(6th)』の方が、完成度も高く安定感もあってオススメかもしれません。
グルーヴィ&ドゥーミィなヘヴィロッキン・サウンドを極めた『Black Faith(4th)』や、一風変わった変則的でオルタナティヴなストレンジ・デスの『Spirit in Flames(5th)』といった、一般に異色作として評価の低いアルバムも、クオリティ自体は高いので、それぞれの作風が好みに合うなら一聴の価値アリです。