Contents
- 1スラッシュメタル,デスメタル,ブラックメタル…名実ともに全エクストリーム・ミュージックの原点としてVENOMと並び立ち、世界中に遺伝子を拡散させ続けるUKハードコアの最重要バンド!!
- 1...1ハードコアの基礎を確立した英国のパイオニア!!
- 1...2現代エクストリーム・ミュージックの始祖!?
- 1...3DISCHARGEは北欧デスメタルへの影響大!?
- 1...4DISCHARGEの存在価値は初期だけ!?
- 1...5初期のファストなハードコアへ回帰!?
- 1.1DISCHARGE|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Fight Back|ファイト・バック
- 1.1.2Why|ホワイ
- 1.1.3Hear Nothing See Nothing Say Nothing|ヒア・ナッシング・シー・ナッシング・セイ・ナッシング
- 1.1.4Grave New World|グレイヴ・ニュー・ワールド
- 1.1.5Massacre Divine|マサカー・ディヴァイン
- 1.1.6Shootin Up the World|シューティン・アップ・ザ・ワールド:狙撃せよ!
- 1.1.7Discharge|ディスチャージ
- 1.1.8Disensitise|ディセンシタイズ
- 1.1.9End of Days|エンド・オブ・デイズ
- 1.2DISCHARGE|DISCOGRAPHY|オムニバスアルバム
- 1.2.1Vision of War|ヴィジョンズ・オブ・ウォー
- 1.2.2Society's Victims|ソサイアティズ・ヴィクティムズ
- 1.2.3Early Demo's March-June 1977|アーリー・デモズ 1997年3月〜7月
- 1.1DISCHARGEはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 1.1.3.1やはりDISCHARGEは初期こそ至高!?
- 1.1.3.2ファストなハードコアが好みなら後期作品もイケる!?
- 1.1.3.3黒歴史扱いのメタル期は隠れた名盤ぞろい!?
スラッシュメタル,デスメタル,ブラックメタル…名実ともに全エクストリーム・ミュージックの原点としてVENOMと並び立ち、世界中に遺伝子を拡散させ続けるUKハードコアの最重要バンド!!
DISCHARGE(ディスチャージ)は、イギリスを代表するハードコア・パンク・バンド。
ハードコアの基礎を確立した英国のパイオニア!!
DISCHARGEは、ロックンロールをベースとした初期パンクに近いスタイルでデビューしていますが、それをより一層加速させより過激に発展させ、ヴォーカルもダーティで過剰なものとした、“エクストリーム進化系”としてのジャンルである『ハードコア・パンク』を確立させます。
パンク・ムーヴメントの最中の1977年に結成されて、キャリアは40年を超えており、シーンの中でも最古参にあたり、名実ともに英国のハードコア・シーンのトップに位置する、ハードコアの代名詞とも言えるグループです。
後世の影響力の大きさでも知られており、特徴的なサウンドを踏襲したフォロアーや、影響下にあるグループは無数にのぼり今も後を絶ちません。
DISCHARGEの直系のフォロアーは、オールド・リスナーからは“ディスコア”と、近年では“Dビート”とも呼ばれ、ハードコア・シーンにひとつジャンルを形成するまでになっています。
現代エクストリーム・ミュージックの始祖!?
DISCHARGEの存在は、多岐にわたる後年のエクストリーム・ミュージックの原点として現在に至るまで絶大な影響を及ぼしています。
その影響下にあるジャンルは、スラッシュメタル,デスメタル,クラストコア,グラインドコアはもちろんのこと、スピードメタル/パワーメタル,ブラックメタル.グルーヴメタル,ドゥームメタル、メタルコアなど多岐にわたります。
その影響力の大きさと範囲の広さにおいては、同時期のN.W.O.B.H.M.(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティシュ・ヘヴィ・メタル)シーンのカルト・バンド、VENOM(ヴェノム)と双璧とも呼べる位置にあります。
DISCHARGEは北欧デスメタルへの影響大!?
スウェーデンには、DISCHARGEの影響下にあるクラスト(コア)のシーンが存在し、英国に次ぐほどの人気を持っていたこともあり、同国のデスメタル/ブラックメタルの多くがディスコアやクラスト(コア)を音楽性のベースとしていました。
近年のメタル界隈では、スカンジナビアン(北欧)・デスメタル/メロデスを基調としたメタルコアが、ヘヴィメタルのメインストリーム広い人気を得ていることもあり、そのメタルコアの間接的なルーツとして、DISCHARGEもクラスト(コア)と共に再評価の機運が高まり、新規リスナーの間でも広く知られるようになっています。
DISCHARGEの存在価値は初期だけ!?
DISCHARGEの音楽性や後続シーンへの貢献に対する栄誉は、多くのハードコア・バンドと道央にEPとシングル中心の作品展開を行っていたキャリアの初期に集中しており、それ以降の作品展開は賛否が分かれ、おおむね否定的に捉えられています。
これは、フロントマンのケルビン・カル・モリスとドラムのガリー・マロニー以外の主要メンバーが脱退したことに端を発しています。
その後、1986年の2ndアルバム以降は、ヘヴィメタルにも接近しつつ、ヘヴィミュージックのトレンドを視野に入れた実験的なアプローチを試み、初期とは大きく異なるスタイルを展開したことでファンの不評を買う結果にを招きます。
そのため、非常に毀誉褒貶の激しい存在となり、保守的なハードコアファンの間では「DISCHARGEは初期以外は価値が無い」という見方が主流です。
一方で、その実験的展開も、単に時流に乗っただけにとどまらないユニークな音楽性に結実していたことも事実で、DISCHARGEが硬直化した様式美ハードコアとは異なり、ヘヴィメタルなど他ジャンルへのリスペクトと柔軟で実験的な精神を持っている証でもあり、それを正当に評価する声もあります。
初期のファストなハードコアへ回帰!?
90年代まではアルバムごとに異なる音楽性を試みていたDISCHARGですが、2000年以降は初期のメンバーが再集結したのを機に、再び初期に近いファストチューン主体の、ストレートなハードコア・サウンドへと回帰しています。
現在は、長年バンドを支えたモリスとマロニーが脱退しており、他の初期メンバーによって活動を継続中。
ファストチューンを主体とした原点回帰路線のスタイルを展開していますが、ヘヴィメタリックなサウンドな音づくりから、それ以前と同様に保守的なハードコア・リスナーからの評価も割れています。
DISCHARGE|DISCOGRAPHY
Fight Back|ファイト・バック
ミニアルバム:EP (1980年)
まだパンキッシュな色合いが残った作風ながら、パンクの枠を超えた域に踏み込んで、ハードコアの基本型に到達しつつあります。
そのサウンド形成に際しては、何といってもMOTORHEADの存在が大きく、そこからの影響がリフワークなどに濃厚に漂っています。
|メタル度:★★☆☆☆
|グルーヴ度:☆☆☆☆☆
|スピード度:★★★★☆
|ヘヴィネス:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 実験作
Why|ホワイ
EP (1981年)
EP・シングルをメインで展開していたアルバムデビュー以前の作品の中では、最も知名度の高い1枚で、数年遅れながら日本盤もリリースされています。
最初期のパンク然としたサウンドの名残を感じさせつつも、スピード/ヘヴィネス共にさらにエクストリームに強化されており、デビューアルバムで完成を見せたDISCHARGE流ハードコアに近づいています。
やはりMOTORHEADの影響は感じられるものの、そのストレートな直系サウンドからは脱して、“エクストリーム進化系”といった域に到達しており、同時期のVENOMの存在が視野に入っていたかはともかく、それとも重なるスタイルとなっています。
一部のハードコアバンドの界隈では、初期のシングルやEPこそ至高という風潮もありますが、本作も同様で、パンク志向のハードコアファンからは、デビューアルバム以上の評価を受けることもあります。
|メタル度:★★★☆☆
|グルーヴ度:☆☆☆☆☆
|スピード度:★★★★☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
DISCHARGE ディスチャージ / Why Red Vinyl
Hear Nothing See Nothing Say Nothing|ヒア・ナッシング・シー・ナッシング・セイ・ナッシング
オリジナルアルバム – 1作目 (1982年)
パンクとエクストリームなヘヴィメタルとMOTORHEAD直系サウンドがブレンドされ、ケミカル・リアクションを起こした、ファストでソリッドなサウンドを展開するハードコアの原点ともいえるアルバム。
音楽性については、基本的には“Why (EP)”あたりの発展系とも言えるものですが、エクストリミティはさらに大幅に上乗せされており、ロックンロールベースのパンクやの枠から完全に逸脱した、独自のハードコア・スタイルを確立しています。
しかし、ただでさえそれほど多くないDISCHARGEのフルアルバムの中でも、この本来のDISCHARGEサウンドが聴くことができるのは唯一本作のみとなります。
VENOMと共にエクストリーム・ミュージックのモニュメントを打ち立てた歴史的アルバムとして、メタリック・ハードコアやグラインドコアのファンはもちろんのこと、スラッシャー、デスメタラー、ブラックメタラーまで、あらゆるエクストリーム・メタル・フリークが必聴の重要作です。
|メタル度:★★★☆☆
|グルーヴ度:★☆☆☆☆
|スピード度:★★★★★
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Grave New World|グレイヴ・ニュー・ワールド
オリジナルアルバム – 2作目 (1986年)
フロントマンのケルビン・カル・モリスとドラマー以外の主要メンバーが抜け、モリス主導の体制となったアルバム。
一般には、ヘヴィメタル化したとして物議を醸し、ハードコアシーンの大多数からは当然のように不評を買うハメになり、「迷走期に突入」とも「DISCHARGEの終焉」とも評され、ベストアルバムでもほぼピックアップされることの無い不遇なアルバム。
メタル化とは言っても、当時の最先端だったスラッシュメタル/パワーメタルへと接近したわけではなく、むしろオールドスクールなハードロック/ヘヴィメタルに近く、BLACK SABBATHやLED ZEPPELINなどの70年代ハードロックをベースに、彼らなりのヘヴィメタルを構築したと…いったところ。
ヴォーカルもメタルを意識してか、ダーティなシャウトからハイトーンへ歌唱法を改めていますが、メタラーが好む歌唱力と広音域重視のものではなく、オジー・オズボーンなどの流れをくむ脱力系ヘタウマ・ハイトーンです。
そのため、ハードコア界隈はおろかメタル界隈でも評価されないという、なかなかにおつらい位置付けに置かれていますが、独自のセンスでユニークなサウンドをつくり上げており、スルメ系の通好みな作風ながら、半端な様式メタルや様式ハードコアよりは聴きごたえのあるアルバムです。
|メタル度:★★★★☆
|グルーヴ度:★★★☆☆
|スピード度:★★★☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Massacre Divine|マサカー・ディヴァイン
オリジナルアルバム – 3作目1 (1991年)
短期的な解散状態を挟み、引き続きケルビン・カル・モリスとガリー・マロニー主導のまま、メンバーを一新させたアルバム。
一般にはDISCHARGEの迷走期と称される、ヘヴィメタル路線の第2弾ですが、第1弾の前作とは全く異なる同時代的なヘヴィミュージックのトレンドを導入した新機軸を模索しています。
とはいっても、当時のUKハードコアの新潮流だったエクストリームなグラインドコア系のサウンドではなく、大雑把に言うなら、アメリカのスラッシュ/ハードコア界隈で流行していたファンクメタル風のアプローチ。
バウンシーで躍動感のあるファンキーなグルーヴを導入した、ある種のミクスチャー・サウンドともいえるものです。
しかし、そこはDISCHARGEらしく一筋縄ではいかない独創的なアプローチを展開しており、ニューヨーク・クロスオーバーなどに見られるミクスチャーのステレオタイプからはかけ離れた、ユニークなサウンドに仕上がっています。
曲調についてはミッドテンポのヘヴィグルーヴからアップテンポまでと多彩で、初期とは異なるもののファストチューンも見られますが、その中でも、メロディアスでエモーショナルなリフワークを導入したT-10は、彼らのキャリア中でもひときわ特異な作風で異彩を放つナンバーで、AT THE GATESのメロデッィック・デスラッシュの原型にもなったと思しき隠れた重要曲でもあります。
|メタル度:★★★★☆
|グルーヴ度:★★★★☆
|スピード度:★★★☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 賛否両論 通好み 実験作
Shootin Up the World|シューティン・アップ・ザ・ワールド:狙撃せよ!
オリジナルアルバム – 4作目 (1993年)
引き続き、ケルビン・カル・モリスとガリー・マロニー主導の体制で制作されたアルバム。
前作と同様に、アメリカのヘヴィミュージックのトレンドを独自の解釈で再構成したような、DISCHARGE流アプローチを展開していますが、本作ではファンキーなミクスチャー風味は減退してヘヴィグルーヴが強化されています。
ヘヴィグルーヴ路線とは言っても、前作同様に全体的にアップテンポでファストな展開を見せることも多く、前2作のようなハードコアとしては異端が過ぎる作風でもないので、US系のクロスオーバーに近い感覚で聴くことができます。
あえて言えば、ストロングスタイルのメタリックなヘヴィハードコアといったところですが、もっと広義的な意味での“メタリック・ハードコア”とでも呼ぶべきかもしれません。
初期以外は全否定の原理主義者には到底認めがたいであろう音楽性で、一般的には概ね不評。
そのためか、これ以降は90年代のハードコアブームの最中も、ベスト盤/コンピレーションのみを何度もリリースするのみで、目立った活躍は見られない状況となります。
しかし、相変わらずDISCHARGE流の高品質で独創的なハードコア・サウンドが聴ける上質なアルバムに仕上がっていますし、本作は特にフックが効い た楽曲がそろっており、ビギナーやメタルファンの入り口にも適した1枚と言えます。
|メタル度:★★★★★
|グルーヴ度:★★★★☆
|スピード度:★★★☆☆
|ヘヴィネス:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 入門盤 賛否両論 実験作
Discharge|ディスチャージ
オリジナルアルバム – 5作目 (2002年)
90年代のハードコア・ブームの最中は鳴りを潜め続けていたDISCHARGEですが、再び短期的な解散状態を挟んで創設時のメンバーが再集結。
ドラムスは1stから在籍していたガリー・マロニーが脱退し、創設メンバーのテリー・テッツ・ロバーツが復帰しています。
9年越しの新作となる本作では音楽性も原点回帰を行っており、初期に近いファストチューン主体のハードコアを展開していますが、完全にそのころの作風というわけではなく、90年代ハードコア・ブームの中心にあったアメリカの、ヘヴィメタリックなサウンドも取り入れるなど、多少のアップデートも施されています。
爽快な疾走感を持つ楽曲は適度にキャッチーで聴きやすく、無難にまとまった手堅い仕上がりを見せてはいるものの、“起死回生の一撃”的な凄みはさほど感じられず、エクストリーム進化と多様化が進んだこの時期のハードコアシーンにおいて、強烈なインパクトを刻めるようなものではありません。
そのため、“原点回帰”程度しかアピール・ポイントが無い上にハードコアブームの旬を逃したこともあって、同窓会的な印象が否めないのも事実ですし、意欲的で独創的なクリエイティビティという面で見れば、迷走期とされるモリス主導期の方がはるかに充実しています。
|メタル度:★★★★☆
|グルーヴ度:★★☆☆☆
|スピード度:★★★★☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤
Disensitise|ディセンシタイズ
オリジナルアルバム – 6作目 (2008年)
長年バンドを支え続けたケルビン・カル・モリスと、前作で復帰していた初期メンバーのテリー・テッツ・ロバーツ(Dr.)とが脱退。
トニー・ボーンズ・ロバーツ(Gt.)とレイ・レイニー・ウェインライト(Ba.)主導となり、80年代半ば〜90年代のモリス&マロニー時代とは、体制が完全に入れ替わっています。
音楽性はほぼ前作と変わらずで、初期のD-ビートと90年代のアメリカン・テイストをミックスしたような、ファストチューン主体のメタリックなハードコア。
しかし、ヘヴィメタル・テイストはより一層強化されて、ソリッドでスラッシーなサウンドとなっており整合感も強め。
実験性や新規性を感じさせる現在進行形の意欲的なアプローチは皆無ですが、さすがに手慣れた作風だけあって、楽曲は高レベル安定の手堅くまとまったアルバムに仕上がっており、キャッチーなフックも適度に効いているため、最後まででテンションが落ちずに一気に聴き通せます。
|メタル度:★★★★★
|グルーヴ度:★☆☆☆☆
|スピード度:★★★★★
|ヘヴィネス:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
入門盤
End of Days|エンド・オブ・デイズ
オリジナルアルバム – 7作目 (2016年)
スラッシュメタル・リバイバルやオールドスクール・デスメタルの再評価、さらにはエクストリームメタルの裾野の広がりもあり、それらの原点のひとつとして注目が高まった影響か、ドイツに拠点を置く大手メタル専門レーベル『ニュークリアブラスト』からのリリースとなったアルバム。
また本作では、前作では脱退していたドラムスのガリー・マロニーが、ギタリストとして復帰を果たし、ツインギター体制となっています。
音楽性も、前々作〜前作の流れの上にあるファストチューン主体の作風が踏襲しつつ、前作に輪をかけてヘヴィメタリックな音作づくりとなっており、曲によってはスラッシュメタル/クロスオーバーに近い感覚で聴くこともできます。
過去最高にメタルに寄ったサウンドということもあって、オールドファンの評価は割れがちですが、適度にキャッチーでクオリティの高い仕上がりについては近作と同様。
ファーストDISCHARGEをどれにすべきか迷っているメタラーならば、本作は歴史的名盤の1st以上に入りやすい1枚と言えますし、もちろんハードコアファンでも直近2作が受け入れられなら十分に楽しめるでしょう。
|メタル度:★★★★★
|グルーヴ度:★☆☆☆☆
|スピード度:★★★★★
|ヘヴィネス:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
入門盤
DISCHARGE ディスチャージ / End Of Days
DISCHARGE|DISCOGRAPHY|オムニバスアルバム
Vision of War|ヴィジョンズ・オブ・ウォー
コンピレーションアルバム (1997年)
数あるDISCHARGEのベスト盤の中でも唯一、一般的に迷走期/黒歴史とされる90年代までの“メタル期”にスポットを当てたことで異彩を放つ2枚組ベスト・セレクション。
『Grave New World(2nd)』についてはゼロ選曲という相変わらずの冷遇ぶりですが、ディスク2は隠れた名盤の『Massacre Divine(3rd)』と『Shootin Up the World(4th)』からの曲のみという、例外的な構成になっています。
世間の悪評にとらわれずに、自分の耳でDISCHARGEのキャリアを俯瞰しておきたいという、意欲的なビギナーにはうってつけのコンピレーションです。
Society’s Victims|ソサイアティズ・ヴィクティムズ
コンピレーションアルバム (2004年)
ライヴ音源も含む3枚組80曲という、ベスト・セレクションとしては全カタログ中でも最大のボリュームを誇るコンピレーション。
初期を中心にキャリアを抑えたいビギナーであれば、本作だけでもある程度こと足りるでしょう。
Early Demo’s March-June 1977|アーリー・デモズ 1997年3月〜7月
コンピレーションアルバム (2008年)
DISCHARGE結成直後の1977年に制作されたデモテープの音源に、80年代の初期音源を加えてCD化したもので、日本先行でリリースされていました。
ソリッドなリフにやや面影があるもののハードコア色は皆無で、ロックンロールベースでミドルテンポに毛が生えた程度の初期パンク・サウンドを展開しています。
翳りのあるモノトーンでフラットな作風は、どちらかというと『ポジティヴパンク』につながりそうな印象があり、それなりに魅力はありますが、楽曲はまだアイデアもシェイプも不足しており、資料的な価値が第一といったところです。
DISCHARGEはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
DISCHARGE作品については、ハードコア界隈からは「初期のシングルこそ至高!」という声が絶えません。
デビューアルバム以降作風が一変しているのも事実で、初期からのファンがが戸惑い評価が割れるのもやむを得ない面は確かにあります。
とはいえ、いずれも及第点を軽々と上回って有り余る水準をキープしているので、懐の広いリスナー空は高胃評価を得ていますし、作風に好みが合いさえすれば深く刺さることは間違い無いでしょう。
やはりDISCHARGEは初期こそ至高!?
DISCHARGEのキャリアは、ロック史/パンク史/メタル史…どの視点で見ても、重要な役割を果たしたという意味では初期が大きな意味をもていることは否定しようがありません。
何はともあれ、“D-beat”“ディスコア”の原点に触れたいハードコア・ファンのみならず、エクストリームなロック/メタルを深掘りしたり一家言持ちたいと考えるならば、『Hear Nothing See Nothing Say Nothing(1st)』を聴かないことには何も始まりません。
もはや必修科目どころか、読み書き算数一般常識のレベルの基礎教養です。
それ以前のEP『Fight Back』『Why』も初期の定番ですが、手っ取り早く初期を中心に広く聴きたければ、ベストアルバムが最適でしょう。
曲数の多さなら『Society’s Victims』、選曲のバランスならば『Vision of War』がオススメです。
ファストなハードコアが好みなら後期作品もイケる!?
軽い感じでDISCHARGE流のファストなハードコアに触れてみたいというビギナーなら、現代的なヘヴィな音づくりの『Discharge(5th)』『Disensitise(6th)』『End of Days(7th)』あたりから入るのもいいでしょう。
なお、この3作はクオリティの差はそれほどありませんが、後になるほどメタル度は濃厚さを増してゆき、ほとんんどメタル感覚で聴けるまでなっているので、後期は特にメタラーの入り口にも最適です。
黒歴史扱いのメタル期は隠れた名盤ぞろい!?
ヘヴィメタルやアメリカの先端モードに接近したした80年代中期から90年代にかけては、多くのオールドファンやハードコアファンには不評で、一般的にも駄作だらけの迷走期と見なされています。
しかし、この時期は3枚のアルバムは、それぞれ音楽性を一変させながらも、常に独創的で上質な仕上がりを見せているので、ユニークなヘヴィサウンドを求めるリスナーなら、どれも一聴の価値があります。
『Grave New World(2nd)』はメタル期の口火を切ったアルバムとして、この3作の中でも特に評価が低いアルバム。
確かにやや手探りで消化不良気味なのも事実ですし、玄人向けのクセの強さもありますが、CIRITH UNGOLなどに代表される“80年代初頭のアメリカの垢抜けないB級メタル”を嗜むような好事家であれば楽しめるでしょう。
『Massacre Divine(3rd)』は、変則的なファンク・メタルが軸となったアクの強い作風で、この3作中でも特に聴き手を選びそうな一筋縄ではいかないアルバムですが、変態的なストレンジ・サウンドを好むリスナーなら押さえておきたい1枚。
一方で、かのAT THE GATESの元ネタにもなった、メロリフを駆使したメロデスの原点たる重要曲も収録されているので、その意味でも必携です。
『Shootin Up the World(4th)』は、現在の感覚でも十分に通用するヘヴィネスとグルーヴ重視のメタリック・ハードコア。
ダークで圧の強い作風ながら疾走パートも多く緩急もあるので、今の時代では3作中で最も聴きやすく間口の広いと言えるサウンドですし、ある意味ではようやく時代この作品に追いついたとも考えられます。