Contents
- 1ネオクラシカル様式美早弾きギターヒーローの元祖リッチー・ブラックモアが、DEEP PURPLEのを脱退して重厚な欧州的メタル美意識とアメリカでの商業的成功を追求した、毀誉褒貶が絡み合うハードロック・バンド!!
- 1...1理想を求め深紫から虹色へ!?
- 1...2カリスマ・メタルシンガーを発掘!!
- 1...3意外にもUSルーツテイスト濃厚!?
- 1...4“様式美系”スタイルからポップ路線へ!?
- 1...5終焉と再始動、そして趣味の世界へ…
- 1...6再結成RAINBOWの明日はどっちだ!?
- 1.1RAINBOW|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Ritchie Blackmore's Rainbow|リッチー・ブラックモアズ・レインボウ:銀嶺の覇者
- 1.1.2Rising|ライジング:虹を翔る覇者
- 1.1.3Long Live Rock 'n' Roll|ロング・ライヴ・イン・ロックンロール:バビロンの城門
- 1.1.4Down to Earth|ダウン・トゥ・アース
- 1.1.5Difficult to Cure|ディフィカルト・トゥ・ケア:アイ・サレンダー
- 1.1.6Straight Between the Eyes|ストレイト・ビトウィーン・ジ・アイズ:闇からの一撃
- 1.1.7Bent Out of Shape|ベント・アウト・オブ・シェイプ:ストリート・オブ・ドリームス
- 1.1.8Stranger in Us All|ストレンジャー・イン・アス・オール:孤高のストレンジャー
- 1.1BLACKMORE'S NIGHT[ブラックモアズ・ナイト]|DISCOGRAPHY
- 1.1.8.1フォーキー・プログレが原点!?
- 1.1.8.2ニューエイジやゴシックの影響も!?
- 1.1.8.3BLACKMORE'S NIGHTのターゲットは!?
- 1.1.9Shadow of the Moon|シャドウ・オブ・ザ・ムーン
- 1.1.10Fires at Midnight|ファイアーズ・アット・ミッドナイト
- 1.1.11Fires at Midnight|ファイアーズ・アット・ミッドナイト
- 1.1.12Ghost of a Rose|ゴースト・オブ・ア・ローズ
- 1.1.13The Village Lanterne|ヴィレッジ・ランターン
- 1.1.14Winter Carols|ウィンター・キャロルズ
- 1.1.15Secret Voyage|シークレット・ヴォヤージ
- 1.1.16Autumn Sky|オータム・スカイ
- 1.1.17Dancer And The Moon|ダンサー・アンド・ザ・ムーン
- 1.1.18All Our Yesterdays|オール・アワ・イエスタデイズ
- 1.1RAINBOWはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- Ritchie Blackmore’s Rainbow|リッチー・ブラックモアズ・レインボウ:銀嶺の覇者
- Rising|ライジング:虹を翔る覇者
- Long Live Rock ‘n’ Roll|ロング・ライヴ・イン・ロックンロール:バビロンの城門
- Down to Earth|ダウン・トゥ・アース
- Difficult to Cure|ディフィカルト・トゥ・ケア:アイ・サレンダー
- Straight Between the Eyes|ストレイト・ビトウィーン・ジ・アイズ:闇からの一撃
- Bent Out of Shape|ベント・アウト・オブ・シェイプ:ストリート・オブ・ドリームス
- Stranger in Us All|ストレンジャー・イン・アス・オール:孤高のストレンジャー
ネオクラシカル様式美早弾きギターヒーローの元祖リッチー・ブラックモアが、DEEP PURPLEのを脱退して重厚な欧州的メタル美意識とアメリカでの商業的成功を追求した、毀誉褒貶が絡み合うハードロック・バンド!!
RAINBOW(レインボウ)は、イギリスを拠点とした英米ミュージシャンを中心とした混合ハードロック/ヘヴィメタルバンド。
理想を求め深紫から虹色へ!?
RAINBOWは、〈DEEP PURPLE(ディープ・パープル)〉に在籍していた、“元祖ネオクラシカル早弾きギターヒーロー”のリッチー・ブラックモアのソロプロジェクトに近いグループ。
パワーバランスが拮抗してブラックモア自身のエゴを通せない〈DEEP PURPLE〉から離れ、自身の理想とする音楽性を自由に追求するためのプロジェクトとして結成されたものです。
後に米国では〈オジー・オズボーン〉に比肩するメタルアイコンとなる〈ロニー・ジェイムズ・ディオ〉が、本格的に世に出たグループとしても知られています。
カリスマ・メタルシンガーを発掘!!
RAINBOWは英米を中心とした混成バンドで、メンバーはブラックモア以外は流動的ですが、カリスマ・ドラマーのコージー・パウエルらに代表される腕利きミュージシャンを、常時そろえていました。
特に、ヴォーカリストの発掘には定評があり、当時のメタル/ハードロック界隈では無名だった逸材が、RAINBOWでの活躍を機にシーンのトップシンガーとして認められるようになります。
過去に在籍していたヴォーカリストとしては、〈ロニー・ジェイムズ・ディオ〉を筆頭に、ダンディなポップ・シンガーながら最強メタル・ヴォーカリスト候補にもカウントされる〈グラハム・ボネット〉、様式美界隈のセッション・ヴォーカリストとして高いニーズを誇った〈ジョー・リン・ターナー〉などが挙げられます。
意外にもUSルーツテイスト濃厚!?
RAINBOWは、プログレをルーツにした欧州的なネオクラシカル・テイストや、ディオのリーダーバンドである〈DIO〉の原点ともいえる、重厚なドラマティック&ファンタジック・サウンドなどを取り入れた、いわゆる“様式美系”色の強いプロト・ヘヴィメタル的なハードロックで知られています。
しかし、初期の頃から根本にあるのは、ブルーズやロックンロールなどのアメリカン・ルーツミュージックをベースとしたハードロックで、それを主軸に、それらの“様式美系”要素を取り入れたスタイルを展開していました。
“様式美系”スタイルからポップ路線へ!?
その“様式美系”路線はそのままにソリッドな質感を増した、プロト・ヘヴィメタルと呼ぶべきサウンドを追求してゆき、のちの代表的なヘヴィメタル様式美…“クラシカル&シンフォニック&ドラマティック&ファンタジック”路線の形成にひと役買います。
しかし、80年前後になると、イギリスに代わって最大のメタル市場となったアメリカのメインストリームも視野に入れて、ブラックモア自らが率先して産業ロック/ポップメタルを取り入れた、ポピュラリティ優先のコマーシャルなスタイルへと移行してゆきました。
終焉と再始動、そして趣味の世界へ…
1984年の〈DEEP PURPLE〉の再結成にブラックモアが参加、それを活動の中心に据えたことでRAINBOWは解散となります。
しかし、多くの予想通り〈DEEP PURPLE〉との関係はまたしても悪化。
再び袂を分かったことから、1994年にはすぐさまRAINBOWの活動を再開しました。
しかし、これは世界的な成功にはつながらなかったこともあってか、アルバム1枚で早くも打ち止めとなり、1997年には再度活動停止となります。
ブラックモアは公私のパートナーであるキャンディス・ナイトとのユニット〈BLACKMORE’S NIGHT〉を結成、趣味性の強い中世コスプレのトラッド・ロック・バンドとして活動を続けています。
再結成RAINBOWの明日はどっちだ!?
その後、2015年に再びRAINBOWを再始動させ現在も活動中ですが、これはどちらかというと増加の一途をたどっていたメタルフェスなどもターゲットに入れた集金ライヴ用のユニットのようなもので、アルバムはリリースされていません。
メンバーもそれなりの知名度を持つのはキーボードのイェンス・ヨハンソンのみで、それ以外は〈BLACKMORE’S NIGHT〉での身内という、コストと使いやすさ最優先の体制となっています。
RAINBOW|DISCOGRAPHY
Ritchie Blackmore’s Rainbow|リッチー・ブラックモアズ・レインボウ:銀嶺の覇者
オリジナルアルバム – 1作目 (1975年)
ヴォーカルにロニー・ジェイムズ・ディオを迎えた、記念すべきデビューアルバム。
ディオはこれを機にブレイクして、後には、ブラックモアを超えるメタルアイコンとして世界的に名を成すこととなります。
ブラックモア、ディオともに、ネオクラシカルやファンタジー系エピックなど、メタル様式美の権化というイメージが定着していますが、ここで聴けるサウンドはそこから想像されるものとはやや異なるものです。
確かにそれらの要素も少なからず織り込まれていますが、両者ともブルーズやロックンロールなどのUSルーツミュージックに根ざしているだけに、ノリノリのロックンロールT-03, T-07や、ブルージーなT-02, ファンキーなT-05など、そのバックグラウンドが強く表出した曲が目立ちます。
そこからは、豊穣なルーツ・ミュージックを血肉として育ったブラックモア、ディオなどの世代と、孫引きを続けて良くも悪くも純化…ある意味では漂白された、現在のシンフォ/ネオクラメタル世代との差が見て取れます。
|ネオクラ度:★★☆☆☆
|ルーツ度:★★★★★
|様式美度:★★★☆☆
|産業ポップ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 通好み 実験作
Rising|ライジング:虹を翔る覇者
オリジナルアルバム – 2作目 (1976年)
“ドラムを抱いた渡り鳥”と呼ばれる、セッション系カリスマドラマーのコージー・パウエルが参加し、黄金期の布陣が整ったアルバム。
ルーツ色の強かった前作から一転、メタリックなヘヴィネスとソリッドな質感が大きく強化され、ディオのソロにもつながるようなプロト・ヘヴィメタル・サウンドが本格的に確立されてます。
アナログA面にあたる前半4曲は、1stの発展系といえるようなルーツミュージック色を感じさせる楽曲が並び、そのいずれも佳曲ではありますが、何といってもハイライトは、アナログB面にあたるヘヴィなT-05とスピードチューンT-06という、8分を超える大作ナンバー2曲。
どちらも、ブラックモアが追求してきたドラマティックな様式美サウンドを、ディオのアメリカンなヘヴィネスとポップセンスの力を借りて完成へと導いており、これは、これ以降のヘヴィメタル世代に多大な影響を与えることとなります。
|ネオクラ度:★★★☆☆
|ルーツ度:★★★☆☆
|様式美度:★★★★☆
|産業ポップ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Rainbow レインボー / Rising アナログレコード
Long Live Rock ‘n’ Roll|ロング・ライヴ・イン・ロックンロール:バビロンの城門
オリジナルアルバム – 3作目 (1978年)
ディオが参加している最後のアルバム。
前作で到達したプロト・メタル・サウンドを、さらにブラッシュアップしてシェイプすることで、よりポップでコンパクトな整合感を持ったヘヴィメタルを確立させています。
中でもスピードチューンのT-05は、〈JUDAS PRIEST〉の【Exciter】、〈RIOT〉の【Warrior】、〈MOTÖRHEAD〉の【Overkill】、〈SWEET〉の【Set Me Free】などと並んで、ヘヴィメタル様式の確立以前に生み出された、スピードメタル/パワーメタルの基本形となる超重要曲。
一方で、T-01やT-07などのポップなロックン・メタル・チューンは、これ以降の米国シーンを意識したマーケティング・メタル展開の予兆を漂わせていますが、いずれもクオリティ面では一分のスキもない完成度であり、前作と並ぶRAINBOWの代表作である事は間違い無しの名盤です。
|ネオクラ度:★★★☆☆
|ルーツ度:★★★★☆
|様式美度:★★★★☆
|産業ポップ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Down to Earth|ダウン・トゥ・アース
オリジナルアルバム – 4作目 (1979年)
本来はポップシンガーでありながら、エキセントリックな4オクターブ・ハイトーン・シャウトを武器に、メタル界最強ボーカルリストとして引く手数多となる、“メタル・ダンディ”ことグラハム・ボネットが、ハード/ヘヴィ界隈に名を成すきっかけとなったアルバム。
エッジの効いたヘヴィネスはそのままに、マーケットでの成功を意識したポップ路線に舵を切っており、当時メインストリーム対応の産業ロック/ポップロック化を進めていた、〈FOREIGNER〉や〈JOURNEY〉といったUSプログレハード・グループのサウンドにも通じる一面を持つ作風です。
音楽性の変化については当然のように賛否両論あるものの、スマッシュヒットとなったポップチューンT-01やT-05以外の曲も、軒並み水準を上回るクオリティであり、否定論者であってもその完成度には一目置かざるを得ないほどです。
ただし、最大のヒットとなったそのT-05はオリジナルではなく、UKハードロック・バンド〈ARGENT〉のメンバー、ラス・バラードの持ち曲のカバーです。
|ネオクラ度:★★★☆☆
|ルーツ度:★★★☆☆
|様式美度:★★☆☆☆
|産業ポップ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 賛否両論
Difficult to Cure|ディフィカルト・トゥ・ケア:アイ・サレンダー
オリジナルアルバム – 5作目 (1981年)
ブラックモアの推し進める商業ポップ路線への反発や、クリエイティヴ面の相違から、前作を最後にグラハム・ボネットとコージー・パウエルと決別。
このことからも、ブラックモアは一般的な“偏執的ネオクラシカル様式美の権化”というイメージ以上に、ビジネスライクな商売人という面が大きいことがわかります。
後任は、USロックバンド〈FANDANGO〉のフロントマンだったジョー・リン・ターナーと、〈BLACK SABBATH〉と〈BLUE ÖYSTER CULT〉という英米ビッグネームをはじめとした多くのバンドを渡り歩き、現在はジャーマンメタル〈AXEL RUDI PELL〉に在籍中のボビー・ロンディネリ。
ジャケットアートの重鎮ヒプノシスの手によるジャケットが印象的な本作は、メンバーチェンジとさらなるポップ路線の強化で、オールドファンから見限られるきっかけにもなったアルバムでもあります。
確かにもはや“AOR”としか呼べないような産業ポップ曲が増えていますが、ネオクラシカルなスピードメタルチューンの名曲T-02やヘヴィなT-08、ベートーヴェンの第九をカバー・アレンジしたT-09などで、オールドファンにも色目を使っています。
クオリティは決して低いわけではなく、インパクトのあるキラーチューンも存在するので、好き嫌いはあれどチェックして損のない1枚です。
バンド最大のヒットとなる、ドラマティックな哀愁のポップメタルT-01はまたしてもラス・バラードのカバー曲。この時期のRAINBOWにとってラス・バラードの存在は、もはや優秀な外部ソングライターとも影のメンバーとも呼べるほど重要なものでした。
|ネオクラ度:★★★☆☆
|ルーツ度:★★☆☆☆
|様式美度:★★★★☆
|産業ポップ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論
Straight Between the Eyes|ストレイト・ビトウィーン・ジ・アイズ:闇からの一撃
オリジナルアルバム – 6作目 (1982年)
引き続きヒプノシスによるアートワークの本作は、その中身もまた前作を引き継いでおり、やはりUS産業ロック/ポップロックテイストの強いアルバムです。
とはいえ、前作のようなマーケットを狙いすぎたAORチューンは姿を消し、やや初期への原点回帰も見られるスタイルとなっています。
それによってオールドファンの支持もいくぶん取り戻したようですが、良くも悪くも無難で守りに入った印象の強い仕上がりになっています。
毎度の目玉ファストチューンのT-01やヘヴィなT-05あたりは、それなりに印象に残るものの、過去の名曲と比べるとやや精彩を欠きますし、過去作には確実に見られたキラーチューンも不在。
それ以外もせいぜいが及第点どまりなので、あえて他のアルバムより優先して本作を選ぶ理由が見つからないのが弱点です。
|ネオクラ度:★★☆☆☆
|ルーツ度:★★☆☆☆
|様式美度:★★★☆☆
|産業ポップ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤 お布施
Bent Out of Shape|ベント・アウト・オブ・シェイプ:ストリート・オブ・ドリームス
オリジナルアルバム – 7作目 (1983年)
黄金期のメンバーは身内に近いロジャー・グローヴァーのみとなり、やや旬を過ぎたラストアルバムということもあって、注目度も評価もそれほど高くないものの、意外にも聴きどころの多いアルバムとなっています。
基本的には、メタル/ハードロックの最大マーケットとなった、アメリカのチャート狙いのここ数作の流れにあるものです。
その一方で、これまでの総決算的な面もあり、曲も近作で目立つ産業ロックやAOR調だけでなく、従来のネオクラシカルなスピードメタルや、〈DEEP PURPLE〉を思わせるオーソドックスなハードロックまで、なかなかに多彩な取り合わせとなっています。
今回は、アップテンポなトラックが比較的多めで、それが適所に配置されているため、最後まで勢いが途切れないのもアルバムの印象を良くしているポイントで、総合力では黄金期には及ばないものの、前作よりはアベレージは上回っています。
アートワークは引き続きヒプノシスですが、本作ではストーム・ソーガソン名義となっています。
|ネオクラ度:★★★★☆
|ルーツ度:★★☆☆☆
|様式美度:★★★☆☆
|産業ポップ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
入門盤 賛否両論 通好み
Stranger in Us All|ストレンジャー・イン・アス・オール:孤高のストレンジャー
オリジナルアルバム – 8作目 (1995年)
再結成〈DEEP PURPLE〉から再度脱退したブラックモアが再始動した、『RITCHIE BLACKMORE’S RAINBOW』名義による90年代RAINBOW唯一のアルバム。
今作でヴォーカルを務めるのは、いよいよ便利屋的な印象が染み付いてしまったドギー・ホワイトです。
解散前のアメリカンなヘヴィネスやポップテイストは払拭されて、欧州的美意識に覆われたサウンドとなっており、ときおり感じさせるダークな耽美志向には、シンフォ系のゴシックメタルにも通じる部分も見受けられます。
その辺りも含めて、のちの欧州系シンフォニック・メタルにもつながるサウンドですが、ここでもブルーズロック・テイストを感じさせる曲が見られたり、UKロックの先輩格〈YARDBIRDS〉をカバーするあたりに、様式美と同時にルーツにもこだわるブラックモアの特性が見て取れます。
良くも悪くもベテラン特有の新奇性に乏しいハードロックであり、ブラックモア信仰と美メロ/ネオクラシカル志向の強い日本やスウェーデンなどでこそヒットしたものの、それ以外ではブラックモアが期待したほどの成功には届かず、これ1枚で打ち止めとなります。
|ネオクラ度:★★★★☆
|ルーツ度:★★☆☆☆
|様式美度:★★★★☆
|産業ポップ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 お布施
BLACKMORE’S NIGHT[ブラックモアズ・ナイト]|DISCOGRAPHY
BLACKMORE’S NIGHT[ブラックモアズ・ナイト]は、ブラックモアとキャンディス・ナイトを中心としたコスプレ系トラッド/フォークロックバンド。
ナイトはルネサンス・マニアの元モデルで、現在はブラックモアのの公私でのパートナー的な立場にあり、再結成〈RAINBOW〉にも参加していました。
現在のコスプレ系シンフォニックメタルと同様に、コスプレ趣味を含む“中世欧州文化マニア”がひとつの大きな勢力となって、大掛かりなコスプレイベントも行われているという欧米文化事情が根底にあるバンドとも言えます。
フォーキー・プログレが原点!?
時期を考えれば、〈THE GATHERING〉らを筆頭としたトラッド/フォーク色を持つフィメイル・ゴシックメタルのブレイクが、ひとつの契機となって生まれたバンドであることは確実ですが、BLACKMORE’S NIGHTの音楽的なベースとなっているのは、プログレ文脈でも語られるフィメイル系フォーク/フォークロックです。
特に歌姫アニー・ハズラムを擁するシンフォ・フォーク・プログレの代表格〈RENAISSANCE〉や、70年代前後に活躍して“英国フォーク三美神(歌姫系フォークBIG3)“とも称される、〈MELLOW CANDLE〉, 〈SPIROGYRA〉, 〈TUDOR LODGE〉らからの影響は絶大です。
ニューエイジやゴシックの影響も!?
加えて〈CLANNAD〉や〈VÄRTTINÄ〉らに代表される、80年代以降のワールドミュージック文脈で注目された、欧州トラッドバンドや各地のニューエイジ/ヒーリング系のアーティストの存在も影響しています。
もちろん、〈ALL ABOUT EVE〉のようなトラッド・ゴシックといった、各シーンの歌姫系グループの存在も背後にあるのは間違いないところです。
BLACKMORE’S NIGHTのターゲットは!?
音楽的には、様式美UKロック出身ならではの、わかりやすい整合感やドラマティシズムといった持ち味はありますが、基本的には音楽的な実験性や探究心よりも、ブラックモアらの中世趣味と欧州的美意識の発露や、エピックバンドにありがちな世界観への耽溺が重視されています。
“伝統継承”をお題目に独自性の欠如が天引きされがちなスタイルとはいえ、近年のトラッドメタル/フォークメタルと比較しても独自の要素に乏しく、“メタルファンが前記のジャンル/バンドに至る足がかり”という以上のものにはなりえていません。
いずれにせよ、バンド自体がブラックモアらの趣味性の強いものであり、それに共感できるリスナーでなければBGM以上の意義は見出せないでしょう。
Shadow of the Moon|シャドウ・オブ・ザ・ムーン
オリジナルアルバム – 1作目 (1997年)
Fires at Midnight|ファイアーズ・アット・ミッドナイト
オリジナルアルバム – 2作目 (1999年)
Fires at Midnight|ファイアーズ・アット・ミッドナイト
オリジナルアルバム – 3作目 (2001年)
ファイアーズ・アット・ミッドナイト/CD/PCCY-01512
Ghost of a Rose|ゴースト・オブ・ア・ローズ
オリジナルアルバム – 4作目 (2003年)
The Village Lanterne|ヴィレッジ・ランターン
オリジナルアルバム – 5作目 (2006年)
Winter Carols|ウィンター・キャロルズ
オリジナルアルバム – 6作目 (2006年)
Secret Voyage|シークレット・ヴォヤージ
オリジナルアルバム – 7作目 (2008年)
Autumn Sky|オータム・スカイ
オリジナルアルバム – 8作目 (2010年)
Dancer And The Moon|ダンサー・アンド・ザ・ムーン
オリジナルアルバム – 9作目 (2013年)
ダンサー・アンド・ザ・ムーン(初回限定盤)/CD/MIZP-30006
All Our Yesterdays|オール・アワ・イエスタデイズ
オリジナルアルバム – 10作目 (2015年)
RAINBOWはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
RAINBOWのアルバムは作風は変われど概ね水準以上で、特に70年代の初期作品は傑作ぞろいです。
RAINBOWの代名詞たるプロト・メタル的な様式美サウンドならば、『Rising:虹を翔る覇者(2nd)』と『Long Live Rock ‘n’ Roll:バビロンの城門(3rd)』の2作はいずれも必聴です。
あえていえば、よりドラマティックな様式美色の強さでは『Rising:虹を翔る覇者(2nd)』、よりタイトでアグレッシヴなヘヴィメタリック・サウンドならば『Long Live Rock ‘n’ Roll:バビロンの城門(3rd)』がオススメです。
よりヴィンテージ風味かつ幅広い作風を持つ『Ritchie Blackmore’s Rainbow:銀嶺の覇者(1st)』も、やや通好みながらそれらに匹敵する名盤です。
もっとポップでコンパクトなメロディック・ハードロックが好みならば、『Down to Earth(4th)』か『Difficult to Cure:アイ・サレンダー(5th)』から入るといいでしょう。
全キャリアの総決算として多彩なが曲が並んだ再結成後の『Bent Out of Shape:ストリート・オブ・ドリームス(7th)』は、やや印象は薄く歴史的な意義も無いものの上記作品に劣らない力作です。