Contents
- 1スラッシュメタルとハードコアの理想的なクロスオーバーを実現したストロング・スタイルのクリシュナ・バンドは、ドロ沼の法廷構想でバンドの看板を争った末にふたつのCRO-MAGSに分裂!!
- 1...1クロスオーバーの代表格!!
- 1...2ハーレー・クリシュナ!!
- 1...3CRO-MAGSの音楽性は??
- 1...4頻繁なメンバーチェンジ!?
- 1...5ツートップの主導権争い!?
- 1...6二つのCRO-MAGSに分裂!!
- 1.1CRO-MAGS|DISCOGRAPHY
- 1.1.1The Age of Quarrel|ジ・エイジ・オブ・クゥオーラル
- 1.1.2Best Wishes|ベスト・ウィッシズ
- 1.1.3Alpha Omega|アルファ・オメガ
- 1.1.4Near Death Experience|ニア・デス・エクスペリエンス
- 1.1.5Hard Times in an Age of Quarrel|ハード・タイム・イン・アン・オブ・クゥオーラル
- 1.1.6Before the Quarrel|ビフォア・ザ・クゥオーラル
- 1.1.7Revenge|リヴェンジ
- 1.1.8Twenty Years of Quarrel and Greatest Hits|トゥウェンティ・イヤーズ・オブ・クゥオーラル・アンド・グレーテスト・ヒッツ
- 1.1.9In the Beginning|イン・ザ・ビギニング
- The Age of Quarrel|ジ・エイジ・オブ・クゥオーラル
- Best Wishes|ベスト・ウィッシズ
- Alpha Omega|アルファ・オメガ
- Near Death Experience|ニア・デス・エクスペリエンス
- Hard Times in an Age of Quarrel|ハード・タイム・イン・アン・オブ・クゥオーラル
- Before the Quarrel|ビフォア・ザ・クゥオーラル
- Revenge|リヴェンジ
- Twenty Years of Quarrel and Greatest Hits|トゥウェンティ・イヤーズ・オブ・クゥオーラル・アンド・グレーテスト・ヒッツ
- In the Beginning|イン・ザ・ビギニング
スラッシュメタルとハードコアの理想的なクロスオーバーを実現したストロング・スタイルのクリシュナ・バンドは、ドロ沼の法廷構想でバンドの看板を争った末にふたつのCRO-MAGSに分裂!!
CRO-MAGS(クロ-マグス)は、アメリカ合衆国はニューヨークのメタリックなハードコア・グループ。
クロスオーバーの代表格!!
CRO-MAGS(クロ-マグス)は80年代の初頭から活動をスタートしていますが、スラッシュメタルとハードコアのクロスオーバーである、『クロスオーバー・スラッシュ(単にクロスオーバーとも)』ムーヴメントの中で頭角をあらわし、シーンを代表するバンドのひとつとして数えられるようになります。
ハーレー・クリシュナ!!
CRO-MAGSは当初“クリシュナイズム”標榜し、それに関するアートワークをジャケットに起用するなど、前面に押し出していました。
このクリシュナイズムは、インドの神のひとりである『クリシュナ』を信奉するヒンドゥー教の一派。ニューヨークに関連教団が存在し、ヒッピー/ニューエイジ・ムーヴメントの中でも大きな役割を果たしました。
ハードコア・シーンにも信奉者が多いことで知られており、オリジナルメンバーでヴォーカリストのジョン・ジョセフもこれに帰依しています。
クリシュナイズムの教義には、のちの『ストレート・エッジ』の思想と重なる部分が大きく、その関連性は明言されていませんが何らかの影響を与えている可能性もあり、ハードコア・シーンへの広がりもそれに連なる要因が考えられます。
CRO-MAGSの音楽性は??
CRO-MAGSは、アルバムごとにスタイルを変化させていることでも知られます。
この変化は、基本的にはその時代ごとのヘヴィ・ミュージックのトレンドに準じたものであり、その要素はスラッシュメタルの他にもファンクメタル, グルーヴメタル, メロディック・ハードコアなど多岐にわたります。
これが要因となって、アルバムによってはリスナーからの賛否に大きな開きがあり、特にオールド・ファンはその変化を否定的に受け取る傾向にあります。
頻繁なメンバーチェンジ!?
CRO-MAGSのアルバムデビュー時のメンバーは、ハーレー・フラナガン(Ba.)、ジョン・ジョセフ(Vo.)、マッキー・ジェイソン(Dr.)、ダグ・ホランド(Gt.)、パリス・メイヒュー(Gt.)の5名。
メンバーチェンジは激しく、上記のメンバーのすべてのが何度かの脱退〜再加入を経験しています。
一般に、ハーレー・フラナガンとジョン・ジョセフがツートップと目されていますが、両者の確執は根深いものとなっています。
ツートップの主導権争い!?
格闘家でメンバー同士の刃傷沙汰も起こしたことで、ヴァイオレントでマッチョなイメージの強いハーレー・フラナガンと、クリシュナイズムとストレートエッジを標榜し、文化人的な側面も持つジョン・ジョセフでは、ファン層についてもいくらか異なります。
ただし、全てのスタジオ・アルバムに参加しているということもあってか、一般的にバンドの顔というイメージについては、フラナガンにやや分がある印象です。
二つのCRO-MAGSに分裂!!
しばらく休止状態にあったCRO-MAGSは、近年ジョン・ジョセフとマッキー・ジェイソンによって再結成され、ライヴを中心とした活動を展開していました。
しかし、2019年に弁護士を妻にもつハーレー・フラナガンが、CRO-MAGS名義の商標権を主張して法廷闘争に発展。それが認められて、オリジナルCRO-MAGSはフラナガン主導で仕切り直しを行っています。
一方、ジョン・ジョセフとマッキー・ジェイソンの側は改名を余儀なくされ、現在『CRO-MAGS JM』を名乗っていますが、現時点ではアルバム・リリースなど大きなアクションは見られません。(2021年現在)
なお、ジョン・ジョセフはオルタナティヴなポストハードコア・バンドBOTH WORLDSの活動で、マッキー・ジェイソンはハードコア・レジェンドBAD BRAINSやクリシュナコアのSHELTERのほか、LEEWAY, MADBALLなど多数の第一線グループへの参加でも知られています。
CRO-MAGS|DISCOGRAPHY
The Age of Quarrel|ジ・エイジ・オブ・クゥオーラル
オリジナルアルバム – 1作目 (1986年)
多くのクロスオーバー・バンドのデビュー・アルバムと同様に、この時点ではメタリックではあるもののハードコア・テイストが勝るスタイルで、曲も比較的短くコンパクトなものです。
ニューヨーク・ストロング・スタイルの、ひとつの典型例とも呼べるサウンドですが、初期衝動一直線のスピードと勢いだけのものではなく、キャッチーなフックと押し引きを心得た巧みな構成を見せています。
その音楽性から、特にハードコア・ファンからの人気の高いアルバムです。
|ハーコー度:★★★★★
|メタル度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤
Best Wishes|ベスト・ウィッシズ
オリジナルアルバム – 2作目 (1989年)
多くのクロスオーバー・バンドのセカンド・アルバムと同様に、スラッシュメタル/ヘヴィメタルのテイストが大幅に強化された作品。
その中でも、名曲T-05やT-06といったあたりは、パワーメタルや古典的なヘヴィメタル呼んでも一向に差し支えない仕上がりです。
曲も全体的に長めになって、5分超の曲も見られるようになっており、反比例して曲数は半数程度に収まっています。また、本作では、ジョン・ジョセフは不参加で、フラナガンがヴォーカルを取っています。
初めてジャケットにヒンドゥー教の神『ナラシンハ』のアートワークが起用されていますが、これは当時ジョン・ジョセフの影響でクリシュナイズムに傾倒していた、フラナガンの意向によるものです。
|ハーコー度:★★★★☆
|メタル度:★★★★☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Alpha Omega|アルファ・オメガ
オリジナルアルバム – 3作目 (1992年)
多くのクロスオーバー・バンドのこの時期のアルバムと同様に、グルーヴメタルのヘヴィグルーヴ、ミクスチャー・ロックのファンキーなリズムやラップ風のパーカッシヴなヴォーカル・スタイルが導入されたアルバム。
そして、やはり多くのクロスオーバー・バンドの同様のスタイルの作品と同じく、一般的にオールド・ファンからの支持率はかんばしいものではありません。
しかし、その風聞に反してその完成度は極めて高く、代表作とされてる初期の作品にも一切劣るものではありません。変化に富んだ楽曲はおおむね高水準に練り上げられており、ここでしか聴けない魅力もあります。
出戻りとなったジョン・ジョセフの歌唱も驚くほどに表現力とその幅を増しており、時にペーター・スティールやキース・カピュートのようなディープ・ヴォイスも聴かせ、楽曲の表情を豊かにして多様性を高めることに貢献しています。
曲調については、急展開を見せる長尺曲が多く、素直に没入して楽しみづらいあたりは、確かに好みの分かれる面はあります。
とはいえ、T-01, T-06, T-08などは前作のファンでも楽しめそうな作風ですし、そのT-09の後半になだれ込むジャムセッションも聴き応え十分で実力者ぶりを発揮しています。
|ハーコー度:★★★☆☆
|メタル度:★★★★☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Near Death Experience|ニア・デス・エクスペリエンス
オリジナルアルバム – 4作目 (1993年)
2nd以来のヒンドゥー神ジャケットですが、中身まで2nd路線に回帰したわけではなく、前作の延長線上にあるサウンド。
ただし、曲は前作よりもコンパクトで短めとなっており、T-03, T-04, T-06といったファスト・チューンの佳曲も聴くことができます。
当時は、NYHCシーンでもBIOHAZARDらの新鋭がシーンを更新していた変革期で、80年代のクロスオーバー勢もSUICIDAL TENDENCIESがサイド・プロジェクトのINFECTIOUS GROOVESの方に力を入れたり、CRUMBSUCKERSがPRO-PAINへと改名してより現代的なサウンドを追求したりと、次の時代を見据えたアクションが見られました。
それらの試みや、実験的とも表現できた前作と比較してしまうと、本作のアプローチからは行き詰まりと迷走感を拭うことができません。
本格的なラップコアやグランジ風のヘヴィロックは一応の新機軸とも呼べるものであり、中でもジョン・ジョセフの歌唱も相まってDANZIGを想起させるT-08には可能性も感じられますが、これらもオールド・ファンに受けのよいものとは言いかねます。
|ハーコー度:★★★☆☆
|メタル度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★★★☆
|ロッキン度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Hard Times in an Age of Quarrel|ハード・タイム・イン・アン・オブ・クゥオーラル
ライヴアルバム (1994年)
Before the Quarrel|ビフォア・ザ・クゥオーラル
初期音源コンピレーション (2000年)
Revenge|リヴェンジ
オリジナルアルバム – 5作目 (2000年)
ハードコアに回帰したという、触れ込みもあった復活作。それは一面では間違いではなく、確かに数曲においてはデビュー当初に近い雰囲気も味わえます。
しかし、アルバムの大半を占めるのは、当時再結成して人気を集めていたMISFITSの影響下にある、パッキッシュでロッキンなナンバー。
これは、80年代クロスオーバー・バンドのこの時期の作品にはよく見られた、90年代中盤からのメロディック・ハードコア/ポップ・パンク・ブームの流れをくむアプローチの一環です。
そこに自分たちなりの味付けも加えつつ、及第点レベルに仕上げてはありますが、オールドファンにとっては90年代の迷走期とされるアルバムと大差ないことでしょう。
本作はフラナガン体制で、ジョン・ジョセフとマッキー・ジェイソンは不参加。もしジョン・ジョセフがヴォーカルをとっていたら、その歌唱スタイルからMISFITSそのものになってしまっていた恐れもあります。
|ハーコー度:★★★★☆
|メタル度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★★★☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 実験作
Twenty Years of Quarrel and Greatest Hits|トゥウェンティ・イヤーズ・オブ・クゥオーラル・アンド・グレーテスト・ヒッツ
ベストアルバム (2006年)
In the Beginning|イン・ザ・ビギニング
オリジナルアルバム – 6作目 (2020年)
CRO-MAGSは前作リリース後に再び解散。それ以降というもの、ジョン・ジョセフ&マッキー・ジェイソン体制のCRO-MAGSが、ライヴを中心に10年間にわたって活動を続けていました。
本作は、フラナガンが訴訟によってジョン&マッキーから名義を勝ち取って、再結成した新生CRO-MAGSのアルバムとなります。
音楽性は、本格的に黄金期のアグレッシヴなクロスオーバー・サウンドを意識したスタイルで、そこに現代的なアレンジを加えたといった塩梅です。
ここでも、パンキッシュでロッキンなテイストは強めですが、今回はMISFITSではなくMOTORHEADテイスト。
それを、その発展系でもあるクラストコアを経由させて取り込むことで、前回のような“原型そのまま”なスタイルに陥ることは回避されています
もうひとつの新機軸は、一部のポストハードコア系にも見られるゴシックテイスト。
プログレ的ともいえるアトモスフェリックなインストのT-11や、ゴシックメタル風のT-12などはその最たるもので、T-08ではゴス&ロール風サウンドも聴かせますが、全体的に見ればアクセント程度にとどまっています。
この時期において斬新と言える要素は皆無とはいえ、かつてのストロング・スタイルなメタリック・ハードコアの懐古的な焼き直しに止まらないアレンジとしては、理想的…というのは言い過ぎとしても上々の出来栄えではあります。
|ハーコー度:★★★★☆
|メタル度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 実験作