Contents
- 1インダストリアルとデスメタルのハイブリッドを別次元の高みに押し上げた『エクストリーム・サイバー・メタル』で、ニューメタル時代の代表的フォーミュラとなった90年代最重要ヘヴィバンドのひとつ!
- 1...1FEAR FACTORYの音楽ジャンルは!?
- 1...2FEAR FACTORYサウンドの特徴は!?
- 1...3デスメタルとしてのFEAR FACTORY!?
- 1...4インダストリアル・メタルとしてのFEAR FACTORY!?
- 1...5インダストリアル“第2世代”としてのFEAR FACTORY!?
- 1...6グルーヴメタルとしてのFEAR FACTORY!?
- 1...7ニューメタルとしてのFEAR FACTORY!?
- 1...8ニューウェイヴ・リバイバルとしてのFEAR FACTORY!?
- 1...9FEAR FACTORYが後続に与えた影響は絶大!?
- 1...10FEAR FACTORYのいびつなバンド事情!?
- 1...11FEAR FACTORYメンバーの現在の活動!?
- 1.1FEAR FACTORY|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Concrete|コンクリート
- 1.1.2Soul of a New Machine|ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン
- 1.1.3Fear Is the Mindkiller|フィアー・イズ・ザ・マインドキラー
- 1.1.4Demanufacture|ディマニュファクチュア
- 1.1.5Remanufacture|リマニュファクチュア
- 1.1.6Obsolete|オブソリュート
- 1.1.7Digimortal|ディジモータル
- 1.1.8Hatefiles|ヘイトファイルズ
- 1.1.9Archetype|アーキタイプ
- 1.1.10Transgression|トランスグレッション
- 1.1.11Mechanize|メカナイズ
- 1.1.12The Industrialist|ザ・インダストリアリスト
- 1.1.13Genexus|ジェニュクサス
- 1.1.14Aggression Continuum|アグレッション・コンティニューム
- 1.1ASESINO|アセシノ|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Corridos de muerte|コリードス・デ・ムエルテ
- 1.1.2Cristo Satánico|クリスト・サタニコ
- 1.2DIVINE HERESY|ディヴァイン・ヘレシィ|DISCOGRAPHY
- 1.2.1Bleed the Fifth|ブリード・ザ・フィフス
- 1.2.2Bringer of Plagues|ブリンガー・オブ・プレイグス
- 1.3ARKAEA|アルカエア(アーキア)|DISCOGRAPHY
- 1.3.1Years in the Darkness|ユアーズ・イン・ザ・ダークネス
- 1.4POWERFLO|パワーフロ(パワーフロー)|DISCOGRAPHY
- 1.4.1Powerflo|パワーフロ(パワーフロー)
- 1.4.2Bring That Shit Back!|ブリング・ザット・シット・バック!
- 1.1FEAR FACTORYはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 1.1.2.1問答無用の必聴アルバムは!?
- 1.1.2.2好みの作風でアルバムを選ぶのもアリ!?
- 1.1.2.3エクストリーム路線でのオススメは!?
- 1.1.2.4ヘヴィグルーヴ路線でのオススメは!?
- 1.1.2.5メロディ/ポップ路線でのオススメは!?
- 1.1.2.6エレクトロニック路線のオススメは!?
- 1.1.2.7それ以外のオススメは!?
- Concrete|コンクリート
- Soul of a New Machine|ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン
- Fear Is the Mindkiller|フィアー・イズ・ザ・マインドキラー
- Demanufacture|ディマニュファクチュア
- Remanufacture|リマニュファクチュア
- Obsolete|オブソリュート
- Digimortal|ディジモータル
- Hatefiles|ヘイトファイルズ
- Archetype|アーキタイプ
- Transgression|トランスグレッション
- Mechanize|メカナイズ
- The Industrialist|ザ・インダストリアリスト
- Genexus|ジェニュクサス
- Aggression Continuum|アグレッション・コンティニューム
インダストリアルとデスメタルのハイブリッドを別次元の高みに押し上げた『エクストリーム・サイバー・メタル』で、ニューメタル時代の代表的フォーミュラとなった90年代最重要ヘヴィバンドのひとつ!
FEAR FACTORY(フィアー・ファクトリー)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のロスアンゼルスを拠点とする、インダストリアル・メタル・バンド。
FEAR FACTORYの音楽ジャンルは!?
FEAR FACTORYは、一般にインダストリアル・メタル、あるいはニューメタルのジャンルにカテゴライズされていますが、その音楽スタイルは複合ジャンルのハイブリッドによって形成されたものであり、他にもデスメタル,グルーヴメタルのジャンルの中でも扱われています。
FEAR FACTORYのサウンドの特徴は、エクストリームメタルをベースとして、そこにサイバーなテクスチャーやスペーシーなエフェクト、ニューウェイヴ/ポストパンク由来のメロディなどを加えた、『サイバーメタル』とでも呼ぶべきサウンド。
そして、デスヴォイスやそれに近いダーティなシャウトと、浮遊感のあるクリーンヴォイスを使い分けるヴォーカル・スタイルにあります。
FEAR FACTORYサウンドの特徴は!?
FEAR FACTORY特有の、デスヴォイス寄りのシャウトとヘヴィでアグレッシヴなサウンド通常パートから一転して、サビのパートではニューウェイヴ/エレポップ的なスペーシーで浮遊感のあるサウンドをバックに、クリーンヴォイスでエモーショナルなメロディーを歌い上げるというスタイル。
これは当時のニューウェイヴサウンド・リバイバルを背景にしたものとも言えますが、これも後にニューメタル/メロデス/メタルコアなどの定番フォーミュラとなります。
また、FEAR FACTORYは、デスヴォイスとスペーシーなクリーンヴォイスを組み合わせたヴォーカルスタイルの、草分け的な存在とみなされており、初期にもそのアプローチが確認できますが、あくまでも本格的なデスヴォイスがメインであり、それが歌唱パートの大半を占めていました。
デスメタルとしてのFEAR FACTORY!?
FEAR FACTORYのデビュー時は、インダストリアルメタル第一世代の影響で、その手法を取り入れたデスメタル,グラインドコア,ブラックメタルなどのエクストリームメタルが、アンダーグラウンドのシーンで続出した時期にあたります。
FEAR FACTORYもまたその中のひとつであり、最初期の音楽性もデスメタルやグラインドコアからの影響が濃厚なスタイルでした。
そのため、インダストリアル風味の変わり種のデスメタル亜種と見なされており、主にデスメタルのジャンルの中で取り扱われて、活動シーンもそれらと重なっていました。
また、現在は一般化したデスヴォイスとスペーシーなクリーンヴォイスを組み合わせたヴォーカル・スタイルについても、FEAR FACTORYは草分け的な存在とみなされており、初期にもそのアプローチが確認できます。
ただし、最初期においては本格的なデスヴォイスがメインであり、それが歌唱パートの大半を占めていました。
インダストリアル・メタルとしてのFEAR FACTORY!?
メタルの外の異ジャンで生まれた初期のインダストリアル・メタルは、従来のヘヴィメタルのメソッドに当てはまらない刺激的なメタルサウンドとして、メタル・シーンでも注目を集めます。
中でも、シーンの代表格〈MINISTRY〉のハードコアでエクストリームな音楽性の影響もあり、エクストリーム・ミュージック界隈の反応が際立っていました。
そのため、いち早くそのアプローチを取り入れたのもエクストリーム・ミュージック系のグループで、結果的に、デスメタル/グラインドコア/ブラックメタル/スラッシュメタルのシーンを中心に、インダストリアルメタルへ参入するバンドが多数登場することになりす。
FEAR FACTORYもその中のひとつで、インダストリアル・メタルのシーンにおいては、“第1世代”のパイオニア勢の影響を受けて活動をスタートした“第2世代”にあたります。
インダストリアル“第2世代”としてのFEAR FACTORY!?
インダストリアル・メタルの“第1世代”は、演奏楽器よりもプログラミング/サンプリングを主体とした、従来のロック/メタルのメソッドとは異なった曲づくりが主流をなしていました。
しかし、ヘヴィメタルから派生した“第2世代”であるFEAR FACTORYは、“第1世代”ではドラムマシーンの使用が多いドラムパートも含めたフルメンバーのバンド構成と、そのバンドサウンドを前提としたオーソドックスなロック/メタル文法による曲づくり/音づくりを基本としています。
これは、“第2世代”以降のインダストリアル・メタルのグループの多くに共通する特徴となっています。
グルーヴメタルとしてのFEAR FACTORY!?
ニューメタル・ムーヴメントの黎明期に頭角を現して、その代表格にも数えられるFEAR FACTORYですが、デビュー時期を考慮すると、むしろそれ以前にすべてのヘヴィミュージック・シーンも巻き込んで隆盛を極めた、『ヘヴィグルーヴ』ムーヴメントの世代に属しています。
作品によっては、ミッドテンポの楽曲が主体となったものもありますが、〈KORN〉以降のニューメタルバンドとは異なり、グルーヴメタルをベースにその名残を残した作風を個性としていました。
ニューメタルとしてのFEAR FACTORY!?
のちにニューメタルのひとつのスタンダードとなる、独自のサイバーなインダストリアルメタルを打ち出して、ニューメタル・ムーヴメントの黎明期に頭角を現したFEAR FACTORYは、ニューメタルのシーンをリードする先駆者のひとつと見なされるようになりました。
この、FEAR FACTORYがつくり上げた『サイバーメタル』とも呼ぶべきスペーシーな新世代インダストリアル・メタルは、ニューメタルシーンの主要フォーミュラとして、インダストリアル志向のバンドのみならず、多くのニューメタル・バンドが取り入れています。
同じ位置付けにあるグループには〈KORN〉,〈WHITE ZOMBIE〉などがあり、これらも同様にニューメタルのサウンドの基礎をつくり、そのスタイルが後続バンドによって踏襲されている、パイオニアニアあたる重要グループです。
ニューウェイヴ・リバイバルとしてのFEAR FACTORY!?
FEAR FACTORYサウンドの特徴のひとつに、80年代のテクノポップ/シンセポップなどの影響を受けた、メロディや音づくりがあります。
これは、ニューウェイヴ/ポストパンクをルーツに持つ、インダストリアル・メタル“第1世代”やゴシックメタルなどを踏襲したものであるのと同時に、90年代の中盤頃から活性化して00年代にはメインストリームも席巻した、80年代リバイバル・ニューウェイヴ・リバイバルの機運も背景にあるものです。
FEAR FACTORYが後続に与えた影響は絶大!?
FEAR FACTORYの音楽性が、後に続く新規グループや、新機軸に意欲的な既存の先鋭的ミュージシャンに及ぼした影響は絶大なものです。
ニューメタルシーンには同様のアプローチが蔓延しましたし、停滞していたインダストリアル・メタルのシーンにおいても起爆剤にもなったほか、その影響はEDM界隈にも波及しています。
また、レジェンド級のベテランである〈BLACK SABBATH〉のギーザー・バトラーは、自身のプロジェクトのフロントマンにバートン・C・ベルを起用して、FEAR FACTORYにヒントを得たアプローチを展開しましたし、スティーヴ・ヴァイの元を離れて自身のスタイル模索していた〈デヴィン・タウンゼンド〉にとっては、方向性を示す重要な指針となるなど、現役ミュージシャンにも影響を与えていました。
FEAR FACTORYのいびつなバンド事情!?
FEAR FACTORYの創設メンバーは、バートン・C・ベル(Vo.),ディーノ・カザレス(Gt.),レイモンド・ヘレラ(Dr.)の3人ですが、2ndアルバムからは、そこにクリスチャン・オールド・ウォルバーズ(Ba.)が加わり、黄金期のメンツが整います。
その後、2002年〜2003年と2006年〜2009年の活動休止時期を除けば、現在に至るまで作品リリースを含めて比嘉的コンスタントな活動を続けていました。
しかし、メンバー間では運営や音楽性をめぐって確執が尽きない不安定な状況が続き、活動休止を挟んだ再始動の度に、メンバーのいずれかがバンドから離脱、あるいは排除されています。
2003年の最初の休止明けにはカザレスがバンドと袂を分かつ道を選びましたが、2009年に2度目の活動再開は、ヘレラとウォルバーズを排除した状態でカザレスとC・ベルによって行われています。
しかし2020年には、FEAR FACTORY創設以来常に在籍を続けていたC・ベルまでもが、バンドからの脱退することになります。
後年は、メンバー自身が「FEAR FACTORYとしての活動はただの仕事」と公言するほどに、ビジネスライクなバンドとなっていました。
FEAR FACTORYメンバーの現在の活動!?
カザレスとの確執でバンドから排除されたヘレラとウォルバーズは、〈ARKAEA〉を結成するも、アルバム1枚で活動を終えます。
その後ヘレラは、バンド在籍時から手掛けていたビデオゲームや映像メディアをはじめとした、各種媒体を音楽活動のメインにすえています。
一方、ウォルバーズは再結成された〈BEOWÜLF〉や〈VIO-LENCE〉のほか〈POWERFLO〉などに参加。
最後に離脱したC・ベルも、他のバンドのゲスト参加などが音楽活動の中心となっています。
現在のFEAR FACTORYは、唯一のオリジナルメンバーであるカザレス主導で活動を続けていますが、今後の展開は不透明です。
FEAR FACTORY|DISCOGRAPHY
Concrete|コンクリート
オリジナルアルバム – 0作目 (1991年[2002年リリース])
後にニューメタルのカリスマ・プロデューサーとして名を成す、〈ロス・ロビンソン〉が初めてプロデュースを手がけており、双方にとってのデビュー作となるはずだった幻のアルバム。
バンドとロビンソンの意見の食い違いからリリースが見送られて、長年お蔵入りとなっていたところを、双方のブレイクとニューメタルブームをきっかけに、10年の歳月を経て世に出ることとなりました。
この時点ではニューメタルの定型となる『ロス・ロビ印』サウンドもまだ未完成で、生々しさを重視した音づくりにいくぶん“らしさ”を感じられる程度ですし、音楽性も次作以降とは異なり、基本的にはほぼデスメタル/グラインドコアで、ブラストビートも多用されています。
彼らの看板要素である「スペーシー・エフェクト+クリーン・ヴォーカル」の取り合わせも、この時点から確認できますが、せいぜいが部分的な演出SEに用いられる程度。
次作以降のように、音楽性のキモとして重要性を認められ、大きな独立パートが設けらるほどの扱いではないため、作品上の大きな役割は果たしてはいません。
このように、後のFEAR FACTORYサウンドの萌芽もところどころに薄っすらとは見えますが、まだインダストリアル・メタルとして評価できるレベルには達していませんし、デスメタルとしても工夫が足りずフックにも欠けるので、あくまで過渡期の習作という程度に収まってしまいます。
|グルーヴ度:★★☆☆☆
|ブルタル度:★★★★★
|メロディ度:★☆☆☆☆
|ポップネス:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
通好み スルメ盤 実験作 ご祝儀
Soul of a New Machine|ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン
オリジナルアルバム – 1作目 (1992年)
幻のデビューアルバム『Concrete』が後にリリースされたものの、それがあくまでもイレギュラーなものと扱われていることや、本作でインダストリアル・メタルとしてのFEAR FACTORYが確立されたこともあって、現在でも、名実ともに公式デビューアルバムと見なされている作品。
音楽性については、本来はヘヴィメタルとは異なるメソッドに則っていたインダストリアル・メタルの曲構成を、ヘヴィメタルバンドが再現してみたといったところで、そのためかロック/メタル的な明快なカタルシスはやや弱めです。
ブレイクスルーとなる次作とは作風に大きな隔たりがあるとはいえ、デスメタルとグルーヴメタルをミックスしたバンドサウンドに、スペーシーでサイバーなエフェクトを加えたスタイルという特長だけ見れば、それぞれの要素は共通しています。
また、次作ほどメロディアスでエモーショナルではではないものの、クリーンヴォイスを用いた歌メロパートを織り込んだスタイルもこの時点で出来上がっていますし、その反面、T-05のようにほぼデスメタルそのものな曲も見られます。
印象的なパートは端々に見らることが出来ますが、次作ほどキャッチーなフックが冴え渡っているわけでもなく、さらには曲数も無駄に多いため、シェイプ不足による出来のムラやダレ気味な部分も目立ちます。
次作でスタイルを完成させて頂点を極めることを考えると、その発展途上のサウンドであることは紛れもない事実。
とはいえ、逆に試行錯誤の段階にあることがプラスに働く結果を産んでおり、後年のセルフコピーに近いアルバムには見られない多彩でユニークなサウンドを聴くことができます。
|グルーヴ度:★★★★☆
|ブルタル度:★★★★☆
|メロディ度:★★☆☆☆
|ポップネス:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
代表作 通好み スルメ盤 実験作
SOUL OF A NEW MACHINE フィア・ファクトリー
Fear Is the Mindkiller|フィアー・イズ・ザ・マインドキラー
リミックスアルバム (1993年)
『Soul of a New Machine』アルバムの収録曲の、リミックス・バージョンのみで構成されたミニアルバム。
リミックスは、カナダを代表するインダストリアル/EBMグループ〈FRONT LINE ASSEMBLY〉の2人、ビル・リーブ(ex.SKINNY PUPPY)とライズ・フルバーの手によるものです。
本来が、EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)やテクノ/シンセポップなどのフィールドから派生している、インダストリアル/EBM界隈においては、リミックス曲のリリースは黎明期からごく普通に行われていました。
しかし、こと“純ヘヴィメタル・フィールド”の中で、大手レーベルからリミックス・アルバムをリリースを実現させたグループとなると、彼らの他には〈PRONG〉程度しか前例がない程度には先駆的な試みでした。
リズムをデジタルビートに置き換えた曲も見られるものの、総じてアレンジは比較的オーソドックスなもので、完全解体や脱構築は見られず意外性や面白みには欠けますが、逆にメタラーでも聴きやすい部類のリミックスと言えるでしょう。
|別モノ度:★★★☆☆
|ブルタル度:★★★☆☆
|インダス度:★★★★☆
|ダンス度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Fear Is the Mindkiller フィア・ファクトリー
Demanufacture|ディマニュファクチュア
オリジナルアルバム – 2作目 (1995年)
端的に言えば、90年代ヘヴィ・ミュージックのひとつのフォーミュラとなる、独自の『サイバーメタル』を確立してそれを極めた、FEAR FACTORYの最高傑作であり代表作。
ニューメタルの歴史を切り開いたムーヴメントの始祖という意味では〈KORN〉の1stと双璧であり、インダストリアル・メタル内に限っても、同じ第2世代の顔である〈WHITE ZOMBIE(ROB ZOMBIE)〉や〈MARILYN MANSON〉の代表作と共に、従来のインダストリアル・メタルをアップデートしてシーンを塗り替えた、マイルストーンにあたる1枚です。
単純な売り上げだけであれば、商業的なキャリアのピークである次作に譲るものの、ムーヴメントの原点としての位置付けと後続への影響力から、90年代の最重要アルバムのひとつに数えられています。
サイバーなサウンド・エフェクトを適度にかませたデスヴォイス主体のヘヴィチューンの山場に、浮遊感のあるスペーシーなメロディとエモーショナルなクリーン・ヴォーカルラインを配置するという、前作では一部の楽曲のみに限られていた手法が、本作では作品の軸になるものとして明確に常態化されています。
こういった、現在まで延々と踏襲される創作マナーが確立されている一方で、他の作品では見られないBPM(曲のテンポの単位)高めのファストでアッパーな曲を主軸に据えた作風から、全キャリアを俯瞰して見るとやや異色なアルバムという側面もあります。
出来栄えについては、文句のつけようのない見事なもので、エクストリーム・メタルと呼びうるアグレッションは維持しつつも、デスメタルからは明確に距離を置いた、ダンサブルとも表現可能なフィジカルなサイバーメタルは、全カタログ中でも突き抜けたクオリティを有し、完全に別次元のステージへと到達しています。
ことに、〈HEAD OF DAVID〉のカバー曲T-06までの前半ラインナップは、一分のスキもない完璧といえる仕上がりで、どの曲も周りの空気を一変させるだけの存在感と一度聴けば耳から離れないほどの強烈なフックを持った、絶品の歴史的キラーチューンぞろい。
一方で、前半の名曲群と比較すると、それ以降の楽曲はあまりに小粒でこれといったクライマックスも無く、明確にグレードが低下して決め手を欠きますが、それらとて彼らの平均はクリアしていますし、何しろ、前半の充実ぶりだけでもそれを補って余り有ります。
ちなみに、T-06のオリジナルである〈HEAD OF DAVID〉は、のジャスティン・ブロードリック(NAPALM DEATH〜GDOFLESH)がそれ以前に在籍していた、初期インダストリアル・バンドという、マニアックなセンスを見せる選曲。
なお、本作の楽曲は、映画「モータルコンバット」のサントラや、いくつかのゲームの挿入音楽にも起用されています。
|グルーヴ度:★★☆☆☆
|ブルタル度:★★★★☆
|メロディ度:★★★☆☆
|ポップネス:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Remanufacture|リマニュファクチュア
リミックスアルバム (1997年)
リミックス集の第二弾。今回はEP(ミニアルバム)ではなく、フルレンスにボリュームアップされてのリリースとなりました。
前回から引き続き参加となる、〈FRONT LINE ASSEMBLY〉のライズ・フルバーがリミキサーの中心となっていますが、本作では他にも複数のミュージシャンが参加してリミックスを手がけています。
ただし、ライト層にまで届く知名度を持つのは、「ワンダーウーマン」などの映画音楽で広く知られるようになった、ビッグ・ビート全盛期の残党〈JUNKIE XL〉程度。
アレンジは本作でも原曲準拠で、そのイメージを大きく壊さないものが大半ですが、前記〈JUNKIE XL〉のファンキーな“ビッグ・ビート調”や、〈DJ DANO〉ことダニエル・リーフランによる“ガバ・ミックス”をはじめとして、ハードコアテクノ,ハードハウス,ドラムンベース,ダブ,アンビエントなど、EDM寄りのアレンジが増え、バリエーションの広がりを見せています。
当然のようにメタラーからの評価は今ひとつですし、EDMとして見てもやや旬を逃した微妙なアレンジも多く、また、大胆でユニークなアレンジを期待する向きを満足させられるかも疑問。
しかし、“電子音アレルギー”でさえなければ原曲の延長上で楽しめるので、メタルバンドのリミックス作品としては手堅く無難かつ良質な仕上がりで、気軽に聴ける1枚ではありますし、メタラーのEDMへの足がかりにも最適でしょう。
|別モノ度:★★★☆☆
|ブルタル度:★★★★☆
|インダス度:★★★★☆
|ダンス度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Obsolete|オブソリュート
オリジナルアルバム – 3作目 (1998年)
出世作『Demanufacture(2rd)』のブレイクでビッグウェイヴに乗った時期に、その前作にノックアウトされたリスナーの期待を一身に集めてリリースされたアルバム。
前作からの大きな変化は、前作ではファストなアッパー・チューンが主軸として大半を占めていたのに対して、本作では、ミッドテンポのヘヴィグルーヴ重視の作風/構成となっており、その比率が完全に逆転していること。
これは、アメリカのメインストリームの嗜好を意識したと同時に、前作からは唯一のシングルカット曲『Replica』のスマッシュヒットも影響していると思われます。
アップテンポな曲も皆無ではないものの、質・量・テンション全てにおいて前作には遠く及ばずで、本作の看板としてアルバムの大半を占めるのは、あくまでもテンポを落としたグルーヴメタル路線のナンバーとなっています。
また、ラップメタル全盛期の背景を反映してか、T-02では部分的にスクラッチも用いていますが、それについては特に気になるほどではないでしょう。
楽曲の出来栄え自体は概ね良好で、全ての曲が及第点をクリアできてはいますが、際立った名曲が無いため決め手を欠くことは否めませんし、全体的にテンポや曲調の変化が乏しいため、アベレージ自体は上々な反面メリハリを欠いてダレ気味で、個々の曲の印象が弱目なため後に残りません。
結論的には、「頑張ってはいるけれども前作には遠く及ばない。」…というところに収まっており、「一瞬で場の空気が一変するような強烈なキラーチューンが目白押し」…という、前作に匹敵する名盤再びの期待は夢に終わっています。
|グルーヴ度:★★★★★
|ブルタル度:★★★☆☆
|メロディ度:★★☆☆☆
|ポップネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤 実験作
Digimortal|ディジモータル
オリジナルアルバム – 4作目 (2001年)
予想外に長期化しつつあったニューメタル・ブーム最盛期の作品で、そののあおりを受けてニューメタルマーケットを意識したためか、定型化したニューメタル・スタンダードに最も接近した作風となっており、T-08では〈CYPRESSHILL〉のラッパーB-REALを迎えて、ラップメタルにもチャレンジしています。
とはいえ、基本路線は前作を踏襲したものであり、アメリカのメインストリーム・マーケットを意識した、ミッドテンポのグルーヴ・チューンが中心。
同時に、やはり当時の欧米でブームとなっていた、80年代ニューウェイヴ/ポストパンクのリバイバルを意識したような気配も感じられますが、これは、前作と本作の間にシングルでリリースされた、ポストパンク世代のシンセポップ・アーティスト〈ゲイリー・ニューマン〉のカバー曲『Cars』が、スマッシュヒットしたことの影響が考えられます。
そのためか、ややヘヴィネスが後退して、いつも以上に歌メロの比重が増した、ポップでスッキリとしたサウンドに仕上りを見せています。
しかし、楽曲を個別に見ると、メロディアス&スペーシーなT-06がやや印象に残る程度と、前作以上に決め手を欠いてアベレージも低下気味。
そこに、これらのポピュラリティを全開にした作風への変化までが加わったため、オールドファンからの不評傾向を招く結果となりました。
さらには、ニューメタルのトレンドの入れ替わりもあって、チャートのランキング自体はアップしたものの売り上げも大きく落ち込みむなど、やや踏んだり蹴ったりな印象の1枚です。
|グルーヴ度:★★★★☆
|ブルタル度:★★★☆☆
|メロディ度:★★★☆☆
|ポップネス:★★★★☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤 実験作
Hatefiles|ヘイトファイルズ
リミックス+レアトラックス (2003年)
マニア向け。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|メロディ:★★☆☆☆
|実験性:★★★★☆
|マニア度:★★★★★
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み 実験作 お布施
Fear Factory フィアファクトリー / Hate Files 輸入盤
Archetype|アーキタイプ
オリジナルアルバム – 5作目 (2004年)
ディーノ・カザレスと他のメンバーとの確執から一旦解散となり、カザレス抜きの体制で再始動した時期のアルバム。
本作からは、長年馴染んでいた『ロードランナー』を離れることになり、セールスはさらに落ち込んだものの、チャートだけならば全カタログ中でも最高位を記録しています。
本作では、前作までベースを担当していたクリスチャン・オールド・ウォルバーズがギターを兼任していますが、本作の録音自体には不参加だった後任ベーシスト、バイロン・ストラウドもクレジットされています。
前作と比較すると、ややヘヴィネスが強化されており、またアップテンポのパートも存在感を増すようになっていなるど、ブレイクスルーにしてマイルストーンの『Demanufacture(2nd)』へと、いくぶん回帰したような印象を受けます。
一方で、根本的な音楽性の改革は無いとはいえ、バンド編成とパワーバランスに変化があったこともあり、リフワークなどに近作とはひと味違った一面が見られます。
キラーチューンが見られず決め手を欠く…という点では前作と同様ですが、楽曲はおおむね及第点超えでアベレージも良好ですし、新味もわずかながら感じられるため、派手さは無いものの良作の部類と言えるでしょう。
|グルーヴ度:★★★☆☆
|ブルタル度:★★★☆☆
|メロディ度:★★★☆☆
|ポップネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤
Transgression|トランスグレッション
オリジナルアルバム – 6作目 (2005年)
ディーノ・カザレス不在時期の2作目。
そして、この体制では最後の作品となり、本作リリース後に再び一時的な解散状態に陥ることになります。
前作ではギターとベースを兼任していたクリスチャン・オールド・ウォルバーズが、本作では完全にギターに転向しており、前作ではクレジットのみだったバイロン・ストラウドが、本格的にベーシストとして制作に参加しています。
このストラウドは、〈STRAPPING YOUNG LAD〉などのデヴィン・タウンゼンド関連プロジェクトに参加し、そのキャリアを支えた人物。
また、T-06,T-07には〈FAITH NO MORE〉のベーシストであるビリー・グールドがゲスト参加しているほか、T-08では〈LAMB OF GOD〉のギタリスト、マーク・モートンがソング・ライティングで関わっています。
バンド体制が変化しながらも、やや原点回帰傾向にあった前作から一転、基本路線は踏襲しつつも、楽曲の各所にカザレス時代には見られない変則的な要素が目につくなど、音楽的な広がりも見られるアルバムに仕上がっています。
FEAR FACTORY作品としては、特にメロディとポップネスが強調されており、その意味では『Digimorta(4th)』に近いともいえますが、よりポップネスに振り切ったキャッチーな作風となったほか、ヴォーカルもクリーンパートの比率が大幅に増しており、アルバム全体から受ける印象はカタログ中でも異彩を放っています。
作風の変化を考えるとファンからの不評は推して知るべしですし、そうなると『U2』のT-09に〈KILLING JOKE〉のT-10というカバー曲も好アレンジといえ、アルバム中2曲ともなるとマイナス・イメージとなります。
さらには、バンドの側からも、制作期間の不足を理由に失敗作と自認する向きもありますが、楽曲アベレージはバンドの平均値はクリアしていますし、メロディアスなT-06はキラーチューンと呼べる仕上がりを見せています。
積極的にオールドファンにオススメはしませんが、少なくとも、実験的な意欲を評価できるリスナーならば、後期のビジネス最優先の無難なセルフコピー作品よりは、聴きどころの多いアルバムと言えるでしょう。
|グルーヴ度:★★★☆☆
|ブルタル度:★★☆☆☆
|メロディ度:★★★★☆
|ポップネス:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Mechanize|メカナイズ
オリジナルアルバム – 7作目 (2010年)
|ヘヴィネス:★★★★☆
|メロディ:★★☆☆☆
|実験性:★★☆☆☆|
|マニア度:★★★★★
|総合評価:★★☆☆☆
お布施
Fear Factory フィアファクトリー / Mechanize
The Industrialist|ザ・インダストリアリスト
オリジナルアルバム – 8作目 (2012年)
|ヘヴィネス:★★★★☆
|メロディ:★★☆☆☆
|実験性:★★☆☆☆
|マニア度:★★★★★
|総合評価:★★☆☆☆
お布施
Genexus|ジェニュクサス
オリジナルアルバム – 9作目 (2015年)
|ヘヴィネス:★★★★☆
|メロディ:★★☆☆☆
|実験性:★★☆☆☆
|マニア度:★★★★★
|総合評価:★★☆☆☆
お布施
ディーノ・カザレスが復帰した影響で〈FEAR FACTORY〉から排除された、レイモンド・ヘレラ(Dr.)とクリスチャン・オールド・ウォルバーズ(Gt. etc)のふたりが中心となったプロジェクト。
他のパートには、当時の若手メタルコア・バンド〈THREAT SIGNAL〉のメンバーであるジョン・ハワード(Vo. etc)、パット・カヴァナ(Ba.)を起用しています。
ヴォーカルの声質の差異などもあって、表面的には〈FEAR FACTORY〉とはやや印象を異にしていますが、楽曲自体は、〈FEAR FACTORY〉の再始動に向けてヘレラとウォルバーズが用意していたマテリアルを元にしているため、音楽性は〈FEAR FACTORY〉時代と大きな変化はありません。
セールス・識者の評価共ににそれほどの結果を残せなかったこともあり、ヘレラがバンド活動以外のビジネスに注力するようになったことから、アルバム1枚を残して活動を終えています。