Contents
- 1DEATHのテクニカル路線にも大きく貢献し、メタリック・フュージョンの騎手へと成長を遂げたデスメタルの聖地フロリダを代表するプログレッシヴ・デスメタル・バンド!!
- 1...1デスメタル界の腕利きミュージシャンが集結!!
- 1...2ジャズ/フュージョン・テイストのテクニカル・サウンド!?
- 1...3デビュー当初はマニア人気止まり!?
- 1...4ロック/メタル界隈でのジャズブームが追い風に!!
- 1...5再結成後の不安定な活動と相次ぐメンバーの死!!
- 1.1CYNIC|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Focus|フォーカス
- 1.1.2Traced in Air|トレースド・イン・エア
- 1.1.3Re-Traced|リ-トレースド
- 1.1.4Carbon-Based Anatomy|カーボン-ベースド・アナトミィ
- 1.1.5The Portal Tapes|ザ・ポータル・テープス
- 1.1.6Kindly Bent to Free Us|カインドリィ・ベント・トゥ・フリー・アス
- 1.1.7Uroboric Forms - The Complete Demo Recordings|ウロボリック・フォームズ - ザ・コンプリート・デモ・レコーディングス
- 1.1.8Humanoid|ヒューマノイド
- 1.1.9Traced in Air Remixd|トレースド・イン・エア・リミックスド
- 1.1.10Ascension Codes|アスセンション・コーズ
- 2ポール・マスヴィダル(Paul Masvidal)関連
- 2.1ÆON SPOKE|イーオン・スポーク|DISCOGRAPHY
- 2.1.1Above the Buried Cry|アバヴ・ザ・ベリード・クライ
- 2.1.2Æon Spoke|イーオン・スポーク
- 2.2MASVIDAL (Paul Masvidal SOLO)|マスヴィダル(ソロ)|DISCOGRAPHY|スタジオ・アルバム
- 2.2.1Mythical|ミスティカル
- 2.2.2Human|ヒューマン
- 2.2.3Vessel|ヴェッセル
- 3ショーン・レイナート(Sean Reinert)関連
- 3.1ANOMALY|アノマリィ|DISCOGRAPHY
- 3.1.1Anomaly|アノマリィ
- 3.2C-187|DISCOGRAPHY
- 3.2.1Collision|コロージョン
- 3.3AGHORA|アゴラ|DISCOGRAPHY
- 3.3.1Aghora|アゴラ
- 3.3.2Formless|フォームレス
- 3.3.3Entheogenic Frequencies|エンセオジェニック・フリークウェンスィ
- 4ショーン・マローン(Sean Malone)関連
- 4.1GORDIAN KNOT|ゴーディアン・ノット|DISCOGRAPHY
- 4.1.1Gordian Knot|ゴーディアン・ノット
- 4.1.2Emergent|エマージェント
- 4.1CYNICはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 4.1.1“デスメタル路線”と“非デスメタル路線”どちらがお好み!?
- 4.1.2テクニカルなデスメタル路線のオススメ作品は!?
- 4.1.3メロディアスなプログレ路線のオススメ作品は!?
- Focus|フォーカス
- Traced in Air|トレースド・イン・エア
- Re-Traced|リ-トレースド
- Carbon-Based Anatomy|カーボン-ベースド・アナトミィ
- The Portal Tapes|ザ・ポータル・テープス
- Kindly Bent to Free Us|カインドリィ・ベント・トゥ・フリー・アス
- Uroboric Forms – The Complete Demo Recordings|ウロボリック・フォームズ – ザ・コンプリート・デモ・レコーディングス
- Humanoid|ヒューマノイド
- Traced in Air Remixd|トレースド・イン・エア・リミックスド
- Ascension Codes|アスセンション・コーズ
DEATHのテクニカル路線にも大きく貢献し、メタリック・フュージョンの騎手へと成長を遂げたデスメタルの聖地フロリダを代表するプログレッシヴ・デスメタル・バンド!!
CYNIC(シニック)は、アメリカにおけるデスメタルの聖地フロリダを中心に活動していた、テックデス(テクニカル・デスメタル)/プログレメタル・バンド。
デスメタル界の腕利きミュージシャンが集結!!
CYNICは、80年内の結成時から基本的にはUSデスメタル・シーンに属するグループであり、メンバーもポール・マスヴィダル(Paul Masvidal[Gt., Vo. etc])とショーン・レイナート(Sean Reinert[Dr.Key.])を中心に、デスメタルシーンに連なる人脈で構成されていました。
USテクニカルデスの老舗として知られるPESTILENCE(ペスティレンス)やATHEIST(エイシスト)で活動していたトニー・チョイ(Tony Choy)や、MALEVOLENT CREATION(マルヴォレント・クリエイション), MONSTROSITY(モンストロシティ),SOLSTICE(ソルスティス)といった通好みバンドを渡り歩いた、マーク・ファン・エル(Mark Van Erp)なども、一時的な在籍経験があります。
また、マスヴィダルとレイナートはチャック・シュルディナーのDEATH(デス)に在籍した経験があり、その4thアルバム『Human』でのテクニカル路線の追求に大きく貢献したことによって、ミューシャンズ・ミュージシャン的存在として大きく注目を集めます。
ジャズ/フュージョン・テイストのテクニカル・サウンド!?
CYNICのサウンドは、その時期や時代によってテックデス(テクニカル・デスメタル)やプログレッシヴメタルなどにカテゴライズされるほか、デスメタルに本格的なメロディをフィーチャーした先駆者でもあることから、北欧メロデスとはルーツが異なるメロディック・デスメタルの文脈でも語られるバンドです。
時期によって作風は変われど、ジャズ/フューションをバックグラウンドに持ち、それを大々的にフィーチャした技巧的なメタリックフュージョン/ジャズメタルサウンドが基本的なスタイルとなっています。
その作風から、MESHUGGAHと共に、ヘヴィメタルシーンにジャズロック/ジャズメタルサウンドの再評価をもたらした存在として認知されています。
デビュー当初はマニア人気止まり!?
デモ作品の完成度の高さに加え、チャック・シュルディナーのDEATHに参加したマスヴィダルとレイナートの活躍が注目されたこともあって、CYNICはアルバムデビュー前からエッジなリスナー達の注目を集めており、彼らのデビューアルバムは、当時の新人デスメタルバンドとしてはかなり大きな扱いを受けていました。
その1作目『Focus』は各シーンで高く評価されますが、時代が早すぎたためか、マニアや識者を中心とした通好み人気以上の成果にはつながらず、待望のデビューを果たしたにもかかわらず、その1枚を残して解散してしまいます。
ロック/メタル界隈でのジャズブームが追い風に!!
この時期、ロックシーンでのジャズ/フュージョンの再評価や、それにともなったMESHUGGAHの世界的なブレイクなどもあって、メタルシーンでもジャズ/フュージョンを取り入れたサウンドがクールなものとして認知されるようになります。
CYNICのメンバーは解散後は個別の活動を続けていましたが、それらの後続バンドに影響を与えた存在としてCYNICの存在も再評価の動きが高まってゆき、その機運が再結成へとつながります。
再結成後の不安定な活動と相次ぐメンバーの死!!
再始動後のCYNICは、寡作ながらマイペースでコンスタントな活動を続けていましたが、マスヴィダルとレイナートの意見の相違もあって2015年には再び解散。
2018年にはマスヴィダル主導でもう1度活動を再開していますが、2020年にはレイナートとマローンが相次いで他界するという不幸に見舞われました。
セッションメンバーを迎えてアルバムは完成へとこぎつけたものの、正式な活動は棚上げ状態となっていましたが、2021年にはその新作アルバムがようやくリリースされ、健在ぶりを示しています。
CYNIC|DISCOGRAPHY
Focus|フォーカス
オリジナルアルバム – 1作目 (1993年)
ジャズ…中でも主にフュージョン・スタイルのテクニカルな演奏と、ある種サイケデリックとも表現可能な浮遊感に満ちたスペーシーでマシーナリーなサウンド。
このふたつの特徴を主軸として、スラッシュメタル/デスメタル由来のサウンドに落とし込んだのが、このCYNICのデビュー作で、フルレンスのアルバムとしては最もアグレッシヴなサウンドを聴かせます。
ディストーション・サウンドとデスヴォーカルを主体としたスタイルに、クリーン・ヴォーカルを織り交ぜ、そこに浮遊感のあるメロウなメロディが大きくフィーチャーされた作風は、テクニカルデス/プログレメタル文脈としてはもちろんのこと、メロディック・デスメタルのプロトタイプのいち形態を提示したものとしても語られていました。
今でこそ伝説的名盤とて殿堂入りしていますが、当時のメタル界隈では、プログレメタル/デスメタル何のシーンにおいても、どちらかというとマニアックで通好みポジションに置かれた作品でした。
本作が一般層にまで本格的に認められるには、一般ロックシーンでのジャズ/ジャズロック再評価と、MESHUGGAHらのブレイクによる、ジャジーメタル/メタリック・フュージョンの認知を待たねばなりません。
|プログレ度:★★★☆☆
|ジャジー度:★★★☆☆
|叙情メロ度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み 実験作
フォーカス/CD/APCY-8144
Traced in Air|トレースド・イン・エア
オリジナルアルバム – 2作目 (2008年)
一応は、前作を踏襲したと言って差し支えない音楽性ですが、デスメタルの名残をとどめているのは、クリーンヴォーカルと掛け合いで用いられるデスヴォーカル程度。
それさえも、前作とは割合が完全に逆転してクリーンヴォーカルがメインとなっており、役割的には脇に回っています。
トータルで見ても、テクニカルな演奏と同じぐらいのウェイトが、メランコリックでメロディと歌にも置かれた、“歌ものプログレ”といった風情の作風へと変化しています。
一方で、前作で大きな持ち味となっていた浮遊感のあるサイケデリアはさらに強化され、リリックもスピリチュアルなイメージを強めています。
これは、1stリリース直後に立ち上げられるも暗礁に乗り上げていた、PORTAL名義のサイドプロジェクトで世に出すことが果たせなかったサウンドを、CYNICスタイルに落とし込んだ結果とも考えられます。
なお、本作からの派生作品として、新録によるリテイクを収めたミニアルバムとリミックスアルバムという、ふたつの別バージョンまでもが後にリリースされています。
それが、バンドの本作への思い入れの深さと自信からくるのか、本作でやり残したことがある消化不良感からくるのかは不明ですが、これ以降の展開を見る限りではおそらく後者のように思われます。
|プログレ度:★★★☆☆
|ジャジー度:★★★☆☆
|叙情メロ度:★★★★☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作
Re-Traced|リ-トレースド
ミニアルバム:EP (2010年)
Carbon-Based Anatomy|カーボン-ベースド・アナトミィ
ミニアルバム:EP (2011年)
カーボン・ベースド・アナトミー+リトレースド/CD/MICP-90055
The Portal Tapes|ザ・ポータル・テープス
コンピレーションアルバム (2012年)
1stリリース後に、マスヴィダルを中心としたCYNICメンバーによる別プロジェクトPORTAL(ポータル)としてレコーディングされるも、リリースが棚上げとなっていた音源がCYNIC名義でようやく日の目を見たアルバム。
お蔵入りするにはあまりにも惜し過ぎる見事な完成度を持ったアルバムで、ここでの試みがCYNICの2nd以降の展開に大きな影響をもたらしたことは確実です。
女性ヴォーカリストによる美麗な歌唱をメインに据えたCYNICとは異なるデスメタル色皆無の作風は、一部のヨーロピアン・ゴシックメタルにも近い感触をもった、仄暗いメランコリックなサウンドに仕上がっています。
特徴的なスペーシーな浮遊感はCYNICと同様ですが、よりきめ細かい質感で、しっとりとしたドリーミィなサイケデリアを漂わせています。
お得意のフュージョン/ジャズ・テイストに加えて、70年代のプログレッシヴ・ロックや、80年代の耽美/ゴシック系ポストパンク/ニューウェイヴのエッセンスもブレンドされた作風は、レコーディング当時はまだマイナーな存在だったPORCUPINE TREEなどにも通じるものであり、同様に、のちに“薄闇系”プログレと称されてブレイクするスタイルの先駆けとも言えるものです。
|プログレ度:★★★★★
|ジャジー度:★★☆☆
|叙情メロ度:★★★★★
|オルタナ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Kindly Bent to Free Us|カインドリィ・ベント・トゥ・フリー・アス
オリジナルアルバム – 3作目 (2014年)
基本的な音楽性についてはほぼ前作と同様と考えて差し支えありませんが、前作の時点でも大きく減退していたデスヴォイスパートは払拭され、完全な脱デスメタルを果たしています。
音楽的には、前作の楽曲をリメイクした『Re-Traced』や『Traced in Air Rimixd』に近いものとなっています。
プログレ的なテクニカル要素については相変わらずですが、そもそもが、テックデス特有のハイテンションな目まぐるしい展開を見せる、変態的/変則的なサウンドが売りというわけでもないため、必然的に、本来の持ち味でもあるスペーシーなメロディとサイケデリアに比重が置かれた作風となっています。
そのため、本作をより堪能には、技巧性に意識を割くよりも、ドリーミーで浮遊感のあるメロディとアトモスフィアに心地よく身を委ねる聴き方の方が、適しているかもしれません。
ただし、メロディラインについてはやや手癖感が漂いがちで、若干頭打ちの印象が感じられるきらいもあります。
|プログレ度:★★★☆☆
|ジャジー度:★★★☆☆
|叙情メロ度:★★★★★
|オルタナ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作
カインドリー・ベント・トゥ・フリー・アス/CD/MICP-11138
Uroboric Forms – The Complete Demo Recordings|ウロボリック・フォームズ – ザ・コンプリート・デモ・レコーディングス
コンピレーションアルバム (2017年)
アルバムデビュー以前のデモを含む、初期音源を集めたコンピレーションアルバム。
CYNICがまだ完全なデスメタルの体をなしていた頃の、ブルータルなテックデス・サウンドを聴くことができる唯一の作品です。
ジャズ/フュージョンのバックボーンを活かした複雑な展開のテクニカルなデスメタルは、フロリダシーンの盟友チャック・シュルディナーのDEATHを想起させる面もありますが、デモとはいえすでに一線級の完成度を持ち合わせています。
ブレイク後や再結成後のサウンドは心地いいけれど物足りない…とお嘆きの、デスメタル本来のアグレッションとテクニカルなエクストリミティを味わいたいデックデス愛好家ならば必聴でしょう。
|プログレ度:★★★☆☆
|ジャジー度:★★☆☆☆
|叙情メロ度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 入門盤 賛否両論 通好み 実験作
Humanoid|ヒューマノイド
シングル (2018年)
Traced in Air Remixd|トレースド・イン・エア・リミックスド
リミックスアルバム (2019年)
Ascension Codes|アスセンション・コーズ
オリジナルアルバム – 4作目 (2021年)
オリジナルメンバーのショーン・レイナートに続いて、ショーン・マローンまでを失ったポール・マスヴィダルが、セッション・ミュージシャンを迎えて完成させたアルバム。
デスメタル要素を排して、スペーシーなメロディとサイケデリアをに重点を置いた、フュージョン風味でポストロック寄りのテクニカルなプログレメタル…という表面的な特徴を見るなら、前作となんら変わりはありません。
しかし、メロディラインやフレージング,展開のパターンが増して、これまでの作品とは印象の異なる部分も目立つようになっており、基本的な作風に変化は無いものの曲調/作風の幅は大きく広がっています。
レイナート不在のCYNICという存在と作風の変化を否定的に捉える向きもあり、オールドファンからの評価は賛否に分かれがちな傾向が見られますが、ひとつ作品として見るならば、前作に漂っていた頭打ち気味なマンネリ感の払拭に成功した、心機一転の会心作と呼べる1枚です。
そこに、バンド体制の変化がどれだけ影響を及ぼしているのかは不明ですが、かつての盟友の不在という不安材料を跳ね返して次につなげるには十分な見事な出来栄えを見せています。
|プログレ度:★★★★★
|ジャジー度:★★★☆☆
|叙情メロ度:★★★★★
|オルタナ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 入門盤 通好み 実験作
ポール・マスヴィダル(Paul Masvidal)関連
ÆON SPOKE|イーオン・スポーク|DISCOGRAPHY
ÆON SPOKEは、ポール・マスヴィダルとショーン・レイナートが中心となったプロジェクトで、他のメンバーは主にセッション・ミュージシャンを起用しています。
音楽性は、プログレ特有の技巧性を押し出したスタイルでもなければ、アグレッシヴなヘヴィメタル要素も皆無。
CYNICの後期にも顕著となる、メランコリックでサイケな浮遊感のあるおだやかなメロディを主体とした、オルタナポップとでもいったサウンドを展開しています。
RADIOHEADの『OK Computer』以降に続出した、ゴシカル&メランコリックな新世代プログレ/ポンプロック勢(=ポストロック)や、“薄闇系プログレ”と呼ばれるPORCUPINE TREE(ポーキュパイン・ツリー)などにも通じる作風と言えるでしょう。
Above the Buried Cry|アバヴ・ザ・ベリード・クライ
オリジナルアルバム – 1作目 (2004年)
Æon Spoke|イーオン・スポーク
オリジナルアルバム – 2作目 (2007年)
MASVIDAL (Paul Masvidal SOLO)|マスヴィダル(ソロ)|DISCOGRAPHY|スタジオ・アルバム
ポール・マスヴィダルは、近年では完全なソロワークも展開しており、アルバムも立て続けにリリースしていました。
音楽性は、アコースティックなギター弾き語りに近いスタイルで、メランコリックなメロディにエモーショナルなヴォーカルが乗る作風は、ÆON SPOKをアコースティックサウンドにアレンジしたような印象もあります。
Mythical|ミスティカル
オリジナルアルバム – 1作目 (2019年)
Human|ヒューマン
オリジナルアルバム – 2作目 (2019年)
Vessel|ヴェッセル
オリジナルアルバム – 3作目 (2020年)
ショーン・レイナート(Sean Reinert)関連
ANOMALY|アノマリィ|DISCOGRAPHY
ANOMALYは、ショーン・レイナートとショーン・マローンが主体となったプロジェクトで、LED ZEPPELINの『The Rain Song』のカバーを含むアルバム1枚を残しています。
音楽性は、ひとことで言えばプログレメタルですが、CYNICやMESHUGGAH,TOOLといった、90年代以降のプログレの流れを作ったモダン・プログレメタル系のスタイルではなく、“オールドスクールな80年代ヘヴィメタルをベースとした、メロディアスな叙情派プログレメタル”…といったサウンドを展開しています。
また、ニューウェイヴ風味を効かせたパートも見られるなど全体的に80年代風味が強く、ポンプロックやプログレハードに通じる部分も見られます。
Anomaly|アノマリィ
オリジナルアルバム – 1作目 (1998年)
C-187|DISCOGRAPHY
80年代からオランダを拠点に活動を続ける、テックデスのパイオニアのひとつ、PESTILENCEのパトリック・マメリが中心となったプロジェクト。
初期MESHUGGAHの影響を受けたと思しき、ややテクニカルなグルーヴスラッシュを展開した、アルバム1枚を残しています。
マメリ以外のメンバーは…CYNICのショーン・レイナートと、CYNIC,PESTILENCE,ATHEISTの全てを渡り歩いた、テックデスBIG3ハットトリック・ベーシストのトニー・チョイ。
フロントマンにはグルーヴメタルのB-THONGや、その別ユニットでストーナー/ドゥームを展開するTRANSPORT LEAGUEなど、スウェーデンのヘヴィグルーヴ界隈で活躍するトニー・エレンコヴィッチ…という面々。
オールドスクール・テックデス界隈の名手が結集して、さながらドリームバンドといった様相を呈している割には、独自性や新奇性は希薄ですし、演奏面でも技巧性はそれほど追求しているわけではないので、変態的/変則的でスリリングな展開を期待すると期待を裏切られるでしょう。
この顔ぶれの中で存在が浮いているフロントマンも、ここで展開されるヘヴィグルーヴ・サウンドを聴けば納得の人選とも思えます。
Collision|コロージョン
オリジナルアルバム – 1作目 (2007年)
AGHORA|アゴラ|DISCOGRAPHY
AGHORAは、ベネズエラ出身のギタリスト、サンティアゴ・ドブルズが中心となった、女性ヴォーカルをフィーチャーしたプログレメタル・バンド。
このAGHORAのデビューアルバムには、ショーン・レイナートとショーン・マローンがそろって参加しています。
音づくりについてもベースとドラムのプレイがかなり前面に押し出されており、ドブルズのギターは、ボリュームも比重も主張の強いケースが多いギタリストにしては遠慮がちで、アルバムの目玉となる大物リズム隊のふたりに華を持たせたバランスです。
音楽性はアルバムによって変化を見せており、1作目ではゴシックメタルとモダン・プログレメタルをプラスしたような作風ですが、レイナートとマローンのテクニカルなプレイがアルバム全編にわたって堪能できるため、ファンならば一聴の価値があるでしょう。
レイナートとマローンが参加していない2作目以降は、ギターリフと早弾きソロを前面に押し出したメタル・ギターヒーローのソロアルバムに近い作風となり、3作目に至ってはヴォーカルを排したインスト・アルバムへと変化し、サウンドもありきたりなギタリスト系ヘヴィメタルとなってしまいます。
Aghora|アゴラ
オリジナルアルバム – 1作目 (2000年)
Formless|フォームレス
オリジナルアルバム – 2作目 (2006年)
Entheogenic Frequencies|エンセオジェニック・フリークウェンスィ
オリジナルアルバム – 3作目 (2019年)
ショーン・マローン(Sean Malone)関連
GORDIAN KNOT|ゴーディアン・ノット|DISCOGRAPHY
ショーン・マローンが主催するGORDIAN KNOTは、プログレ/プログレ・メタル界隈のビッグネームを招聘した、スーパー・ドリーム・プロジェクト。
2枚のアルバムをリリースしており、それぞれ異なる顔ぶれで制作されています。
参加ミュージシャンは、CYNICの盟友ポール・マスヴィダルとショーン・レイナート、やはりCYNICのOBでもあるジェイソン・ゴベルに加え、元KING CRIMSONのビル・ブラフォードとトレイ・ガン、元GENESISのスティーブ・ハケットといったプログレ界のレジェンド、プログレメタルシーンからはWATCHTOWERのロン・ヤルゾムベックや、DREAM THEATERのジョン・マイアング、FATES WARNINGのジム・マシオスなど。
音楽性はインスト主体のプログレッシヴ・ロック/メタルで、楽曲はヘヴィなプログレメタルから、メロディック・ロック、エスニック・テイストやサイケ・テイストのなニューエイジ系まで様々。
メタル的なケレン味は希薄ですが、変態的な実験性や前衛性に走るわけでもなく、メロディも重視しているため、比較的聴きやすく間口の広い作風と言えます。
Gordian Knot|ゴーディアン・ノット
オリジナルアルバム – 1作目 (1999年)
Emergent|エマージェント
オリジナルアルバム – 2作目 (2003年)
CYNICはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
CYNICは、もともとが寡作でブランクもあるので、カタログはスタジオ・フルレンスだけなら全部で4枚と少なめ(2022年現在)。
その他のミニアルバムやイレギュラー作品も含め、そのどれもがテクニカルなプログレメタルとしては極上クラスで、聴いて損をするということはないので、ファンならば迷わずコンプリートしたいところでしょう。
“デスメタル路線”と“非デスメタル路線”どちらがお好み!?
ただし、テクニカルなデスメタルとしてスタートしたCYNICも、作品を重ねるごとにメロディと叙情性に力を入れるようになって、最後は完全にデスメタルから脱却してしまいます。
そのため、初期の2枚はデスヴォイスをフィーチャーした“デスメタル路線”ですが、後期の2枚はクリーンヴォイスオンリーのプログレメタルとなっています。
ファーストCYNICとしてどれか1枚を選ぶ場合は、そのあたりを頭に入れておきましょう。
テクニカルなデスメタル路線のオススメ作品は!?
CYNICにテクニカルなデスメタルを求めるならば、『Focus(1st)』か『Traced in Air(2nd)』の2択となります。
よりアグレッシヴなテックデス・サウンドを求めるか、歴史的に残る記念碑な重要作という意味なら『Focus(1st)』に尽きますが、メロディやクリーンヴォイスの比重が高いメロディック・デスメタル(not北欧メロデス)系の作風が好みなら、『Traced in Air(2nd)』というところでしょう。
この2作品ではマイルドすぎて物足りないという生粋のデスメタラーは、ハードコアでプリミティヴなサウンドのオールドスクールなテックデスが堪能できる、初期デモ作品集『Uroboric Forms – The Complete Demo Recordings』ならば満足できるかもしれません。
メロディアスなプログレ路線のオススメ作品は!?
メロディアスなプログレ・サウンドを期待するなら、『Kindly Bent to Free Us(3rd)』と『Ascension Codes(4th)』の2択。
一般的には、今は他界したオリジナルメンバーもそろっている時期の『Kindly Bent to Free Us(3rd)』がメロディアス路線の頂点として高評価されていますが、1stや2ndを聴いてきたリスナーならば、メロディラインが多彩になってマンネリから脱した『Ascension Codes(4th)』の方が楽しめるかもしれません。
また、メロディ路線を求めrならば、デスメタル色の残る2ndをクリーンでソフトなサウンドでアレンジした、『Re-Traced(ミニアルバム)』や『Traced in Air Rimixd』もアリでしょう。
アトモスフェリックなゴシックメタルがイケる口なら、女性ヴォーカルをフィーチャーしたプロジェクト、PORTALのお蔵入り作品をCYNIC名義でリリースした、『The Portal Tapes』もオススメです。