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★ SAMAEL(サマエル)ディスコグラフィー ★ アート系エクストリーム・メタルの総本山スイスが生んだ孤高のインダストリル・ブラックメタル!!…必聴アルバムは?

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CELTIC FROSTの流れをくむブラックメタルからゴシカルでダンサブルなインダストリアル・メタルへと転身を遂げた、スウィッツ・メタルならではの独自の美意識にあふれる異端のアート・ブラック・メタル!!

SAMAELのディスコグラフィ/レビュー、おすすめアルバムだけをチェックしたい方は【記事下部】か【目次】のリンクからも移動できます!!

SAMAEL(サマエル)は、スイスを代表するブラックメタル・グループ。

スイスが生んだ異色のブラックメタル!?

SAMAELは、一般的には『ブラックメタル』のカテゴリーで扱われており、その中でも比較的古参グループに属しています。

当初はヘヴィでアグレッシヴなブラックメタルとしてキャリアをスタートしていますが、90年代の半ばから『インダストリアル・メタル』へと接近したアプローチを展開するようになり、『インダストリアル・メタル』あるいは『インダストリアル・ブラックメタル』と称されることもあります。

また、SAMAELは、『インダストリアル・メタル』への接近と同時に、ゴシカルなテイストを増して行ったことから『ゴシックメタル』の一環として語られることもあります。

スイスは個性的な異端メタル天国!?

SAMAELの出身国であるスイスは、〈CORONER(コロナー)〉や〈CELTIC FROST(セルティック・フロスト)〉にも代表される個性的でアート感の強いグループを輩出しており、そのスタイルはスイスの地域性と見なされることさえあります。

SAMAELもまた、それらの流れをくむアーティスティックな異端派メタルバンドとみなされており、特にあらゆるエクストリーム・メタルの原点のひとつに挙げられることも多い〈CELTIC FROST〉は、SAMAELの音楽性形成において多大な影響を及ぼしています。

ブラックメタルとしてのSAMAEL!?

初期のブラックメタルというと、〈VENOM〉の流れをくむ初期衝動系のパンキッシュな疾走型サウンドや、〈BATHORY〉をルーツとした大仰なアトモスフェリックな様式美系サウンドが主流でした。

そして、そのいずれもがあえてローファイでノイジーな音づくりを施し、低音をカットした軽くチープでスカムなサウンドを押し出しており、その音質の悪さをアイデンティティとして競う傾向もありました。

その時期のブラックメタルのシーンにおいては、SAMAELは比較的良好な音質としっかりしたヘヴィネスの効いたサウンドを有し、また、初期のSAMAELは〈CELTIC FROST〉の初期を思わせるような、スロ&ヘヴィなドゥーミィな作風を落ち味としており、これらにおいて同時期のブラックメタルの中でも、特に異彩を放つ存在となっていました。

また、SAMAELはビジュアル面においても、コープスペイントや演劇的なファッション,パフォーマンスなどの、ブラックメタル特有のキッチュでキャッチーな様式美とは、一線を引いたアプローチを展開しています。

そのため、ブラックメタルに特徴的ないかがわしさや、ビジュアル系の延長的な側面に惹かれて参入する新規リスナー層にはあまりアピールするスタイルではなく、やや通好みな位置付けに落ち着いている印象があります。

インダストリアル・メタルとしてのSAMAEL!?

SAMAELは、90年代の中期頃から、インダストリアル・メタル的なサウンドメイクと、ゴシックメタルに端を発した耽美エッセンスを取り入れた、メタルサウンドを志向するようになります。

その後、ついにはドラムマシンと本格的なエレクトロニックサウンドを導入して、本格的なインダストリアル・メタルへと移行し、その後は、アルバムごとに多少のマイナーチェンジはあれど、それがSAMAELの基本スタイルとして常態化しています。

インダストリアル・メタル路線へ以降した後のSAMAELは、中世欧州的な美意識に基づいた重厚で荘厳な作風を基本としていますが、これには、80年代の旧ユーゴスラビアのインダストリアル・バンド〈LAIBACH(ライバッハ)〉を下敷きのひとつとなっています。
その点においては、SAMAELのインダストリアル化と同時期にデビューを果たした〈RAMMSTEIN〉と同様であり、共通要素も指摘されています。

テーマ性もサタニックなものからハイブロウに変化!?

SAMAELは、歌詞に用いるテーマや世界観の面においても、いかにもブラックメタル特有のサタニズムやアンチキリスト、オカルティズムを主題としたものから、次第にスピリチュアルな題材の比重を増し、時にポリティカルなテーマ性も取り入れた作風へと移行しています。

また、ビジュアル・イメージの面においても、当初の初期衝動的な虚仮威し感が濃厚なイメージを払拭し、シンプルでスタイリッシュなものへと変化してゆきます。

これらは、00年代〜10年代にかけてのブラッックメタルのニューモードとして、ひとつの勢力となってゆく、“意識高い系ブラックメタル”のアプローチとも共通するものであり、SAMAELはそれらに先駆けたパイオニアのひとつとも言えます。

ウォルデマー・ゾリヒタはSAMAELのソウルメイト!?

SAMAELは、2ndアルバムの『Blood Ritual』以降のほとんどのアルバムで、ウォルデマー・ゾリヒタ(Waldemar Sorychta)にプロデューサーやエンジニアとして迎えており、ほぼ専任に近いかたちとなっています。

ゾリヒタは、個性派ジャーマン・スラッシュバンドDESPAIR(ディスペイア)に在籍し、そのアート・メタル展開に尽力した人物で、プロデューサーやエンジニアとしても数多くのグループを手がけています。

ミュージシャンとしては、デイヴ・ロンバードとのユニット〈GRIP Inc.(グリップ・インク)〉やインダストリアル・メタルのスーパー・プロジェクト〈VOODOOCULT(ヴードゥーカルト)〉などでの活動で知られ、インダストリアルやゴシックに造詣のあることから、SAMAELのインダストリアル路線への転向の裏にも、ゾリヒタの存在の影響が考えられています。

SAMAELのバンド体制は!?

SAMAELはデビュー以来、ギター兼フロントマンでリリック担当のVorphことマイケル・ロシャーと ドラムとキーボードのほか、プログラミング/サンプルリングなどの打ち込みと曲づくりを手がけるXy(Xytras)ことアレクサンダー・ロシャーの、ロシャー兄弟を中心を活動を続けています。

バンドの体制は比較的安定していましたが、2010年代に2nd以降不動のベーシストだった”Mas”ことクリストフ・メルモドと、インダストリアル時代のギタリスト”Makro”ことマルコ・リヴァオがが相次いで脱退しており、それ以降はロシャー兄弟以外ノエンバーは何度か交代を重ねています。

また、近年はアルバムのリリースペースも落ちており、シングル主体のリリースへと以降していますが、通好みな根強いファンに支えられコンスタントな活動を続けています。

次ページはSAMAELのディスコグラフィ&レビューを紹介!!▼リンクはページ下!▼

SAMAEL|DISCOGRAPHY

Worship Him|ワーシップ・ヒム

オリジナルアルバム – 1作目 (1991年)

同郷の先輩〈CELTIC FROST〉の初期にも通じる作風で、クラストコアの影響も見られますが、疾走感重視のファストパートよりも、ドゥーミィな要素の強いでドラァギーなスローパートが中心となったアルバムです。

ここでの作風は、当時のブラックメタルの中のではひときわ異彩を放つものであり、ヴォーカル・スタイル以外には類型的なブラックメタル要素が見られない本作のサウンドは、むしろドゥームデスやスラッジ文脈として聴かれるべきものかもしれません。

当時のブラックメタルとしては音質は良好で、楽曲の水準も上々ですが、なまじサウンドが生真面目な分だけ、振り切った異形の外連味には欠けますし、アルバムとしては手堅くまとまってはいるものの、残念ながらそれ以上の突き抜けたレベルにはありません。
そのため、ビギナーフレンドリーとも言いにくく、B級メタル愛好家以外には積極的にオススメしづらい、…という煮えきれなさは残ります。

なお本作は、アルバム・カタログ中で唯一、ブラックメタル・レーベルのイメージの強い『オズモーズ』からのリリースとなったアルバムです。

ブラック度:★★★☆☆|ゴシック度:☆☆☆☆☆|エレクト度:☆☆☆☆☆
オルタナ度:★☆☆☆☆|ドゥーム度:★★★★☆|総合評価:★★★★☆

代表作 通好み スルメ盤 実験作

Blood Ritual|ブラッド・リチュアル

オリジナルアルバム – 2作目 (1992年)

こだわり系バンドや通好みなリスナーに人気の“ミュージシャンズ・ミュージシャン”、ウォルデマー・ゾリヒタが初めて彼らのプロデュースを手掛けたアルバム。
その結果、プロダクションの向上が見て取れる仕上がりとなっており、また、志向性にも通じるものがあったのか、これ以降は、ほぼ専属プロデューサーに近い立ち位置にもなります。

初期CELTIC FROSTに連なるドゥーミィな作風については前作から大きな変化はないものの、さらにヘヴィネスが増してしてより重厚で禍々しいサウンドになりました。
クオリティ面でパワーアップしていくぶん洗練された反面、発展途上のカオス感やアングラ的な得体の知れなさはやや薄れた印象があるので、そのあたりは好みが分かれるところかもしれません。

|ブラック度:★★★☆☆
|ゴシック度:★☆☆☆☆
|エレクト度:☆☆☆☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|ドゥーム度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆

代表作  通好み スルメ盤

Ceremony of Opposites|セレモニィ・オブ・オポジッテス

オリジナルアルバム – 3作目 (1994年)

ドゥーミィ&ヘヴィな暗黒サウンドという基本路線は踏襲しつつも、前作よりさらにヘヴィネスを増し、ヘヴィグルーヴやゴシックテイスト, インダストリアル・テイストなどの、新機軸の導入によって新境地を切り開くとともに、次作から現在にまで続く新たなスタイル確立への契機にもなったアルバム。

過去作においてアクセントの役割を果たしていた、アップテンポなナンバーが見られないにもかかわらず、大幅に楽曲の多様性が増したことにより、アルバム1枚を通して変化に富んでおり、単調さは感じられません。

本格的に広く注目を集めるようにもなった本作は、初期ブラックメタル時代の代表作として当時より高い評価を得ており、他国のシーンに疎い米国においてまでも、それなりの結果を残しています。

|ブラック度:★★★☆☆
|ゴシック度:★★☆☆☆
|エレクト度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|ドゥーム度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★

殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤 実験作

Rebellion|リベリオン

ミニアルバム (1995年)

Passage|パッセージ

オリジナルアルバム – 4作目 (1996年)

本格的なインダストリアル・メタル路線へと足を踏み入れ、ターニングポイントとなったアルバム。

ドゥーミィ&グルーヴィーなゴシック・インダストリアル・メタルといった趣の、ややスタイリッシュで重厚&荘厳なエクストリーム・メタル・サウンドは、時に〈LAIBACH〉などの匂いも漂わせ、その意味では、ほぼ同時期にデビューを果たした〈RAMMSTEIN〉にも通じる部分があります。
ヴォーカルはデスヴォイスほどダーティではないものの、それに近いディストーション・ヴォイスです。

オンリーワンの強固な個性を感じられるわけではありませんが、ありそうで意外に無かったスタイルですし、水準以上の楽曲が並ぶ上質なアルバムではあります。
ただし、突出した楽曲や強烈なインパクトに欠ける仕上がりにとどまりがちな点は、彼らの全キャリアを通しての弱点です。

本作でもプロデュースを手がけるゾリヒタは、バンドと双方の音楽的志向を考えるとうってつけの人材ともいえますすが、やや煮え切らなさの残る通好みな作風までが共通するためか、プラスアルファの化学反応や相乗効果は生み出せていません。

|ブラック度:★★★☆☆
|ゴシック度:★★★☆☆
|エレクト度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆

殿堂入り 代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作

Exodus|エグゾダス

ミニアルバム (1998年)

メタル¥1,731Samael
iTunes Store

Eternal|エターナル

オリジナルアルバム – 5作目 (1999年)

珍しくセルフ・プロデュースによるアルバムで、本作ではサウンドのデジタル・テイストがアップして、よりマシーナリーなインダストリアル・サウンドに磨きがかかっています。

ダンサブルなビートを持った楽曲もありますが、EDM系のリズムパターンはあまり用いられず、あくまでもインダストリアル・メタルの枠内に収まるものです。

これまでのヘヴィ&ディープで禍々しいドゥーム・デスのテイストは払拭されており、ヴォーカルもデスヴォイスに近いダーティ・ヴォイスと、ディープなゴスヴォイス系の二種を微妙に使い分けています。

楽曲は、時にポップネスも漂わせるものの、それがアルバムの主軸というわけではなく、〈LAIBACH〉〜〈RAMMSTEIN〉の流れにある、ある意味では帝国的とも表現できる重厚で荘厳な作風と、ゴシックメタルに近い耽美性が大きな特徴となっています。

やや淡白で外連味にも新鮮味も欠けますし、アトモスフェアに流されがちなあたりも好みの分かれるところですが、雰囲気が好みであればハマる可能性の高いサウンドです。

|ブラック度:★★★☆☆
|ゴシック度:★★★★☆
|エレクト度:★★★★☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆

代表作 入門盤 通好み スルメ

Telepath|テレパス

ミニアルバム (2004年)

Reign of Light|レイン・オブ・ライト

オリジナルアルバム – 6作目 (2004年)

ブラックメタル/デスメタルからはさらに距離を置いた作風となり、インダストリアル・メタルのジャンルの枠内で想定しうる、様々なスタイルを試みているような印象のアルバムです。

「マシーナリーな異色のデス/ブラック」というこれまでの枠を完全に超えて、インダストリアル・メタルのフィールドでも十分に戦える作品に仕上がっており、ヴォーカルもディストーショナルではあるものの、もはやデスヴォイスの範疇には収まらないスタイルになりました。

方向性が近く、さらには迷いの無さや外連味/インパクトにおいて彼らを上回る〈RAMMSTEIN〉の登場以降、SAMAELもそのスタイルに引きずらがちな傾向がありましたが、ここではいくぶん独自性を主張できるようになっています。

楽曲の多様性もアップして幅が広がり、個々の楽曲のクオリティも向上した結果、大仰な演出やアトモスフィアに頼らず楽曲の質で勝負するようになっており、それが功を奏してか、これまでには無い印象的なメロディやフレーズまでもが時折見られるようになり、完全に一皮むけた印象があります。

|ブラック度:★☆☆☆☆
|ゴシック度:★★★★☆
|エレクト度:★★★★★
|オルタナ度:★★★★☆
|ドゥーム度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★

殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作

On Earth|オン・アース

ミニアルバム (2005年) 

Era One / Lessons in Magic #1|エラ・ワン / レッスンズ・イン・マジック #1

オリジナルアルバム – 7作目 (2006年)

インダストリアル・メタル特有のメタルエッジなヘヴィ・サウンドはかなりの後退を見せ、シンセポップ/エレポップのエッセンスを強めた、80年代ニューウェイヴ/ポストパンク・リヴァイヴァル色の濃いアルバム。

前作同様に多様性のある楽曲も大きなポイントで、ポップネスを増したキャッチーなナンバーから、アンビエント/ニューエイジ風のナンバーまでと、様々な表情を見せるアルバムとなりました。

T-03,T-04などはノリのいいダンサブルな曲ですが、90年代以降のEDM系のサウンドとは異なり、80年代のダンスポップ/ディスコポップと〈RAMMSTEIN〉をミックスしたをような印象です。
ここでもまだ、いくぶん〈RAMMSTEIN〉に引っ張られる感じはありますが、それほど気にならない程度におさまっています。

いずれにせよ、本格的なインダストリアル/エレクトロニック路線の作品としては、音楽スタイルの独自性と楽曲のクオリティの双方において、前作から本作にかけてがピークと言っていいでしょう。

なお、本作はプロデューサーのクレジットが記載されていませんが、バンドもしくは中心メンバー〈Xy〉によるセルフ・プロデュースと思われます。

|ブラック度:★☆☆☆☆
|ゴシック度:★★★☆☆
|エレクト度:★★★★★
|オルタナ度:★★★★★
|ドゥーム度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★

殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作

Aeonics – An Anthology|イオニクス – アン・アンンソロジィ

ベストアルバム (2007年)

Solar Soul|ソラー・ソウル

オリジナルアルバム – 8作目 (2007年)

ポップなエレクトロニック・サウンドを追求した前作とうって変わって、再びメタル濃度を高めたヘヴィなインダストリアル・メタルへと回帰したサウンドのアルバム。
同時に、かなりゴシカルな耽美性を強めており、ある意味ではSAMAEL流ゴシックメタルとでも呼べそうなほどにゴシックメタルに接近しています。

そのため、前作までのエレクトロニックな音楽性に抵抗を感じていた、キャパの狭いヘヴィメタル系のリスナーにとっては、久々に馴染みやすいアルバムに仕上がっています。

これまでの実験的な試みが功を奏してか、楽曲についてはそれなりのバリエーションを維持していますが、それでも、直近2作でのバラエティに富んだ作風と比較してしまうと、音楽性の幅が狭まった分だけ変化に乏しくなっており、その結果、やや単調にも感じられるきらいもあります。

|ブラック度:★☆☆☆☆
|ゴシック度:★★★★☆
|エレクト度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|ドゥーム度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆

入門盤 通好み スルメ盤

Above|アバヴ

オリジナルアルバム – 9作目 (2009年)

毎度おなじみのゾリヒタではなく、〈xy〉によるセルフ・プロデュースとなった本作は、SAMAELの全キャリア中でも、最もエクストリーム&アグレッシヴでオーソドックスなブラックメタルへと接近したアルバム。
重厚なミッド〜スローのダウンテンポを主軸とするSAMAELにとっては、疾走感に満ちたファスト・チューンが中心なった異色作でもあります。

サウンドについても、プリミティブな王道ブラックメタルのように、スカムなローファイ・サウンドこそ追求してはいないものの、いくぶんそれを狙ったようなジャンクな質感で仕上げられています。

適度な叙情的メロディを持った、スラッシーでアップテンポなブラックメタルとしては、あらゆるの面で申し分のない極上の仕上がりで、この手のサウンドが好きなら聴いて損はありません。

しかし、クオリティは最上級で余裕さえ感じられるとはいえ、取り立ててユニークなアプローチが見られるわけではありませんし、この時代においては目新しさは微塵も感じられないあたりは気になるところ。

ブラックメタルの細分化と『ギミックメタル』のブームによる、ブラックメタルの一般層への普及とプチブームとの連続性もうかがえる本作は、「彼らがこの時期にやる必要がある音楽だったのか?」、「SAMAELのファンが求める作風なのか?」と問われるならば、数多の疑問符から逃れられることはできないでしょう。

ブラック度:★★★★★|ゴシック度:★☆☆☆☆|エレクト度:★☆☆☆☆
オルタナ度:★☆☆☆☆|ドゥーム度:★☆☆☆☆|総合評価:★★★★☆

入門盤 賛否両論 実験作

Antigod|アンチゴッド

ミニアルバム (2010年)

「Antigod - EP」リンクが見つかりませんでした。: (WP Applink)

Lux Mundi|ラックス・ムンディ

オリジナルアルバム – 10作目 (2011年)

今回のゾリヒタプロデュースで、再度『Passage(4th)』や『Solar Soul(8th)』のような、ヘヴィでゴシカルなインダストリアル・メタルへと移行しています。

その2作と比較すると、よりヘヴィネスを強調した重厚なサウンドでクオリティも上々ですが、ヘヴィサウンドにこだわるあまり全体的にフラットな印象を残す仕上がりになっています。

また、それなりに作風に多様性を持たせてはいるものの、新機軸は一切見られない毎度おなじみの作風であり、そこに平坦な音づくりも重なって、本来の楽曲の幅の広さに対して、やや単調にも感じられる仕上がりとなっています。

|ブラック度:★☆☆☆☆
|ゴシック度:★★★★☆
|エレクト度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|ドゥーム度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆

入門盤 通好み スルメ盤

Hegemony|ヘゲモニィ

オリジナルアルバム – 11作目 (2017年)

前作に続いて、過去に醸成された彼らのベーシックなスタイルといえる、ヘヴィなゴシック・インダストリアル路線。
ゴシック・テイストがいくぶん薄まって、アップテンポな楽曲がやや増えた印象はあるものの、それ以外に大きな変化と言えるものは一切見当たりません。

なにぶん、いつも通りのSAMAEL印のアルバムなので、いつも通り水準は軽くクリアしてはいるものの、これといった決め手に欠けるのもいつも通り。

ヘヴィネスにこだわりすぎていることと、一時期見せていた実験的なアプローチが皆無ということもあって、楽曲のバリエーションが極端に狭まった印象もあり、実際以上に変化に乏しく感じられる点もいつも通りで、ついでに、ゾリヒタによるプロデュースもいつも通りです。

T-06のようなファストナンバーや、『Reign of LighT(6th)』や『Era One(7th)』で見せた、ポップチューンをもっと効果的に配置することができれば、最後までダレずに聴き通すことが出来たかもしれません。

|ブラック度:★☆☆☆☆
|ゴシック度:★★★☆☆
|エレクト度:★★☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|ドゥーム度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★☆

入門盤 通好み スルメ盤
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