Contents
- 1インダストリアルサウンドを取り入れて新たなサウンドへと進化を遂げた、真にプログレッシヴ/オルタネイティヴでアーティスティックなバンドたち!
- 1.1本格的にインダストリアルメタルスタイルに身を投じたバンドたち
- 1.1.1SHOTGUN MESSIAH|ショットガンメサイア
- 1.1.2G//Z/R(Geezer)|ギーザー
- 1.1.3STRAPPING YOUN LAD(SYL)|ストラッピング・ヤング・ラッド
- 1.1.4SAMAEL|サマエル
- 1.1.5TRIPTYKON|トリプティコン
- 1.1.6ATROCITY|アトロシティ
- 1.1.7VOODOOCULT|ヴードゥーカルト
- 1.1.8THE NEFILIM|ザ・ネフィリム
- 1.1.9TWO(Rob Halford)|トゥ
- 1.2一時的/部分的にインダストリアル要素を取り入れたバンド。
- 1.2.1KREATOR|クリエーター
- 1.2.2CORONER|コロナー
- 1.2.3VOIVOD|ヴォイヴォド
- 1.2.4NAPALM DEATH|ナパーム・デス
- 1.2.5MORGOTH|モーゴス
- 1.2.6MORBID AMGEL|モービッド・エンジェル
インダストリアルサウンドを取り入れて新たなサウンドへと進化を遂げた、真にプログレッシヴ/オルタネイティヴでアーティスティックなバンドたち!
インダストリアルメタルはデビュー前のバンドに新たなモードを提示しただけでなく、既にキャリアを重ねていた中堅やベテランたちにも大きな刺激と音楽的な影響を与えたジャンル/ムーヴメントです。
とは言っても、バンドのインダストリアルメタル化というケースには、どうしても“行き詰まったスラッシュバンドがサバイヴのために実行する苦し紛れの最終手段”という印象が付きまといがち。
しかし、例えばPANTERA系グルーヴメタルやニューメタル,メタルコアを導入するバンドの多くに、人気や売上を狙って流行を取り入れるトレンド追求や、レーベルの押し付けでやむなくというイメージが強いのと比較すると、もっと意識的にアーティスティックで実験的な明確な意図を持っての試みとして実践している例が多いのです。
実際、それら“インダストリアルインスパイア系”の一群には、類い稀な突出した音楽性やセンスと安易にモードに流されない強固な独自性を持って、非常にレベルの高いサウンドを創り上げた実績のあるバンドが多く存在します。
そんな高いミュージシャンシップでインダストリアルサウンドを導入し、優れた作品を生み出したアーティストを中心に、レベルの高い“インダストリアルインスパイア系”バンドを紹介していきたいと思います。
本格的にインダストリアルメタルスタイルに身を投じたバンドたち
ここでは完全にインダストリアルメタルへ転身してそのスタイルを継続していたり、新たにプロジェクトを立ち上げてまでインダストリアルサウンドを追求した本気度MAXのアーティスト達を紹介します。
SHOTGUN MESSIAH|ショットガンメサイア
SHOTGUN MESSIAHは、スウェーデンからアメリカに乗り込んだティム・スコルド(Tim Skold)らによって結成、80年代アメリカのバブリィなグラムメタルムーヴメント後期にポップメタルで活動しますが、類型的なグラムメタルサウンドには早期に見切りをつけてインダストリアルサウンドを導入します。
最初はバンドサウンドにインダストリアルテイストを部分的に取り入れる程度でしたが、最終的には完全な打ち込みベースのインダストリアルユニットとなり、アグレッシヴでハードコアなインダストリアルサウンドに従来の持ち味であるポップセンスを大胆に導入した、非常に独創的で完成度の高い作品を生み出します。
先鋭的なリスナーからの注目を集めるますが、惜しくも1993年のカルト的名盤Violent New Breed(ヴァイオレント・ニュー・ブリード)を残して解散。スコルドは単独インダストリアルシーンに乗り込み、MARILIN MANSON,KMFDMら大物とのコラボを続けるほか、SKOLD名義のソロプロジェクトでも活動します。
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G//Z/R(Geezer)|ギーザー
レジェンドBLACK SABBATH(ブラック・サバス)のベーシストにしてバンドコンセプターのギーザー・バトラー(Geezer Butler)が、FEAR FACTORY(フィア・ファクトリィ)初期の革新的サウンドに刺激を受けて、そのヴォーカリストのバートン・C・ベル(Burton C. Bell)と組んだユニット。
BLACK SABBATHのドゥームサウンドをヘヴィグルーヴあふれるインダストリアルメタルとして再構築したサウンドは、まさにオリジネイター同士だからこその説得力を感じさせ、「BLACK SABBATHのドゥームサウンドの要はギーザー」という説にも真実味を与えます。
FEAR FACTORYに通じるもののベーシックな部分で全く異なる個性を持つ独自のサウンドは、フォロアーに終わるどころか逆にFEAR FACTORYにフィードバックされたほど。
バートンの参加は1作目のみで、以降は無名ミュージシャンを集めたギーザーのソロプロジェクトとなりますが、さらにEDMのエッセンスなども取り入れて超ベテランの手によるものとは思えないモダンなサウンドに進化し、計3作のハイクオリティでオリジナリティあふれたインダストリアルアルバムを残します。
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変幻自在なヴォーカルを認められて変態ギタリストスティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)のバンドに参加して名を上げた、カナダの鬼才デヴィン・タウンゼント(Devin Townsend)のインダストリアルメタルプロジェクト。
“天才的いいとこ取り師”とも“最強の器用貧乏”とも呼ばれる彼ならではの、毎度おなじみフランケンシュタイン的手法ですが、ここではFEAR FACTORYのサウンドをベースにFOETUS(フィータス)〜PIG(ピッグ)ラインの高密度コラージュ的手法を加えて、ニューメタル風の圧力の高い作風を実現しています。
当初は擬似メロコアのPUNKY BRÜSTER(パンキィ・ブリュースター)同様ファニーなプロジェクトでさほど注目されませんでしたが、よりFEAR FACTORY度を増した2作目がスマッシュヒット。
「インダストリアルサウンドに憧れるけどメタル的な様式がないと満足できないし、だからといってニューメタルにスリ寄るのはイヤ…。」という保守的メタルクラスタの支持を集めたことで、パーマネントな活動に切り替えメタル度をアップさせつつ5作もの作品を残します。
SAMAEL|サマエル
デスメタルばりの重さと厚みのあるブラックメタルを追求して、高品位な作品をリリースしていたスイスのSAMAELですが、1996年の4作目Passage(パッセージ)では一変、デス/ブラックテイストを抑えて、ゴシック風味濃厚なインダストリアルメタルを作り上げます。
ドゥーミィなミドルテンポのナンバーが中心ですが、荘厳な耽美要素を導入した重厚でスペーシーなサウンドを持ち味としており、作品によってはEDMを導入したダンサブルな作風も試みています。
同郷のCELTIC FROSTやCORONERに比べると、実験的でアバンギャルドな試みは比較的少ないものの、まさにバックグラウンドからくるイメージに相応しい世界観を作り上げています。
デス/ブラックメタルからのインダストリアル化としては最も成功している一例で、かのMORBID AMGELがインダストリアルアプローチ導入の際にもSAMAELと近しい要素が見られ、そのアプローチとスタイルに影響を受けていることが推測されます。
TRIPTYKON|トリプティコン
メンバーの逝去によって今は活動停止となった、実験性の強いオルタナティヴなスイッツ・スラッシュメタルバンド、CELTIC FROST(セルティック・フロスト)の中心メンバーが立ち上げた新バンド。
CELTIC FROSTは様々な先鋭的でエクストリームな試みを行ない、ブラックメタル,ゴシックメタル,ドゥームメタルなどのルーツのにあげられることも多いレジェンド的な存在ですが、ここでもその実績と評価に恥じない実験的作風を追求しています。
スラッシュメタル的な疾走曲は控えめで、ゴシックドゥーム調の陰鬱で重々しい作風を基調としていますが、過去のオルタナティヴでプログレッシヴなセンスによるヘヴィミュージック探求の産物を、インダストリアルテイストを強めつつエクストリームメタル/ポストハードコア的な手法で再構築したことで、ベテランらしからぬモダンで強靭な先鋭的ウルトラヘヴィサウンドを完成させています。
ATROCITY|アトロシティ
ジャーマン・デスメタルバンドのATROCITYは、初期2作品でテクニカルデスメタルを極めてからは、アバンギャルドなアート感覚で様々な音楽のエッセンスを導入した、雑食性のポストデスメタルスタイルへと変化を遂げます。
内包する要素は、インダストリアル,ゴシック,グルーヴ,プログレ,ニューウェイヴ,エレポップ,EDM,クラシック,前衛音楽と多岐にわたります。
同じATROCITY名義でインダストリアルメタル,女性ヴォーカルのフォーキーゴシック,80年代ニューウェイヴカバーなど特定の単独テーマに絞り、そのジャンルのアーティストとのコラボも手段に含めて各ジャンルのサウンドを追求した企画盤も多数制作しています。
バンド本体ではインダストリアル色をダイレクトに押し出しているわけではありませんが、SEやサウンドエフェクトなどいち要素として効果的に取り入れています。
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VOODOOCULTは、ドイツのニューウェイヴ系アーティストフィリップ・ボア(Phillip Boa)によるインダストリアルメタルユニットで、2枚のアルバムを残しています。
メタルバンドによるインダストリアルアプローチとは一味も二味も違う作風は、ボアの非メタル系のバックグラウンドに由来する独自のセンスによるもの。
1stアルバムではドラムにSLAYER(スレイヤー)のデイヴ・ロンバード(Dave Lombardo)を迎え、さらにゲストギタリストとしてKREATORのミレ・ペトロッツァ(Mille Petrozza)やDEATHのチャック・シュルディナー(Chuck Schuldiner-R.I.P.)、Despair(ディプペアー)のウォルデマー・ゾリヒタ(Waldemar Sorychta)らビッグネームが参加したことで、メタルファンにも話題になりました。
また、このコラボがきっかけとなって、ウォルデマーとデイヴがのちにGLIP inc.(グリップ・インク)を結成するという副産物もありましたし、KREATORがインダストリアル路線を推し進めるブースターにもなりました。
2ndではゲストギタリストの参加はなく、FAITH NO MORE(フェイス・ノー・モア)のジム・マーティン(Jim Martin)らメタルファンにファンにはやや知名度が劣るラインナップとなりましたが、基本的な作風は変わらずクオリティも全く落ちていません。
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THE NEFILIM|ザ・ネフィリム
THE NEFILIMは80年代ニューウェイヴ時代の英国ゴシックシーンの後発バンドとしてムーヴメンとの末期を彩り、のちのゴシックメタルシーンにも大きな影響を与えたFIELDS OF THE NEPHILIM(フィールズ・オブ・ネフィリム)の中心人物カール・マッコイ(Carl McCoy)によるユニット。
本隊自体が、もともとゴシックバンドの中でも特にヘヴィメタル/ヘヴィロックに近しいスタイルでしたが、ここでは本来の暗黒耽美的なロマンティシズムはそのままに、サウンドはさらにメタリックでラウドなヘヴィネスを大幅強化。ヴォーカルもよりダーティでアグレッシヴなスタイルとなり、重厚でエクストリームな孤高のインダストリアルメタルを完成させています。
1996年に唯一のアルバムZoon(ゾーン)をリリースした時点では大きな注目も浴びませんでしたが、そのインダストリアルなゴシックメタル的サウンドは活動再開したFIELDS OF THE NEPHILIMにも引き継がれ、それに乗じて本作も再評価されます。
TWO(Rob Halford)|トゥ
JUDAS PRIEST(ジューダス・プリースト)のロブ・ハルフォード(Rob Halford)が、グルーヴメタルプロジェクトFIGHT(ファイト)に続いて取り組んだインダストリアルプロジェクト。
プロデューサーにNINE INCH NAILS(ナイン・インチ・ネイルズ)のTrent Reznor(トレント・レズナー)ギターに元MARILIN MANSON(マリリン・マンソン)のJohn Lowery(ジョン・ロウリィ)を迎えた強力な布陣でしたが、結果的には世紀の問題作として黒歴史に加えられます。
一時的/部分的にインダストリアル要素を取り入れたバンド。
ここでは、あくまでも実験的な試みとして一時的にインダストリアルサウンドを導入したバンドや、本気でインダストリアル路線を試みるもビジネス的な問題で再度軌道修正を余儀なくされた、“インダストリアルインスパイア系”アーティスを紹介しています。
KREATOR|クリエーター
ヴォーカルのミレが90年代からゴシックとインダストリアルに傾倒し、バンドサウンドにもそれを強く反映させていきます。特に1994年のRENUAL(リニューアル)以降その傾向が顕著になり、インダストリアルゴシックを極めた1999年のアルバムENDRAMA(エンドラマ)にたどり着きます。
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CORONER|コロナー
オルタナティヴな要素の強い個性的なテクニカルアートスラッシュメタルを生み出し続けたCORONERは、スラッシュムーヴメントの終焉と共に活動を終えますが、ラストアルバムとなる1993年のGRIN(グリン)ではミニマルでサイケデリックな先鋭的インダストリアルスラッシュを完成させていました。
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VOIVOD|ヴォイヴォド
カナディアン・スラッシャーのVOIVODは、本来がサイバーでマシーナリーな質感のサウンドを持ち味としており、インダストリアル路線を試みるのはひとつの必然でした。
作風は賛否両論でのちに軌道修正をしますが、この試みはバンド史上でも上位にくるクオリティの作品として結実します。
NAPALM DEATH|ナパーム・デス
UKグラインドコアの帝王NAPALM DEATHは、1995年のDiatribes(ディアトライブス)でダンサブルですらあるヴルーヴメタル的なインダストリアルスタイルという新たな個性を確立。その後数作にわたり同様のアプローチを続けますが、案の定激しい賛否両論を巻き起こします。
MORGOTH|モーゴス
ドイツのデスメタルバンドMORGOTHは、シングルでのストレートなデスメタルを経て、そこにゴシック的な耽美性とプログレ的展開を導入した作品でデビューしますが、2ndではハードコア色の強いソリッドな楽曲にインダストリアル的な質感を持ったサウンドに。
続く1996年の3作目Feel Sorry for the Fanatic(フィール・ソーリィ・フォー・ザ・ファナティック)ではKILLING JOKE(キリング・ジョーク)をインスパイアした、本格的なインダストリアルメタルへと大変貌を遂げます。
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MORBID AMGELはヴォーカルのデヴィット・ビンセントがインダストリアルに傾倒、シングルにリミックス曲を収録したりサウンドにインダストリアル的な処理を施したりという控えめなアクションを起こしますが、ついには脱退してビザールなインダストリアルバンドGENITOUTURERS(ジェニトーチャーズ)に加入します。
近年の復帰作Illud Divinum Insanus(イルド・ディヴァイナム・インセイナス)では、大々的にインダストリアルサウンドを取り入れ2枚組リミックスアルバムまでリリースするも、結局は物議をかもし再度脱退という結果に。