Contents
- 1アメリカン・ドリームを夢見たスウェディッシュ・グラムメタル・バンドはインダストリアル路線に活路を見出すも解散。しかし、中心メンバーのスコルドはシーンの重鎮に認められてカルト人気を獲得!?
- 1...1メタル・バブルの最中ブレイクを目標にアメリカンへ!?
- 1...2グラムメタルからインダストリアル・メタルへ転身!?
- 1...3この時期のインダストリアル・シーンは!?
- 1...4明暗分かれた解散後の両雄!?
- 1.1SHOTGUN MESSIAH|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Shotgun Messiah|ショットガン・メサイア
- 1.1.2Second Coming|セカンド・カミング
- 1.1.3I Want More|アイ・ウォント・モア
- 1.1.4Violent New Breed|ヴァイオレント・ニュー・ブリード
- 2KINGPIN [キングピン]
- 2.1KINGPIN|DISCOGRAPHY
- 2.1.1Shout It Out|シャウト・イット・アウト
- 2.1.2Welcome to Bop City|ウェルカム・トゥ・ボップ・シティ
- 3SKOLD [スコルド]
- 3.1SKOLD|DISCOGRAPHY
- 3.1.1Skold|スコルド
- 3.1.2Dead God|デッド・ゴッド
- 3.1.3Anomie|アノミー
- 3.1.4The Undoing|ジ・アンドゥーイング
- 3.1.5Never Is Now|ネヴァー・イズ・ナウ
- 3.1.6Dies Irae|ディエス・イレ
- 4SKOLD vs. KMFDM [スコルド・ヴァーサス・ケイ・エム・エフ・ディ・エム]
- 4.1SKOLD vs. KMFDM|DISCOGRAPHY
- 4.1.1Skold vs. KMFDM|スコルド・ヴァーサス・ケイ・エム・エフ・ディ・エム
- 5DOCTOR MIDNIGHT & THE MERCY CULT [ドクター・ミッドナイト・アンド・ザ・マーシー・カルト]
- 5.1DOCTOR MIDNIGHT & THE MERCY CULT |DISCOGRAPHY
- 5.1.1"(Don't) Waste It"|(ドント)ワスト・イット
- 5.1.2I Declare: Treason|アイ・ディクレアー:トレゾン
- 6NOT MY GOD [ノット・マイ・ゴッド]
- 6.1NOT MY GOD|DISCOGRAPHY
- 6.1.1NOT MY GOD|ノット・マイ・ゴッド
- 6.1.2Simulacra|シミュラクラ
アメリカン・ドリームを夢見たスウェディッシュ・グラムメタル・バンドはインダストリアル路線に活路を見出すも解散。しかし、中心メンバーのスコルドはシーンの重鎮に認められてカルト人気を獲得!?
SHOTGUN MESSIAHのディスコグラフィ/レビュー、おすすめアルバムだけをチェックしたい方は【記事下部】か【目次】のリンクからも移動できます!!
SHOTGUN MESSIAH(ショットガン・メサイア)は、スウェーデン出身のグラムメタル/インダストリアル・メタル・バンド。
現在では、インダストリアル/EBMシーンでカリスマ的人気を誇る、ティム・スコルドが在籍していたバンドとして知られています。
メタル・バブルの最中ブレイクを目標にアメリカンへ!?
北欧シーンは、フィンランドのカルトなグラムロック・バンドHANOI ROCKSの存在もあって、グラマラスなロックンロールが一定のシェアを持っていましたが、アメリカのグラムメタル・ブームの影響もあって、80年代中盤以降はその数も増加を見せます。
当初のSHOTGUN MESSIAHは、地元スウェーデンで『KINGPIN』名義のポップなグラムメタル・バンドとして活動をスタートしています。
アルバムもリリースして相応の人気を得ていましたが、アメリカのグラムメタル・ブームを視野に入れて、そこでの成功を目標と定めます。
アメリカ進出に際して、同名バンドが名義の権利を持っていたことから、SHOTGUN MESSIAHへと改名。グラムメタル・ブームによるメタル・バブル華やかな80年代末期に、全米デビューを果たします。
グラムメタルからインダストリアル・メタルへ転身!?
『KINGPIN』時代のアルバムをリメイクしたデビュー作は、大きなブレイクには至らず、さらにはフロントマンの脱退にも見舞われることになります。
さらには、ドラマーも一線での活動から身を引いいたため、2ndではそれに変わってドラム・マシーンを導入。後のインダストリアル路線につながる打ち込みサウンドに開眼すると同時に、音楽性も、よりヘヴィでアグレッシヴなスタイルとなります。
ついには、ハリー・コーディー(Gt.)とティム・スコルド(Ba.)の2人のみとなったSHOTGUN MESSIAHは、ドラム・マシーン導入を機に、3rdでは本格的かつユニークなインダストリアル・メタル・サウンドへと変貌を遂げました。
これが好事家の目にとまって、独自のインダストリアル・メタルといて高く評価され、隠れた名盤に数えられるようになりますが、商業的な成功には結びつかず、レーベルの路線転向をのあおりを受けて解散とあいなります。
この時期のインダストリアル・シーンは!?
SHOTGUN MESSIAHが解散となったこの時期、USインダストリアル・シーンの主流モードは、NINE INCH NAILSやその系譜にあるMARILYN MANSONらのゴス/エモ系ニューウェイヴ・リバイバル路線へと移行しました。
一方で、同時期にはFEAR FACTORYも登場しており、ニューメタル時代のトレンドとなる、サイバー・メタルを確立することになり、インダストリアル・メタルのシーンはそのふたつに二極化してゆきます。
明暗分かれた解散後の両雄!?
SHOTGUN MESSIAH解散後、メンバーは個別の活動へと移行しますが、特に活躍が目覚ましかったのは、ティム・スコルド。
完全にインダストリアル・メタル/エレクトロニック・ロックへと転向したスコルドは、ゴシック路線に活路を見出しますが、それが認められてドイツの老舗インダストリアル・バンド『KMFDM』やマリリン・マンソンのバンドメンバーに起用されます。
それによって広く注目を集め、インダストリアル・メタルのニュー・ヒーローとして一部からはカリスマ的な支持を受けるようになりました。
一方コーディはセッション・ミュージシャン的な活動が主になり、かのトム・ウェイツなどのアルバムにも参加していますが、表舞台での大々的な活躍は特に見られません。
SHOTGUN MESSIAH|DISCOGRAPHY
Shotgun Messiah|ショットガン・メサイア
オリジナルアルバム – 1作目 (1989年)
スウェーデン在住時に、『KINGPIN』名義でリリースした音源を、元にしたデビュー・アルバム。T-03は、地元スウェーデンでスマッシュヒットとなっています。
GUNS N’ ROSESに代表されるグラムメタル末期のトレンド、『バッドボーイ・ロックンロール』と、グラマラスな北欧ロックンロールのカリスマHANOI ROCKSの存在を背景にしたスタイルですが、どちらかというとアメリカ・シーンを意識したような印象が強めです。
グラムメタル系の中ではややヘヴィメタリックな音づくりと、持ち前のポップセンスやフラッシーなテクニカル・ギターが持ち味ですが、同様のグループの中で特異性をアピールできるほどの際立った個性は無く、及第点は超えているものの傑出したレベルにはなく、キラーチューンと呼べるほどの曲も無い。
つまりは、それなりに良くできた平均的なグラムメタルどまりであり、ポップメタル・ファンならば聴いて損はない出来栄えですが、それ以外のリスナーをねじ伏せるほどの力はありません。
|インダス度:☆☆☆☆☆
|ゴシック度:☆☆☆☆☆
|アッパー度:★★★☆☆
|ポップネス:★★★★★
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論
Second Coming|セカンド・カミング
オリジナルアルバム – 2作目 (1991年)
フロントマンのジニィ・J・ザンが脱退し、スコルドがヴォーカルを引き継ぐかたちで制作された2作目。
また、ドラマーのスティックス・ガロアも、この時点でバンドに籍を置いてはいるもののほぼ制作には加わっておらず、ドラムはプログラミングをメインにして、そこにガロアが生音で手を加えるというかたちをとっています。
打ち込みドラムの導入が次作でのインダストリアル路線へつながった、という意味では重要な1枚ですが、ここではあくまでも“プログラミングでの自然なドラム・パートづくり”に意識がいっており、いまだデジタル・サウンドを活かしたインダストリアル・メタルという発想には至っていません。
そのため、基本的な音楽性は前作から全く変化はありませんが、ポップテイストはそのままにヘヴィネスもメタル度も大幅に強化され、さらに曲の出来栄えや全体のグレードも跳ね上がっています。
T-05などは、次作にもつながるソリッドなリフワークを聴かせる、ヘヴィでポップな名曲ですし、T-01, T-03, T-13もなかなかの佳曲。
ノルマ的なバラードなど無駄な曲も目につくなど、出来栄えにややムラはあるものの、グラムメタル末期の隠れた名盤と言ってもいいでしょう
|インダス度:★☆☆☆☆
|ゴシック度:☆☆☆☆☆
|アッパー度:★★★☆☆
|ポップネス:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
I Want More|アイ・ウォント・モア
ミニアルバム:EP (1992年)
Violent New Breed|ヴァイオレント・ニュー・ブリード
オリジナルアルバム – 3作目 (1993年)
ついにスコルドとハリー・コーディのデュオとなって、インダストリアル・メタル・サウンドに目覚めたSHOTGUN MESSIAHの、最高傑作にして最後のアルバム。
ドラマー不在による打ち込み(ドラムマシーン)導入が、インダストリアル・アプローチの契機となるパターンは時折見られ、それほど珍しいケースではりませんが、それらの中では稀有な成功例と言えます。
本来の持ち味であるキャッチーなフックみあふれたポップメタルと、ハードコアでノイジーなデジタル・スラッシュが絶妙に噛み合ったこのサウンドは、非常にユニークで個性的かつ完成度の高いもの。
これは、次世代型グラムメタルの理想形であると同時に、パイオニア勢がピークに達したことで漂っていたインダストリアル・シーンの、閉塞感を打ち破る存在になり得ると思わせるような、鮮烈な印象を残すものでした。
捨て曲なしの一分の隙もないつくりで、完成度も申し分なし。アグレッシヴながらフックの効いた、どれもシングル・カットできそうな多彩な曲が、ラストまで立て続けに繰り出されます。
T-01, T-04などの印象的なキラー・チューンで聴ける、ハードロッキンでエクストリームなサウンドは、マリリン・マンソンの初期のサウンドに影響を及ぼしているという見方も出来ます。
毎年のようにモードが更新されていた、この当時のUSインダストリアル・メタルですが、この時期のニューカマーの中ではFEAR FACTORYと並んで傑出しており、マニアックなリスナーからは次の展開が期待されましたが、あえなく解散。
ソロとなったスコルドは、これ以降インダストリアル・シーンのトレンドとなる、ゴス/エモ系ニューウェイヴ・リバイバル路線に乗ってブレイク。
一方コーディはスコルドほど華々しい活躍は見らす明暗が分かれますが、ここでの奇跡のケミストリーは両者がそろってこそのものだったことは確実でしょう。
|インダス度:★★★★☆
|ゴシック度:★☆☆☆☆
|アッパー度:★★★★☆
|ポップネス:★★★★★
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
Violent New Breed / Shotgun Messiah
KINGPIN [キングピン]
SHOTGUN MESSIAHへと改名してアメリカ進出を果たす以前に、スウェーデンのローカル・グラムメタル・バンドとして活動しており、この時代のバンド名がこのKINGPINです。
バンドの中身やポップでロッキンな音楽性に変わりは無く、SHOTGUN MESSIAH時代の初期作品もこの時代の音源をリメイクしたものでした。
地元スウェーデンでは、この時期からすでにスマッシュ・ヒットを飛ばしてチャート入りするほどの人気バンドとなっています。
KINGPIN|DISCOGRAPHY
Shout It Out|シャウト・イット・アウト
オリジナルアルバム – 1作目 (1987年)
Welcome to Bop City|ウェルカム・トゥ・ボップ・シティ
オリジナルアルバム – 2作目 (1988年)
SKOLD [スコルド]
ティム・スコルドが自身の名を冠したソロ・プロジェクト。KMFDMやMARILYN MANSONバンドに参加していた時期も、それと並行して活動を行っていました。
当初は、『Violent New Breed』時代のサウンドを基盤にした、キャッチーでアッパーな曲と、NINE INCH NAIKSとマリリン・マンソン、そしてこの時期に勢いのあったゴシック・メタルを意識した、耽美なアトモスフィア重視のダークでゴシカルな曲を二本柱としていました。
しかし、のちにはアッパーな曲は姿を消して、ゴシック路線へと傾倒してゆきます。
SKOLD|DISCOGRAPHY
Skold|スコルド
オリジナルアルバム – 1作目 (1996年)
SHOTGUN MESSIAH時代の『Violent New Breed』に近い、キャッチーでロッキンなインダストリアル・メタルと、これ以降のスコルドの主力スタイルとなる、ダークでアトモスフェリックなゴシック・インダストリアル、それぞれの作風が入り乱れたアルバム。
次作からは、NINE INCH NAIKSやマリリン・マンソンなどの当時のトレンドを意識した、やや類型的なダーク&ゴシカル路線へ完全に舵を切り、最後にはマンソン・バンドに加入して大出世することになります。
結果的に『Violent New Breed』を踏襲した、ハードロッキンなインダストリアル・メタルが聴けるのはこのアルバムが最後となりました。
このふたつの音楽性によるマッチングは、見方によっては散漫とも取れますが、アルバム通してのメリハリに乏しくなりがちなところに、緩急をつけるアクセントとして効果的にはたらいています。
事実、ハードロッキンなナンバーがスポイルされたこれ以降のアルバムは、やや平板で多様性を欠くようになります。
|インダス度:★★★★☆
|ゴシック度:★★★★☆
|アッパー度:★★★☆☆
|ポップネス:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Dead God|デッド・ゴッド
コンピレーションアルバム (2002年)
Anomie|アノミー
オリジナルアルバム – 2作目 (2011年)
The Undoing|ジ・アンドゥーイング
オリジナルアルバム – 3作目 (2016年)
Never Is Now|ネヴァー・イズ・ナウ
オリジナルアルバム – 4作目 (2019年)
Skold / Never Is Now Clear Vinyl
Dies Irae|ディエス・イレ
オリジナルアルバム – 5作目 (2021年)
SKOLD vs. KMFDM [スコルド・ヴァーサス・ケイ・エム・エフ・ディ・エム]
この当時、ジャーマン・インダストリアルのビッグネーム『KMFDM』に参加していたスコルドですが、そこでの活動とは別に、独立した別プロジェクトしても、『KMFDM』とのコラボレーション作品を残しています。
作風は、この時期のスコルドのダークなゴシック路線に傾いたもので、『KMFDM』ではおなじみのハイテンションでダンサブルなナンバーはここではすっかり影を潜めており、『SHOTGUN MESSIAH』と『KMFDM』のぶつかり合いのような、アッパー&アグレッシヴ方面でのケミストリーは期待できません。
SKOLD vs. KMFDM|DISCOGRAPHY
Skold vs. KMFDM|スコルド・ヴァーサス・ケイ・エム・エフ・ディ・エム
オリジナルアルバム – 1作目 (2009年)
アッパー度:★☆☆☆☆|ポップネス:★★☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
代表作 賛否両論 スルメ盤
DOCTOR MIDNIGHT & THE MERCY CULT [ドクター・ミッドナイト・アンド・ザ・マーシー・カルト]
それぞれ日本盤もリリースされて、ノルウェイのエクストリーム界隈では少しは知られたバンドのメンバーと、スコルドによって結成されたプロジェクト。
他のメンバーは、グラマラスなデスンロールTURBONEGROのハンク・フォン・ヘルヴェテ(Vo.)、古参のデス/ブラックバンドCADAVERの中核でCELTIC FROSTなどのサポートも務めたアンダース・オデン(Gt.)、ブラックメタルからインダストリアルに鞍替えして名を高めたTHE KOVENANTのアウドゥン・ステンゲル(Gt.)、テクニカルでメロディックなデスラッシュバンドのEXTOLのダヴィッド・フースヴィック(Dr.)といった面々。
必然的にメタル寄りの作風となっており、メンツから期待するほどにはエクストリームではないものの、SHOTGUN MESSIAH解散後のスコルドのプロジェクトの中では、最もラウドでアグレッシヴな音楽性へと結実しています。
DOCTOR MIDNIGHT & THE MERCY CULT |DISCOGRAPHY
“(Don’t) Waste It”|(ドント)ワスト・イット
ミニアルバム:EP (2011年)
アッパー度:★★★★☆|ポップネス:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤
(Don’t) Waste It (7 inch Analog)
I Declare: Treason|アイ・ディクレアー:トレゾン
オリジナルアルバム – 2作目 (2011年)
|インダス度:★★★☆☆
|ゴシック度:★★☆☆☆
|アッパー度:★★★★☆
|ポップネス:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤
NOT MY GOD [ノット・マイ・ゴッド]
2018年からスコルドも参加している、サンフランシスコのインダストリアル/ブラックメタル・バンド、『PSYCLON 9』の中心人物ネロ・ベラムとのユニット。
『PSYCLON 9』で聴けるようなアグレッシヴなサウンドはここには無く、近年のスコルドのソロにも通じるゴシック・インダストリアルをベースに、よりダウナーでアトモスフェリックなスタイルを追求しています。
NOT MY GOD|DISCOGRAPHY
NOT MY GOD|ノット・マイ・ゴッド
オリジナルアルバム – 1作目 (2020年)
|インダス度:★★★☆☆
|ゴシック度:★★★★★
|アッパー度:★☆☆☆☆
|ポップネス:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 スルメ盤
Not My God / Not My God Clear Vinyl