Contents
- 1デスメタルに初めて本格的メロディを導入して激情的かつ叙情的なメロディック・デスメタルを確立、シーンにパラダイムシフトを巻き起こした、スウェディッシュ・メロデスのオリジネイター!!
- 1...1DARK TRANQUILLITYは元祖メロデス!?
- 1...2イエテボリの出世頭IN FLAMESは兄弟バンド!?
- 1...3DARK TRANQUILLITYが生んだメロデスとは!?
- 1...4DARK TRANQUILLITYのシーンでの評価は!?
- 1...5DARK TRANQUILLITYのゴシックメタル展開!?
- 1...6DARK TRANQUILLITYの活動状況は?
- 1.1 DARK TRANQUILLITY|ダーク・トランキュリティ|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Skydancer|スカイダンサー
- 1.1.2The Gallery|ザ・ギャラリー
- 1.1.3Enter Suicidal Angels |エンター・スイサイダル・エンジェルス
- 1.1.4The Mind's I|ザ・マインズ・アイ
- 1.1.5Projector|プロジェクター
- 1.1.6Haven|ヘイヴン
- 1.1.7Damage Done|ダメィジ・ドーン
- 1.1.8Character|キャラクター
- 1.1.9Fiction|フィクション
- 1.1.10We Are the Void|ウィ・アー・ザ・ヴォイド
- 1.1.11Construct|コンストラクト
- 1.1.12Atoma|アトマ
- 1.1.13Moment|モーメント
- 1.1DARK TRANQUILLITYはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 1.1.13.1DARK TRANQUILLITYの代表作の本命は!?
- 1.1.13.2DARK TRANQUILLITYの代表作の対抗は!?
- 1.1.13.3DARK TRANQUILLITYの代表作の大穴は!?
- 1.1.13.4ゴシックメタル路線のオススメは!?
- 1.1.13.5DARK TRANQUILLITYの記念碑的名盤は!?
- 1.1.13.6代表作の次に聴くならどれ!?
デスメタルに初めて本格的メロディを導入して激情的かつ叙情的なメロディック・デスメタルを確立、シーンにパラダイムシフトを巻き起こした、スウェディッシュ・メロデスのオリジネイター!!
DARK TRANQUILLITY(ダーク・トランキュリティ)は、スウェーデンのメロディック・デスメタル・バンド。
DARK TRANQUILLITYは元祖メロデス!?
DARK TRANQUILLITYは、メロディック・デスメタルのパイオニアと見なされ、黎明期のシーンを牽引してきたバンドのひとつ。
デビュー以前には〈SEPTIC BROILER〉名義で活動しており、そこではミカエル・スタンネ(当時ギター担当)と、現〈IN FLAMES〉のアンダース・フリーデンの2人のフロントマンもそろって在籍していました。
デスメタルにメロディーを導入する動きそのものは、DARK TRANQUILLITYのデビュー以前より試みられていたもので、特にスウェーデンなどの北欧シーンはその傾向が顕著な地域であり、少なくない実例が確認できます。
しかし、それらは、ひとつのエッセンスとしてアクセント的に、あるいは演出効果のために部分的に用いるにとどまっていました。
本格的に楽曲の中核をなす要素として全面的にフィーチャーする手法を実践して、作品に仕上げたという意味では、DARK TRANQUILLITYこそが、『メロディック・デスメタル』を確立させたオリジネイターと言ってもいいでしょう。
イエテボリの出世頭IN FLAMESは兄弟バンド!?
DARK TRANQUILLITYは、同じくメロディック・デスメタル黎明期にその中核にあった、〈AT THE GATES〉や〈IN FLAMES〉と同じく、スウェーデンの都市イエテボリを拠点としています。
これらのによって確立された音楽性は『イエテボリ・スタイル』と称され、メロディック・デスメタルの代名詞的なスタイルとして、後に欧州各国から英米に至るまで広く注目を集め、シーン全体にその影響を伝播させることになります。
またDARK TRANQUILLITYと、それに続いた後続グループの〈IN FLAMES〉とは、ある意味では兄弟バンドに近い関係性にありました。
初期は〈IN FLAMES〉の1stアルバムでは、DARK TRANQUILLITYではギターを担当していたミカエル・スタンネが、サポートとしてヴォーカルをつとめたほか、2ndアルバムからは初代ヴォーカリストのアンダース・フリーデンが移籍して、正式に〈IN FLAMES〉のパーマネンドなヴォーカリストとして着任していいます。
さらにスタンネは、〈IN FLAMES〉の初期メンバーによって2021年結成された〈THE HALO EFFECT〉でもフロントマンを務めているほか、パワーメタル・バンド〈HAMMERFALL〉の立ち上げにも、やはり〈IN FLAMES〉のメンバーとともに関わっています。
DARK TRANQUILLITYが生んだメロデスとは!?
DARK TRANQUILLITYの音楽的な手法は、短いメロデイをそのままリフに転用、あるいはメロディを基にしたコード進行をリフに用いることよる、メロディアスなリフワークを楽曲の軸とするもの。
この手法により、部分的にメロディパートを挿入したり、メロディ合うなギターソロを多用することでメロディを印象付けるといった、過去にも見られた演出的なメロディ手法を用いたデスメタルとは、全く異なる独自のスタイルを創造しています。
またそのメロディも、トラッド・ミュージックやニューウェイヴなどに由来する、独自のエモーショナルな個性を確立しており、旧来のヘヴィメタルに見られる、クラシカル路線やマーケティング主導のラヴバラードにものとは、全く異質なスタイルとなっています。
DARK TRANQUILLITYのシーンでの評価は!?
新たなジャンル/スタイルの先駆者ゆえに、あまり早過ぎて音楽性が幅広いユーザーに受け入れられず、長くマイナーな位置にとどまってしまう。
むしろ、後続のフォロアー達の方が、より大衆化されて世に出るタイミングもベストなために、うまく波に乗って先んじてブレイクしてしまい、パイオニアが後塵を排することになる…。
こういった『オリジネイターの不遇』は、各ジャンルで先駆者が見舞われがちな不幸ですが、DARK TRANQUILLITYを取り巻く状況はまさしくこれに当てはまります。
特に日本においては、メディアの後押しの影響もあってそれが顕著で、メロディック・デスメタルのブームの中では、〈IN FLAMES〉や〈ARCH ENEMY〉を中心とした後発グループにスポットが当たりがちであり、DARK TRANQUILLITYはかなり過小評価の傾向にあり、した。
のちに、リテラシーの高いリスナーを中心に正当な評価も進みますが、現在も、特に日本などではその実績に見合う評価を得ているかどうかは疑問です。
DARK TRANQUILLITYのゴシックメタル展開!?
DARK TRANQUILLITYは、4thアルバム『Projector』からの一時期、アグレッションを抑えて耽美性を押し出した、ダウンテンポ気味のゴシックメタル寄りのスタイルを軸とする展開を行いっており、これは、音楽性と完成度の両面で賛否両論を巻き起こします。
ただし、ゴシックメタル風のアプローチ自体は、デビュー当初から見られるもので、女性ヴォーカルを交えたトラッド・ゴシック/フォーク・ゴシック風のアプローチを実践しており、特に唐突なものでも予想外のものではありませんでした。
そもそも、スウェーデンを含む北欧シーンにおいては、メロディック・デスメタルとゴシックメタルの音楽性の差異が、“曲のテンンポが速いか遅いか”程度でしかない…というケースは、とりたてて異例なものではなく、〈TIAMAT〉,〈THERION〉,〈AMORPHIS〉,〈SENTENCED〉,〈OPETH〉,〈KATATONIA〉などのように、双方のジャンルの音楽性を併せ持っていたり、両ジャンルの間を行き来しするグループは多々見られます。
DARK TRANQUILLITYは、のちにメロディック・デスメタル路線に回帰しますが、その後もゴシックメタル路線の楽曲やその要素が、作品の随所に織り交ぜられたスタイルが中心となっています。
DARK TRANQUILLITYの活動状況は?
DARK TRANQUILLITYは、何度名のメンバーの入れ替えや、キーボーディストのマーティン・ブランドストロームの追加などがありましたが、中心メンバーは変わることなく大きなブランクも無しにコンスタントな活動を続け、バブル化したメロデスシーンにも染まらず埋没せずの一線を画したスタンスで孤高の地位を築いています。
しかし、2016年の、バンドの中核だったマーティン・ヘンリクソン(Gt.Ba.)にはじまり、ニクラス・スンディン(Gt.),アンダース・ジヴァープ(Dr.)た創設メンバーが続々と脱退。
現在は、オリジナル・メンバーはミカエル・スタンネのみとなり、後任メンバーには、“アモット弟”ことクリストファー・アモット(Gt.)と、〈NONEXIST〉や〈SKYFIRE〉に在籍したヨハン・レインホルツ(Gt.)という〈ARCH ENEMY〉系の人脈を迎えて活動を行っています。
DARK TRANQUILLITY|ダーク・トランキュリティ|DISCOGRAPHY
Skydancer|スカイダンサー
オリジナルアルバム – 1作目 (1993年)
当時は輸入盤のみだったこともあり、特に日本では印象が薄くマイナー扱いされがちなデビュー作。
一般には、現〈IN FLMS〉のアンダースが、ヴォーカルを務めていたことで知られ、古参リスナーやマニアからはメロディック・デスメタルの扉を開き、その始まりを告げた記念碑的な最重要アルバムと見なされています。
何しろ、「エクストリミティの追求こそ美徳」…とされていたデスメタル・シーンで、アグレッションはそのままに、激情的なエモーション,メロディ,叙情性を余すことなくつめ込むという、それまでは誰も意識しなかった、あるいは無意識に禁じ手として封じ、誰もあえて行わってこなかったアプローチを全面的に打ち出した本作は、まさに革命的な1枚と言えます。
これは、同時期に恐る恐るメロディ導入を試みていたバンドにも「ここまでやってもいいのか!」「こんなやり方があったのか!」という衝撃を与えたものであり、それこそ、90年代メタル・シーン最大のパラダイムシフトと呼んでも差し支えないほどでした。
また、初期の〈ANATHEMA〉や〈THE GATHERING〉に通じるアプローチの、女性ヴォーカルをフィーチャーした、ゴシック・フォーク風のスローナンバーも要所で交えており、これらも魅力的な仕上がりを見せ、音楽性とバックグラウンドの多彩さを感じさせてます。
こういったゴシックメタル・ナンバーやゴシック要素の同居は、スウェーデンのメロデス/耽美派デスの特徴のひとつにもなっており、本人たちも後の作品においてゴシック要素に焦点を当てたアプローチも試みてます。
荒削りな技術面や録音面の拙さをマイナス要因に挙げられることがあるものの、デスメタルへの大々的メロディ導入を実行に移したことと、そのためのメソッドとして、考えうる様々なアイデアを持ち込み、独自のスタイルを構築した事実だけでも十分すぎるほどであり、その程度ではバンドと本作の存在意義と歴史的重要性は揺らぎません。
メロデス全盛期の主流となる、明快で持つわかりやすい起承転結を持った展開の作風ではなく、ある意味ではエクスペリメンタルともプログレッシヴとも呼べそうな、予断を許さない変則的で目まぐるしい展開を主軸としているのも本作の特徴で、これによって、メロデス・シーンのみならず、DARK TRANQUILLITYのキャリア上でも、特異な存在感を示しています。
|ブルタル度:★★★★★
|叙 情 度:★★★★☆
|ゴスメタ度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 賛否両論 通好み 実験作
The Gallery|ザ・ギャラリー
オリジナルアルバム – 2作目 (1995年)
デスメタルへのメロディ導入が世界中で同時多発的に巻き起こり、一般メタルリスナーからも視線を集めていた時期のリリースとなった2nd。
ここから日本盤もリリースさるようになったことも影響し、メロデスとしては〈AT THE GATES〉や〈IN FLAMES〉の後塵を拝していた感のある日本でも、大いに注目度/知名度が高まることになります。
そういった事情もあって、特に日本においては代表作と見なされることも多いアルバムといえます。
基本的な作風は前作の延長上にあるものですが、前作で特徴的だったフリーキーなハイテンションは控えられ、より叙情性/情緒性とエモーションをストレートに強調して生かす方向で、整合感を強めて緩急を効かせたスタイル。
大仰な展開やドラマ性といったメタル的な外連味とが強化されたこともあり、一般メタラーにもわかりやすく受け入れやすい作風となった反面、前作のような目まぐるしいスリリングな展開や、ストレンジなテイストは薄れています。
個々の楽曲を見ると、T-01「Punish My Heaven 」は間違いなくDARK TRANQUILLITY屈指の名曲ですし、その他も佳曲のT-03やT-07をはじめ全編にわたって水準以上は維持できています。
しかし、そのT-01ほどの際立ったナンバーは見られず、前作と比較するとやや出来栄えにバラツキもあり、序盤以降はやや精彩を欠いた印象が拭えないことも否めません。
|ブルタル度:★★★★☆
|叙 情 度:★★★★★
|ゴスメタ度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Enter Suicidal Angels |エンター・スイサイダル・エンジェルス
ミニアルバム:EP (1996年)
The Mind’s I|ザ・マインズ・アイ
オリジナルアルバム – 3作目 (1996年)
日本を含めてメロデス界隈が大きな広がりを見せ始めた時期でありながら、90年代のDARK TRANQUILLITY作品の中では特に影の薄い印象となった1枚。
疾走感重視のメロディック・デスメタル主体の楽曲の中に、メランコリックなゴシックナンバーがアクセントとして挿入される…という構成は見事なまでに過去作と同様です。
ただし、作風には再度のマイナーチェンジの結果とも思しき変化が見られ、やや大仰なケレン味が強目だった前作と比較すると、ややストレートでシンプルなつくりとなっており、デスラッシュ寄りのストロングスタイル・メロデスとも表現できます。
これには、一長一短/賛否両論があり、特にイントロらしいイントロもない唐突ともいえる曲導入部や、これまた唐突な素っ気ないエンディングなど、余韻を残させようとしない淡白な作風は、前作に食らいついたメタル様式美志向のリスナーには評判が良くなかったようです。
では、本作が駄作や凡作かというと、そういうわけではなく、前作の「Punish My Heaven 」ほどのキラーチューンこそ無いものの、T-01,T-03,T-06,T-09といった定番メロデス・チューンは佳曲ぞろいですし、これまたお馴染みの女性ヴォーカル入りトラッド・ゴシック曲T-07も上々で、良い位置で効果を上げています。
その他の曲も軒並み高水準な仕上がりを見せており、アベレージにおいては前作を凌駕してさえいます。
楽曲の処理や、やや荒く愛想に欠けた作風は好みが分かれるところでしょうが、隠れた好盤と呼ぶに値する1枚と言っていいでしょう。
|ブルタル度:★★★★★
|叙 情 度:★★★☆☆
|ゴスメタ度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
通好み スルメ盤
Projector|プロジェクター
オリジナルアルバム – 3作目 (1997年)
ゴシック・メタルに接近した実験的なアプローチから、評価が分かれがちな賛否両論の問題作。
ダウンテンポで耽美的アトモスフィアが強調されたゴシックメタル調のナンバーが、まさしく本作の主軸となっており、アルバムにおけるアップテンポなメロデス曲とダウンテンポのゴシックメタル曲の比率が、過去作とは完全に逆転。
また、同じゴシックメタル調の楽曲であっても、以前とはややアプローチに変化が見られ、初期のトラッド/フォークをベースとしたオーガニックな質感のものから、ニューウェイヴ/シンセポップに寄ったような人工的でクールなサウンドへと変化しています。
ヴォーカルについても、要所では従来のデスヴォイスを用いてはいるものの、全面的にクリーン・ヴォーカルを主体としたスタイルへとシフトしており、従来どおりのメロデスとして聴けるのは、T-06やT-10程度という状態です。
これらの音楽性の新機軸が賛否両論のが焦点となりがちですが、ゴシックメタル調の楽曲自体については、デビューアルバムからコンスタントに数曲は収録されており、ややスタイルに変化こそあるものの、その作風については特に意外性はありません。
本作でネックとなっているのは、ゴシック路線への変化よりも、楽曲そのものの出来栄えといろいろな意味での幅の狭さでしょう。
収録各曲をそれぞれ個別に見てみるならば、のきなみスウェディッシュ・ゴシックメタルの水準程度は十分クリアできています。
しかし、同じゴシックメタル寄りの曲であっても、あまりに作風の幅が狭く多様性に欠いた面がありますし、同時に、楽曲単位でも見てもやや展開の工夫に乏しいことは否めません。
また、スタンネによるクリーン・ヴォーカルは、一応無難にこなせてはいるのですが、デスヴォイスの時ほどにはエモーションを感じさせない淡白な歌唱で、表現力の豊かさという意味でも今ひとつであり、アルバムの平坦な仕上がりの一因と言わざるを得ないでしょう。
アルバムを通して聴くと、メロデス・ナンバーは無難ながらも上々で安定感を見せるものの、肝心のゴシックメタル路線については、変化に乏しいくフラットな印象だけが残る結果となっています。
|ブルタル度:★☆☆☆☆
|叙 情 度:★★★★★
|ゴスメタ度:★★★★☆
|オルタナ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Haven|ヘイヴン
オリジナルアルバム – 5作目 (2000年)
前作に続く、DARK TRANQUILLITY流ゴシックメタル・アプローチの第二弾とも言えるアルバム。
ただし、従来のメロデス曲は申し訳程度に抑えて、ソフト&マイルドなダウンテンポ・サウンドを軸に据え、クリーンヴォーカルをメインに用いていた前作とは異なり、全面的にデスヴォイス主体として、ゴシックメタルとメロデスを掛け合わせたような折衷型の楽曲が中心です。
前作は、フラット過ぎて変化に乏しかった作風と、表現力が弱いヴォーカルが足を引っ張る結果に終わり、賛否両論を呼ぶことになりましたが、本作では、それら対する反省と対策のためのアイデアが、かなり反映されたものとなっています。
ならば、前作の弱点が改善されて弱点ナシなしで万々歳となるはずですが、残念ながら事がそこまで理想的に運んだとは言いかねます。
アルバムとしては十分に良作の部類ではあることは間違いありませんが、前作との比較ならば一長一短で、改善された部分もその逆もありといったところです。
曲調については、本作もダウンテンポが幅を利かせているものの、平均速度が大幅に上がったと同時に、多様性の面ではも前作よりはやや幅が広がっており、個々の曲中でも抑揚/緩急が意識されたことで、躍動感とダイナミズムが生じさせています。
一方、楽曲の速度上限が引き下げられており、いわゆる“速い曲”にあたるT-01,T-04,T-11は、いずれも佳曲ではあるものアップテンポ止まりで、ファストチューンとは呼べないため、トータルで見るとテンポのレンジ自体には広がりは見られません、
また、表現力を取り戻すことはできていますが、できるならば、クリーンヴォイスを封印するのではなく、その表現力の向上と効果的な使い方を模索して、総合力の向上を図って欲しかったところです。
なお、試行錯誤の後はうかがえますが、その中でインプットされた他のアーティストの影響がそのまま出力された部分があり、アップテンポなナンバーでは〈SENTENCED〉を彷彿させる一面を確認でき、T-03では〈U2〉風のキーボードメロディを聴くことができます
|ブルタル度:★★★☆☆
|叙 情 度:★★★★☆
|ゴスメタ度:★★★★☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Damage Done|ダメィジ・ドーン
オリジナルアルバム – 6作目 (2002年)
メロデスのオリジネイターでありながら、〈ARCH ENEMY〉〈IN FLAMES〉〈SOILWORK〉らの後から来たフォロアーに、商業的に追い越されて後塵を拝していただけでなく、直近2作での新機軸も消化不良に終わり、創作面でも行き詰まりを見せていたDARK TRANQUILLITY。
そんな中で放った本作は、端的に言えば、彼らのパブリックイメージであり、最も持ち味が発揮できる手法でもある、メロデス路線へと回帰したアルバムなのですが、単に初心に戻って験直しどころか、本作によって再びメロデスのトップへと返り咲くことにも成功した、起死回生の1作となりました。
メロデス回帰とはいえ、そのピークにして原点である最初期2作へ回帰したわけではなく、例えるならば、デスラッシュ要素の濃いストロングスタイルの『The Mind’s I(3rd)』と、キーボードを押し出したゴシカル・メロデスの『Haven(5th)』をミックスした、直近数作の総決算といったところです。
やや、既存のメロデスフォーマットに寄ったような印象と、根本的な作風に変化が乏しい点は気になりますが、近作とは打って変わってファストチューン主体となった本作は、とにかく楽曲面の充実ぶりが際立っており、それだけでも欠点を帳消しにできるほど。
T-01,T-03,T-05,T-07,T-08といったアルバムの半数ほどが、いずれも強力なフックを持った出色のキラーチューンですし、それ以外の曲も凡庸なバンドならば看板を張れるレベルに仕上がっています。
バンドのキャリアとメロデス史/メタル史上における重要性、創作面での独自性と先鋭性については初期2作に譲らざるを得ませんが、純粋な完成度という意味では全キャリア中でもトップを争うほどで、中期の名盤の称号に恥じない出来栄えを見せています。
|ブルタル度:★★★★★
|叙 情 度:★★★☆☆
|ゴスメタ度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤
Character|キャラクター
オリジナルアルバム – 7作目 (2005年)
Fiction|フィクション
オリジナルアルバム – 8作目 (2007年
We Are the Void|ウィ・アー・ザ・ヴォイド
オリジナルアルバム – 9作目 (2010年)
Construct|コンストラクト
オリジナルアルバム – 10作目 (2013年)
Atoma|アトマ
オリジナルアルバム – 11作目 (2016年)
Moment|モーメント
オリジナルアルバム – 12作目 (2020年)
DARK TRANQUILLITYはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
DARK TRANQUILLITYはの代表作は、どうしても初期作品に固まっていますが、基本的にアベレージは安定しているので、どれを選んでも大ハズレは無いでしょう。
しかし、意外にも頻繁に音楽史をマイナーチェンジしてきたグループなので、あまり適当に選んだり、ネットやSNSを雑に頼りすぎると失敗するかもしれません。
DARK TRANQUILLITYの代表作の本命は!?
DARK TRANQUILLITYの代表作はというと、一般的には日本でのブレイクのきっかけにもなった『The Gallery(2nd)』とされています。
とりあえず、“ファースト・ダートラ”ということでどれか1枚を選ぶなら、メロデスらしさという意味ではもちろんのこと、知名度でも完成度でも第1候補に上がります。
DARK TRANQUILLITYの代表作の対抗は!?
初期の代表作『The Gallery(2nd)』に匹敵すると見なされる、中期の代表作が『Damage Done(6th』。
ややデスラッシュ寄りの作風で、最大公約数的な面もありますが、完成度の高さとキラーチューンの多さという点では、全作品中でも一二を争う名盤です。
DARK TRANQUILLITYの代表作の大穴は!?
「メロデスは好きだけど、メロディ過剰や大げさすぎるのはちょっと…」という硬派志向のメロデスファンは、アグレッシヴでシンプル&ソリッドな、ストロングスタイル・メロデスの『The Mind’s I』が向いているかもしれません。
賛否両論ありで、やや印象も薄めですが、クオリティは文句なしの隠れた名盤です。
ゴシックメタル路線のオススメは!?
彼らの本流ではないし評価も割れがちですが、ゴシックメタル路線のアルバムも確かな人気を獲得しています。
落ち着いたマイルドでソフトなゴシックメタルや、メランコリック・メタルがイケる口なら、ゴシック・フリークに評価の高い『Projector(4th)』から入ってみるのも良いかもしれません。
「あまりにソフト過ぎるのはちょっと…」というリスナーは、メロデスとゴシックメタルが上手くブレンドされた『Haven(5th)』や『Construct(10th)』を選ぶのもよいでしょう。
DARK TRANQUILLITYの記念碑的名盤は!?
メロディック・デスメタルの歴史を深掘りしたければ、独創的な元祖メロデスアルバムとして歴史的重要作の『Skydancer(1st)』は、絶対にスルーすることのできない必聴の1枚です。
これは、間違いなく名曲ぞろいの大名盤なのですが、やや荒削りな部分やアクの強さもあり、ビギナーが最初の1枚に選ぶべきかと問われると微妙かもしれません。
代表作の次に聴くならどれ!?
代表作をひと通り押さえた上で、さらに次を攻めたいのならば、『Character(7th)』と『Fiction(8th)』あたりが無難でしょう。
前出の名盤群と比較すると1枚落ちる印象は否めませんが、それでも非常に高品質な良作メロデス・アルバムです。