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ハードコアなスラッシュメタルフリークも認める、真にUSスラッシュメタル界を代表する重要バンド – 裏BIG4とは?
以前、USスラッシュメタルのBIG4(スラッシュメタル四天王)と呼ばれる4バンドMETALLICA(メタリカ),SLAYER(スレイヤー),MEGADETH(メガデス),ANTHRAX(アンスラックス)について解説しました。
キャリア,実績,知名度,メタル界での格などを考慮すれば納得するよりない、まさにBIG4の名にふさわしいメンツではあるんですが、生涯スラッシュ一筋のSLAYERを除くと音楽性もブレブレなのは以前語ったとおり。
「メタル業界代表としてならともかく、スラッシュメタルを代表するには如何なものか?」という声も少なくありません。
そこで今回は、知名度やメジャー感ではBIG4に劣っても、真にスラッシュメタルを代表するにふさわしいバンドを裏BIG4(真スラッシュ四天王)をピックアップしてみました
あくまで筆者の独断と偏見で選んだだけで、業界,マスコミやファンに認知されているわけではありませんし、そんなことはどうでもいいのでご了承ください。
一応、選択基準は次のような条件です。
①初期スラッシュムーブメントの頃から活動している。
②途中ブランクがあっても現在現役で活動している
③最低5作以上のフルアルバムをリリースしている。
④音楽性がスラッシュメタルを大きく逸脱していない。
EXODUS|エグゾダス
レゲエバンドのような名前を持つこのEXODUSは、METALLICA(メタリカ)のギタリスト、カーク・ハメットが在籍していたことでも知られる、カリフォルニアのいわゆる“ベイエリアスラッシュ”シーンのバンドです。
1993年に解散してしまいましたが、00年代に再結成してからはコンスタントな活動を続けています。
アルバムデビューこそやや遅れたものの、スラッシュの創始者的として持ち上げられがちなMETALLICAを上回るキャリアを持つ、真のベイエリアスラッシュの元祖であり本家です。
なにしろ、ベイエリアスラッシュの主流になった、“ザクザクの歯ごたえで重いのにキレがあるリフ”が特徴のサウンド『ベイエリアクランチ』を生み出したのもこのEXODUS。
ベイエリアのレジェンド的存在ながら洗練されメジャー化していくMETALLICAらが無くしてしまった、アンダーグラウンドの匂いがプンプンの“いい意味でのメジャーになれないB級感”を持ち続けているのが魅力で、オールドスラッシャーにも根強い人気があります。
ベイエリアの「リフ職人」と呼ばれるギタリスト、ゲイリー・ホルトが生み出すリフワークがバンドの最大の武器ですが、多彩で魅力的なリフやアイデアがありながら、最終的にはなんとなくノリと勢いで押し切ってしまっているような“雑さ”も逆にB級ならではの愛すべき味になっています。
しかし、2005年にベイエリアの中でもセンスの良さで知られるHEATHEN(ヒーゼン)のギタリスト、リー・アルタスが加入したことで構成力が強化、アングラ感はそのままにクオリティは見違えるほどアップするなどいまだ進化を続けています。
TESTAMENT|テスタメント
TESTAMENTはベイエリアスラッシュの古参バンドの一つですが、ややデビューが遅かったことや初期のサウンドにMETALLICAメタリカの影響が感じられたこともあって、第二世代的のその他大勢的な見方もされていました。
しかし、今のMETALLICAなど軽く上回るベイエリアでもトップクラスの作曲能力、幅広い音楽性を持ちながら全てをスラッシュメタルに収束させるセンス、誰が聴いてもわかる唯一無二のTESTAMENT節で、今ではベイエリアスラッシュの中心的な存在になっています。
スラッシュムーブメントが去って以降、同時期に活動していたスラッシュバンドは、サバイヴのためや時流の要請を理由に音楽的な新機軸を取り入れようとしてました。
しかし、それをうまく消化できずに爆死してしまったバンドが数知れずで、まさに屍累々の様となります。
なんとか生き延びたものの、その頃は黒歴史として封印しているバンドも少なくありません。
TESTAMENTはそんな中、新機軸を全て消化しきって自分たちの血肉にできた稀有な存在です。
歌モノ要素,メロウなバラード,ロック寄りのヘヴィネス,グルーヴメタル要素,ニューメタル的な高密度サウンド,デスメタル要素。
こういったエッセンスをひとつひとつ巧みに取り入れて、自分たちのサウンドに反映させていきましたが、驚くことにその試み全てが成功して音楽性を芳醇なものとすることにつながっています。
自分たちのサウンドとのマッチングを考え、扱いきれないまたはプラスにならないと判断した要素(例えばミクスチャー要素,インダストリアル要素など)は、最初から無視するかアクセント程度にとどめるクレバーな判断力も、音楽性を豊かにしながらサバイヴできた要因でしょう。
チャック・ビリー(Vo.)の癌療養期間を除いて、デヴュー以降コンスタントな活動を続ける彼らは、ベイアリアスラッシュ勢の中でも最も信頼度の高いバンドと言っていいでしょう。
OVERKILL|オーバーキル
OVERKILLはANTHRAX同様ニューヨークで活動するスラッシュメタルバンドです。
スラッシュバンドとしてはキャリア最古参の部類で、デヴュー以来休みなくコンスタントな活動を続け、作品数は同世代USバンド平均の倍という驚くべきハイペースながら、比較的高水準な安定したクオリティのアルバムをリリースしています。
キャリア的にも実力的にも文句なしのバンドなんですが、どちらかというと“通好み”な独自のポジションに落ち着いています。
同じNYスラッシュでも、ANTHRAXにはストリート系らしい開放感や昼間の明るいイメージや愛想の良さがあるのに対して、OVERKILLにはアート系バンド的な地下感,密室感,夜の暗さを感じさせる独特のクールさがあるのも取っつきづらい理由かもしれません。
このOVERKILLは元を正すとNYパンクバンドとしてスタートしています。
そう聞くと意外に感じる人も多いかもしれませんが、本来ニューヨークという土地自体がメタルとパンク/ハードコアのクロスオーバーが盛んな土地です。
それに、ハードロックを前時代の遺物として仮想敵にしてきたUKパンクと違い、USパンクには70年代ハードロックをリスペクトするバンドも多いので、決して珍しいことではありません。かのMANOWAR(マノウォー)創設メンバーのロス・ザ・ボスも元USパンクでしたしね。
初期メタルと初期パンク,さらに70年代ハードロックの要素まで取り入れ、NY的なクールネス感じさせる独自のスラッシュメタルは、フォロアーも見当たらない孤高の存在です。
NUCLEAR ASSAULT|ニュークリア・アソルト
NUCLEAR ASSAULTは、BIG4の一角ANTHRAXの初期ベーシストだったダン・リルカが、メンバーとの確執を原因に脱退して新たに立ち上げたバンドです。
いわば、METALLICAに対するMEGADETHのような存在ですが、あちらほどこじれていたわけではなく脱退後も一部メンバー以外とは良好な関係で、ハードコアユニットS.O.D.で共演したりサポート的に復帰したりもしています。
そのサウンドには初期ANTHRAX的な要素も部分的に感じられますが、よりスラッシーに、よりハードコアに、よりエクストリームに、そしてよりシリアス&ポリティカルに突き進むサウンドは、当時のANTHRAXと比べても圧倒的なインパクトがあります。
スラッシュとハードコアの間に位置する「クロスオーバー・スラッシュ」として捉えられるバンドですが、メタルサイドからのアプローチとなるNUCLEAR ASSAULTはサウンドもメタル色が濃厚で、ハードコアからメタルに寄ることが多いそれらのバンドの中では異色な存在とも言えます。
ハイクオリティなアルバムを立て続けにリリースしますが、ダンがサイドプロジェクトとして始めたグラインドコアバンドBRUTAL TRUTH(ブルータル・トゥルース)が大成功。
NAPALM DEATH(ナパーム・デス)と並ぶグラインドコアのカリスマとして、よりエクストリームで実験的な音楽作りにのめり込むダンは、ついにNUCLEAR ASSAULTを脱退してしまいます。
バンドは急遽後任を加えてアルバムもリリースしますが失速は明らかで、そうこうするうちに自然消滅的な活動停止状態に突入していましたが、00年代に再びダンを中心に活動再開、新作も発表してライブ活動もコンスタントに繰り返し現在に至っています。
作品数こそ少ないものの、大きな存在感を放つ重要な存在です。
次点:真四天王控え▶︎FLOTSAM AND JETSAM|フロットサム・アンド・ジェットサム
FLOTSAM AND JETSAMはアリゾナ出身のバンドで、デビューこそ遅めですがスラッシュバンドとしてはかなり早い時期から活動していました。
何よりも、METALLICAに在籍していたジェイソン・ニューステッドが中心メンバーだったことで知られています。
ジェイソン効果の影響で一時期は大きな注目を浴び、バンドもそれなりのクオリティの作品をリリースしてそれに答えていましたが、どうにも印象が薄くそのままファードアウトしていくかと思われました。
そんな彼らですが、その後同期のバンドがブレイクしたり路線変更したり消滅していく中、大きなブランクもなく活動を続けて作品もコンスタントにリリース、なんとフルアルバムはすでに10作を超えています。
その堅実な活動を賞して、皆勤賞・努力賞的な意味合いでここに取り上げました。
次点どまりの原因は、やはりスラッシュメタルとしての印象の薄さとクオリティのバラツキです。
もともと初期の頃からかなりパワーメタル寄りの音で、スラッシュメタルとしては同郷のSACRED REICH(セイクレッド・ライク)の方がはるかに存在感がありました。
近年では更にスラッシュからの逸脱傾向が強くなり、もはやメロディックパワーメタルといった曲もありますし、基本的な方向性も例えばNEVERMORE(ネヴァーモア)のようなプログレ感もあるダークパワーメタルとでもいったスタイルとなっています。
少なくとも00年代のMETALLICAよりはユニークでクオリティーの高い音楽をやっていますし(個人の意見です!)、聴くほどに味が出る“スルメ系”の作品も多いので、興味ある人にはオススメはしたいところですが、スラッシュメタルとしてはこの位置になってしまいました。
Amazon Musicで『FLOTSAM AND JETSAM』の聴き放題をチェック!裏BIG4(真スラッシュ四天王)編|まとめ
USスラッシュにはユニークなバンドやインパクトの強いバンドがいくらでもいるので、選択肢の多さにもっと悩むかと思いましたが、今回の選出条件が思ったよりシビアでした。
特に「現役であること」と「作品数」でほとんどが対象外になってしまい、意外にもすんなり決まってしまいました。
共にBID4と大きな因縁のあるNUCLEAR ASSAULTとFLOTSAM AND JETSAMは悩みましたが、やはりスラッシュメタルとしての存在感と歴史的重要度で選びました。
「BIG4を聴いてみたけど思ったよりヌルいじゃん!」なんて人や、USスラッシュの神髄を味わいたい人はぜひチェックしてみてください。
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