激情型ヴォーカルとカオティックサウンドを武器にニューヨークハードコアシーンから黎明期のニューメタルシーンへ乗り込みメタルコアの畑を耕すも、収穫期のヘヴィミュージック黄金時代を待たずに姿を消した伝説のNSHC系メタリックハードコアバンド!!
VISION OF DISORDER(ヴィジョン・オブ・ディスオーダー)は、ニューヨークハードコアシーンから登場したメタリックハードコアバンド。
ジャンルとしてはNSHC(ニュースクール・ハードコア)に属するバンドですが、ニューメタルやメタルコアの基礎を築く新世代ヘヴィミュージックグループが続々と登場した90年代中期の激動の時代に、ロードランナーレコーズというメタル専門レーベルとしては業界最メジャーから世界リリースされた初めてのNSHCバンドでした。
当初は、激情型のダーティシャウトにクリーンヴォーカルを織り交ぜたヴォーカルスタイルと、ソリッドなメタルエッジサウンドとメタル的整合感の強さを持った、“NSHC・ミーツ・ニューメタル”スタイルを展開。メタルファンを中心に好評を得るも取り立てて独自性をアピールできる存在ではありませんでしたが、その後のメジャー2作目となる3rdアルバムがニューヨーク系ヘヴィオルタナティヴロックにも近いカオティックなアプローチが、パンクハードコアクラスタから一般ロック界隈まで含む識者を中心に高評価を得て、一躍期待の新鋭として注目を集めます。
しかし、バンドに対するサポート不足への不満からレーベル側と溝できたことや、さらなる音楽的アプローチの変化がオールドファンから不評を受けたことなどが重なり2002年には解散。
中心メンバーのティム・ウィリアムズ(Vo.)とマイク・ケネディー(Gt.)はBLOODSIMPLEを結成して、さらにニューメタルに接近したサウンドを展開していましたが、2008年にはVISION OF DISORDERを再結成。その後はハイペースではないもののアルバムもリリースしつつ活動を続けています。
VISION OF DISORDER|DISCOGRAPHY
Still|スティル
ミニアルバム:EP (1995年)
マイナーレーベルからリリースされていたデビューミニアルバム。基本的な作風やヴォーカルスタイルはここから大きな変化はありません。
カオス度:★★☆☆☆|メロエモ度:★☆☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
入門盤
Vision of Disorder|ヴィジョン・オブ・ディスオーダー
オリジナルアルバム – 1作目 (1996年)
大手メタルレーベルのロードランナーから、鳴り物入りで登場したデビュー作。彼らのブレイクと当時の躍進ぶりは、やはり当時のNSHCの中では唯一メジャーからのリリース作品だったことによる部分が大きいですが、それまでNSHCに触れる機会のなかったメタルリスナーには少なからず衝撃を与えたアルバムです。
アンダーグラウンドまで視野に入れるなら取り立てて独自性があるスタイルではありませんが、“サビのクリーンヴォイスによる歌メロ”というレーベルメイトFEAR FACTORYのメソッドをこの時点で取り入れているなど、のちのニューメタルシーンを視野に入れた展開を行っていた先見性こそをむしろ評価すべきでしょう。
カオス度:★★☆☆☆|メロエモ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 賛否両論
Imprint|インプリント
オリジナルアルバム – 2作目 (1998年)
結果的には、あらゆる面で彼らにとってのピークにあたる作品。曲構成自体はグルーヴメタル〜ニューメタルの系譜に位置するオーソドックスなものですが、HELMETなどのプロデュースで知られるデイブ・サーディを迎えての、当時のメタリックハードコアでは異彩を放っていた、ニューヨークのヘヴィオルタナティヴ的なジャンクで生々しい音作りと、メジャーシーンでは突出していたティム・ウィリアムズの熱量に満ちたテンションの高い激情型シャウトで大きく注目を集めます。ただしウィリアムズの歌唱にジム・モリソンを引き合いに出すのは、さすがに「調子にのるな!」と言わざるをえません。
メタル以外のマスコミや識者から大絶賛で迎えらたことからもわかるように、パンク/ハードコア/オルタナ系のリスナーを引き込めたこと本作の勝因。メタルクラスタに限れば前作からの変化はむしろマイナス要因だらけで、実際に前作の方を押す声も少なくありません。
カオス度:★★★★☆|メロエモ度:★☆☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 実験作
For the Bleeders|フォー・ザ・ブリーダーズ
コンピレーションアルバム (1999年)
From Bliss to Devastation|フロム・ブリス・トゥ・デヴァステーション
オリジナルアルバム – 3作目 (2001年)
楽曲に占めるメロディーの比重が大きくなり、曲調もミッド〜スローテンポのものが多くなったことで、前作に飛びついたファンから総スカンを食らったアルバム。いうとイメージが悪いですが、楽曲クオリティが前作に劣るわけでもなく、本来独自性の薄い彼らのこと作風の変化もあえて大上段に指摘して批判するほどのものでもありません。いくら前作が受けたからといって、同じ作風を5枚も10枚も続けられてもさすがに困ります。
とはいえ、前作の高評価の理由が、ややテクニカルでハイテンションな作風と熱量に満ちた激情型スクリームにあったことを考えると、バンドの意図かどうかはともかくここでそれをスポイルするのはマーケティング的には失策で、もう1〜2枚は前作のマイナーチェンジでよかったかもしれません。。ニューメタルリスナーにアピールできなかったのも誤算だったのでしょうが、それにはさすがにポップネスとフックが足りないでしょう。
カオス度:★★☆☆☆|メロエモ度:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 実験作
The Cursed Remain Cursed|ザ・カーズド・リメイン・カーズド
オリジナルアルバム – 4作目 (2012年)
Razed to the Ground|レイズド・トゥ・ザ・グラウンド
オリジナルアルバム – 5作目 (2015年)
BLOODSIMPLE [ブラッドシンプル]|DISCOGRAPHY
中心メンバーのティム・ウィリアムズ(Vo.)とマイク・ケネディー(Gt.)によって、VISION OF DISORDER解散後の2002年に結成されたバンド。解散前のVISION OF DISORDERで試みていた、メロディ導入とニューメタルへの接近というアプローチをさらに大胆に展開していましたが、2008年にVISION OF DISORDER再結成のために活動停止となりました。
ナードエモゴス的なメランコリックなエモーショナルメロディと、プログレ的とも言える凝った曲展開が大きな特徴で、メインストリームをメジャー感のあサウンドを意識しつつも、その類型に収まらない作風を追求していました。
A Cruel World|ア・クルーエル・ワールド
オリジナルアルバム – 1作目 (2005年)
Red Harvest|レッド・ハーベスト
オリジナルアルバム – 2作目 (2007年)