サイトアイコン おとふり

★ THERION(セリオン) ディスコグラフィー ★ このアルバムがスゴイ!?|オペラティックでゴシカルな次世代型シンフォニック・メタルで覇権を握ったスウェディッシュ・デスメタルの古豪!!…必聴アルバムは?

THERION_Logo

Contents

  1. 90年代初頭のポスト・デスメタル戦国時代をオペラ・ヴォーカルとゴシカルな耽美性でサバイブしたスウェーデンの古参ミュージシャンは、合唱隊とオーケストラを率いたプロジェクトで次世代型ヘヴィメタル様式美を確立したイノベイター!?
        1. THERIONの音楽スタイルは!?
        2. デスメタルとしてのTHERION!?
        3. メロデス/ゴシックメタルとしてのTHERION!?
        4. シンフォニック/オペラティック・メタルとしてのTHERION!?
        5. THERIONのバンド体制は!?
  • THERION|セリオン|DISCOGRAPHY
    1. Of Darkness…. |オブ・ダークネス….
    2. Beyond Sanctorum |ビヨンド・サンクトラム
    3. Symphony Masses : Ho Drakon Ho Megas|シンフォニィ・マッシーズ:ホー・ドラコン・ホー・メガス
    4. Lepaca Kliffoth|レパカ・クリフォス
    5. Theli|セリ
    6. A’arab Zaraq – Lucid Dreaming| アーラブ・ザラク – ルシッド・ドリーミング
    7. Vovin|ヴォヴィン
    8. Crowning of Atlantis|クラウニング・オブ・アトランティス
    9. Deggial|デジアル
    10. Secret of the Runes|シークレット・オブ・ザ・ルーンズ
    11. Lemuria|レムリア
    12. Sirius B|シリウスB(ビー)
    13. Gothic Kabbalah|ゴシック・カバラ
    14. Sitra Ahra|シトラ・アフラ
    15. Les fleurs du mal|レ・フルール・デュ・マル:悪の華
    16. Beloved Antichrist|ビーラヴド・アンチクライスト
    17. Leviathan|リヴァイアサン
    18. Leviathan II|リヴァイアサン II(トゥ)
    19. Leviathan III |リヴァイアサン III(スリー)
  • 共有:
  • 90年代初頭のポスト・デスメタル戦国時代をオペラ・ヴォーカルとゴシカルな耽美性でサバイブしたスウェーデンの古参ミュージシャンは、合唱隊とオーケストラを率いたプロジェクトで次世代型ヘヴィメタル様式美を確立したイノベイター!?

    THERIONのディスコグラフィ/レビュー、おすすめアルバムだけをチェックしたい方は【記事下部】か【目次】のリンクからも移動できます!!

    THERION(セリオン)は、スウェーデンのデスメタル/ヘヴィメタル・グループ

    THERIONの音楽スタイルは!?

    THERIONは、1991年にデスメタルとしてアルバムデビューを果たしていますが、じきに複数の周辺ジャンルの要素を取り入れて組み合わせる“ハイブリッド手法”をとるようになり、幾度かにわたって基本となる音楽性の変更も重ねています。

    THERION自身の音楽性が内包する、あるいは影響を受けたジャンルには、「スラッシュメタル」,「デスメタル」,「メロディックデスメタル」,「ゴシックメタル」,「ドゥームメタル」,「シンフォニックメタル」,「プログレッシヴロック」、そしてオールドスクールな「ヘヴィメタル」などが含まれ、活動時期ごとに区切ってそれらの各ジャンルの中から特に影響の強いものにラベリングされています。

    また、THERIONのサウンドの大きな特徴には、オーケストレーションに加えて、オペラ風のコーラス(合唱)パートを大々的に用いていることが挙げられ、そのことから「オペラティック・メタル」というカテゴリーが用いられることもあります。

    加えて、ホラーやファンタジーを中心とした物語性の強い歌詞や世界観、ドラマティックで大仰な音楽スタイルから、「エピック・メタル」のジャンルとして語られることもあります。

    デスメタルとしてのTHERION!?

    最初期のTHERIONは、ブルータルなスタイルでメロディは希薄な、オールドスクールでストレートなデスメタルとしてスタートしています。

    名プロデューサー〈トーマス・スコグスバーグ〉らに代表される、俗に「バズソー・サウンド」と呼ばれるスウェディッシュ・デスに特徴的な音づくりは用いておらず、作風についても彼のその典型的なスタイルとは異なるものながらも、まさに90年代初頭に隆盛を極めたオールドスクールなデスメタルそのものの音楽性を展開していました。

    この時期は、ブレイク以降のファンからはあまり振り返られることはありませんが、THERIONの活動自体は、母体となった〈BLITZKRIEG〉と〈MEGATHERION〉の別名義の時期も含めるならば1987年にまで、それらを除いても1988年までさかのぼることが可能です。

    そのため、そのキャリアを考慮するならば、THERIONもまた〈ENTOMBED〉や〈DISMEMBER〉らと同格の、スウェディッシュ・デスメタルの基礎を築いたパイオニアのひとつと見なすことも可能です。

    ただし、THERIONの主なファン層が、デスメタルから脱却して以降に流入したリスナーに占められていることや、現在はこの時期のメンバーの大半が脱退していることなどもあって、デスメタル期のTHERIONが積極的に取り上げられることはほとんどありません。

    メロデス/ゴシックメタルとしてのTHERION!?

    THERIONは、スウェーデンのデスメタル・シーンにおいては比較的早い時期から、後のメロディック・デスメタルやゴシックメタルのに通じる、メロディや耽美性/叙情性/情緒性の大々的導入や、女性ヴォーカルのフィーチャーなどのアプローチを行っており、目端のきくマニアや好事家層の注目を集めていました。

    この時期は、メロディック・デスメタルやゴシックメタルのジャンルが定義される以前たっだことから、日本においては「耽美派デスメタル」などとも称されており、音楽的にも耽美系スウェディッシュ・デスに特有の、メロディック・デスメタルとゴシックメタルの双方にリンクするスタイルを特徴としていました。

    そのことからTHERIONは、〈EDGE OF SANITY〉や〈DARK TRANQUILLITY〉、または〈TIAMAT〉,〈CEMETARY〉,〈KATATONIA〉ら黎明期の主力グループと共に、スウェーデンのシーンにおけるこれらのジャンルのパイオニア、あるいはプロトタイプと認められています。

    シンフォニック/オペラティック・メタルとしてのTHERION!?

    メロデス/ゴシックメタル・アプローチの耽美路線へと突入したTHERIONは、その当初より、シンフォニック要素やオペラ風のコーラスを部分的ながらデスメタルに折り込むことで、荘厳かつ大仰な耽美性やドラマ性の表現に用いていました。

    その後、90年代後半になると、それらの要素を大々的に導入してその比重を増し、自身の独自性として本格的に全面に押し出すようになります。
    この時期からは、ほぼ全てのアルバムにおいて、多人数の管弦楽器隊やコーラス隊がサポートメンバーとして参加しています。

    このシンフォニック/ネオクラシカル志向で、大仰でエピカルなドラマティシズムを押し出し音楽性は、オールドスクールなヘヴィメタルファンの嗜好性にも沿ったものでしたし、さらに、THERION=クリストファー・ジョンソンが志向する伝説/神話などに題材をとったエピカルなストーリ性もまた、それらのファンが好むものでした。

    加えて、この時期以降はアルバム内におけるデスヴォイスの比率も大幅に減退しており、一般層にも聴きやすく馴染みやすいものとなってゆきます。

    これらの要因がブースターとして功を奏した結果、メロデス・ムーヴメントが勃発した時点ではそれほど華々しい脚光を浴びることは無かったTHERIONも、日本のメディアなどからも好意的に取り上げられる機会が一気に増え、様式美志向の保守的リスナーの覚えもめでたい存在となるなど、支持層の拡大に成功しています。

    THERIONのバンド体制は!?

    THERIONは、ギターとヴォーカルに加えてキーボードや打ち込みからオーケストラ・アレンジまで行う、クリストファー・ジョンソン主導のグループです。

    デビュー当初よりジョンソンはバンドの中心的存在にあり、楽曲の多くも手掛けていましたが、ジョンソン以を除く全てのオリジナルメンバーがバンドを離れ、音楽性を耽美デス路線にシフトして以降は、完全にジョンソンのソロ・プロジェクトと化しており、他のメンバーは何度となく変更されています。

    2000年付近と2010年付近にメンバーが総入れ換えされていますが、それ以外ではドラムを除くとメンバー変更は行われていないため、2000年代以降は比較的安定していると言えるでしょう。

    また、2009年からリード・ヴォーカルとして加わった元〈CANDLEMASS〉のトーマス・ヴィクストロームは、近年ソングライティングにも携わるようになっています。

    次ページはTHERIONのディスコグラフィ&レビューを紹介!!▼リンクはページ下!▼

    THERION|セリオン|DISCOGRAPHY

    Of Darkness…. |オブ・ダークネス….

    オリジナル・アルバム – 1作目 (1991年)

    オーソドックスなデスメタルから耽美/叙情路線へと移行することで名を成した、彼らを含む北欧古参グループ…〈EDGE OF SANITY〉〈AMORPHIS〉〈SENTENCED〉らの初期作の多くと同様に、キャリア全盛期のリスナーからはほぼ振り返られることのない、カタログ上でも忘れらがちなデビューアルバム。

    初期のデモやEPのマテリアルで構成された本作では、スウェディッシュ・デスに特有の「バズソー・サウンド」は用いておらず、作風についてもその典型的なものではありませんが、音楽性自体はまさにオールドスクール・デスメタルそのもののブルータルなサウンドで、THERIONの特徴である耽美/叙情要素は皆無と言っていいほど。

    ハードコアでスラッシーなファストパートと、グルーヴィなーミッドとドゥーミーなスローのダウンテンポを行き来する、テンポチェンジが多用されたスタイルが特徴で、テックデスと呼ぶほど極端に目まぐるしくトリッキーな展開は見せないまでも、比較的複雑で手が込んだ構成を持つ楽曲は、ややカオティックな印象も与えます。

    アルバム全編を通して退屈はさせない仕上がりながら、リフワークやフレージング、気持ち程度のメロディアスなギターソロも、フックの点ではあとひと味足りず、アンセミックな楽曲を欠く弱点が痛手で、名盤として聴き手に強烈な印象を刻むには至りません。

    とはいえ、あらゆる面で発展途上ながらも、シーンの同輩に多い勢い任せのプリミティヴなものではなく、バンドの持ち味ともなるプログレ志向の一端ものぞく、しっかり考えて練られたことが伝わる楽曲は、やや通好みながらも、一部の過大評価気味なオールドスクール名盤群よりは聴きどころは多いと言えるでしょう。

    |デスメタ度:★★★★★
    |ドゥーム度:★★★☆☆
    |耽 美 度:☆☆☆☆☆
    |シンフォ度:★☆☆☆☆
    |プログレ度:★★☆☆☆
    |総合評価:★★★★☆

    賛否両論 通好み スルメ盤
    デスメタル / ブラックメタル¥1,528THERION
    iTunes Store

    Beyond Sanctorum |ビヨンド・サンクトラム

    オリジナル・アルバム – 2作目 (1992年)

    バンド創設メンバーによる最後のアルバム(ベースのみ前作リリース後に離脱)。

    アップテンポとダウンテンポを行き来する、やや手の込んだ組み立てのオールドスクール・デスメタルという前作のスタイルを基調に、まだ比重は小さいものの、彼らの代名詞となるゲストの男女クリーン・ヴォーカルによるオペラティック・パートが加わったほか、よりメロディや叙情性/耽美性を強調したパートも導入されました。

    これによって、さらに手の込んだ多面的な構造へのアップデートされており、インストパートの比率も増えるなど、これ以降の大きな特徴となるプログレ的ともいえるアプローチにも突入。
    同時に、より楽曲の構成/展開を整理させてダイナミクスを生むと同時に、楽曲の端々に印象的なフレーズが確認できるなど、彼らの弱点でもある楽曲のフックの乏しさについても、完全ではないにまでもかなりの改善が見られ、作品としての完成度でもひとつふたつ上のステージに到達しています。

    この野心的なサウンドによって、本作は〈EDGE OF SANITY〉〈AT THE GATES〉〈AMORPHIS〉の初期作品と共に先鋭的なマニア層の目に止まり、THERIONもそれらのグループと同様にメロデス/プログレデスのプロトタイプと認められる存在となり、輸入盤店では「耽美/叙情派デスメタル」などともタグ付けられるようになります。

    本作最大の難を挙げるならば、〈DIABOLIQUE〉のメンバーにしてスウェーデンのバンドを中心に多数のアートワークを手がけた、クリスティアン・ヴォーリンによるジャケットの酷さでしょう。
    元来彼ヴォーリンは、〈BATHORY〉〈TIAMAT〉〈DISSECTION〉らビッグネームを含めた多くの重要作を手がけているわりには、センスは悪く垢抜けず技量も微妙ななものですが、その中でも本作は、別の絵の一部を切り取り拡大したようないびつな構図と解像度の低さの最低レベルの仕上がり。
    これがもう少しまともならば、この時点からもう少し一見客の食い付きが良くなっていたかもしれません。

    |デスメタ度:★★★★★
    |ドゥーム度:★★★☆☆
    |耽 美 度:★★☆☆☆
    |シンフォ度:★★☆☆☆
    |プログレ度:★★★☆☆
    |総合評価:★★★★★

    殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
    デスメタル / ブラックメタル¥1,375THERION
    iTunes Store

    Symphony Masses : Ho Drakon Ho Megas|シンフォニィ・マッシーズ:ホー・ドラコン・ホー・メガス

    オリジナル・アルバム – 3作目 (1993年)

    バンド創設時のメンツを含む全てのメンバーが脱退して、クリストファー・ジョンソンのプロジェクト同然の状態で製作されたアルバムで、ここからしばらくは本作と同様に、作品ごとに必要に応じてセッションミュージシャンを起用していく期間が続くことになります。
    ただし、他のメンバーもいくつかの楽曲においては、コンポーザーとしても参加しているようです。

    アルバムの方向性自体は前作からの流れの上にあるものですが、個々の楽曲を見ると、そのベースとなる部分においてデスメタルのスタンダードの枠から逸脱する傾向も目立ちます。
    本作ではオペラ風歌唱は用いられていないものの、今後も彼らが頻繁に用いるようになるアラビックなフレーズを含め構成要素は多彩で、前作をはるかに超えて表情豊かで多面的、加えて変則性も大きく増した作風となっており、従来どおりデスヴォーカルを軸に据えたヘヴィなサウンドではあるとはいえ、これまでのようにオーソドックスなデスメタル枠の中だけで扱うのは難しいものとなりました。

    「耽美派デスメタル/叙情派デスメタル」などのラベリングもされていたように、それらの要素がこれまでにも増して拡大/強調されており、ドゥームデスの名残の強い時代のゴシックメタルや、様式が確立される以前のメロデスといった各ジャンルと重なる部分が増え、それらのプロトタイプのひとつとしても扱えるようなスタイルに到達しています。

    それらのグループによる名盤群の末席に名を連ねるだけのメロディ/耽美要素に加え、高いクオリティと創造性をも合わせ持つ本作ですが、メロデスやゴシックメタルほどにはデスメタル様式へのカウンターという意図は感じられず、デスメタルに古典的プログレ作法を持ち込んだ一環として、メロディや耽美パートの比重が上がっていったと同時に、それらのジャンルに接近したという印象。
    このあたりは、〈OPETH〉や〈KATATONIA〉の初期の作風に近いとも言えます。

    メロディ&耽美性が大幅アップしたとはいえ、当然のこと現在とは全く異なるスタイルですし、特に本作はオペラ風ヴォーカルを用いていないこともあって、ブレイク後に流入したリスナーが諸手を挙げて絶賛するかいうと何とも微妙。
    とはいえ、彼らの持ち味はこの時代にこそあると見る根強いファンも多いのも事実で、この時代ならではの実験的デスメタルに興味がある聴き手ならば、本作とその前後と合わせた耽美デス3作は、アーリー90’sスウェディッシュ・シーンにおける必聴の重要作として抑えてしかるべきでしょう。

    |デスメタ度:★★★★☆
    |ドゥーム度:★★★★☆
    |耽 美 度:★★★☆☆
    |シンフォ度:★★★☆☆
    |プログレ度:★★★★☆
    |総合評価:★★★★★

    殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
    デスメタル / ブラックメタル¥1,375THERION
    iTunes Store

    Lepaca Kliffoth|レパカ・クリフォス

    オリジナル・アルバム – 4作目 (1995年)

    俗にいう「THERIONデスメタル時代」のトリを飾ると同時に、シンフォニックなパートを多用してメロディとゴシカルな耽美性をより重視した、THERION流ヘヴィメタルを追求する次作以降への橋渡しにもなったアルバム。

    ここでは、前作ではオミットされて『Beyond Sanctorum(2nd)』以来となる女性ヴォーカルを含む専任コーラス隊も、次作以降ほどの大所帯ではないものの起用されており、本格的なオペラティック路線に一歩踏み出しています。

    音楽性は、これまでの流れを汲みつつさらに発展させたもので、デスメタルをベースとしつつも前作以上にそのフォーマットから逸脱する部分が大きく増えており、単なるメロディ/耽美パートの増量だけにとどまらず、その骨格そのものがより普遍的なヘヴィメタル/ハードロックへと接近。
    ヴォーカルの基本スタイルにしても、ダーティではあるもののやや角の取れたものとなり、また、曲構成も凝ってはいるものの、前作までほど変則的で入り組んではおらず、ややシンプルでわかりやすくなってキャッチーなフレーズも増えたため、一般のメタルリスナーにとってもかなり入りやすいものとなりました。

    オペラティック・シンフォメタルという新たなメタル様式美を確立して本格ブレイクを果たし、一般メタラーも巻き込んだ人気バンドへとのし上がるのは次作以降の話ですが、サウンド全編に試行錯誤の跡が染み渡っていると同時に独自性が滲み出してくる本作は、後の総フォロアー時代では出会うことは叶わない、この時代のバンドのこの時期の作品特有の鮮烈な味わいを堪能できる逸品です。

    |デスメタ度:★★★☆☆
    |ドゥーム度:★★★☆☆
    |耽 美 度:★★★★☆
    |シンフォ度:★★★★☆
    |プログレ度:★★☆☆☆
    |総合評価:★★★★★

    殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作

    Theli|セリ

    オリジナル・アルバム – 5作目 (1996年)

    デビュー以来の長い試行錯誤の結果、従来の“THERIONスタイル”の構成要素の大胆な取捨選択が行われた末に、現在に至る基本スタイルの完成を見せたアルバム。

    ここでは、主に「ゴシックメタルの手法」を音楽性の軸として、「女声を含めたオペラティックなヴォーカル&コーラス」と「大仰なシンフォニック・サウンド」の2点の副次的な要素に焦点を絞っています。
    「トラッド/フォーク」テイストや「オリエンタル」テイストなど、その他の特徴的な装飾要素も引き続き用いられていますが、「デスメタル(含メロデス)」要素はヴォーカルのダーティな発声法にわずかに名残をとどめるのみで、さらには「ドゥームメタル」要素も希薄になるなど、エクストリームな音楽的特徴はほぼ払拭されました。

    本作のゴシックメタルとしての方法論は、〈ダン・スウォノ(EDGE OF SANITY)〉や〈SENTENCED〉が想起されるもので、同時期のゴシックメタル・オリジネイターたちと比較すると、限りなくヘヴィメタルやハードロックの古典的な音楽性に近く、エピカルなテーマや世界観もその流れにあるものです。
    そこにオペラティックな歌唱とシンフォニックなサウンドが加わることで、先鋭性や革新性は限りなく希薄であるものの、同ジャンルの中では特異な持ち味を有するという、ある意味では独自性が強いともいえる作風とオンリーワンのポジションへと到達。

    音楽的には、前作にも増してキャッチーで聴きやすく印象に残るフレーズも多いものの、合唱隊の多用も含めアトモスフェア頼りの傾向があり、個々の楽曲として見るといまひとつアンセミックな魅力に欠けるあたりは弱点と認めるしかありません。
    とはいえ、THERIONとしての及第点などは大きく上回る上々の仕上がりの本作は、これ以降の「オペラティック・メタル」路線ではベストといえる1枚であり、過剰に大仰な作風に対する抵抗がなければ、単純にクオリティの高いヘヴィメタルとして楽しむことができるでしょう。

    ここでの音楽性を、当初より継続的なものと考えていたのかどうかは不明ですが、結果的に本作がシンフォ様式美メタルの耽美な新潮流として広く認められたことによって、現在まで繰り返される自身の基本スタイルとして定着。
    のみならず、後にパワーメタル/スピードメタルの流れと合流して欧州メタルシーンにおいて一大勢力となった、〈NIGHTWISH〉や〈EPICA〉らに代表されるメタル様式美新基準とでも呼ぶべき「シンフォニック・ゴシック・メタル」の原点のひとつと認識されるまでになりました。

    |デスメタ度:★☆☆☆☆
    |ドゥーム度:★★☆☆☆
    |耽 美 度:★★★★☆
    |シンフォ度:★★★★★
    |プログレ度:★★★☆☆
    |総合評価:★★★★★

    殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
    メタル¥1,528THERION
    iTunes Store

    A’arab Zaraq – Lucid Dreaming| アーラブ・ザラク – ルシッド・ドリーミング

    オリジナル・アルバム – 6作目 (1997年)

    公式にオリジナル・フルアルバムと言う扱いとなっていますが、実のところは、アンリリース,カバー曲,再編集曲,サントラ提供曲、そリレコーディング音源などの、ある種のレアトラックを集めたコンピレーションというのが本作の正体。

    全18曲で70分超というCDの限界に迫るボリュームですが、収録曲の方向性/クオリティ共に特筆するレベルになく、アルバムとしても散漫な、どの角度で見てもマニア向けのコレクターズ・アイテムでしかないシロモノで、あえて言うならば、〈SCORPIONS〉〈JUDAS PRIEST〉〈IRON MAIDEN〉という大御所に、おまけの〈RUNNING WILD〉 というセレクトのカバー曲が、一般リスナーにも多少響きそうな程度。

    残念ながら、単体で勝負できるメタルアルバムではなく、ひとつの作品として評価対象にはあたらないので、ビギナーがうかつに手を出すべきではないでしょう。

    |デスメタ度:★★★☆☆
    |ドゥーム度:★★☆☆☆
    |耽 美 度:★★★☆☆
    |シンフォ度:★★★☆☆
    |プログレ度:★★★☆☆
    |総合評価:★★☆☆☆

    賛否両論 実験作 お布施

    Vovin|ヴォヴィン

    オリジナル・アルバム – 7作目 (1998年)

    |デスメタ度:★☆☆☆☆
    |ドゥーム度:★★☆☆☆
    |耽 美 度:★★★☆☆
    |シンフォ度:★★★★
    |プログレ度:★★☆☆☆
    |総合評価:★★★★☆

    代表作 入門盤 賛否両論
    メタル¥1,528THERION
    iTunes Store

    Crowning of Atlantis|クラウニング・オブ・アトランティス

    オリジナル・アルバム – 8作目 (1999年)

    Deggial|デジアル

    オリジナル・アルバム – 9作目 (2000年)

    Secret of the Runes|シークレット・オブ・ザ・ルーンズ

    オリジナル・アルバム – 10作目 (2001年)

    Lemuria|レムリア

    オリジナル・アルバム – 11作目 (2004年)

    Sirius B|シリウスB(ビー)

    オリジナル・アルバム – 12作目 (2004年)

    Gothic Kabbalah|ゴシック・カバラ

    オリジナル・アルバム – 13作目 (2007年)

    Sitra Ahra|シトラ・アフラ

    オリジナル・アルバム – 14作目 (2010年)

    Les fleurs du mal|レ・フルール・デュ・マル:悪の華

    オリジナル・アルバム – 15作目 (2012年)

    Beloved Antichrist|ビーラヴド・アンチクライスト


    オリジナル・アルバム – 16作目 (2018年)

    Leviathan|リヴァイアサン

    オリジナル・アルバム – 17作目 (2021年)

    Leviathan II|リヴァイアサン II(トゥ)

    オリジナル・アルバム – 18作目 (2022年)

    Leviathan III |リヴァイアサン III(スリー)

    オリジナル・アルバム – 19作目 (2023年)

    モバイルバージョンを終了