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★ AT THE GATES(アット・ザ・ゲイツ) ディコグラフィー ★ 90年代メロデスと00年代メタルコアの基礎を作った北欧メロディック・デスラッシュのカリスマ!!…必聴アルバムは?

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Contents

  1. メロデス/デスラッシュ/メタルコア…世界のエクストリームメタルシーンの新基準を生み出した北欧メロディック・デスラッシュのレジェンド!
        1. メロディック・デスメタルのパイオニア!?
        2. デスメタルに扇情的メロディと叙情性を導入!!
        3. 独自のメロデス・スタイルを確立!!
        4. AT THE GATESはメタルコアのルーツ!?
        5. 〈THE HAUNTED〉を結成してデスラッシュをリード!?
        6. AT THE GATES再結成とビョーラー兄の脱退!!
  • AT THE GATES|アット・ザ・ゲイツ|DISCOGRAPHY
    1. The Red in the Sky Is Ours|ザ・レッド・イン・ザ・スカイ・イズ・アワーズ
    2. With Fear I Kiss the Burning Darkness|ウィズ・フィアー・アイ・キス・ザ・バーニング・ダークネス
    3. Terminal Spirit Disease|ターミナル・スピリット・ディジーズ
    4. Slaughter of the Soul|スローター・オブ・ザ・ソウル
    5. At War with Reality|アット・ウォー・ウィズ・リアリティ
    6. To Drink from the Night Itself|トゥ・ドリンク・フロム・ザ・ナイト・イットセルフ
    7. The Nightmare of Being|ザ・ナイトメア・オブ・ビーイング
  • OXIPLEGATZ|オキシプルガッツ|DISCOGRAPHY
    1. Fairytales|フェアリーテイルズ
    2. Worlds and Worlds|ワールズ・アンド・ワールズ
    3. Sidereal Journey|サイディリアル・ジャーニィ
  • ANDERS BJÖRLER (SOLO)|アンダース・ビョーラー(ソロ)|DISCOGRAPHY|
    1. Antikythera|アンティキティラ
      オリジナルアルバム – 1作目 (2013年)
    2. Dreaming of Insomnia|ドリーミング・オブ・インソムニア
      シングル (2015年)
  • THE LURKING FEAR|ザ・ラーキング・フィアー|DISCOGRAPHY
    1. Out of the Voiceless Grave|アウト・オブ・ザ・ヴォイスレス・グレイヴ
      オリジナルアルバム – 1作目 (2017年)
    2. Death, Madness, Horror, Decay|デス,マッドネス,ホラー,ディケイ
      オリジナルアルバム – 2作目 (2021年)
  • AT THE GATESはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
      1. これさえ押さえればOKの代表的名盤は!?
      2. 『Slaughter of the Soul(4th)』路線のオススメは!?
      3. プログレ路線のオススメは!?
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  • メロデス/デスラッシュ/メタルコア…世界のエクストリームメタルシーンの新基準を生み出した北欧メロディック・デスラッシュのレジェンド!

    AT THE GATESのディスコグラフィ/レビュー、おすすめアルバムだけをチェックしたい方は【記事下部】か【目次】のリンクからも移動できます!!

    AT THE GATES(アット・ザ・ゲイツ)は、スウェーデンのデスメタル/メロディック・デスメタル・バンド。

    メロディック・デスメタルのパイオニア!?

    AT THE GATESは、メロデス(メロディック・デスメタル)のパイオニア、あるいはそのルーツにあたるポジションのグループとしてとして、ほぼ必ず名前が挙がる先駆的な存在です。

    事実、〈DARK TRANQUILLITY〉によってメロデスの基本形が作られる前年…1992年のデビュー当初から、メロディや耽美性/叙情性を意識して積極的に取り入れたデスメタルを展開して、好事家の注目を集めていました。

    さらに先行していた〈TIAMAT〉などの、ごく一部の真のパイオニアを別格とすれば、比較的早期からそれに類する“プロト・メロデス”アプローチに取り組んでいたグループでした。

    デスメタルに扇情的メロディと叙情性を導入!!

    デビュー当初は、メロディや叙情性の導入もプログレ的なアプローチの一環に近く、それほど大々的ではなくささやかなものでした。

    しかし、アンダース・ビューラーとともにメインコンポーザーを務めた、アルフ・スヴェンソン(Gt.)の脱退を機にメロディとエモーションを強調するメソッドを追求する道を選択。
    1994年の作品『Terminal Spirit Disease』にて、本格的メロディックなデスラッシュに開眼します。

    さらにメロディの扇情性/叙情性を極めた翌年のフルアルバム『Slaughter of the Soul』は、デスメタルのファン以外からも広く注目を集め、一躍メロディック・デスメタルの騎手へと祭り上げられます。

    なお、初期プログレ期の2作に参加したアルフ・スヴェンソンは、『Slaughter of the Soul』でのブレイク以前に脱退し、ソロプロジェクトの〈Oxiplegatz〉などで活動していました。

    独自のメロデス・スタイルを確立!!

    AT THE GATESがここでつくり出したメロデス・メソッドは、ギターソロや部分的なフレーズでメロディを導入するという、これ以前にも見られた既存の定番化した手法とは異なるものです。

    それは、〈DARK TRANQUILLITY〉が開発した短いメロディをリフとして用いる“メロリフ”スタイルの派生に近い、扇情的なメロディを刻んでリフ化する“泣きリフ”・“エモリフ”とでも呼べるような手法。
    そして、これを用いてスラッシュ/ハードコア色の強いデスメタル…いわゆる“デスラッシュ”を展開するというものでした。

    AT THE GATESはメタルコアのルーツ!?

    解散までのAT THE GATESの活動期間は長いものではなく、メロデスが本格的に幅広いリスナーに認知され、アメリカ進出を果たすほどの人気を獲得する以前の1996年には活動を終えていました。

    しかし、そのサウンドは北欧メロディックデスメタル/デスラッシュのひとつの定型となって、多くのフォロアーを生んでおり、“イエテボリ(ヨーテボリ)・スタイル”と呼ばれるのメロデス・スタンダードのひとつにもなっています。

    この“イエテボリ・スタイル”は、米国やドイツを中心としたメタルコアの一部グループに取り入れられ、それらはメロデスを下敷きにした『メロデスコア』を展開し人気を博します。

    これらが、アメリカでもニューメタルの代替品としてもてはやされたことによって、一気に世界中にその影響を伝播し、これら新世代クロスオーバーのネタ元として大いに活用されることになりました。

    知らずにそれらの曲を聴いたAT THE GATESのメンバーたちが、他のバンドの演奏を聴いて自分たちのカバーと勘違いして、「AT THE GATESにこんな曲あったっけ!?」と訝しんだ…などという逸話も生まれたほどです。

    〈THE HAUNTED〉を結成してデスラッシュをリード!?

    AT THE GATES解散後、その中心メンバーのアンダース(兄:Gt.)&ヨナス(弟:Ba.)のビョーラー兄弟とエイドリアン・アーランドソン(Dr.)は、〈MARY BEATS JANE〉のペーター・ドルヴィング(Vo.)、〈SEANCE〉のパトリク・ヤンセン(Gt.)、〈INVOCATOR〉のパー・モラー・ヤンセンらが集結したドリームバンド、〈THE HAUNTED(ホーンテッド)〉を始動します。

    ここでは、AT THE GATESで確立させたメロディック・デスラッシュ・サウンドを発展させた、北欧でスラッシュの新基準ともいえる“ネオスラッシュ/ネオデスラッシュ”を展開。
    〈CROWN OF THORNS(クラウン・オブ・ソーンズ)〉から改名して第一線に躍り出た〈THE CROWN(クラウン)〉らとともに、デスメタルを通過したモダンスラッシュのシーンをリードする立場となりました。

    AT THE GATES再結成とビョーラー兄の脱退!!

    長らく再結成待望論が渦巻いていたAT THE GATESは、2010年のリユニオンを皮切りに活動を再開。
    〈THE HAUNTED〉の活動の低迷などの事情もあってか、AT THE GATESでの活動に比重を傾けてゆきます。

    2017年には、創設時からバンドの中核だったアンダース・ビョーラーが脱退してしまいますが、活動は継続しており、新作のリリースも比較的コンスタントに続けています。

    退したアンダース・ビョーラーは、本業の映像制作と並行してソロを中心に活動をしており、プログレッシヴ・ロック/ポスト・ロック志向の音楽性を追求しています。

    なお、ビョーラー(兄)の後を引き継いだギタリストのヨナス・ストールハマールもまた、2022年にバンドを退いており、〈THE HAUNTED〉時代の主力だった、パトリック・ヤンセンをライヴ専任の後任として起用しています。

    なお、2022年にアンダース・ビョーラーの〈AT THE GATES〉への復帰がアナウンスされています。

    次ページはAT THE GATESのディスコグラフィ&レビューを紹介!!▼リンクはページ下!▼

    AT THE GATES|アット・ザ・ゲイツ|DISCOGRAPHY

    The Red in the Sky Is Ours|ザ・レッド・イン・ザ・スカイ・イズ・アワーズ

    オリジナルアルバム – 1作目 (1992)

    メロデスのプロトタイプが、まだ“耽美派デス”,“叙情派デス”などと呼ばれ、一部のマニアックな好事家に愛でられていた時期のデビューアルバム。
    本作でも、メロディパートはいくらか導入されてはいるものの、後に“イエテボリ名物”の座にまで登りつめた、メロデス/メロデスラッシュとは全く質の異なったスタイルです。

    ここで聴けるのは、プログレ的な凝った構成と複雑な展開を持った、ややテクニカルな北欧デスラッシュといったサウンドで、この作品に限ってゲスト・メンバーの手によるヴァイオリンもフィーチャーされています。

    随所に散りばめられた、ゴシックメタルにも通じる欧州的な耽美エッセンスは、メロデスとゴシックメタルが大きくリンクしていた北欧シーンならではと言えます。

    魅力的な楽曲もありますし、そうでない曲にも光る部分は見られるのですが、曲単位での出来不出来の差が激しい傾向があり、傑出した楽曲も少ないのが弱点で、やりたいことにセンスや技量が伴っておらず、アイデアを持て余して無駄遣いしている印象もあります。

    それでも、この当時の〈EDGE OF SANITY〉,〈AMORPHIS〉,〈SENTENCED〉ら、コンセプトの近いプロト・メロデス勢の中では、頭ひとつ以上は飛び抜けたセンスは感じられるものでした。

    この路線を突きつめて、よりフリーキーな変態路線を極めた姿も見たかったところですが、それではメロデス・レジェンドと崇められる存在にはなれなかったでしょう。

    |ブルタル度:★★★★☆
    |プログレ度:★★★★☆
    |変則度:★★★★☆
    |メロディ:★★☆☆☆
    |スピード:★★★★☆
    |総合評価:★★★★★

    殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作

    With Fear I Kiss the Burning Darkness|ウィズ・フィアー・アイ・キス・ザ・バーニング・ダークネス

    オリジナル・スタジオアルバム – 2作目 (1993年)

    スウェーデンのデスメタル・シーンに一石を投じたデビュー作と、独自のメロデスラッシュを確立してブレイクスルーとなる次作をつなぐという立ち位置だけでなく、音楽的にもその2作の両方の特性を持ったものです。

    メロディは前作以上にフィーチャーされ、彼らの特徴となるメロディックなリフワークも完成されつつありますが、変態的にクールな抑制が効いており、次作のような扇情的な領域に入ろうかという直前で寸止めされてしまいます。

    曲調はややストレートとも表現できるものですが、前作ほどではないもののヒネった展開は多く、基本路線は前作の延長線上にあるもので、やはり次作でのキャッチーな明快さは見られません。
    そこには、デスメタルがメロディアス過ぎたりキャッチー過ぎたりすることに対する後ろめたさや遠慮も感じられ、それが払拭されるにはやはり〈DARK TRANQUILLITY〉の開き直りを待たなければいけませんでした。

    リアルタイムではメロディ路線への着実な一歩は感じられたのですが、驚くほどの大変貌を遂げたわけでもなく、“デス”+“メロ”+“プログレ”の劇的な化学反応も見られないため、彼らのカタログ上においては、どっちつかずな過渡期の1枚という以上の位置付けは難しいかもしれません。

    そのため、この前後のアルバムの熱心な支持者からは微妙な距離を置かれているような印象も受けますが、この煮え切らなさはマニア好みの味でもあり捨てがたいものではあります。

    なお、このひねくれサウンドに貢献したアルフ・スヴェンソンは本作を最後に脱退し、〈OXIPLEGATZ〉を始動して我が道を行くことになります。

    |ブルタル度:★★★★☆
    |プログレ度:★★★☆☆
    |変則度:★★★☆☆
    |メロディ:★★★☆☆
    |スピード:★★★★☆
    |総合評価:★★★★☆

    賛否両論 通好み スルメ盤 実験作

    Terminal Spirit Disease|ターミナル・スピリット・ディジーズ

    オリジナル・スタジオアルバム – 3作目 (1994年)

    〈DARK TRANQUILLITY〉が衝撃のデビューを果たした翌年、AT THE GATESのキャリアとメロデス・ムーヴメントの両方におけるモニュメントとなる、次作『Slaughter of the Soul(4th)』にへと続く独自のスタイルを提示した重要作。

    新曲6曲に既発曲のライヴ音源3曲を加えた変装的な構成で、実質的には『Slaughter of the Soul』リリースに先駆けて、その方向性を世に知らしめるためのミニアルバムという体ですが、新曲については『Slaughter of the Soul』と楽曲が重ならないことや、フルアルバム相当のボリュームからか、一般的にはフルレンスのオリジナル・アルバムとしても扱われています。

    この時点において、『Slaughter of the Soul』のメロディック・デスラッシュはほぼ完成を見せており、楽曲はいずれも粒ぞろい。
    代表曲「Blinded by Fear」ほどのキラーチューンこそ無いものの、『Slaughter of the Soul』の平均値程度は軽くクリアしています。

    変則的な作品ということもあって、彼らのカタログ中でも中途半端な立ち位置に追いやられて目立たない1枚ですが、スルーするのは惜しまれる充実ぶりです。
    なお近年では、さらに初期ライヴ音源3曲を追加した仕様のものが多く出回っているので、最初期の楽曲にも軽く触れてみたいというリスナーにもよい足がかりかもしれません。

    |ブルタル度:★★★★☆
    |プログレ度:★★☆☆☆
    |変則度:★☆☆☆☆
    |メロディ:★★★★☆
    |スピード:★★★☆☆
    |総合評価:★★★★★

    殿堂入り 実験作

    Slaughter of the Soul|スローター・オブ・ザ・ソウル

    オリジナルアルバム – 3作目 (1995)

    とりあえず、今に至るメロディック・デスメタル/デスラッシュのシーンにおいて、ひとつのスタイルを確立した原点のひとつにしであり、メタル史に残る金字塔を打ち立てた重要作。
    本作の存在無くしては、のちのメロデスやメロメタルコアのシーンは現在のとは全く異なるものとなった…とさえ言えるほど、後世へ甚大な影響を及ぼしています。

    ギターソロや明確なメロディパートに頼らず、リフにメロディとエモーション持たせる…という意味だけならば、〈DARK TRANQUILLITY〉にも通じる手法とも言えますし、〈DISCHARGE〉の異色曲「Dying Time」にヒントを得たとも考えられます。

    しかし、メロディのフレーズをそのままリフに用いことの多い〈DARK TRANQUILLITY〉とは異なり、よりシンプルでアグレッシヴなリフワークの中にそれを実現することで、北欧デスラッシュ本来のサウンドを軸にしつつ、“北の慟哭”とも呼ばれる独自の悲痛なエモーションを振りまく、ストロングでブルータルなメロディック・デスラッシュを創造。

    これはAT THE GATES無くしては存在し得なかったかもしれないものですが、〈DARK TRANQUILLITY〉同様に表現力に優れたヴォーカリストに恵まれた面も見逃せないでしょう。
    もちろん、キラーチューンのT-01 を軸にフックを備えた楽曲が並び、クオリティも突出しています。

    特徴的なリフワークも、現在に至るまでに各シーンでコスられ続けたため、もはや斬新さや特異性が薄れた面は確かにあり、特にメタルコアから溯ろうとするような、リアルタイムでムーヴメントを体験していないリスナーでさえ、もしかするとさほど目新しさを得られないかもしれません。
    しかし、それらのジャンルを深堀したり一家言持とうと考えるならば、最低限聴いておくべきと断言せざるを得ない、基礎教養に近い必聴アルバムとなっています。

    |ブルタル度:★★★★☆
    |プログレ度:★☆☆☆☆
    |変則度:★★☆☆☆
    |メロディ:★★★★★
    |スピード:★★★★☆
    |総合評価:★★★★★+

    殿堂入り 代表作 入門盤 実験作

    At War with Reality|アット・ウォー・ウィズ・リアリティ

    オリジナルアルバム – 4作目 (2014)

    解散後パーマネントな活動をTHE HAUNTEDに移していた彼らですが、そこでのポストメタル・アプローチの不評による低迷や、彼らを始祖と仰ぐメロデス・インスパイア系メタルコアの登場による再評価が重なってか、ついにリユニオンを経て復活作をドロップすることになります。

    基本的には、歴史的名盤の『Slaughter of the Soul(4th)』を踏襲したもので、それにシビれて彼らのファンになったリスナーなら感涙ものでしょう。

    しかし、〈CARCASS〉の再結成アルバムにも見られたことですが、黄金期の作品と当時のリスナーを意識しすぎたためにそのマイナーチェンジ程度のつくりになっているため、リフやフレーズのリサイクルが気になったり新展開が見られないことを不満に感じるような、先鋭的なリスナーにとっては不満の残る仕上がりでしょう。

    それでも、水準以上のクオリティにはあるので聴いて損のない作品ではありますし、オリジンたる自分たちの実績を新世代のリスナーに知らしめるために必要だった1枚なのかもしれません。
    そういう意味では、再結成の挨拶代わりという役割は申し分のなく果たせていますが、それ以上ではないこともまた事実です。

    |ブルタル度:★★★★☆
    |プログレ度:★☆☆☆☆
    |変則度:★★☆☆☆
    |メロディ:★★★☆☆
    |スピード:★★★★☆
    |総合評価:★★★★☆

    入門盤 賛否両論

    To Drink from the Night Itself|トゥ・ドリンク・フロム・ザ・ナイト・イットセルフ

    オリジナルアルバム – 5作目 (2018)

    前作に引き続き、ほぼ『Slaughter of the Soul(4th)』のセルフコピーに近く、そして全てにおいてその域には至っていないというアルバム。
    しかし、むしろその方向性を期待する向きこそ多数派と思われるので、それらのリスナーにとっては納得できる水準には達しているのかもしれません。

    確かに、AT THE GATESとって『Slaughter of the Soul』はりキャリアのピークでもターニングポイントでもあるのますが、それまでの経緯を考えれば決してそこが到達点というわけではなく、もしそのまま活動が続いていれば、セルフコピーに終始せずに新たな展開を見せた可能性は少なくないでしょう。

    再結成の名刺代わりという意味なら前作だけで十分なハズなんですが、どうも〈THE HAUNTED〉でのポスト・メタル・アプローチの不評がトラウマになったのか、守りに入りすぎた結果のようにも感じられます。

    初期2作品で展開のプログレ路線をブラッシュアップしたり、ビョーラー兄のソロ作での試みを従来のサウンドに落とし込むなど、新機軸を導入しつつラジカル過ぎないアプローチはあったハズで、それが実践できていればもしかするとビョーラー兄の脱退も避けられてかもしれません。

    |ブルタル度:★★★★☆
    |プログレ度:★☆☆☆☆
    |変則度:★★☆☆☆
    |メロディ:★★★☆☆
    |スピード:★★★★☆
    |総合評価:★★★★☆

    入門盤 賛否両論

    The Nightmare of Being|ザ・ナイトメア・オブ・ビーイング

    オリジナルアルバム – 5作目 (2018)

    再結成以来、バンドにとってのクラシックである『Slaughter of the Soul(4th)』のセルフコピーを続けてきたAT THE GATESが、ここにきて次の一手を模索し、新たな一歩を踏み出したアルバム。

    その一手が何かというと、端的に言えば“プログレ路線”と呼べるものなのですが、それは、脱退したビョーラー(兄)のソロほどには徹底したものではなければ、最初期の実験性の強い変則的なスタイルとも異なるもの。
    ここでは、従来のメロディック・デスラッシュを軸にしつつ、変則的なテクニカル・パートやドラマ性の強い凝った展開を織り交ぜてゆくという、無難な折衷的スタイルを選んでおり、曲によってはヴァイオリンを始めとしたオーケストレーションも導入しています。

    この“プログレ路線”自体は、デビュー最初期や脱退したメンバーの作品をもつぶさに見てきたオールドファンにとっては、想定の範囲内であり驚きは無いですし、その動きも、頭打ちの現状打破のための苦し紛れに過ぎないかもしれません。
    とはいえ、プログレ路線の推進力と考えられたメンバーが完全に不在となった矢先の変節という意味では、若干の意外性は感じることができますし、過去の栄光にすがるだけには終わるまいという危機感やミュージシャンとしての意欲は評価してよいでしょう。

    もはや直球のデスラッシュだけで勝負できる地力がない以上、小細工とはいえこういった変化球で手札を増やしてゆくのは正解で、本作ではとりあえずそれが功を奏しているといえます。
    もはや『Slaughter of the Soul』に匹敵するキラーチューンは期待できないものの、再結成後の2作ほどには手癖や惰性満載の焼き直しに辟易することなく、途中でダレてストレスになることもなく、スムーズに聴きとおせるだけの仕上がりを見せています。

    |ブルタル度:★★★☆☆
    |プログレ度:★★★★☆
    |変則度:★★★☆☆
    |メロディ:★★★★☆
    |スピード:★★★☆☆
    |総合評価:★★★★★

    入門盤 賛否両論 実験作
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    OXIPLEGATZ|オキシプルガッツ|DISCOGRAPHY

    〈AT THE GATES〉の最初期に在籍していたアルフ・スヴェンソンが、〈AT THE GATES〉脱退後のメインの活動としてたソロ・プロジェクト。

    完全なワンマンバンド体制で、ドラムは打ち込みですが、ヴォーカルを含めた全パートをスヴェンソン自身で担当しており、曲によってゲストヴォーカリストとして、ガールフレンド/妻でもあり〈DARK TRANQUILLITY〉への参加経験のあるサラ・スヴェンソンらが、加わっています。

    音楽性は、スヴェンソンが参加した〈AT THE GATES〉初期2作品の特徴だった、プログレ色の強いスタイルを志向しており、ヴォーカルはダーティとクリーンの男声ヴォーカルと女声ヴォーカルが混合されています。

    これは、この時期増殖しつつあった、デスメタルにメロディやゴシックメタル、インダストリアルなどの要素が取り入れた耽美志向のデスメタルのひとつといえるもので、曲によってはメロディック・デスメタルと呼べそうな展開も見せます。

    全面的にフィーチャーされた大仰なシンフォ系キーボードと、スヴェンソンの絶叫系のヴォーカル・スタルもあって、近年の区分けでは『ブラックメタル』にもカテゴライズされますが、ビジュアルを含めブラッキーなサタニック要素を押し出しているわけではなく、歌詞や世界観もSFやファンタジーを主題としたエピック寄りのものが主体です。

    Fairytales|フェアリーテイルズ

    オリジナル・スタジオアルバム – 1作目 (1994年)

    Worlds and Worlds|ワールズ・アンド・ワールズ

    オリジナル・スタジオアルバム – 2作目 (1996年)

    Sidereal Journey|サイディリアル・ジャーニィ

    オリジナル・スタジオアルバム – 3作目 (1998年)

    ANDERS BJÖRLER (SOLO)|アンダース・ビョーラー(ソロ)|DISCOGRAPHY|

    2022年に〈AT THE GATES〉への復帰がアナウンスされたギタリストのアンダース・ビョーラーは、実弟ヨナスと共に、〈AT THE GATES〉時代から〈THE HAUNTED〉時代を通してバンドの中核を担い、当然再結成〈AT THE GATES〉にも参加していました。

    しかし、2017年には音楽的な方向性の相違を理由にバンドを離れ、バンド在籍時からの副業でもあった映像作品の制作/編集業のかたわら、自身のソロプロジェクトも始動させ、それを軸に他のバンドや各種プロジェクトへの参加も行っています。

    ソロにおいては、デスメタルの要素を完全に排した、本格的なプログレッシヴロックを志向しており、空間的な音づくりを用いたアトモスフェリックなサウンドのを特徴とした、ポストロック/ポストハードコアなどを経たいわゆる“ポスト系”モダンプログレを展開しています。

    Antikythera|アンティキティラ
    オリジナルアルバム – 1作目 (2013年)

    オリジナルアルバム – 1作目 (1992)

    オルタナティブ¥1,833Anders Björler

    Dreaming of Insomnia|ドリーミング・オブ・インソムニア
    シングル (2015年)

    オリジナルアルバム – 1作目 (1992)

    THE LURKING FEAR|ザ・ラーキング・フィアー|DISCOGRAPHY

    〈AT THE GATES〉のトマス・リンドバーグ(Vo.)とエイドリアン・アーランドソン(Dr.)によって2016年に結成されたデスメタルバンド。

    ベースには、メロデス黎明期からのライバルだった〈EDGH OF SANITY〉の“ドレッド”ことアンドレアス・アクセルソン。
    ギターには、90年代にデスメタル・バンド〈SARCASM〉を経て、クラストコア系バンド〈SKITSYSTEM〉を結成したフレドリック・ウォレンバーグを迎えており、ちょっとしたドリーム・プロジェクトの体をなしています。

    ここでの音楽性は、〈AT THE GATES〉とも〈EDGH OF SANITY全く異なりメロディ要素は希薄で、ファストとスローを織り交ぜたオールドスクールなスウェディッシュ・デスメタル寄りのスタイル。

    バンドは〈AT THE GATES〉と並行して活動を行っており、現在もアクティヴな状態とを維持。
    現時点ではアルバム2枚をリリースしています。(2022年現在)

    Out of the Voiceless Grave|アウト・オブ・ザ・ヴォイスレス・グレイヴ
    オリジナルアルバム – 1作目 (2017年)

    オリジナルアルバム – 1作目 (1992)

    Death, Madness, Horror, Decay|デス,マッドネス,ホラー,ディケイ
    オリジナルアルバム – 2作目 (2021年)

    オリジナルアルバム – 1作目 (1992)

    次ページはAT THE GATES関連バンドののディスコグラフィ&レビューを紹介!!▼リンクはページ下!▼

    AT THE GATESはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!

    AT THE GATESは、ジャンル内での知名度やメタル史上の重要性は非常に高いバンドですが、メロデスがブームを迎える前の早い時期に解散を迎え、その後、主要メンバーが長期にわたって〈THE HAUNTED〉として活躍するため、AT THE GATESとしての全盛期は極めて短く、また、再結成後を含めたとしても作品数は多くありません。

    これさえ押さえればOKの代表的名盤は!?

    AT THE GATESのアルバムを聴くならば、後にも先にも傑作アルバム『Slaughter of the Soul(4th)』、この1作につきます。

    何しろこのアルバムは、歴史的意義も高く後のシーンへの影響力も甚大なメロディック・デスラッシュの重要作であり、AT THE GATESのキャリアの中でも圧倒的に突出したクオリティを持つ規格外の名盤。
    AT THE GATEに触れるならば、代名詞であるこのアルバムを聴かないことには何も始まりませんし、逆に言えば、とりあえずコレ1枚さえおけば問題無いとも言えます。

    『Slaughter of the Soul(4th)』路線のオススメは!?

    『Slaughter of the Soul(4th)』を聴いた後にで同路線のアルバムを求めるならば、普通なら再結成後の『At War with Reality(5th)』,『To Drink from the Night Itself(6th)』へ進むことになるでしょう。

    この2作はあまりに使い回し感が強いため評価は分かれがちですし、優先して聴く必要のあるアルバムでもありませんが、実験性や新機軸にこだわらず様式美上等で割り切って聴けるならば、どちらもジェネリック『Slaughter of the Soul』としてはそれなりに良くできています。

    しかし、歴史的ん重要性とや作品の密度という点では、むしろイレギュラーな内容ながら『Slaughter of the Soul』のスタイルを完成させた隠れた重要作、『Terminal Spirit Disease(3rd)』を押さえておきたいところ。

    プログレ路線のオススメは!?

    あまり認知されていなAT THE GATEのもうひとつの側面が、近年また表に出してきた「プログレ・デス」としての顔です。

    この路線では、最初期に2作品『The Red in the Sky Is Ours(1st)』『With Fear I Kiss the Burning Darkness(2nd)』と、2022年時点での最新作『The Nightmare of Being(7th)』となります。

    この中では、メロデスファンや一般のメタラーにも馴染みやすいという意味では、メロデスとプログレのいいとこ取りで、オーソドックスなプログレメタルにも近い曲も多い『The Nightmare of Being(7th)』がアンパイと言えます。

    しかし、より実験的でヒネリの効いたサウンドが好みならば、やや粗さやアクの強さがありながらも変則的でテクニカルな独自のサウンドを聴かせる『The Red in the Sky Is Ours(1st)』がオススメです。

     Amazon Music UnlimitedでAT THE GATESが聴き放題! 

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