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★用語辞典★『エモ:Emo』とは?《悪魔の音楽用語辞典…メタル/ロック界隈の基礎知識》

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音楽用語|え|『エモ:Emo』【音楽ジャンル・表現】

『エモ』とロックミュージックのいちジャンル。近年ではそれとは無関係に「エモい」などという表現が、が若年ギーク層のスラングに近い形で定着しています。

最近では『エモ』や『エモい』というワードがちょっとした流行語に近くものとなって、語り手によってがその意味合いも使うシチュエーションも千差万別になっていますが、ちょっと音楽を幅広く聴いている人ならとロックのジャンルとしての『エモ』の印象が強いでしょう。

世間一般やオタク界隈で使われる『エモ』『エモい』は定義が曖昧ですし、音楽とは直接的には無縁の流れで使われているのでここでは無視してもかまいません。話のマクラに持ってこられがちな「英語では正確には“イーモゥ”なんだよ!」などという豆知識も、ここでは本筋ではないので無視します。

ロックカルチャーの中での『エモ』とは?

アーティストの紹介やレビューなど、ロックの文脈の中で『エモ/エモーション』というワードが用いられる場合、表現としての「エモ=エモーション」を指す場合と、ジャンルとしての『エモ=エモコア』を指す場合があります。どちらを指すかは、よほどのことがなければ通常は前後の文脈で判断できるでしょう。

本来の意味…または表現としての『エモ/エモーション』

レビューや広告などで音楽の特徴の表現として『エモ』『エモい』などを使う場合、エモーショナル=情動的なという意味も込められますが、ちょっと乱暴にメタルリスナーにわかりやすい言い回しをするなら、“泣きのメロディ満載!”という表現や売り文句とほぼ同じと考えればだいたいOKです。

一概にエモーションといっても、喜びなどハッピーでポジティヴな感情表現を『エモい』と呼ぶこと少なく、怒りや悲しみなどネガティヴな情動がメイン。それをセンチメンタルでメランコリックなヴォーカルラインやギターソロなどで表現したものが『エモ』『エモい』と呼ばれがちです。

最近では音楽も含めて、マーケティングによる“エモの方程式”で作品が量産されるようになったことで、“感動ポルノ”などに近いリテラシーが低いユーザーに向けた扇情的コンテンツとして、否定的な意味合いで語られることも増えています、

音楽ジャンルとしての『エモ』

ロックシーンでも『エモ』の語源でもあるエモコア=エモーショナルハードコアは、その名の通りハードコアの一派です。

従来のハードコアは、“ポリティカルでストイック”なある種の教義的な社会派だったり、そうでなければ“マッチョでストロング”な暴れたいだけの脳筋バカいうイメージが一般的でした。

どちらにしても軟派リスナーには立ち入るスキがなかったのですが、80年代中期以降の米国ワシントンを中心に、ギーク/ナードやフェミニンな層を中心とした文系ハードコアバンドが、内省的でパーソナルなテーマをマイナー調のメロディーやヴォーカルラインで表現するスタイルで注目を集めます。これが『エモ』の原点『エモコア=エモーショナルハードコア』です。

『エモコア』のサウンド自体はハードコア色は薄く、ニューウェイヴからの影響の濃い、暗めのオルタナポップ/インディーポップといったサウンド。しかし、“ハードコアシーンのミュージシャンによるハードコア以外の音楽”という意味合いの『ポストハードコア』ジャンルの一派として、ハードコア文脈の中で語られていました。

『スクリーモ』とは?

『スクリーモ』は、“スクリーム(叫び)”と“エモ”を組み合わせた造語によるジャンル。
単純に言うと“激しい”エモコアで、一般的には、エクストリームメタル由来の過剰な曲調とドラマティックな展開、ブラックメタルにも近いヒステリックな絶叫型ヴォーカルが特徴です。情感の表現が難しいためか、いわゆるデスヴォイスをメインとするケースはあまり見られません、

当初は、主にメタリックな“NSHC(ニュースクール・ハードコア)”と“エモコア”がベースにあるスタイルでしたが、世代を経るごとにメロディックパワーメタルやニューメタル、メロディックデスメタルやブラックメタルなどのエッセンスが濃厚になり、音楽的にはそれらと大きな差のないヘヴィメタリックなスタイルが主流をなすようになってゆきます。

ヘヴィミュージックへの『エモ』の広がり!

『エモコア』ブレイク!

90年代になると、スケーター/ストリート系のファッションやカルチャー込みで、“ハードコア/パンク”のブームが起きます。中でも、メロディ重視のハードコアという点で『エモコア』に通じる『メロコア=メロディックハードコア』などは、メインストリームのポップミュージックとして世界的な流行にまでなります。日本の芸能人がMISFITSのTシャツなんかを着るようになったのはこの頃ですね。

90年代半ばには『エモコア』も『メロコア』のサウンドに接近するものも増え、その延長的な位置付けで注目されるようになり、『メロコア』のメジャー感に抵抗を覚えるマニアックなリスナーや、『メロコア』のポジティヴなイメージに馴染めないリスナーに支持されるようになります。

『エモ』のシーン拡大!

その後『エモコア』メソッドのメロディラインやヴォーカル表現は、ゴス/ともヴィジュアル系とも重なる美意識は、ひとつの定型スタイル、あるいは様式美として狭義の『エモコア』ジャンル以外でも多様されるようになり、その結果、便宜的に『コア』を取り去って単に『エモ』と呼ばれるようになります。

エクストリームな『スクリーモ』も登場!

『エモコア』にもヘヴィなサウンドは見られな勝ったわけではありませんが、メタリックな“NSHC(ニュースクール・ハードコア)”の登場などもあって、よりエクストリームなスタイルが増加してゆきます。『スクリーモ』はその代表的なスタイルで、サブジャンルとして認められるまでになります、

また、エモーショナルなメロディをフィーチャーした、メロディックデスメタルの成功は重要なトピックで、メロディックデスメタルやメロディックパワーメタルの影響下にある『スクリーモ』も続々と登場します。これらは、『メタルコア』ブームに飲み込まれるかたちとなり、一般的にはその一環として語られがちです。

クラスタとしての『エモ』

欧米では『エモ』はひとつのクラスタ…特にナード/ギーク系のクラスタを指すワードとしても定着しています。これは簡単に言ってしまえば、外見的にも内面的にも日本のオタク系の一部に見られる“中二病ビジュアル系”の人たちと同じようなものです。

米国でも、80年代ニューウェイヴ/ポストパンク時代の、英国ゴシックロックをルーツにバックグラウンドに持って、それ風のフッションやライフスタイルを意識した『ゴス』クラスタが一定層存在していました。
当初は一部のナルシスティックなビザール趣味の孤立したクラスタだったのが、ニューウェイヴリバイバルや“ネオゴス”,“サイバーゴス”的なファッション/カルチャーの流行もあって、一気にメジャー化/大衆化します。

ハードコアシーンに内省的なナードセンスが!!

その結果、自意識過剰な中二病系のナード/ギーク層が大量に流れ込んできたこともあり、『ゴス』=スクールカーストの最下層やその枠外にある、“イケてない存在”というイメージが強くなって、映画やドラマなどでもそういったステレオタイプとして描かれるようになります。

『エモ』系クラスタはそこから派生した、あるいはそれに類する新世代的な位置付け。主食とする音楽やファッションの以外はほとんど同じようなもので、少なくとも門外漢からすれば全く見分けがつきません。

これは、当初イキった“カブキ者”的な立ち位置や、コンセプチュアルな“アート系”の一種でもあった『ヴィジュアル系』に、コスプレ趣味の厨二オタク系が大量流入してきた流れに近いかもしれません。

 

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