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【問題作】MEGADETH / Risk|メガデス / リスク 〈1999年〉

MEGADETH_risk スラッシュ
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USスラッシュメタルBIG4の一角がキャリアの絶頂期を超えた黄金時代の終わりにPOP路線にで活路を見出そうと試みた迷走作!!

現在もアメリカメタルシーンのトップの地位を占めるUSスラッシュメタルBIG4(四天王)ですが、その中でも王道スラッシュにこだわったSLAYER(スレイヤー)以外のグループは、時流を見極めてスラッシュメタルから逸脱するほどに音楽性を変化させていったことによって、メインストリームでブレイクを果たしBIG4の称号を得るまでになりました。

スラッシュBIG4の一角であるMEGADETHも例外ではなく、特に音楽シーンに大きなうねりが起きていた90年代はその動きが激しく、彼らのキャリアのピークにもあたるCountdown to Extinction(破滅へのカウントダウン)も、大幅に作風を変えてきたことから賛否両論を呼んだアルバムでしたが、それをはるかに上回る問題作として物議を醸したのがこの90年代最後の作品になったRisk(リスク)でした。

MEGADETHのRiskはなぜ問題作と呼ばれるのか?

MEGADETHRiskが問題作として物議を醸した理由は、この時期のスラッシュ末期にの作品にはよく見られたものです。

① インダストリアル色を取り入れてきた。

はい、スラッシャーの天敵の90’sスラッシュ名物インダストリアル路線ですね。確かのこの作品と連動する形でリミックスアルバムなどもリリースされ、EDM調のミックスも聴かせています。
実際のところ、本作でのインダストリアルサウンドのフィーチャー度は全く本格的なものではなく、あくまでちょっとしたいろどり程度のトッピングに過ぎないものだったのですが、それでも保守メタラーにとってはパクチー並みの破壊力があったようで、毎度のように嫌悪感をあらわにしたリアクションが見られました。

② ポップミュージックに寄りすぎている。

音楽的な変化に絡む問題で取りざたされがちだったのは、インダストリアルサウンドの導入よりも行きすぎたポップ路線の方でしょう。
彼らのポップネスの追求は何もここから始まったわけではなく、以前よりテクニカルな作風の中で時折ひねくれたポップ感覚を見せていましたが、90年代のメインストリーム進出にともなってにはその傾向が強まり、Youthanasia(ユースアネイジア)ではそれが最高潮に達していました。

RiskYouthanasiaと比較してさらにポップネスが増しているわけではないのですが、にもかかわらず両作品の評価が大きな差があるのは“ポップさの質”の問題でしょう。
Youthanasiaのポップさは、あくまでもヘヴィメタルに根ざした叙情性やマイナー調のメロディーで表現されていたのに対して、Riskではメタルともロックとも呼び難いメインストリームポップミュージックに近いテイストの導入を試みていました。

結果的に上手くいったものもあれば微妙なものもありで一概に全否定はできないですし、決して全編にわたってポップ一辺倒というわけではないですが、日本で言えばアングラインディーバンドがいきなりCMタイアップのJ-POPソングをやり始めたような違和感があったのは確かです。

③ 疾走感のあるスラッシュナンバーが無い。

彼らはCountdown to Extinctionでのブレイクから現在に至るまで、疾走型スラッシュにこだわらない作風が続きミッドテンポ主体のアルバムも多くなっています。

これは何もMEGADETHに限った話ではなく、他のスラッシュメタルグループでも同様で、その後はオールドスクールスラッシュメタルリバイバルの盛り上がりもあって疾走型スラッシュに回帰するグループも増えてくるのですが、それでもミッドテンポ&グルーヴ重視の楽曲は欠かせないものとなっています。

この傾向は、70年代からのメタル/ロックシーン流れを見るに、流行り廃りを超えた部分でのアメリカ人の国民性に深く根ざした、音楽の嗜好性による部分が大きいように思われます。

④ ジャケットが地味

Riskがリアルタイムでリリースされた時期はは、おなじみのドクロのマスコットキャラクター“ラトルヘッドくん”による社会風刺的なイラストといういつものパターンを止めてた時期で、ねずみ捕り機の金具部分のどアップ写真というやや抽象的なアートワークを採用していましたが、これがわかりづらい上にかなり地味な仕上がりで、メタルクラスタに対してはつかみの弱いものでした。

のちにネズミが罠に近づいているわかりやすいイラストに差し替えられるのですが、これは逆効果で余計に安っぽくなってしまっています。

結局のところMEGADETHのRiskは作品としてどうなの?

Riskというと一般的には代表曲Crush ‘Em(クラッシュ・エム)が映画「ユニバーサル・ソルジャー:ザ・リターン」の主題歌や、WCW(当時)の人気プロレスラービル・ゴールドバーグのテーマソングになったことで知られていますが、ユニソルが微妙な出来でゴールドバーグもあまり通好みしないキャラだったことの影響はわかりませんが、当時の評価はかなり散々なものがありました。

ここでの迷走ぶりは、元をただせばMETALLICAのラーズの「MEGADETHはうちと違って音楽的な冒険足りないんじゃないの〜!(笑)」という煽りに乗ってしまったこと、そしてその流れから昭和歌謡マニアのおもしろガイジンタレントでもあるマーティ・フリードマン(Gt.)の口車に乗って、J-POP風路線を狙ったことが原因とされてます。

実際のところは、巷でいわれるイメージほどポップ一辺倒というわけでも、それほどひどい作品というわけでもありません。
特に前半は比較的ヘヴィでダークな楽曲も並んでおり、中でも本作でイチバン知名度のあるCrush ‘Emなどの数曲は派手さはないもののなかなかの佳曲です。
中盤から増えてくるポップでメロディ優先の楽曲は、確かに地に足が付かない上滑り感があって間違っても成功しているとはとても言えないものですが、部分的には印象に残る部分がありますし、曲単位で見ればCountdown to Extinction以降なら1~2曲程度なら入っていても違和感がないレベルではあります。

問題は、アルバムの中で看板になるほどのレベルにはなくアクセント程度の扱いにがせいぜいのポップ曲が目立ちすぎる反面、核になるような名曲クラスの突出した曲を欠いていることと、ミッドテンポ中心の曲調で変化が乏しいことで、そこにムステインの表現力のなさも加わり、アルバムを通すとどうにもメリハリが足りずダラダラと流れいっててしまいがちです。

MEGADETHデイヴ・ムステインの個人のサポーターに支えられている面が強く、リスナー層もスラッシャーよりも一般メタルファンの比率が高めなので、微妙な何曲かをウケの良さそうな定番のメタル曲に入れ替えるだけで評価が好転した可能性はあります。
それをあえてやらなかったあたりが彼らの覚悟の表れとも言えますが、それにはもっと豊富なアイデアとつくり込みが必要だったのではないでしょうか。

なんにせよ、このRiskを最後にニック・メンザ(Dr.)に続いてフリードマンとは脱退と、MEGADETH全盛期を支えたメンバーが去って行き彼らの黄金時代は終わりを付けることになります。

MEGADETH / Risk
問題作度:★★★★★
一般評価:★☆☆☆☆
筆者評価:★★★☆☆
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