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【問題作】EXODUS / Force Of Habit|エグゾダス / フォース・オブ・ハビット – (1996)

EXODUS_ForceOfHabit スラッシュ
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USスラッシュメタルの裏番長が冬の時代に満を持してリリースするも、オールドスクールスラッシャーに大バッシングを受けた問題作!!

EXODUSは、USスラッシュメタルの本場ベイアエリアを代表する最古参グループで、シーンでの存在感や影響力ではスラッシュ四天王(BIG4)の後塵を拝しているものの、ベイエリア流リフサウンド『ベイエリアクランチ』の家元として、オールドスラッシャーを中心に根強い支持を受けているバンド。

そんな彼らにとって最大の問題作とされているのが、1992年リリースのForce Of Habit(フォース・オブ・ハビット)です。

この作品はMETALLICA(メタリカ)でいえばブラックアルバムMEGADETH(メガデス)ならCountdown to Extinction(破滅へのカウントダウン)ANTHRAX(アンスラックス)ではSound of White Noise(サウンド・オブ・ホワイト・ノイズ)にあたる作品。
つまり、スラッシュムーヴメントの収束を迎えたバンドたちがサバイヴしていくために、スラッシュメタルにとらわれない次の一手として打ち出した新機軸を導入したアルバムということです。

しかし賛否両論を巻き起こしつつも大ヒットとなったそれらの作品と比較すると、このForce of Habitはまさに否一色の惨憺たるありさまで、その結果バンドの解散へとつながってしまいます。

EXODUS/Force Of Habitはなぜ問題作と呼ばれるのか?

問題作…というか駄作扱いされる理由はこんなところです。

①…スラッシュ色が薄れ速い曲が少ない?
②…捨て曲が多い?
③…ジャケがスカしている?

①スラッシュ色が薄れ速い曲が少ない?

まず①はよく聞こえてくる意見なんですが、実のところSLAYER(スレイヤー)を除くBIG4がメジャー進出の際に見せたようなラジカルな変化ではありません。BIG4以外にもTESTAMENT(テスタメント)OVERKILL(オーバーキル)をはじめとした多くのスラッシュバンドがこういった変化を試みていましたが、それらと比較してもスラッシュメタルから逸脱した音楽的な冒険は抑えられています。

確かにこれまでのようなクランチーなリフが効いた疾走曲中心の作風ではなくなり、狭義的なスラッシュの枠に収まりきれずハミ出す部分も多くなっていますが、基本的にはスラッシュメタルの体は成しており、要所要所に疾走曲も織り込んでいます。結界的に、スラッシュメタルの枠の中でやや方向性を変えたという程度の変化に収まっていますし、ミッドテンポでも飽きさせない工夫も凝らされています。

むしろスラッシュメタルを半端に引きずり過ぎて、SLAYER以外のBIG4のような新時代のメタルサウンドを提示できなかったことが、オールドファンの支持を失っただけでなく、新規リスナーを獲得できず先細りという結果につながるのかもしれません。
またEXODUSの場合、METALLICAMEGADETHのような幅広いファン層を持っているわけではなく、疾走感のあるオールドスクールへのこだわりが強い生粋のスラッシャーが中心だったことも、本作の低評価の要因でもあったのでしょう。

②捨て曲が多い?

続いて②です。本作は漠然と「長い」「無駄が多い」とよく言われるますが、それが曲が長いということならそれは過去作から見られた傾向であって、本作が特に際立っているというわけではありません。
むしろ、同じ長さでも過去作の無駄に長い疾走曲の方が、体感的に長く感じられるくらいです。

ただし、曲数が多いという意味ならそれは間違いありません。ヴィニール盤のリリースが減ってCD主体になった90年代以降は、長時間録音を生かして収録曲が大幅に増えてゆきました。
それがアーティスティックな必然からならともかく、ビジネス的なファンサービスでアウトテイクレベルの曲まで収録する傾向が増加し、残念ながら本作もそれにあたります。

確かに、曲数がおよそ過去作の5割増しにもかかわらず、セットリストがメリハリにかけることもあってややダレ気味なのは否定できませんが、楽曲はカバー曲も交えてバラエティに富んでいますし、ミドルテンポの曲も含めアベレージは決して低いわけではありません。

この時期はMETALLICAMEGADETHANTHRAXの路線変更による成功の影響もあり、多くのスラッシュメタルバンドが見よう見まねでの軌道修正を余儀なくされます。その結果、迷走気味の中途半端なアルバムが続出する中で、このアルバムは数少ない成功例に含まれるべきでしょう。

③ジャケがスカしている?

ほぼ①と②で片付く話なので③はおまけのようなものですが、これまでのジャケットアートワークはチープながらヘヴィメタル然とした頭の悪そうなものでしたが、ここではアーティスティックなイラストが使われています。
これは、風刺漫画家としての活躍で知られ、その活動が映画の題材にもなった英国出身の反逆のアーティスト、ラルフ・ステッドマンの手によるものですが、せっかくの大物を起用もメタルクラスタにとってはただのヘタな落書きにしか見えないようでした。

メタルアルバムでも時折抽象的なタッチやハイセンスでスタイリッシュなデザインと起用するケースがありますが、ベタなファンタジーやホラーを題材とした写実的なタッチを好む傾向にあるメタルクラスタにとっては、あまり有効ではないどころかビジュアル戦略としてはむしろ完全に逆効果。それだけで正当な評価が阻まれてしまうことも、決して少なくありません

結局EXODUSのForce Of Habitは作品としてどうなの?

結論から言うと、カバー曲も含めバラエティ豊かで彼らとしてはかなり練りこまれた楽曲は、かなり高水準な仕上がりで魅力的です。捨て曲が目立つのは確かに難点ですし、オールドスクールな疾走感だけにこだわるスラッシャーには不満も多いでしょうが、そうでないリスナーにとってはかなり聴きどころの多い充実したアルバムとなるはずです。

彼ら本来の魅力が、エッジの効いたクランチィなリフワークと疾走感だったのは間違いないでしょうが、一方でリフワークに依存しすぎたためか構成力の甘さが拭い去れず、突出した曲があまり見られないという欠点もありました。
唯一楽曲重視の多彩な作風でアンセム曲をも生み出したのが、4作目にあたるFabulous Disaster(ファビュラス・ディザスター)なのですが、このアルバムの作風は基本的にはそれを踏襲したともいえるもので、やはり同様に多様性と質の高さが同居したものとなっています。

にもかかわらず過小評価の傾向にあるのは、オールドスクールなスラッシュが壊滅状態に近い状況の時期に、本作のリリースがスラッシャー最後の希望のようになっていたことによる反動、という面も関係しているのかもしれません。

EXODUS / Force Of Habit
問題作度:★★★☆☆
一般評価:★☆☆☆☆
筆者評価:★★★★☆
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