Contents
- 1様式美系プログレに背を向けたオルタナティヴ系プログメタル - 知る人ぞ知るユニークな名バンドの巣窟!
- 1.1メタルファンの憎悪の的オルタナティヴロックこそ、真のプログレッシヴなロックだった?!
- 1.2ミュージシャンズミュージシャン的な通好みの個性はバンドたち!
- 1.3今こそオルタナティヴ系プログメタル再評価の時!
- 1.4オルタナティヴ系プログメタルの代表的バンド
- 1.4.1KING'S X|キングスX
- 1.4.2GALACTIC COWBOYS|ギャラクティック・カウボーイズ
- 1.4.3THOUGHT INDUSTRY|ソート・インダストリー
- 1.4.4FREAK KITCHEN|フリークキッチン
- 1.4.5WALTARI|ワルタリ
様式美系プログレに背を向けたオルタナティヴ系プログメタル – 知る人ぞ知るユニークな名バンドの巣窟!
初期のプログメタルには、別記事で紹介したDREAM THEATER(ドリーム・シアター)らBIG4に代表される様式美メタル系とは別に、オルタナティヴ系とでも云うべきスタイルのグループがあります。
これらのバンドの特徴は、ヘヴィメタル/ハードロックをベースにしつつ、オルタナティヴロックに通じる音楽性を持っていることです。
メタルファンの憎悪の的オルタナティヴロックこそ、真のプログレッシヴなロックだった?!
90年代初頭のUSオルタナティヴロック系のシーンは、グランジ同様に当時のメタルファンに人気だった商業的なグラムメタル(LAメタル)やポップな産業メタルに批判的だったため、(特に日本の)メタルファンから親の仇のように憎まれていました。
しかし、実際はJANE’S ADDICTION(ジェーンズ・アディクション),FAITH NO MORE(フェイス・ノー・モア),PRIMUS(プライマス)といった、“プログレッシヴでアバンギャルドな感性を持ったハードロック”というべきバンドは多く、むしろプログレッシヴな精神はそちらの方に息づいていたのです。
ミュージシャンズミュージシャン的な通好みの個性はバンドたち!
これらのバンドとしては、KING’S X(キングスX),GALACTIC COWBOYS(ギャラクティック・カウボーイズ)といったアメリカ南部CCM系のホワイトゴスペルロックバンドが代表的ですが、それ以外にもTHOUGHT INDUSTRY(ソート・インダストリー),NAKED SUN(ネイキッドサン),T-RIDE(T-ライド),MIND OVER FOUR(マインド・オーバー・フォー),DAMN THE MACHINE(ダムン・ザ・マシーン)、スウェーデンのFREAK KITCHEN(フリーク・キッチン),フィンランドのWALTARI(ワルタリ)といった様々なグループが存在します。
音楽的には、比較的ポップでコンパクトにまとまった楽曲ながら、独特の確かな技術と幅広い音楽的素養を感じさせ、ミュージシャンズミュージシャン的存在が多いのも特徴。
またユーモラスな雰囲気やフリーキーな変態性を感じさせる、アクの強い個性派バンドも目立ちます。
今こそオルタナティヴ系プログメタル再評価の時!
しかし、当時はオルタナティヴ系のリスナーからはワナビーと、メタルファンからは背教者と呼ばれて板挟みとなり、双方から異端扱いされるどっちつかずのポジションで正当に評価されることも稀でした。
実際に時流に乗っただけのバンドが多いのも確かですが、結果的にユニークな作品を作り上げた様式美系のプログメタルよりもプログレッシヴいう肩書きがふさわしいバンドも多いので、ジャンルのしがらみが薄れた今こそ再評価するチャンスかもしれません。
オルタナティヴ系プログメタルの代表的バンド
オルタナティヴ系プログメタルはどうしても時代の音という部分があるため短命に終わりがちで、アルバムも1枚だけでおしまいなんていう惜しいケースが多いのが残念なところ。
そんな中、あまり順風とは言えない状況でも根強く活動を継続して、ブランクがあっても作品を発表し違いのわかるのリスナーに支持されていたバンドが少ないながらも存在します。
ここではそんな通好みのバンドを紹介します。
KING’S X|キングスX
JANE’S ADDICTION(ジェーンズ・アディクション),FAITH NO MORE(フェイス・ノー・モア),LIVINFG COLOUR(リヴィング・カラー)といったオルタナティヴな古参バンドと並んで、80年代後期から70’sロック,ファンク,ソウル,サイケなどの要素を内包したプログレッシヴな感性のハードロックを発表していたバンド。
QUEEN(クイーン)ばりのコーラスワークも持ち味にしていました。
KING’S X(キングスX)は布教/啓蒙を目的としたクリスチャンロックと云うバックグラウンドや、メタルリスナー好みの小綺麗な整合感やポップネスが強かったことから、上記のバンドとは活動のフィールドやファン層も異なっていました。
メインストリームのオルタナティブムーブメントから少し離れたポジションにいたことで、アンチオルタナ/グランジな保守的メタル/ハードロッククラスタからも、RUSH(ラッシュ)にも通じるプログレハード的ミュージシャンズミュージシャンとして好意的に受け取られています。
Amazon Musicで『KING’S X』の聴き放題をチェック!GALACTIC COWBOYS|ギャラクティック・カウボーイズ
KING’S Xの兄弟バンド的な触れ込みで登場して、“METALLICA meets BEATLES”などとも評されて一時期はかなりプッシュもされたバンド。
中心メンバーは過去にTHE AWFUL TRUTH(ジ・オウフル・トゥルース)というバンド名で活動していて、隠れた名盤の誉れが高いセルフタイトルの唯一のアルバムは日本盤もリリースされていました。
THE AWFUL TRUTHはクール&ダークでメランコリックな要素も強いシリアスな作風でしたが、GALACTIC COWBOYSでは牧歌的でユーモアを感じさせるスタイルを持ち味にしています。
ハードコアナンバーからポップソングまでこなす多彩なバンドにもかかわらず、その器用さが仇となって通好みな存在に落ち着いていますが、派手さがなく垢抜けないバンドながらも地道な活動で根強い人気を獲得しています。
THOUGHT INDUSTRY|ソート・インダストリー
METALLICAのジェイソン・ニューステッド(Jason Newsted)のからのプッシュもあって、デビュー作が話題になったバンドです。
デビュー当初から、プログレッシヴメタル風の体裁をとりつつもあふれる変態性が隠せないサウンドでしたが、アルバムごとに当初から持ち合わせていたフリーキーな要素を濃くしていき、アバンギャルドでオルタナティヴなスタイルに傾いていきます。
スタイルこそ変われど常に個性的で高品質な作品をリリースしてきましたが、中期以降の作品はメタル的なフックが少なくなったこともあって、非メタルの変態サウンドもいけるリスナー以外にはオススメできません。
メタル度の高い初期作品であればピュアメタラーでも十分楽しめるでしょう。
FREAK KITCHEN|フリークキッチン
元MERCYFUL FATE(マーシフル・フェイト)のハンク・シャーマン(Hank Shermann)が結成したバンド、FATE(フェイト)のギタリストを務めていたマティアス・”IA”・エクルンド(Mattias “IA” Eklundh)が結成したバンド。
テクニカルでフリーキーなギターを基調としたファンキー/グルーヴィーな要素が強いポップなミクスチャーメタルという基本スタイルは、ヌーノ・ベッテンコート(Nuno Bettencourt)やスティーヴィー・サラス(Stevie Salas)関連のバンドにも通じるものがありますが、それらのバンドを上回るメタル度の高さが特徴。
本来のポップさはそのままに、MESHUGGAH(メシュガー)風のジェント系ポリリズムを取り入れるなどの試みも行っていますが、この手のバンドとしてはストレートで変態度も薄めなので、一般のメタルリスナーにも馴染みやすいサウンドです。
WALTARI|ワルタリ
北欧を代表するフィンランド出身のオルタナティブ系プログメタルバンド。
ハードロック/ヘヴィメタル/ミクスチャーロックをベースに、グルーヴメタル,スラッシュ/デスメタル,パンク/ハードコア,インダストリアル,テクノ/トランス,サイケ,シンフォニックメタル,HIPHOP/ブラックミュージックといった様々なエッセンスを取り入れた、ポップなミクスチャー的スタイルのバンドです。
ただし、異なるジャンルを渾然一体に融合させたスタイルではなく、アルバムごと曲ごとパートごとフレーズごとに既存の様々なサウンドが目まぐるしく顔を見せるというコラージュ的なアプローチが中心で、分裂症が進んだGALACTIC COWBOYSとも表現できるような音楽性です。
デビュー当時は全く話題にもならず中古盤もゴミ扱いされていましたが、のちにプログレリスナーや通好みのリスナーの間で評価が高まったことで大きく知名度と評価を高めました。