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【特集|メタラーにとってのヘイテッド・ミュージック-2】メタラーに憎む音楽BEST5!本当にダメな音楽なのか?

ヘヴィメタルイメージR.I.P.グレイヴヤード コラム
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メタラーにとってのヘイテッドミュージックBIG3って何?

今回の記事は、メタラーにとってのヘイテッド・ミュージック(Hated Music)特集第二回です。

前回の記事では、ヘヴィメタルクラスタにとってのヘイテッド・ミュージック(Hated Music/嫌われ音楽,憎まれ音楽)がなぜそこまで嫌われることになったのか、その原因や経緯についてザックリ解説しました。

今回は少し踏み込んで、ヘイテッド・ミュージックの代表格、グルーヴメタルインダストリアルメタルグランジetc…が一体どんな音楽なのかについて説明しておきましょう。

グルーヴメタルってどんな音楽?

グルーヴメタルはモダンヘヴィ,ラウドロックとも呼ばれています。
スラッシュメタル/パワーメタルをベースにしつつも、疾走感やメロディは置いといて、その名の通りヘヴィな横ノリのグルーヴを前面に押し出したフィジカルでストリート感あふれるサウンドが最大の特徴。

ヴルーヴメタルを代表するバンドは言わずと知れたPANTERA(パンテラ)。元はポップなグラムメタルでしたがヴォーカル交代を境に大変貌を遂げ、そのハードコアなヘヴィグルーヴで世界のメタルシーンに大革命を起こし、90年代のメタルシーンは“メタル界総PANTERA化時代”とまで呼ばれています。

グルーヴメタルを嫌う理由は?~メタル保守はこう言う!~

•遅い •メロディが無い •うるさい •ダルい •退屈 •メタル的様式美が無い •理解できない

嫌われる理由として特に大きいのは、アメリカ的なミドルテンポの横ノリグルーヴが基本スタイルということ。これは疾走感と欧州的なサウンドを好む日本の保守メタラーには好まれないものでした。

グルーヴメタルは、特にスラッシュ系やパワー/スピードメタルなど疾走感をウリにしていたバンドが影響を受け取り入れることが多かったので、軒並みミドルテンポでスピードよりヘヴィネスを押し出したスタイルに変わっことへの抵抗は激しいものがありました。

インダストリアルメタルってどんな音楽?

ニューウェーヴ畑のダンスミュージック系アーティストが、メタルギターによるヘヴィサウンドを取り入れたダンスミュージックを創り出したところから始まった音楽。

基本的には、ヘヴィでダンサブルなビートにメタルリフを使ったリズム/フレーズ、打ち込みを駆使したサイバーでマシーナリーなサウンドが特徴です。

米国では、MINISTRY(ミニストリー)NINE INCH NAILS(ナイン・インチ・ネイルズ)らの破壊的で刺激的なサウンドに多くのメタルバンドが衝撃を受け、ヘヴィメタルサイドからのインダストリアルアプローチが増殖します。

インダストリアルメタルを嫌う理由は?~メタル保守はこう言う!~

•電子音が嫌 •演奏してない •音が軽い •無機的で冷たい •サブカルっぽい •メタル的様式美が無い •理解できない

保守メタラーはとにかく電子音が嫌い。初期テクノのピコピコ音や、EDMの打ち込みビートやサンプリングなんてもってのほか! JUDAS PRIEST(ジューダス・プリースト)IRON MAIDEN(アイアン・メイデン)が試みたシンセサイザーやキーボードの導入ですら、ブーイングの嵐が巻き起こったほどです。

また、基本ロウセンスが多いメタラーは、ハイセンスなイメージのダンスミュージックやそのリスナーを、チャラくてスカしたイケ好かないモノと勝手に思い込んでいるフシもあるようです。

グランジってどんな音楽?

グランジは次世代パンクとして扱われがちでしたが、実際はパンク,ハードコア,ニューウェイヴ,オルタナティヴロックなどを通過した世代による70年代ハードロックリバイバルという面が強い音楽。

80年代グラムメタルの拝金主義/商業主義まみれのバブリーな産業ポップメタル/イキリ系バッドボーイR&Rに中指を立て、本来の生々しい初期衝動や激しさを取り戻そうとするかのようなハードロックサウンドや、時代を反映した厭世的でダークなヘヴィロックサウンドが特徴。

NIRVANA(ニルヴァーナ)PEARL JAM(パー・ルジャム)ALICE IN CHAINS(アリス・イン・チェインズ)SOUNDGARDEN(サウンドガーデン)が、グランジシーンのBIG4的存在です。

グランジを嫌う理由は?~メタル保守はこう言う!~

•暗い •シリアス •歌が下手 •楽器が下手 •流行だから嫌 •メタル的様式美が無い •理解できない

特に大きいのは、メタルの天敵のパンク的思想や価値観を持っていたことでしょう。技術/構築美至上主義の保守メタラーには、初期衝動を押し出すラフでロウでノイジーなスタイルは認め難いものでした。

グランジは作り込まれたポップでキラキラしたグラムメタルや、甘いメロディーのハードロックへ影響を与えていたため、その影響でダークで内省的に生々しく変身したサウンドは、オールドメタラーに激しい拒否反応を与えることになります。

しかし、2000年前後からのCREED(クリード)NICKELBACK(ニッケルバック)といったポストグランジは、なぜかメタルファンからも支持されていました。この時代になってようやく呪縛の一部が解けたということでしょうか?

メタルファンが嫌うジャンル〜次点〜“準ヘイテッド・ミュージック”

90年前後に当時のメタルリスナー、特に保守派から嫌われていた音楽には、上のBIG3の他にも次点的なポジションのいわば“準ヘイテッド・ミュージック”がありました。
それがデスメタルミクスチャーロックオルタナティヴロックです。

この3つも保守メタラーが激しく嫌悪していたことには違いありませんが、当時活動中だった現役メタルバンドへの影響が少なかったことで、BIG3ほどには強烈なアレルゲンとして槍玉に上がることはありませんでした。

デスメタルってどんな音楽なの?

デスメタルは非人間的なヴォーカルスタイルの“デスヴォイス”や、激速リズムの“ブラストビート”が特徴的な、エクストリームメタルの基本形。死にまつわる題材を扱うバンドが多かったことから、この名で呼ばれていました。
80年代のスラッシュメタルは歌詞の世界観などでいくつかのサブカテゴリーがデッチ上げられていましたが、デスメタルやブラックメタルも当時はそのいちジャンルでした。

デスメタルはヘヴィネス,スピード,複雑な構成などをさらにを追求し、過激と言われたスラッシュメタルがポップに聴こえるほどに進化したことで、新たに最先端エクストリームミュージックの座につきます。

しかし、当初は単なる“キワモノ”ポジション、食材で言えばスラッシュが山羊肉や熊肉とすれば、デスメタルは虫やウネウネ系、獣の脳みそや目玉くらいの扱いでした。

デスメタルを嫌う理由は?~メタル保守はこう言う!~

•うるさい •歌ってない •メロディーが無い •音楽じゃない •メタル的様式美が無い •理解できない

本来、サウンドの“過激さ”や“過剰さ”はヘヴィメタルにとって美徳とされてしかるべき要素なのですが、あくまで「ハイトーンヴォーカルと流麗なギターによるメロディアスな音楽性こそが全て!」と考える保守メタラーは、スラッシュメタルですら先鋭的すぎて雑音と呼んで受け入れ兼ねていたくらいでした。

まして、スラッシュをさらに激化した、エクストリームメタルの極北たるデスメタルなどなおさらのこと。一般メタラーにある程度でも受け入れられるようになるには、メロデスブームなどを経てさらに10年以上の年月が必要になります。

ミクスチャーロックってどんな音楽?

ミクスチャーはクロスオーバーとほぼ同意義で「異なるジャンルの融合」と言ったところですが、ロックではおおむねファンクレゲエHIP HOPなどのブラックミュージックとクロスオーバーしたスタイルを指します。

この当時のサウンドはファンクロックスタイルのファンキーでしなやかなサウンドが主流で、ラップメタルなどHIPHOP系との融合が中心的スタイルとなる、後のゴリゴリのニューメタル系ミクスチャーとは全く別物です。

ちなみに“ミクスチャーロック”は和製英語の和製ジャンルで、海外では主にファンクメタル/ラップメタルで通っているようです。

RED HOT CHILLI PEPERS(レッド・ホット・チリペッパーズ),LIVING COLOUR(リヴィング・カラー),FISHBONE(フィッシュボーン),BAD BRAINS(バッド・ブレインズ)あたりが代表的バンド。

ミクスチャーロックを嫌う理由は?~メタル保守はこう言う!~

•ふざけている(ように見える) •ブラック系に興味がない •西洋的じゃない •メタル的様式美が無い •理解できない

保守メタラーにとって、ミクスチャーの源流のひとつブラックミュージックは、ヘヴィメタルがルーツのハードロックから削ぎ落としてきたものなので、再び取り入れることに抵抗感があるのかもしれません。

それとは別に、グラムメタルバンドEXTREME(エクストリーム)のファンクメタルは(80年代的な産業ファンクサウンドとはいえ)認められていた反面、黒人ハードロックバンドLIVING COLOURは全く無視されたあたり、保守メタラーの根本に西洋至上主義(白人コンプレックス)的な側面があることも否めません。

当時もミクスチャースタイルを取り入れるメタルバンドはありましたが、それほどラジカルではなくホドホドにやっていたこともあり、わりと当たり障りなく受け入れられていました。とはいえ、度が過ぎると完全なキワモノ扱いでしたけどね…。

オルタナティヴロックってどんな音楽なの?

“オルタナティヴ”とは“代替の”という意味で、いうならこれまでのロックや主流派のロックとは異なる新機軸のロックとでもいったところで、ある意味ではプログレッシヴ・ロックとかポストロックなどとも通じるポジションですね。

本来はグランジやミクスチャーロックの上位カテゴリーなんですが、ノイズや前衛音楽的なアプローチ、ブルース/カントリーなどルーツロックの再解釈的リバイバルなど、グランジやミクスチャーに当てはまらないスタイルの新世代ロック/ハードロックをまとめたジャンルとして便宜的に使われていました。

代表的なバンドはJANE’S ADDICTION(ジェーンズ・アデジクション),SONIC YOUTH(ソニック・ユース),FACE NO MORE(フェイス・ノー・モア)などです。

オルタナティヴロックを嫌う理由は?~メタル保守はこう言う!~

•メタルじゃない •メタルをバカにしている •スノッブっぽい •メタル的様式美が無い •理解できない

オルタナティヴロックには、“プログレメタル”以上に高い技量と豊か音楽性を持つアーティストがいくらでもいましたが、おおむね保守メタラーの興味の範囲外のサウンドだったため、好き嫌い以前に両者の接点がありませんでした。

メタラーは前衛的/アート的な要素、欧州トラッドなど一部を除いた土着的な音楽を苦手としがちなことも、オルタナティヴロックの音楽性にを受け入れ難い理由でしょう。

これらのサウンドに抵抗があるとはいえ、ヘヴィメタルシーンへの影響自体が薄かったこともあって、完全に棲み分けられてそれほど極端な憎悪を向けられることはありませんでした。

グルーヴメタル,インダストリアル,グランジetcが嫌われる最大の理由。

音楽性やイメージに対する抵抗感からそれぞれのジャンルを嫌悪する、というのは(それがメタル誌の洗脳であっても)理由のひとつとしてあるのでしょうが、当時はそれより大きな理由がいくつかありました。

今一度ザックリとまとめておくなら、これらのメタルファンからの嫌悪の理由の根本にあるのは、これら“ヘイテッド・ミュージック”が実は革新的で魅力的な新世代ヘヴィメタル/ハードロックであり、ヘヴィメタルシーンに大きな影響を与えたのみならず、アンチメタル勢力からも認められもてはやされていた…ということです。

ヘヴィメタルクラスタの鎖国はいつ終わるのか?

音楽的な許容性が低かったり音楽誌などに洗脳されたりで保守的になり、自分が慣れ親しんだんだジャンルしか聴かないというのはメタルリスナーに限った話ではありませんが、保守メタラーは特にそういった閉鎖性が強い傾向にあります。
今はいくらか風通しが良くなっているとはいえ、根本の部分が大きく変わっているわけではないでしょう。

当時のヘヴィメタルシーンは、米国メインストリームを席巻していたグラムメタルと、そのカウンターでありながら一部のバンドがメインストリームにも進出していたスラッシュメタルの活躍で、この世の春を謳歌していました。

それがアッサリと衰退して新興勢力に塗り替えらることになり、その影響はそしてオールドスクールな正統派ヘヴィメタルにまでも及びます。

お気に入りのバンドのサウンドの変化を嫌う保守派メタラーにとっては“坊主憎けりゃなんとやら…”。
メタル雑誌に洗脳された頭には八つ当たりという意識すら無く、ひたすら恨み骨髄だったいうワケです。

自分たちがどハマりしていた音楽がオワコン扱いされ変貌していく状況に、恨みごとを言いたくなる気持ちもわからないではありません。
しかし、結局これらを新世代のヘヴィメタル/ハードロックとして認めることをができず、時の流れを止めて終わらない夢を見ようとしたことこそが保守メタラーの不幸の始まりでしょう。

次回は、そんなメタラーが好んで評価する音楽、好まれず評価されない音楽の特徴や傾向、そしてその理由をさらに広い視点で見てみたいと思います。

▼続きはこちらから…

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