Contents
- 1ダークでイーヴルでドゥーミィな極悪系メタリック・ハードコア・サウンドで、現代メタルコアの火付け役となった、N.S.H.C.(ニュースクールハードコア)のリビング・レジェンド!!
- 1...1現代メタルコアサウンドの創始者!?
- 1...2ヘヴィでダークな異形のハードコア!?
- 1...3極悪系サウンドの代名詞に!?
- 1...4衰えない熱量と止まらない進化!?
- 1.1INTEGRITY|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Those Who Fear Tomorrow|ゾーズ・フー・トゥモロゥ
- 1.1.2Systems Overload|システム・オーヴァーロード
- 1.1.3Humanity is the Devil|ヒューマニティ・イズ・ザ・デヴィル
- 1.1.4Seasons in the Size of Days|シーズンズ・イン・ザ・デイズ
- 1.1.5Integrity 2000|インテグリティ 2000
- 1.1.6Closure|クローザー
- 1.1.7To Die For|トゥ・ダイ・フォー
- 1.1.8The Blackest Curse|ザ・ブラッケスト・コース
- 1.1.9Suicide Black Snake|スイサイド・ブラック・スネイク
- 1.1.10Howling, for the Nightmare Shall Consume|ハウリング, フォー・ザ・ナイトメア・シャル・コンシューム
- 1.1INTEGRITYはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 1.1.10.1N.S.H.C黎明期の代表作は!?
- 1.1.10.2らしさ炸裂のオルタ・ゴシック路線のオススメは!?
- 1.1.10.3メタルテイスト濃厚な作品は!?
- 1.1.10.4変化球の異色作のオススメは!?
INTEGRITY|DISCOGRAPHY
Those Who Fear Tomorrow|ゾーズ・フー・トゥモロゥ
オリジナルアルバム – 1作目 (1991年)
同じN.S.H.C.のパイオニアとされる〈EARTH CRISIS〉にも先駆けた、N.S.H.C.の原点とも言えるデビューアルバム。
このジャンルの大きな特徴のひとつである、ドゥーム/スラッジ的なスローチューンも聴かせますが、基本的にはファスト・チューン主体のスラッシーなメタリック・ハードコア。
ヴォーカルはまだ絶叫型では無く、オーソドックスなシャウトを用いています。
スラッシュメタルやデスメタル、ドゥームメタル, ブラックメタルなどのエクストリームメタルにも通じるメタル的なダークな美意識は、〈AMEBIX〉などの一部のクラストコアにも通じるものです。
音楽面でだけでなく、それらの個性も含めたトータルで判断するならば、この時期のハードコア界隈のアルバムの中でも、とりわけアンダーグラウンドなヘヴィメタル的な美意識の濃厚な1枚といえます。
ジャケットアートには、ダークミュージック界隈で御用達のヒエロニムス・ボスの絵画を用いており、そのあたりからも、彼らの暗黒耽美嗜好の一端がうかがえます。
|ハーコー度:★★★★★
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|アイデア:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 通好み 実験作
Systems Overload|システム・オーヴァーロード
オリジナルアルバム – 2作目 (1995年)
スラッシーなストロング・スタイルのファストチューンをはじめ、アップテンポを中心に曲によってスローパートが織り込まれる作風については、前作から変化はありません。
ただし、軽く荒いローファイ気味のサウンドから、いくぶん音質が向上の兆しが見られ、厚みとヘヴィネスを増したサウンドになっています。
比重が増えたスローパートも、とってつけたような様式的なブレイクダウンではなく、楽曲に緩急をつける工夫として効果的に用いられています。
クラストコアの影響も感じさせつつも、彼ららしく一筋縄ではいかない作風で、曲展開はなかなか凝っておりプログレ的なエッセンスも見られますし、音響や不協和音を用いた変態サイケテイストも印象的。
また、メロディやギターソロについても、画一的なメタル様式風ではないユニークなセンスが光っています。
|ハーコー度:★★★★★
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|アイデア:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み 実験作
Humanity is the Devil|ヒューマニティ・イズ・ザ・デヴィル
ミニアルバム:EP (1996年)
1990年前後のスラッシュ/ハードコア/スケーターなどの界隈ででカリスマ的人気を誇り、〈METALLICA〉, 〈PRONG〉, 〈AMEBIX〉, 〈COCOBAT〉など多数のグループのアートワークも手がけた、カリスマ・イラストレーター、パスヘッドの手によるジャケットのミニアルバム。
曲はストレートな作風が多いものの粒ぞろいですし、ハードコア向きでもありボリューム過多でないシャイプされたミニアルバムという音もあって、ビギナーの入り口には最適の1枚と言えるかもしれません。
|ハーコー度:★★★★☆
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|アイデア:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤
Seasons in the Size of Days|シーズンズ・イン・ザ・デイズ
オリジナルアルバム – 3作目 (1997年)
基本的な作風は従来のものが踏襲されていますが、これまで以上に陰鬱なドゥーム/スラッジ的スロー展開が主張するようになったと同時に、ゴシックメタルなどからの影響による、ダークでメランコリックなテイストも加わりました。
この当時のメタリックハードコアとしては、かなり特異な個性を確立しており、現在のメタルコアからでさえなかなか感じることのできない、禍々しさ漂う暗黒美意識が強烈な印象を残します。
楽曲アベレージも極めて高くスキのない安定した出来栄えですが、ガツンとくるわかりやすさがやや薄れたことや作風と雰囲気の変化もあって、最初期からのリスナーにとってはやや評価が分かれるアルバムとなるかもしれません。
|ハーコー度:★★★★☆
|耽美度:★★★☆☆
|ヘヴィネス:★★★★☆
|アイデア:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Integrity 2000|インテグリティ 2000
オリジナルアルバム – 4作目 (1999年)
この時期は、N.S.H.C.の一部がニューメタルに接近して、その一環として表舞台に躍り出る動きが目立っていましたが、本作もある面ではその流れをくんだものです。
従来の作風の中にグルーヴメタル/ニューメタル系のモダンなエッセンスが織り込まれており、一方で、スラッシーなリフやギターソロなど、オールドスクールなメタル様式はかなり払拭されました。
楽曲はいくぶん整合感の強目の傾向が見られ、同時に音質も大幅に向上。シャープでソリッドなヘヴィネスを持った、同時代的なメタリック・ハードコアドに仕上がっています。
これを、トレンドに接近したとして低評価する傾向もありますが、実のところ基本路線はこれまで通りで、それほど極端な変化は見られませんし、クオリティも高水準をキープしています。
なお、2000年代突入を記念してか、バンド名も表題と同じ『INTEGRITY 2000』に改名されますが、1年とたたないうちに元の『INTEGRITY』名義に戻されました。
|ハーコー度:★★★☆☆
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★★★
|アイデア:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 実験作
Closure|クローザー
オリジナルアルバム – 5作目 (2001年)
インダストリアルな音づくりとなり、あわせてゴシックテイストがグッと強まったアルバム。
ただし、インダストアルとはいっても、当時のニューメタル世代の定番だったサイバー・メタル路線ではなく、初期のインダストリアル・メタルに見られたジャンクなノイズロック寄りのサウンドです。
初期のスラッシーなメタリック・ハードコアからは完全に脱却して、さらなる楽曲の多様化を推し進めた意欲作で、ノイズ/ジャンクロックに近いものから、ややダンサブルなインダストリアル曲、アトモスフェリックな耽美ゴシックや、〈TYPE O NAGATIVE〉風のヘヴィ・ゴシック・ナンバーも見られます。
加えて、カバー曲としてホラーパンクの大物〈MISFITS〉のロックン・パンク・チューンと、マイナーゴシック/デスロックの〈MIGHTY SPHINCTER〉のナンバーも含まれています。
楽曲の幅広さと多彩さを考えるなら、散漫に仕上がりになりそうなものですが、特徴的なジャンクサウンドによって不思議な統一感が保たれています。
|ハーコー度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|ヘヴィネス:★★★★☆
|アイデア:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み 実験作
To Die For|トゥ・ダイ・フォー
オリジナルアルバム – 6作目 (2003年)
前作のジャンクサウンドから、ヘヴィグルーヴ〜ニューメタルに近い一般的な音づくりとなり、実験色も後退してひかえめ。
作風は、ファストチューン中心にミッド〜スローを織り交ぜた初期に近いもので、興味のおもむくままいろいろと手を広げていたこの時期の彼らとしては、珍しくかなりシンプルなスタイルとなりました。
わかりやすいメタリック・ハードコア・サウンドを基本にしつつ、スラッシーなテイストやメタル的なギターソロも増えて、メタルクラスタにもアピールできるサウンドに生まれ変わっています。
それに加え、9曲で23分弱という潔いコンパクトなつくりも手伝って、一気に聴き通せる爽快な仕上がり。やや褒めすぎですが、INTEGRITYにとっての『Reign in Blood』とも呼べそうなアルバムです。
|ハーコー度:★★★★☆
|耽美度:★☆☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|アイデア:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
入門盤
The Blackest Curse|ザ・ブラッケスト・コース
オリジナルアルバム – 7作目 (2010年)
やや原点回帰に近かった前作から一転して、またまた大幅に作風を変えてきており、ここではデスメタルやスラッシュメタルにとどまらず、よりオーソドックスなヘヴィメタルに大接近しています。
曲の構成も、ヘヴィメタル/ハードロックそのものと呼べるものが増えており、本来のハードコアのイメージとの間の距離がこれまで以上に広がっています。
これは、この時期から現在に至るまでのメタル・コアシーン全体見られる傾向ですが、INTEGRITYもまた、ハードコアのステレオタイプからは、距離を置いたメタル寄りのサウンドを展開するようになります。
この“メタル色の強さ”は、N.S.H.C.の本来的な魅力とはいえ、そのバランスは個人的な好みに左右されるものです。
この時期のメタルコアと同様にほぼメタルと化してしまった作風は、初期のリスナーを含めたハードコア・ファンからは賛否が分かれるところでしょう。
|ハーコー度:★★★☆☆
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★★☆
|アイデア:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論
Suicide Black Snake|スイサイド・ブラック・スネイク
オリジナルアルバム – 8作目 (2013年)
前作に続いて、オーソドックスなヘヴィメタル・テイストが濃厚ではあるものの、クラスト/ファストコア系のハードコア・テイストも同時に強まったアルバムです。
その一方で、いわゆる“泣きのギタメロ”がいつにも増して大胆にフィーチャーされており、インストパートも多目にとられるなど、いつも以上にメタルギターの存在が目立っています。
また、耽美/叙情表現を、これまでのゴシック的なメソッドよりも、トラディショナルなヘヴィメタル様式に頼るなど、トータルでのメタル・テイストについては本作もかなり濃厚なものです。
|ハーコー度:★★★★☆
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|アイデア:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論
Howling, for the Nightmare Shall Consume|ハウリング, フォー・ザ・ナイトメア・シャル・コンシューム
オリジナルアルバム – 9作目 (2017年)
本作は、ベースとなるスタイルが前作にも増して多彩。メロデス/メロブラ/デスラッシュに接近した曲から、メタルコアの原点クラストやパワーメタルまで、バラエティに富んだ作風で飽きさせません。
それに加えて、いずれの場合も泣きまくりのメロディアスなギターソロが、これまた前作以上に大フィーチャーされており、保守メタラーも大号泣の仕上がりです。
また、久々にドゥーミィ/ゴシカルなスローチューンにも力が入っており、T-06やT-07などではダークでメランコリックな上質のダウナー・サウンドも聴けます。
取り立てて斬新な試みは見られませんが、安定のクオリティでアベレージも高めなので安心してオススメできる1枚です。
|ハーコー度:★★★☆☆
|耽美度:★★☆☆☆
|ヘヴィネス:★★★★☆
|アイデア:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論