Contents
- 1スウェディッシュ・ゴシックメタルの泡沫二軍から、“鬱”, “暗黒”, “退廃”などのワードが刺さるデプレッシヴ厨二世代のカリスマへと成り上がった、大器晩成の万年発展途上バンド!!
- 1...1デスメタルシーンから登場したポスト・デスメタル!?
- 1...2KATATONIAのが属する音楽ジャンルは!?
- 1...3KATATONIAの音楽性:耽美デス/ドゥーム期!?
- 1...4KATATONIAの音楽性:陰鬱ゴシック/プログレ期!?
- 1...5KATATONIAは遅咲きの大器晩成バンド!?
- 1...6上位が抜けて繰上げ的にトップグループへ!?
- 1.1KATATONIA|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Dance of December Souls|ダンス・オブ・ディセンバー・ソウルズ
- 1.1.2Brave Murder Day|ブレイヴ・マーダー・デイ
- 1.1.3Discouraged Ones|ディスカーレイジド・ワンス
- 1.1.4Tonight's Decision|トゥナイツ・デシジョン
- 1.1.5Last Fair Deal Gone Down|ラスト・フェア・ディール・ゴーン・ダウン
- 1.1.6Viva Emptiness|ビバ・エンプティネス
- 1.1.7The Great Cold Distance|ザ・グレイト・コールド・ディスタンス
- 1.1.8Night Is the New Day|ナイト・イズ・ザ・デイ
- 1.1.9Dead End Kings|デッド・エンド・キングス
- 1.1.10Dethroned & Uncrowned|デスローンド&アンクラウンド
- 1.1.11The Fall of Hearts|ザ・フォール・オブ・ハーツ
- 1.1.12City Burials|シティ・ベリアルズ
KATATONIA|DISCOGRAPHY
Dance of December Souls|ダンス・オブ・ディセンバー・ソウルズ
オリジナルアルバム 1作目 – (1993年)
数多のメロディ/耽美志向のエクストリーム・メタルを手がけるカリスマ、ダン・スウォノのプロデュースによるデビュー作。
スウォノはプロデュースだけでなく、メンバーとしてもキーボード兼ヴォーカルで参加しています。
音楽性は、英国系のゴシック・ドゥーム・デスを参照しつつも、センス的にはメロディック・デスメタル/ブラックメタルとの親和性が強い、初期の北欧ゴシックに多くみられた“ドゥーム・メロデス”とでもいったところ。
その作風からは、「ゴシックメタル路線をゆくかメロデスに手を伸ばすか悩み中」…といった思惑も透けて見えます。
全8曲のうち3曲が10分超というかなりの大作志向で、これらの長尺曲にはスウォノの作風に通じる傾向があり、「長尺を生かしきれておらず、コンパクトにシェイプした方が効果的」…というあたりまで共通しています。
アラも目立ちがちなアトモスフェア頼りの作風ではあるものの、そこにとどまらず試行錯誤を試みていることは評価に値します。
|ヘヴィ度:★★★★★
|耽美度:★★☆☆☆
|プログレ度:★★★★★
|独自性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Brave Murder Day|ブレイヴ・マーダー・デイ
オリジナルアルバム 2作目 – (1996年)
引き続き“ゴシック・ドゥーム meets メロデス”な作風ですが、前作を踏襲しつつも音楽性の幅はやや広がり、曲によっては、当時のPARADISE LOSTの影響受けたような耽美的なメロディも見られます。
その一方で、T-03のように後の“鬱メタル”路線へとつながる、独自のダークでメランコリックなセンスも確認できます。
相変わらずアトモスフェアだよりで曲が弱く決定打を欠いているとはいえ、部分的に印象に残るパートやフレーズもあり、クオリティとオリジナリティは確実に向上。
また、大作趣味の楽曲も健在ですが、全体的にはいくぶんシェイプされ、冗長さが減ってコンパクトにまとまっています。
前作を延長上としては、あらゆる面でブラッシュアップが見られる上々の出来栄えなのですが、問題は、同輩のゴシックメタル勢の多くが、この時期にはすでに明確な個性を確立し、先鋭性でも完成度でもはるか先のステージに到達していたことで、それを考えるとどうにも足踏み感が拭えません。
なお、ここではサポートヴォーカルでOPETHのミカエル・オーカーフェルトが全面参加。
ダン・スウォノは引き続き、セッションメンバーとエンジニアを務めています。
|ハード度:★★★★☆
|メロディ:★★★★☆
|大作度:★★★★☆
|マニア度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み 実験作
Discouraged Ones|ディスカーレイジド・ワンス
オリジナルアルバム 3作目 – (1998年)
メタルエッジなサウンドは健在ながらも、これまでのドゥーミィなヘヴィネスは薄れており、デスヴォーカルも封印してクリーンヴォイスのみとなり、完全にデスメタル色を払拭。
PARADISE LOST, ANATHEMA, TIAMATらに倣って80年代ニューウェイヴ/ポストパンクのエッセンスを取り入れつつ、さらに90年代のメランコリック系オルタナティヴ・ロックにも接近した、メロウなゴシックメタル・サウンドへと移行しています。
アプローチに取り立てて新鮮味は見られないものの、メロディについてはかなり独特のセンスが見られ、それを武器にしたアトモスフェリックなサウンドで、フォロアーの中で頭ひとつ飛び抜けた存在となりました。
後に、“陰鬱系”,“デプレッシヴ系”,“メランコリック系”などと表現されるようになる、現在まで続くスタイルの基礎もここで確立されたと言えます。
問題は、バンドに対するよほどの“愛”がない限り、ほとんどの曲が同じに聴こえてしまうことでしょう。
初期では数少ない、ダン・スウォノが完全ノータッチのアルバムです。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★★☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|独自性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
殿堂入り 入門盤 賛否両論 スルメ盤
Tonight’s Decision|トゥナイツ・デシジョン
オリジナルアルバム 4作目 – (1999年)
基本路線については前作から大きな変化はありませんが、1曲ごとに明確な個性付けを行おうとする意思はうかがえます。
その試みについては、完全に成功を収めているとは言えないのが残念ですが、PARADISE LOSTからレンタルしたアイデアを存分に活用したことで、聴き手に印象を残す楽曲もいくらか増えており、特に、時折切り込んでくるギターのフレージングやソロパートなどには、その影響と効果が多分に見られます。
問題は、アルバム中で突出したT-03やT-07といった楽曲が完全にPARADISE LOST風の曲調、他はジェフ・バックリィのカバーT-10が原曲の良さを見せている程度…と、それ以外の比較的KATATONIカラーが見られる楽曲が軒並み低調で、全くと言っていいほど冴えが見られないことでしょう。
アルバムトータルとして判断するならば、曲単位の印象ではまるで際立ったところの無い前作の方が、むしろ好印象と言えるほどです。
ダン・スウォノは、セッション・メンバーとしてドラムを担当。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★☆☆☆☆
|独自性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤
Last Fair Deal Gone Down|ラスト・フェア・ディール・ゴーン・ダウン
オリジナルアルバム 5作目 – (2001年)
まるで“キュアダイス・ロスト”といった風情のT-07は、それなりに印象に残る曲ですが、その他の楽曲については、バンドに対するよほどの“愛”がない限り、ほとんどが同じに聴こえてしまうことでしょう。
|ヘヴィ度:★★☆☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★☆☆☆☆
|独自性:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤 実験作 お布施
Viva Emptiness|ビバ・エンプティネス
オリジナルアルバム 6作目 – (2003年)
ここにきて、イギリスのPORCUPINE TREEや同郷のANEKDOTENに代表される、モダンプログレ路線に活路を見出したようで、ゴシックメタル路線にいくぶんプログレテイストを取り入れた作風に移行。
このあたりからは、変則的なリズムや展開を用いて、プログレ的と評された最初期の長尺ドラマティック路線とは、また異なったプログレ・アプローチを展開するようにります。
そのアプローチの一環で、ヘヴィ・パートとメロウ・パートを織り交ぜて緩急をつけた曲が増えた結果、直近の作品と比較するとヘヴィネスの度合いが多少アップしています。
レンタルの多い最大公約数的な音楽性は相変わらずですが、現在進行形で独自のスタイルの確立と多様性の獲得を試みている意気込みは端々に感じられ、その点だけは評価に値します。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|独自性:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 スルメ盤 実験作
The Great Cold Distance|ザ・グレイト・コールド・ディスタンス
オリジナルアルバム 7作目 – (2006年)
前作同様のプログレ色強めな作風で、本格的にPORCUPINE TREEやANEKDOTENなどのダークな新世代プログレを追求しており、KATATONIAのモダンプログレ路線としては、ひとつの決定盤と呼ぶに値するアルバムです。
本作においては、おそらく世界観や美意識的に共感する面が多いと思われる、米国の陰鬱系メタル/ダークプログレの代表格TOOLを意識した部分も目立ち、トリッキーなリズム・ワークなどにその影響が現れていますが、この新しい血を取り入れる試みは、まずまず成功していると言っていいでしょう。
相変わらずオリジナリティと楽曲面での決め手には欠けていますが、そこにさえ目をつむることができればば、中堅ゴシックメタルとしてはトップ水準に達した、魅惑的なメランコリック&ダーク・サウンドを楽しめます。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★★★☆
|独自性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤 実験作
Night Is the New Day|ナイト・イズ・ザ・デイ
オリジナルアルバム 8作目 – (2009年)
前作から一転して、トリッキーなリズムや変則的な曲展開などのプログレ的なアプローチよりも、北欧ゴシックメタル/耽美メタル的な様式と、アトモスフィアを重視した作風となりました。
また、TOOLインスパイア的なアプローチを試みた名残があるのか、ヘヴィな曲の中にはニューメタルにも通じるようなリフワークやフレージングが見られます。
なお、内包する各ジャンルの含有比率としては、《北欧ゴシックメタル70%、ダークプログレ10%、TOOL系モダンプログレ10%、ニューメタル10%》…というところ。
結果的に、前作で覚醒しつつあった音楽性のユニークさは半減し、独自性は後退してしまいましたが、冒頭2曲とラストの曲だけならばなかなの出来栄えといえます。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|独自性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤 実験作
Dead End Kings|デッド・エンド・キングス
オリジナルアルバム 9作目 – (2012年)
音楽スタイルや方向性については、前作から特に大きな変化は見られません。
アベレージについてはいくらか向上が見られますが、耳を引く曲がわずかにT−05程度であり、突出した曲が皆無に近いというウィークポイントは相変わらず解消されずじまいです。
そのため、個々の楽曲を個別に味わうというよりもアルバム単位で捉える、アルバム・オリエンテッドな作風と考えた方が、ストレスや違和感は少ないかもしれません。
「アルバム1枚全編を通してアトモスフェアを堪能する聴き方がベター」…というような、聴き手側の割り切りや忖度が必要となるため、評価や好みが分かれるのは止むを得ないところでしょう。
それでも、チャート的にはキャリア中最高位を記録し、代表作にあげられることも多いアルバムとなっています。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|独自性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 スルメ盤
Dethroned & Uncrowned|デスローンド&アンクラウンド
オリジナルアルバム 10作目 – (2013年)
“Dead End Kings(9th)”のアコースティックバージョン。
元の作品自体が、楽曲本来のメロディや歌、あるいは展開や起伏で勝負する作風ではなく、原曲自体が個々の曲を単体で聴くと印象に残らないため、その傾向がより一層が強まって、ただフラットに流れていくだけに終わっています。
|ヘヴィ度:★☆☆☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|独自性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤 実験作 お布施
The Fall of Hearts|ザ・フォール・オブ・ハーツ
オリジナルアルバム 10作目 – (2016年)
過去にも見られたダーク・プログレ寄りの作風ですが、ここに来て、その路線でのこれまでの最高峰『The Great Cold Distance(7th)』に匹敵するか、上回るほどのグレードに達したアルバムをドロップし、遅咲きバンドの尻上がりぶりを見せてきました。
ヘヴィなダーク・プログレメタルという意味では以前と変わりはありませんが、同時代的なオルタナ・プログレ/モダン・プログレ的なスタイルは後退しており、旧来の、よりオーソドックスなヘヴィメタル/ハードロック、プログレッシヴ・ロック/メタルのテイストが、大きく勝っている印象です。
技巧面でも、モダンなテクニカル・スタイルより、オールドスクール・プログレ風の技巧路線が目立ちますが、そのあたりの王道と革新のブレンドの塩梅は、なかなか絶妙な味わいを醸し出しています。
また、これまでになくヘヴィメタル的なダイナミズムが強調されていることもあり、アトモスフィア重視のゴシック系サウンドに抵抗があった、一般メタルリスナーにも聴きやすいアルバムと言えるでしょう。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★★★☆
|独自性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
City Burials|シティ・ベリアルズ
オリジナルアルバム 11作目 – (2020年)
プログレ的な、トリッキーでテクニカルな要素はかなり減退し、ロック/メタル的な躍動感とダイナミクスがより一層強化されており、その意味では前作以上に一般メタルリスナーにも聴きやすいアルバムとなりましたが、反面、変則的なプログレサウンドを期待したリスナーにはやや肩スカシかもしれません。
もろもろを考慮すると、総合的には前作に及ばないもののなんとか肩を並べられる出来栄え…というところですが、曲調が多彩で変化に富んでいるため、アルバム全編にわたって飽きずに聴き通すことができます。
そんな中で気になるのは、彼らについてまわる“借り物の集大成”感がいつにも増して目立つ点。
例えるなら、「美味しい出来合いの料理を仕入れてアレンジし、見栄え良く盛り付けたカフェめし」…という印象。
ただし、仕入れの目利きは確かで、繊細な盛り付けだけでも金が取れるレベルにはあり、また、一応オリジナルのソースや付け合わせ, トッピングなどで一手間かけている…といったところでしょう。
このあたりが、非常に高水準な作品でありながらも、手放しでは絶賛出来ない要因となっています。
ちなみに本作は、スウェディッシュ・ゴシックメタルの盟主TIAMATのラストアルバムに参加していた、 ロジャー・オイェルソン(Gt.)加入後の最初のアルバムとなります。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|耽美度:★★★☆☆
|プログレ度:★★☆☆☆
|独自性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 賛否両論