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【Wikiに無い!】ドゥームメタル紹介:基礎知識&関連ジャンル 編【ビギナー必見・必聴|ヘヴィメタルジャンル徹底解説】

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90年台エクストリームメタルシーンが生んだウルトラヘヴィでスロー&ダウナーな暗黒音楽ドゥームメタルとは?

ドゥームメタルのルーツはBLACK SABBATH(ブラックサバス)

ドゥームメタルの“ドゥーム”とは「破滅」とか「(ネガティブな)運命」といった意味のワード。

ヘヴィメタルの元祖でドゥームロックとも呼ばれていた第1期BLACK SABBATH(ブラックサバス)の音楽性を、現代的に再解釈することで生まれた英国発の音楽です。

引きずるようなウルトラヘヴィなリフを基調に、スロー〜ミドルテンポ中心として重量感,ダウナー感とおどろおどろしいイメージを追求したサウンドが特徴。

近い音楽性を持つ近縁ジャンルとして、ストーナーロック,スラッジコア,70年代リバイバル系などがあり、英国以外でも米国や北欧を中心に盛り上がり互いに影響を与えていました。

ドゥームメタルの誕生とムーヴメント初期の主流サウンド

ドゥームメタルは80年代から存在した?

現在ドゥームメタルとしてカテゴライズされるバンドには、80年代から活動を続けるバンドも多数存在しています。

代表的なものとしては、英国のWITCHFINDER GENERAL(ウィッチ・ファインダー・ジェネラル)ANGELWITCH(エンジェルウィッチ)、アメリカのTROUBLE(トラブル)PENTAGRAM(ペンタグラム)SAINT VITUS(セイント・ヴァイタス),スウェーデンのCANDLEMASS(キャンドルマス)STILLBORN(スティルボーン)、日本の人間椅子などが挙げられます。

これらは今ではドゥームレジェンドとして崇められ名前も広く知られているため、80年代の頃から90年代〜現在のようなドゥームメタルシーンがあったと認識しているリスナーもいますが、これは事実と少々異なります。

80年代のドゥーム系には、ひとつのムーヴメントを巻き起こして新たなカテゴリーとして成立するほどのバンド数もなければ勢いもなく、各地でドゥーム的な“BLACK SABBATHインスパイア系”サウンドを志すバンドが単発的に登場してマニアに愛でらるにとどまっていたのです。

確かに『ドゥーム』と言うキーワード自体は当時から用いられケースもありましたが、今に至るムーヴメントとしてのドゥームメタルは、あくまでも1990年代前半にデスメタル/グラインドコアから枝分かれしてポストデスメタルの流れのひとつとして生まれたものなのです。

ドゥームメタルはデスメタルから生まれた?

80年代から続くドゥーム系サウンドと90年代に登場したドゥームメタルは、今でこそサウンドの共通点も多く同列に括られがちですが当初は大きく異なるものでした。

最も大きな相違点は、80年代ルーツドゥームの主流である’70年代ヘヴィロックや初期のヘヴィメタル/NWOBHMの直接的な延長線上にある音楽性に対し、90年代に黎明期のドゥームサウンドの多くは、デスメタルをはじめとしたスラッシュメタルを経由したエクストリームメタルのメソッドで再構築したものだったということです。

これは、90年代ドゥームメタルムーヴメントの創始者であるCATHEDRAL(カテドラル)が、グラインドコア/デスメタルシーンと直結したバンドであり、ウルトラスローなデスメタル寄りのスタイルからスタートしていることも大きな理由です。このことから当初のドゥームメタルというジャンルは、主にデスメタル系サウンドのままテンポを極端に落としたドゥームデススタイルの音楽を指すものでした。

またその動きには、この時期すでにスピード追求型のオーソドックスなデスメタルは、多くのバンドによってその手法を極められて洋式化/形骸化が進行しており、そのカウンターのひとつとして、スローテンポで重さを強調したスタイルも増えていたという背景も関係しています。

また、のちにゴシックメタルの中核を担うPARADISE LOST(パラダイス・ロスト)ANATHEMA(アナシマ)なども、その初期のサウンドはドゥームデスをベースにしており、“耽美派ドゥームデス”,“ゴシック・ドゥーム・デス”などと呼ばれていました。

パイオニアCATHEDRALとムーヴメントの最高功労者リー・ドリアン

ドゥームメタルというジャンルを確立させ初期のムーヴメントとシーン活性化に尽力した創始者にして最大の功労者が、英国のバンドCATHEDRALとその中心人物のリー・ドリアン(Lee Dorrian)

このCATHEDRALは、グラインドコアバンドNAPALM DEATH(ナパーム・デス)の初期メンバーとして、“最速エクストリーム”を極めたリー・ドリアンが脱退後に結成したバンドで、80年代の“BLACK SABBATHインスパイア系”とは一線を画した、エクストリームメタル時代のドゥームサウンドを作り上げてドゥームメタルというジャンルを確立させた、まさにドゥームメタルのオリジネイターにして代名詞というべき存在。

CATHEDRALはその後も音楽性をアップデートさせながらドゥームメタルシーンを牽引し続けますが、彼らの功績はそれだけだけにとどまりません。

リー・ドリアンは、自らのレーベルRISEABOVE(ライズアバヴ)を立ち上げてドゥームシーンに多くの新人バンドを送り出した他、80年代の先駆的ドゥームバンドを取り上げてリスペクトを示すことで、彼らにもスポットライトを当てて再評価を押し進めました。
まさに、今に至るドゥームメタルムーヴメントの仕掛け人でもあり、ドゥームメタルの歴史の生き証人でもある最重要人物です。

3大ダウナーヘヴィミュージック…ドゥーム/ストーナー/スラッジ

ドゥームメタルとストーナーロックは何が違うの?

ドゥームとストーナーの違いは門外漢にはなかなか理解しづらいものです。それどころか愛聴しているリスナーですらその境界線の定義は曖昧で、カテゴリーの解釈にも個人差があることが珍しくありません。

ドゥームメタルとストーナーロックは90年代に登場したBLACK SABBATHら70年代ヘヴィロックやヘヴィサイケ,ヘヴィブルーズの現代的な再解釈サウンドという点では共通していますが、バックグラウンドや登場した経緯が大きく異なります。

ドゥームメタルは前述の通り、英国を中心とした欧州のエクストリームメタルシーンから生まれ、デスメタル/グラインドコアをバックグラウンドとしたポストデスメタル的なムーヴメントで、音楽的には本来ドゥームデスがベースとなっており、そこにブリティッシュロックやプログレッシヴロックの影響が濃い欧州的な陰鬱さを強調したスタイルが主流でした。

それに対して米国で発生したストーナーロックは、大元のルーツこそドゥームメタルと共通していますが、デスメタルやグラインドコアではなくグランジ,オルタナティヴロック,グルーヴメタルが直接的な源流となっています。
そのため、グランジが受けたガレージロックやパンク/ハードコアなどからの影響を色濃く受け継ぐものも多く、ロックンロール色の強い楽曲も目立ちます。

多くの場合、英国/欧州的な叙情性や湿り気はあまり感じられず、大陸的/開放的で乾いた質感が強い傾向があり、またストーナーというジャンル名が示すようにサイケデリックな酩酊感の表現や再現を重視しているのも特徴的です。

ストーナーロックが内包する音楽性はドゥームメタルよりもはるかに多様性に富んでいて、ドゥームメタルに近い感触を持つものからルーツロック系,サイケポップ系まで、かつてのサイケミュージック同様に様々なスタイルが混在していました。

ドゥームメタルとストーナーロックの邂逅!

当初、ドゥームメタルとストーナーロックは時期を同じくして英国と米国から登場した似て非なるジャンルという位置付けでした。

しかし、ドゥームシーンを牽引するCATHEDRALがエクストリームでグルーミィなサウンドから、レイドバックしたグルーヴやサイケデリアを重視したレトロ感も強いロッキンな作風に移行。単なる“BLACK SABBATHインスパイア”という枠を超えて、もっと幅広い60~70年代の音楽…ヘヴィブルーズ,サイケロック,アートロック/プログレetcといったサウンドまでも取り入れるようになります。

トレンドリーダーたるCATHEDRALの影響力が大きかったことと、彼らがその地位に恥じない名作を続けざまにドロップしたことから、多くのフォロアーたちもこれに追従し同様のスタイルが一気に増殖。その結果ドゥームシーンの主流サウンドは、ストーナーロックに大きく接近してゆきます。
この動きには一長一短があり、ドゥームメタルというジャンルが内包する音楽性が広がった反面、エクストリームメタルをルーツにしたドゥームメタルならではの独自性が薄れることにもなります。

実際に、様式美メタルでもあるエピックドゥームや、ドゥームデス時代のゴシックメタルを再現したフューネラル・ドゥームといったメタル色の濃いスタイルが勢いを増してくるまでは、ドゥームメタルはストーナーロックの下位ジャンルに近いポジションに落ち着いていました。

現在ではそれらの特にメタル色の強いスタイル以外は、ストーナーロックとのクロスオーバーが進んで明確な境界線の無いグラデーション状態となっています。

ストーナーロックに影響を与えたUSルーツロックリバイバル

ストーナーロックが、グランジの影響下にもあることは前項でもふれました。それについてはのちに詳しく解説しますが、ストーナーロックに対する影響としてもうひとつ忘れてはならないのが、1990年前後のUSルーツロックリバイバルです。

さらに、80年代から英米のシーンで見られたオルタナティヴ/ニューウェイヴ文脈でのサイケリバイバル、ネオサイケ/シューゲイザーなどの一連の流れも、これらのルーツロック系やグランジと絡み合ってストーナーロックにつながっています。

これらはグランジと同時発生的に活発化し双方向に影響を与えたムーヴメントで、中にはグランジ同様ストーナーテイストを持ったグループも存在していました。付け加えるなら、PHISHらのUSルーツ系ジャムロックの新世代もこの流れの一環とも言えます。

中でも見逃せないのが、名ブロデューサーリック・ルーヴィンが自らのレーベルデフ・アメリカン(当時)から送り出したルーツアメリカン系ヘヴィロックバンドたち。

その代表格は、ルーツロックリバイバルの代表格としてメインストリームに登りつめたBLACK CROWS(ブラック・クロウズ)ですが、USドゥームの雄TROUBLE(トラブル)もそのひとつで、彼らはリック・ルーヴィンと組んだことで音楽性を大きく広げストーナーシーンのカリスマ的存在になります。

MASTERS OF REALITY(マスター・オブ・リアリティ)は中心メンバーのクリス・ゴスKYUSS人脈のプロデュースを手がけるなど、ストーナー/デザートロックシーンと縁が深いことでも知られていますし、元MISFITSグレン・ダンジグのバンドDANZIGは、この時点でドゥーム,ゴシック,デスロック/デッスンロールなどの要素を持ったヘヴィロックを生み出した、まさに先駆者たる存在です。

スラッジコアは我が道を行く?

スラッジコアは、ドゥームメタル/ストーナーロックと同時発生的に登場した近似ジャンルで、わかりやすく言えばデスメタルに対するグラインドコア、ニューメタルに対するメタルコアのような存在。以前はスラッジコアと呼ばれていましたが、近年ではスラッジメタルと呼ばれることもあるようです。

基本的には引きずるようなヘヴィリフを主体とした叙情性が薄いドゥームデスに近いサウンドですが、日本でジャンクロックとも呼ばれるUNSANE(アンセイン)16(シックスティーン)、さらにSWANS(スワンズ)MELVINS(メルヴィンズ)TAD(タッド),初期HELMET(ヘルメット)などのヘヴィオルタナティヴロックからの影響も濃厚に感じられ、それを反映して音質はよりラフで生々しいものでノイズ的なアプローチも見られます。

シーンのパイオニア勢にEYE HATE GOD(アイ・ヘイト・ゴッド)らニューオリンズ出身のバンドが多いことから、活動拠点が近いPANTERA(パンテラ)らのサザングルーヴメタル勢とも互いに影響を与えあっていますが、概ねメタル的な整合感やメタルエッジな質感は希薄です。

スラッジコアは、その登場時からドゥームともストーナーとも微妙な距離を置いた独自のポジションを確立しており、音楽性についても良くも悪くもブレがなく大きな変化もありませんでした。
しかし、近年では前記したヘヴィオルタナティヴロック/ヘヴィグルーヴ勢を、後付けで便宜的に再編成するためのキーワードとして“スラッジメタル”のワードが用いられることが多くなり、かつてのスラッジコアとはやや様相を呈したジャンルになっています。

ドゥームメタルの主要サブジャンル&関連ジャンル紹介は次ページへ!

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