ドゥームメタル黎明期にヨーロッパ暗黒エクストリームサウンドの聖地スウェーデンがから登場した、BLACK SABBATHインスパイアに全てを捧げた“サバスクローン”マエストロ!!
COUNT RAVEN(カウント・レイヴン)は、90年代の際初期にアルバムデビューを果たしたスウェーデンのドゥームメタルバンド。
スウェーデンは80年代ドゥームを代表するビッグネームCANDLEMASSの存在もあってか、ドゥームメタルムーヴメントが隆盛を迎える以前から、いくつかのドゥーミィなヘヴィロックバンドを排出してきましたが、COUNT RAVENもまたその中のひとつ。
スウェディッシュバンドながら、同郷のCANDLEMASS風の“エピックドゥーム(様式美メタル系ドゥーム)”サウンドではなく、80年代の米国ドゥームシーンに多い初期BLACK SABBATHのサウンドそのものに幾ばくかのローカライズ/カスタマイズを施したような、“トラディショナルドゥーム”と呼ばれるスタイルが特徴でした。
エクストリーム系モダンドゥームサウンドのオリジネイターCATHEDRALとはほぼ同期にあたり、作風こそオールドスクールではあるものの、そのCATHEDRALのリー・ドリアンが中心となって牽引した90年代ドゥームメタルムーヴメントの一翼を担っていました。
“トラディショナルドゥーム”の肩書きの通り、当時の新世代バンドとしてはCATHEDRALらエクストリームミュージック経由組のような新規性がほとんど見られない作風が特徴で、現代的な再構築が行われていないクラシックな作風とオジー・オズボーンの影響が強すぎるヴォーカルスタイルが相まって、安易な“BLACK SABBATインスパイア系”バンドを揶揄する『サバスクローン』という揶揄的な呼び方をされることもあります。
初代ヴォーカリストのクリスチャン・リンドバーグ(Christian Linderson)は、そのオジースタイルのヴォカルが買われて、80年代アメリカドゥームの立役者でトラディショナルドゥームのリビングレジェンドと呼ばれるSAINT VITUSにスカウトされて一時在籍、アルバム1枚に参加しています。
ドゥームメタルムーヴメントの収束とともに1998年にはその活動に幕を下ろしますが、2003年には解散時のメンバーで活動再開。その後あいつむメンバーの脱退でオリジナルメンバーはフォディーことダン・フォンデリウス(Dan Fondelius)一人のみとなってしまいますが、現代的な質感のサウンドメイクで心機一転した新作アルバムもリリースし、現在も活動を継続しています。
COUNT RAVEN|DISCOGRAPHY
Storm Warning|ストーム・ウォーニング
オリジナルアルバム – 1作目 (1990年)
初期BLACK SABBATH風のヘヴィリフを用いた楽曲ににオジーオ・ズボーンを意識した鼻声脱力ハイトーンヴォーカルという、まさに80年代USシーンに目立った“サバスインスパイア系”スタイル。しかし、同じ陰鬱なダウナー系ヘヴィロックであっても、US系の大陸的な埃っぽさを持ったサウンドとは大きく異なり、欧州的な湿度の高さとゴシックメタルにも通じる繊細な美意識が滲み出しています。
それらの持ち味ややリンドバーグのギターソロやメロディなど非凡な独自性も見られるのですが、彼らとして実はは芸風が乏しいサバス系ドゥーム様式にこだわりすぎて、ポテンシャルを生かしきれていない印象があります。ヴォーカルのオジーなりきり度も2nd以降に比べればおとなしいもので、この時点まだいくらか地声に近い個性を残されてています。
暗黒度:★★★★☆|サイケ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
Destruction of the Void|デストラクション・オブ・ザ・ヴォイド
オリジナルアルバム – 2作目 (1992年)
CTHEDRALの衝撃的なデビューとドゥームメタルムーヴメントの胎動も影響してか、自分たちの独自性を伸ばすどころかその逆で、前作以上にBLACK SABBATH系ドゥーミィサウンドにこだわった作風となりました。
ストレートな“BLACK SABBATHインスパイア系”の中では、極上ランクに位置する高品質なアルバムではあるのですが、それを“サバスクローン”, “サバスワナビー”断じるならは評価に値しないものにもなります。
シーンの中で存在感を見せるなら、スペーシーなインストT-05やスラッシーなファストナンバーT-09のようなアプローチで多様性を持たせるか、独自性を有効に活かしたドゥーム再構築を目標とするべきでした。それが叶わなかったためどこまでもニッチなポジションに終わってしまったとも言えます。
当時は全く売れもせず注目もされませんでしたが、ドゥーム黎明期では数少ない日本盤リリースされたアルバムでもあります。
暗黒度:★★★☆☆|サイケ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
High on Infinity|ハイ・オン・インフィニティ
オリジナルアルバム – 3作目 (1993年)
ジャケットは印象が変わったもののサウンドは相変わらずで、いまだにBLACK SABBATHそのままの楽曲も目立ちますが、いくぶん作風に広がりが見られるようにもなりました。インストやSEに近い楽曲伊波これまで通り独自性を持ったものですし、ドゥームナンバーにもややSABBATH度低めの楽曲も見られます。T-01などはインスパイアされたか偶然か同時期のUKダウナーヘヴィロックバンド、THE GOD MACHINEあたりに近い印象があります。
オジースタイルのヴォーカルさえあらためれば、印象は大きく変わりそうなのですが、もっともバンドの方にBLACK SABBATクローン路線を根本的に払拭するつもりが更々ないようで、そこはもう割り切るしかないでしょう。
暗黒度:★★★☆☆|サイケ度:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
Messiah of Confusion|メサイア・オブ・コンフューション
オリジナルアルバム – 4作目 (1996年)
前作からさらに雰囲気一変した、ストーナーロックを想起させるようなサイケデリックなジャケット(現在は初期に近いイメージに差し替え)が期待をそそりますが、大枠の作風に格段の変化はわありません
USストーナーの代表格SLEEPを思わせるフレーズや、ストーナー風のグルーヴを感じさせる楽曲もありますが、BLACK SABBATH風曲には本家そのものと言えるようなリフやフレーズも見られます。
しかし、やはりネックになるのが“なりきりオジー風ヴォーカル”で、このおかげでBLACK SABBATHの呪縛から逃れられずにいます(そのつもりもないのでしょうが…)。
T^10はBLACK SABBATHのカバーメドレーで、彼らの差楽曲にたびたび流用されるリフやフレーズの元ネタが聞けます。
暗黒度:★★☆☆☆|サイケ度:★★★☆☆|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤
Mammons War|マンモス・ウォー
オリジナルアルバム – 5作目 (2009年)
オジー系ヴォーカルスタイルを含めた基本的な音楽スタイルに変化はないものの、音作りが以前の70年代ヘヴィロックを意識したくぐもったオーガニックサウンドから、同時代的なメタルエッジなサウンドへと変貌を遂げており、同時期のザック・ワイルドのソロ作品をヨーロピアンに仕上げたような印象もあります。
音作りの変化については賛否あるでしょうが、結果的にこれまでSABBATHクローンイメージの陰に隠れていた、彼ら本来のメランコリックなメロディセンスや、ゴシックにも通じる欧州的美意識などの独自の持ち味が輝きを増しており、その意味では過去最高の仕上がりと言ってもいいでしょう。
暗黒度:★★☆☆☆|サイケ度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作