ブルータルデスメタルからインダストリアルメタルまで作品ごとに先進的な作風を極め実験的なジャーマンデスメタルの代表格としてシーンをリードしつつも歴史の影に消えた通好みな名バンドの復活後の展開は!?
ドイツは英国や北欧を除く欧州デスメタルの主要国に含まれますが、スラッシュメタル全盛期の時点で既にHOLY MOSES(ホーリィ・モーゼス)やPROTECTOR(プロテクター)といった、デスメタルに匹敵するブルタリティを有していたデスラッシュ/プレデスメタルとも呼べるグループをいくつも輩出していたこともあってか、デスメタルムーヴメント全盛期にはそれほど新規グループが続出することなく、なんとなく第三勢力に甘んじていました。
MORGOTH(モーゴス)そんな中で、ATOROCITY(アトロシティ)と並んで期待の新鋭として気を吐いていた、数少ないデスメタルジェネレーションに属するジャーマンデスメタルグループです。
初期のシングル主体で活動していた時期は、ややチープとも言える比較的オーソドックスなスタイルのブルータルデスメタルを追求していましたが、そこから試行錯誤を重ね、デビュー作ではゴシック的な欧州暗黒耽美趣味をまとった独自の禍々しくもスタイルッシュなデスメタルを完成させ、類型的なデスメタルサウンドやアイデアにセンスが伴わない愛すべきB級に飽きてきていた先鋭的なリスナーの注目を集めます。
その後もアルバムごとに新たな試みにチャレンジして作風を大きく変化させてゆきますが、フルレンス3作目にして完全にデスメタルから脱却して本格的なインダストリアルメタルへと変貌を遂げます。
これがデスメタルリスナーには不評だったこともが祟ってかそのまま活動停止となりましたが、00年代のスラッシュリバイバルを経て続きざまオールドスクールスラッシュリバイバルの機運が高まったことを追い風に活動再開。
ベストアルバムや再結成ライヴアルバムに続いて新作オリジナルアルバムもリリースして、現在も活動継続中です。
MORGOTH|DISCOGRAPHY
Pits of Utumno|ピッツ・オブ・ウトゥムノ
デモ (1988年)
Resurrection Absurd|リザレクション・アブザード
ミニアルバム (1989年)
ストレートな突進型デスメタル路線で、楽曲は荒削りで音質もよくありませんが、米国系とも北欧系ともひと味異なる個性を持った基本的な作風はこの頃から完成されており、完成度にムラはあるものの曲によってはかなり輝きを見せてくれます。
オルタナ度:☆☆☆☆☆|アート度:☆☆☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 通好み
The Eternal Fall|ジ・エターナル・フォール
ミニアルバム (1990年)
音楽性からジャケットまで前作と全く同路線で、現在ではその2作のスプリットでよくリリースされています。音質がやや向上した印象もありますが、大きな変化や進化はありません。
オルタナ度:☆☆☆☆☆|アート度:☆☆☆☆☆|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 通好み
Cursed|カースド
オリジナルアルバム – 1作目 (1991年)
基本的にはこれまで同様ブルータルなオールドスクールデスメタルですが、洗練と進化を経て驚くほどの成長を遂げました。さらには、イントロ/アウトロや部分的なフレーズを含めた演出により、ゴシック的な欧州暗黒趣味ただよう美意識にあふれた作風に変化しています。ただし、ゴシックメタル化したわけではないので注意。
アートワークも、これまでのいかにもなB級悪趣味グロホラー系から耽美的で洗練されたなものとなり、完全に生まれ変わったことを表しています。
オルタナ度:★★☆☆☆|アート度:★★★☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 実験作
Odium|オディウム
オリジナルアルバム – 2作目 (1993年)
前作から一転して耽美的なデコレーションを取り払った作風。彼らやENTOMBEDなどオールドスクールなデスメタルパイオニア世代にポストデスメタルを目指す流れが目立った時期で、オールドファンからはおおむねブーイングで迎えられましたが、この作品も同様です。
インダストリアル風のハンマービートが入ったり、ハードコアな質感やグルーヴを感じさせるなどの変化も見るられますが、基本的な作風はこれまでを踏襲したもので完成度も前作に劣らぬ見事なものであり、過小評価デスメタル作品の代表例のひとつと言っていいアルバムですが、近年ではやや再評価の気配もあります。
オルタナ度:★★★☆☆|アート度:★★☆☆☆|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み 実験作
Feel Sorry for the Fanatic|フィール・ソーリィ・フォー・ザ・ファナティック
オリジナルアルバム – 3作目 (1996年)
KILLING JOKEを想起させる完全なインダストリアルメタルへと変貌を遂げ、オールドファンを唖然とさせた作品。メタル保守のアレルゲン反応が現れただけの前作はともかく、本作の評価が割れるのは仕方のないところですが、クオリティは申し分ないにもかかわらず新たなファンを開拓することはかないませんでした。
オルタナ度:★★★★★|アート度:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
1987-1997: The Best of Morgoth|ザ・ベスト・オブ・モーゴス
ベストアルバム (2005年)
Cursed to Live|カースド・トゥ・ライヴ
ライヴアルバム (2012年)
彼らの代表作のタイトルを冠した再結成後のライヴアルバムで、ジャケットもそれを意識したデザイン。確かに名盤Cursedのを中心としたセットリストなのですが、T-01〜04までの流れのみCursedと同じでなだけでアルバム完全再現というわけではありません。
God Is Evil|ゴッド・イズ・イーヴル
シングル (2014年)
Ungod|アンゴッド
オリジナルアルバム – 4作目 (2015年)
スラッシュ/デス系のリユニオン/再結成アルバムは、最大公約数的な総決算スタイルやや最も人気の高いアルバムに寄せた路線になりがち。再結成後のオリジナルフルアルバムの本作も、一聴すると不評だったインダストリアル路線を避けてCursedとOdiumを足したような、まさにファン接待系の作風で想定の範囲内に思えますが、よく聴けば単なる懐古的なオールドスクールリバイバルに終わるまいとする、実験精神旺盛な彼らの意地は感じられる力作。
あえて言えば再結成後のCELTIC FROSTあたりが近いアプローチかもしれませんが、あちらほど手を広げずにやや生真面目に手堅くまとまってしまったのが惜しいところです。
オルタナ度:★★★★☆|アート度:★★★★☆|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み スルメ盤 実験作