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【問題作】SLAYER / Diabulus in Musica| スレイヤー / 悪魔の鎮魂歌[レクイエム] (1998年)

SLAYER_diabulus_in_musica スラッシュ
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生涯一スラッシュを貫きスラッシュメタルの王道を行くSLAYERがモダンなニューメタルテイストを取り入れたことで保守派スラッシャーのバッシングを浴びた問題作!!

USスラッシュBIG4と呼ばれるグループは、スラッシュメタルからスタートしながらも時流に合わせて音楽性を大きく変えることでトップに上り詰めましたが、その中で唯一SLAYER(スレイヤー)だけは変わらぬハードコアなスラッシュメタルを追求したことで、スラッシュの代名詞的として認められカリスマ的な存在となりました。。

しかし、スラッシュメタルから逸脱することなく生涯いちスラッシュを貫いた(ている?)印象の強い彼らも、ムーヴメのの黎明期から続く長いキャリアの中では、時代によってサウンドのマナーチェンジを行って自らの作風のバリエーションを広げてきており、その結果賛否両論を巻き起こすこととなったアルバムも1枚では済みません。

現在では彼らの定番スタイルとなっているドゥーミィなスローナンバーを初めて試みたSouth of Heavenは、のちに再評価が進み初期の名盤の1枚とされるようになりますが、前作が疾走一辺倒でスラッシュシーンの最高位に位置すことになる不世出の超名盤Angel of Deathだったこともあり、当初はその実験的な試みから大バッシングもを受けていました。

リリース当時そのSouth of Heavenに匹敵するほどの物議を醸し、未だ再評価されるでもなくワースト認定を余儀なくされている問題作が、このDiabulus in Musicaです。

SLAYERのDiabulus in Musicaはなぜ問題作と呼ばれる?

①…ニューメタルテイストを取り入れてきた。
②…早い曲が少ない。
③…デイヴ・ロンバードがいない。
④…ハードコアリスナーに向けた戦略があざとい。

① ニューメタルテイストを取り入れてきた。

これがバッシングを受けた最大の要因でしょうね。90年代突入後スラッシュメタルがグルーヴメタル,ニューメタル,インダストリアルメタル,グランジなどヘヴィミュージック最新モードを取り入れた結果、保守的メタルクラスタの反感を買う事例が増えますが、それらと無縁と思われていたSLAYERまでがトレンドに接近したことで物議を醸しました。
確かにバウンシーなリズムやパーカッシヴなヴォーカルスタイルなど、KORN以降のニューメタルサウンドの特徴的なエッセンスが時折見られます、しかし、SEPULTURAなどのようにアルバム通して完全に路線変更したわけではなく、あくまでもごく数曲でアクセント的に用いられている程度。基本は従来通りのスラッシュサウンドなので、取り立てて大げさに騒ぐほどのものではありません。

② 早い曲が少ない。

疾走曲が少なくミドル〜スローの比重が高いというのも、スラッシャーの不評を買う大きな要因となりがちです。
しかし、曲の速さが最大の特徴だったスラッシュバンドが作風に変化を加えようとするならば、テンポの遅い曲を試みるメソッドは必然ともいえるもの。彼らも前記の通り3rdのSouth of Heavenで本格的にスロー路線を試みて高い評価を得ていますし、そこにSLAYER流グルーヴを導入した4thのSeasons in the Abyssなどは、代表作に挙げるファンも少なくありません。

ミドル〜スローテンポの作風は、疾走曲のように勢いで誤魔化しが効かず高度なセンスが要求されるため、多くのスラッシュバンドが安易に試みては失敗してきましたが、その点SLAYERは遅い楽曲でもスラッシュシーンでトップの完成度を誇っており、それは同じくミドル〜スローテンポの多い本作も例外ではありません。
そういうわけなので、結局のところ早い遅いを理由とした評価は、作品としての良し悪しではなくリスナーの好みに左右されているだけのことです。

③ デイヴ・ロンバードがいない。

スラッシュメタル〜デスメタルが主流となるにつれて、手数が多いプレイの派手さと作業量の多さもあって、裏方的なイメージがあったドラムパートにもスポットが当たりるようになってきます。
中でもSLAYERの黄金期を支えたデイヴ・ロンバード(Dave Lombardo)は、特徴的な手数が多くハイテンションなドラミングでメタルシーン初のドラムヒーローとして知られるようになり、フロントマンにも負けない存在感でバンドの顔とも呼ばれるようになります。

そのロンバードの脱退を受けて6thのDivine Interventionから後任を務めていた、元Forbidden(フォビドゥーン)ポール・ボスタフ(Paul Bostaph)ロンバードに劣らない技量の持ち主でしたが、圧倒的な支持を持つカリスマ的ドラマーを欠いた影響は大きく、オールドファンはロンバード不在だけを理由にその時期のアルバムを認めない傾向すらあります。

④ ハードコアリスナーに向けた戦略があざとい

Diabulus in Musicaがリリースされた前後は、欧米から日本までメインストリームでのハードコアブームが真っ盛りだった時期で、メロディアス系からストロング系、オールドスクールのリバイバルからニュースクールまで入り乱れて空前の盛り上がりを見せており、SLAYERのハードコアカバー集Undisputed Attitudeもその流れを受けてリリースされたものでした。

レーベル/配給会社や音楽メディアの中では、一気に増加したハードコアクラスタに向けてSLAYERを売り込もうとする動きがありましたが、この時期のブームはグラムメタルやニューメタルのブームに通じるバブリーな面も強く、主要なターゲットはこの時期大量発生したファッションとしてのブーム便乗系や、暴れたいだけの脳筋マッチョ系などリテラシーの低いリスナーがほとんど。
そのため日本向けの広告では、「スレイヤー激ヤバァ〜!!超マストォ〜!!」などといった、シネコン前インタビューCM並のイディオットな文言が飛び交っており、あまりの白痴ぶりに作品のイメージにまで悪影響を及ぼすほどで、それを引きずるリスナーも少なくありません。

SLAYERのDiabulus in Musicaはひとつの作品としてどうなの?

Diabulus in Musicaは、「ミドルテンポ中心」,「モダンなアプローチ」など諸々の要因が絡まって、ネガティブな先入観を持たれがちなアルバムではありますが、好みの問題だけは如何ともしがたいとしても、キャリア後期にあたるの作品の中では楽曲の充実度は突出したもので、かろうじてではありますが全盛期に匹敵する折紙付の水準を維持しています

ニューメタル風のアレンジにアレルギーが現れるリスナーも、一歩引いて冷静な耳で聴くことができればトレンドの作風に鞍替えしたわけではなく、彼ら本来のスラッシュサウンドに変わりはなく、そこにフレーバーとしてふりかけているため人によっては強烈に鼻につくだけと理解できるはずです。

宗教上の理由で速い曲しか聴けない“ファスト原理主義者”や、ちょっとでも最新モードのエッセンスが入っていると“モダンアレルギー”で絶命する恐れがあるリスナーは無理する必要はありませんが、単なる風評によるの先入観から聴かず嫌いで敬遠しているのであればあまりにももったいない話。

そんな人も一聴してみれば、むしろ何を取り入れても壊れないスレイヤーサウンドの頑健さと、何にも飲み込まれることのない彼らの自力の強さを改めて思い知らされることになるハズです。

SLAYER/Diabulus in Musica
問題作度:★★★☆☆
一般評価:★☆☆☆☆
筆者評価:★★★★☆

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