Contents
- 1メンバーの死を乗り越えて熱狂的なファンを抱える世界有数のアリーナバンドの座に上りつめた大陸的ヘヴィ・ロックンロール・レジェンドは、欧米と日本での人気が伴わないスモール・イン・ジャパンの代表格!?
- 1...1ローカルバンドからワールドワイドな存在に!1
- 1...2AC/DCの音楽性は!?
- 1...3ヴォーカリストの死を超えてビッグに!?
- 1...4スモール・イン・ジャパンの代表的バンド!?
- 1.1AC/DC - ORIGINAL ALBUM|DISCOGRAPHY
- 1.1.1High Voltage| ハイ・ヴォルテージ
- 1.1.2T.N.T.|ティー・エヌ・ティー
- 1.1.3High Voltage| ハイ・ヴォルテージ
- 1.1.4Dirty Deeds Done Dirt Cheap|ダーティ・ディーズ・ダート・チープ:悪事と地獄
- 1.1.5Let There Be Rock|レット・ゼア・ビー・ロック:ロック魂
- 1.1.6Powerage|パワーエイジ
- 1.1.7Highway to Hell|ハイウェイ・トゥ・ヘル:地獄のハイウェイ
- 1.1.8Back in Black|バック・イン・ブラック
- 1.1.9For Those About to Rock We Salute You|フォー・ゾウズ・アバウト・トゥ・ロック・ウィ・サリュート・ユー:悪魔の招待状
- 1.1.10Flick of the Switch|フリック・オブ・ザ・スウィッチ:征服者
- 1.1.11Fly on the Wall|フライ・オン・ザ・ウォール
- 1.1.12Blow Up Your Video|ブロウ・アップ・ユア・ヴィデオ
- 1.1.13The Razors Edge|ザ・レイザーズ・エッジ
- 1.1.14Ballbreaker|ボールブレイカー
- 1.1.15Stiff Upper Lip|スティッフ・アッパー・リップ
- 1.1.16Black Ice|ブラック・アイス:悪魔の氷
- 1.1.17Rock or Bust|ロック・オア・バスト
- 1.1.18POWER UP|パワー・アップ
- 1.2AC/DC - OMNIBUS ALBUM|DISCOGRAPHY
- 1.2.1Who Made Who |フー・メイド・フー
- 1.2.2Iron Man 2|アイアンマン2
- 1.2.2.1◎ AC/DCはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
AC/DC – ORIGINAL ALBUM|DISCOGRAPHY
High Voltage| ハイ・ヴォルテージ
オリジナルアルバム:オーストラリア盤 1作目 (1975年)
本国オーストラリアのみでリリースされた、真のデビューアルバム。
ここでは、まだ本格的なAC/DCスタイルが確立されておらず、ブルーズベースで時にサイケデリック・テイストも漂わせる、ルーズなハードロックを展開しています。
後の、ブギーでヘヴィロッキンなAC/DCらしさはほとんど感じられませんが、ストーナーロックなどを好むリスナーには興味深いアルバムかもしれません。
なお、日本も含め一般に同じ名義で流通している『High Voltage(全世界盤)』は、タイトルこそ同じでですが、実際は次作『T.N.T.』を元にした編集盤。
本作からの収録曲はわずか2曲のみに過ぎず、実質的にはほぼ全くの別モノです。
そういった事情から、マニアならば実は重要な1枚である本作の価値が理解できるため、一般的な“全世界盤”と“オージー盤”の本作の両方を、併せてそろえるだけの意義は間違いなく“アリ”ということになります。
|ヘヴィ度:★★☆☆☆
|ハード度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 通好み スルメ盤 実験作
T.N.T.|ティー・エヌ・ティー
オリジナルアルバム:オーストラリア盤 2作目 (1975年)
前作に続いて、オーストラリアのみでのリリースとなった2作目。
別記したとおり、本作は1976年リリースの世界デビューアルバム『High Voltage(全世界盤)』の元になってたアルバムで、チャック・ベリーのカバーを含む2曲を除いた全曲が、その『High Voltage(全世界盤)』にそのままスライド収録されています。
ちなみに、楽曲“High Voltage”は、前作『High Voltage』のタイトル・トラックというわけではなく、本作の収録曲というあたりも、ややこしさを加速させています。
もはや何を言ってるか理解不能かもしれませんが、要はこの『T.N.T.(オージー盤)』アルバムと一般に流通している『High Voltage(全世界盤)』はほとんど同じ内容なので、熱心なサポーターやマニアでもない限り、どちらかひとつ持っていればOKというお話です。
|ヘヴィ度:★★☆☆☆
|ハード度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★★★☆
|多様性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 スルメ盤
High Voltage| ハイ・ヴォルテージ
オリジナルアルバム – 1作目 (1976年)
地元オーストラリアのみでのリリースだった、1作目『High Voltage』と2作目『T.N.T.』を、世界リリース向けに編集したアルバム。
ただし、別記のとおり収録曲はほとんどは彼らの基本スタイルが完成された『T.N.T.』からのもので、過渡期にあった『High Voltage』からはわず2曲のみという不遇ぶり。
しかも、統一感重視のための“あえて”の選曲なのか、その2曲もあまり冴えないナンバーがセレクトされています。
ちなみにタイトル・トラックも『High Voltage(オージー盤)』ではなく『T.N.T.(オージー盤)』収録曲。
そういった事情もあって、実質『T.N.T.』でありながら『High Voltage』を名乗るという、面倒な事態になったと思われます。
そういった事情から、内容についてはオージー版の『T.N.T.』と大差なく、名曲T-04,T-05を中心に、上々の出来栄えとなっています。
|ヘヴィ度:★★☆☆☆
|ハード度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 スルメ盤
Dirty Deeds Done Dirt Cheap|ダーティ・ディーズ・ダート・チープ:悪事と地獄
オリジナルアルバム – 2作目 (1976年)
ボン・スコット時代のファンには、『Highway to Hell(5th)』と並ぶ代表作とされるアルバム。
タイトルトラックのT-01やT-03など、代表曲も収録されていますが、全体を見渡すとなんともユルユルなノリで、テンションやヘヴィネスはあまり感じられません。
そのため、“AC/DC基準”で判断しても、良くいえば大らかな…悪くいえば弛緩した印象が強いアルバムとも言えるため、ヘヴィネス重視のリスナーには評価が割れる恐れがあります。
|ヘヴィ度:★★☆☆☆
|ハード度:★★☆☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 スルメ盤
Let There Be Rock|レット・ゼア・ビー・ロック:ロック魂
オリジナルアルバム – 3作目 (1977年)
いかにも“AC/DC”な雰囲気の、彼らのパブリックイメージそのもののである、ブギーベースのミッドテンポのロックンロールが、サウンドの主力として本格的に確立されたアルバム。
さらに言えば、過去作と比較すると、かなり“ハード&ヘヴィ”な感触を強めた作風となっており、メタラーにとっても比較的馴染みやすいスタイルに近づいたアルバムと言ってもいいでしょう。
T-02,T-03,T-08といった、代表曲/キラーチューンも充実で、聴きどころも多い1枚です。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★★★☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤
Powerage|パワーエイジ
オリジナルアルバム – 4作目 (1978年)
インパクト十分のジャケットながら、名盤と名高くジャケットも含めた知名度も抜群の次作、『Highway to Hell』と比較するとやや印象が薄く、一般的には過小評価の傾向さえも感じられるアルバム。
確かに、オールタイム・ベストに選ばれるほどの、アンセム級の際立った楽曲は見られないという事実は、弱点ともいえるものです。
しかし、ことアルバム全体でのアベレージにおいては、ボン・スコット時代ではダントツともといえるレベルで、全編にわたってハード&ヘヴィな楽曲が並んで、張りつめたテンションが充満しており、初期作品にありがちな弛緩したルーズな雰囲気を微塵も感じさせません。
その意味では、ボン・スコット時代においては最大の成功をおさめ、ヘヴィメタル/ハードロック界隈でも代表作と見なされてる次作よりも、はるかにメタラー向けのアルバムと言えるでしょう。
|ヘヴィ度:★★★★☆
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★★☆
|多様性:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤
Highway to Hell|ハイウェイ・トゥ・ヘル:地獄のハイウェイ
オリジナルアルバム – 5作目 (1979年)
ボン・スコットのラスト・アルバムということや、知名度では一二を争う超有名曲であるタイトル・トラックT-01の存在、さらには、強烈なインパクトを残す“ヤサグレ感”満載のジャケットなどもあって、ボン・スコット時代では代表作と見なされ、最強のアルバムと評価を受けることもあります。
事実、先の代表曲T-01からファストなT-05までのアナログA面にあたる前半は、フックの効いたノリの良いロックンロールが並ぶ見事な出来栄えを見せていますが、後半はやや息切れ気味となったか波が荒くグレードが下がってしまいます。
また、全体的には従来の開放的でルーズなノリが強調されがちな作風で、前作のような緊張感には乏しいこともあり、一般的なイメージや情報に煽られたメタラーが、ハード&ヘヴィかつドライヴィン&グルーヴィな、アグレッシヴなサウンドを思い描いて期待値を上げすぎると、やや肩透かしとなる危惧も拭えません。
|ハード度:★★★★☆
|メロディ:★★★★☆
|大作度:★★★★☆
|マニア度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 スルメ盤
Back in Black|バック・イン・ブラック
オリジナルアルバム – 6作目 (1980年)
ボン・スコットの急逝を経て、新たにブライアン・ジョンソンを迎え、第二期AC/DCの幕開けとなったアルバム。
高まるヘヴィメタル人気をも視野に入れてか、サウンドにはヘヴィ&メタリックなエッセンスが増しています。
さらには、ボン・スコット追悼の意味から、ヘヴィメタル的なダークネスを漂わせたマイナー調の楽曲が目立つことや、ジョンソンのヘヴィメタリックなハイトーン・ヴォイスが加わったことによる相乗効果もあり、大きくヘヴィメタルに接近した作風へと変貌を遂げています。
第二期の代表作であることは紛うことない事実ですし、AC/DCの全キャリアにおけるベストにも挙げられることも多い歴史的アルバムでもあり、さらには、ヘヴィメタル・ムーヴメントの一環としても語られるようになったこともあって、特にメタラーからの支持が高い作品にもなっています。
|ヘヴィ度:★★★★☆
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
For Those About to Rock We Salute You|フォー・ゾウズ・アバウト・トゥ・ロック・ウィ・サリュート・ユー:悪魔の招待状
オリジナルアルバム – 7作目 (1981年)
前作から引き続き、AC/DCが上り調子で最も勢いがあった時期の作品で、80年代では前作に次いで高い人気を誇るアルバム。
前作に近いヘヴィメタル寄りの作風で、曲によってはダークな雰囲気も漂わせていますが、その一方で、AEROSMITHあたりにも通じるような、オーソドックスなアメリカン・ハードロックに大きく接近した楽曲も見られます。
楽曲アベレージについては水準を超える出来栄えで、ライヴの定番でもあるT-01のような代表的キラーチューンをはじめ、T-04,T-05といったヘヴィ&ハードなナンバーもあり、メタラーを中心に一般的な評価が高めの傾向にあります。
しかし、それに反して、全編にわたってやや表情に乏しいところもあって、何かひと味足りずパンチに欠ける印象が残ることも否定できませんし、やや波の荒い点も気になるところです。
|ヘヴィ度:★★★★☆
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤
Flick of the Switch|フリック・オブ・ザ・スウィッチ:征服者
オリジナルアルバム – 8作目 (1983年)
一般的には、この時期においては最も評価の低いアルバムで、人気の下り坂に突入した要因とも見なされています。
それは主に、セルフ・プロデュースによる音質の問題に加え、『Back in Black(6th)』のブレイクで食いついた新規リスナーが、彼らの“金太郎飴的作風”に飽きてきたことも、大きな要因となっていることでしょう。
確かに、オールタイム・ベスト級の名曲こそ存在しないものの、全キャリアを通して見るならば、その水準的なアベレージは軽くクリアしたクオリティに仕上がっています。
また、ヘヴィメタリックなこの時期の作品の中でも、特にソリッドなヘヴィネスに焦点を絞ったような作風となっており、その側面に限って評価するならば、前々作〜前作を軽々と上回るで出来栄えとさえ言えます。
メタラーに限らず、ヘヴィネス志向のリスナーであれば、一聴の値打ちがあることは間違いありません。
|ヘヴィ度:★★★★★
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 賛否両論 通好み スルメ盤
Fly on the Wall|フライ・オン・ザ・ウォール
オリジナルアルバム – 9作目 (1985年)
前作に続いて、一般的には評価の低いキャリアの谷間にあたる低迷期の1作とされ、ヘヴィメタル・ブームやアメリカのメインストリームの動向を、横目でとらえたようなアプローチで仕上げられている…という点においても、前作と同様と言えます。
サウンドについては、“いかにも80年代”的な音づくりとなっており、作風も、直近数作のヘヴィネス重視から、ややアップテンポなノリの良さを押し出したハードロックへと、変化している様子はうかがえます。
ただし、次作以降から特に顕著となるグラムメタル系のポップメタル・テイストは、本作まではそれほど感じられません。
彼らのキャリアにおいて、突出した仕上がりとは到底呼べない出来栄えのアルバムですが、それでも、世間的に広まっている評価よりは上のレベルにあるのは確かなので、90年代〜近年にかけての作品がピンとこないというリスナーならば、前作と併せて掘り返してみるだけの価値はあるでしょう。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
賛否両論 通好み スルメ盤
Blow Up Your Video|ブロウ・アップ・ユア・ヴィデオ
オリジナルアルバム – 10作目 (1988年)
これまでにも増して、最大のマーケットとなった米国市場を意識したような作風となったアルバム。
従来の路線も踏襲しながらも、当時のメインストリームだったグラムメタル勢のポップメタル・サウンドを大々的に取り入れ、適度にメタリックなアメリカン・ハードロック路線へと、本格的に舵を切っています。
ポピュラリティに振り切った軽薄さも漂うサウンドながらも、前作以上にアップテンポで聴きやすさを増した、ポップ&キャッチーなアルバムであり、そのことが彼らの再ブレイクの契機になったことは確かです。
しかしながら、初期や全盛期の作風を好むリスナーにとっては、歓迎できる作風かどうかは疑問と言わざるを得ないでしょう。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論
The Razors Edge|ザ・レイザーズ・エッジ
オリジナルアルバム – 11作目 (1990年)
AC/DCが本格的な再ブレイクを果たしたアルバムで、中でもヘヴィかつキャッチーなフックの効いたT-01は、ビッグヒットとなり、新たな…そして現時点では最後ともいえる彼らのアンセムと認められています。
本作では、ヘヴィチューンからポップチューンまでと作風は多彩ですが、基本的には、前作に続いてグラムメタル系のポップメタルからの影響も見られ、80年代米国メインストリームを引きずった印象が強めですが、前作よりもヘヴィネスが強化されたアルバムに仕上がっています。
前述のキラーチューンT-01については、間違いなくオールタイムベストに連なるべき名曲とのひとつですし、続くヘヴィでブルージーなT-02もそれに匹敵するレベルに達したナンバー。
他にも、T-04やT-06は佳曲と呼べる出来栄えですが、今ひとつ印象に残らない曲も多く、アルバム通して見ると、ややムラが激しいという弱点も浮き上がってくるものの、アベレージ自体は上々の部類です。
|ハード度:★★★★☆
|メロディ:★★★★☆
|大作度:★★★★☆
|マニア度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 賛否両論
Ballbreaker|ボールブレイカー
オリジナルアルバム – 12作目 (1995年)
レイドバックしたルーツミュージックからヒップホップまでを手がける、巨匠リック・ルービンのプロデュースによるアルバム。
ルービンは数々の名盤を生み出して名伯楽とも賞賛される人物ですが、アーティストとの相性が問われる面も見られますし、また、ベテランに対しては原点回帰を促しがちな傾向から、ややもすると単なる自己模倣に陥らせてしまう危惧もあります。
この作品は、まさにその悪い方向が顕著となってしまった一例であり、とにかく頭から尻尾まで“確かにAC/DCっぽいけれど全く印象に残らない”、既視感の強いブルージー&ブギーな楽曲が羅列されています。
作品としては低調ながらも、セールス面ではそれなりの結果を残したようで、これ以降はプロデューサーは変われど、80年代に見せた良くも悪くも実験的/野心的なアプローチは見られなくなり、無難なマーケティングによる最大公約数的な作風を繰り返すことになります。
|ヘヴィ度:★★★★☆
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤 お布施
Stiff Upper Lip|スティッフ・アッパー・リップ
オリジナルアルバム – 13作目 (2000年)
前作に続いての原点回帰路線となっており、ボン・スコット時代のスタイルに、70年代のアメリカンハード/ヘヴィロックのフレーバーを振りかけたような作風。
アーシーな荒々しさとヴィンテージ・テイストが増した影響かもしれませんが、前作よりも彼らの“素”に近いような印象もありますし、過去の名曲と肩をならべるに足る突出した楽曲こそ皆無であるものの、前作との比較ならば、いくらかアベレージ向上の跡も見られます。
新規のビッグネームが登場しない状況を背景にした、ベテラン再評価ビジネスの一環として改めてAC/DCにもスポットを当てられ、このあたりのから日本でも、マスコミ/マーケティング主導によって“AC/DC=クール”というイメージを強めようとする、再評価の動きが活発になります。
元が「スモール・イン・ジャパン」の代表格とされるだけに、爆発的に成果があったとはいえませんが、いくらかイメージが好転して、多少の新規ファンも掴んだような印象はあります。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み スルメ盤
Black Ice|ブラック・アイス:悪魔の氷
オリジナルアルバム – 14作目 (2008年)
ベテランのビッグネームの近作によく見られる、“焼き直し上等”でファンのイメージする最大公約数的サウンドを狙って仕立てたようなアルバムで、基本的には、直近の2作と大きな変化は見られません。
まだ1995年の『Ballbreaker(13th)』あたりは、時期的に“バブリーな80年代サウンドからの原点回帰”…というお題目があったものの、今作はリユニオンBLACK SABBATHの『13』アルバムなどと同様に、大コケしを避けるためのマーケティング主導による、無難な最大公約数アルバム…という印象しかありません。
日本では、本邦特有の70年代風のベタでファニーな邦題をつけという、一時期再燃していた安易な商法を採用して、同時に新規開拓を狙った節もあります。
黄金期を意識したような楽曲は、かろうじて水準レベルには達してはいますが、それ以下ではあってもそれ以上となり得るものではなく、80代中期のキャリアの谷間にあたる時期と比較しても、さらに1枚落ちる凡庸な仕上がりを見せています。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤 お布施
Rock or Bust|ロック・オア・バスト
オリジナルアルバム – 15作目 (2014)
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★☆☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤 お布施
POWER UP|パワー・アップ
オリジナルアルバム – 16作目 (2020)
前作リリース後の、オリジナルメンバーで中核でもあった“ヤング兄”ことマルコム・ヤング(Gt.)の死や、相次ぐトラブルによるメンバー脱退〜復帰などのゴタゴタを乗り越えての新作。
プロデュースはリック・ルービンの弟子筋で、オルタナシーンを中心に骨太系のバンドならメインストリームまで手がける人物で、AC/DCとは『Black Ice(14th)』以来の付き合いとなるブレンダン・オブライエン。
いつも変わらぬ金太郎飴的作風と言われればそれまでなのですが、今回の金太郎飴は単なる金太郎飴とはひと味違う良い金太郎飴。
無難な最大公約数的な作風を繰り返していた、90年代から続く“原点回帰路線”の中では、楽曲がバラエティーに富んでいて全編通して程度なフックがあって飽きさせませんし、比較的インパクトのある曲も多めです。
何より、アルバムを通してテンションがみなぎって途切れることがないあたりは、近作には見られなかった部分であり、とりわけ好印象となっています。
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|ハード度:★★★★☆
|ロッキン度:★★★☆☆
|多様性:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論
AC/DC – OMNIBUS ALBUM|DISCOGRAPHY
Who Made Who |フー・メイド・フー
サウンドトラック (2010年)
ロックマニアで、AC/DCの熱心なファンとしても知られる、アメリカを代表するモダン・ホラー作家、スティーヴン・キングが監督を務めた、映画『地獄のデビル・トラック』のサウンド・トラック・アルバム。
タイトルトラックのT-01と、インスト曲T-03, T-08を含む映画用の新曲3曲と、既発曲で構成された作品で、新曲はいずれも特筆する出来ではありませんし、既発曲もベスト選曲とは言えないため、キングマニア以外には今ひとつ価値を見いだしづらいアルバムです。
Iron Man 2|アイアンマン2
サウンドトラック (2010年)
同じ編集盤サントラである『Who Made Who』は、ベストアルバムと呼ぶには無理がある選曲ということもあり、BOXセットがあるのみで公式ベストが存在しないAC/DCにとっては、実質的な唯一のベスト盤とも見なされています。
しかし、特に知名度の高い代表作はある程度網羅されているものの、首を傾げざるをえないような微妙な選曲も少なくないため、万人向けのセットリストと呼べるかどうかは疑問です。
『アイアンマン』1作目では、まさにBLACK SABBATHの『Iron Man』が劇中で使われていたにもかかわらず、本格的にメジャー展開を始めたここに至ってAC/DCが起用され、そのベストアルバムと化したあたり、米国でのAC/DCとBLACK SABBATHの一般層への認知度や人気に、縮まらない差があることもうかがえます。
辣腕ビジネス・ウーマンとして、メタル界のキャスリーン・ケネディとも称される、『シャロン・オズボーン』の剛腕ゴリ押しパワーを持ってしても、カルトバンドBLACK SABBATHをマス向けビジネスの枠に押し込むことは、無理があったということでしょう。
◎ AC/DCはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
ロックファンなら誰もが知るAC/DC名曲を押さえておきたいなら、ボンスコ時代の代表作“Highway to Hell(5th)”、知名度, 評価ともに最高峰のメタリックな名盤“Back in Black(6th)”の2作でOK!それに次ぐのが、初期のヘヴィメタルムーヴメントを反映した“For Those About to Rock We Salute You(7th)”とアメリカンなポップメタル路線の“The Razors Edge(11th)”というところでしょう。
一般的な評価や知名度でそれらに届かないけれど、ヘヴィな作風でメタル/ヘヴィミュージックファンなら一聴の価値があるのが、“Let There Be Rock(3rd)”, “Powerage(4th)”, “(Flick of the Switch8th)”の三枚。いずれもやや通好みなアルバムがらヘヴィネス重視で高アベレージな力作です。