Contents
- 1IRON MAIDENから放逐された二代目フロントマンのは、再建人ロイZとのプロジェクトによる驚異的な完成度のモダン・ヘヴィメタルで本家をひれ伏させる!!
- 1...1N.W.O.B.H.M.のフラッグシップIRON MAIDENのフロントマン?!?
- 1...2IRON MAIDEN以前のディッキンソンのキャリアは!?
- 1...3IRON MAIDENでのディッキンソンの功績は!?
- 1...4ブルース・ディッキンソンのIRON MAIDENとの決別!?
- 1...5ブルース・ディッキンソンのソロワークでの音楽性は!?
- 1...6ベテラン・バンド再建人ロイZとタッグ結成!?
- 1...7盟友エイドリアン・スミスとの合流!?
- 1...8ブルース・ディッキンソンIRON MAIDENへ復帰!?
- 1.1BRUCE DICKINSON|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Tattooed Millionaire|タトゥード・ミリオネア
- 1.1.2Balls to Picasso|ボールズ・トゥ・ピカソ
- 1.1.3Skunkworks|スカンクワークス
- 1.1.4Accident of Birth|アクシデント・オブ・バース
- 1.1.5The Chemical Wedding|ザ・ケミカル・ウェディング
- 1.1.6Tyranny of Souls|ティラニィ・オブ・ソウルズ
BRUCE DICKINSON|DISCOGRAPHY
Tattooed Millionaire|タトゥード・ミリオネア
オリジナルアルバム – 1作目 (1990年)
冒頭のT-01こそ、ヘヴィでダークなメタル的美意識に近いものを持った作風ですが、それ以降は、明るくポップなナンバーが中心となっています。
IRON MAIDEMではできない音楽性をいろいろと試みたような楽曲が並んでおり、IRON MAIDEM風のドラマティックな正統派のヘヴィメタルを期待すると裏切られます。
作風はやや80年代を引きずっていますが、〈AC/DC〉風のT-04, 〈AEROSMITH〉や〈GUNS N’ ROSES〉が思い浮かぶT-08などをはじめ、〈MOTT THE HOOPLE〉の名曲のカバーT-07や、ニューウェイヴ/ポストパンクの影響を感じさせる楽曲も見られるなど、比較的バリエーションに富んでいます。
|ヘヴィネス:★★☆☆☆
|スピード:★★★☆☆
|ダーク度:★☆☆☆☆
|オルタナ度:★★★☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Balls to Picasso|ボールズ・トゥ・ピカソ
オリジナルアルバム – 2作目 (1994年)
不本意ながらIRON MAIDENを離れざるをえなくなった、ディッキンソンの複雑な心情が反映されているとも伝えられる、バンド離脱後の最初のアルバム。
その心情とグランジ全盛期ならではの陰鬱で内省的なヘヴィなサウンドとが相まって、ポップで陽的だった前作からは一転して、重々しいダークでシリアスなエモーションが濃厚な作風に仕上がっています。
とはいえ、この類のアプローチの失敗例によく見られる、単なる鬱々として抑揚を欠いたサウンドではなく、IRON MAIDENにも通じるダイナミックな躍動感やドラマティシズムを感じさせるT-09,T-10をはじめ、表情豊かでバラエティに富んだ高品質な楽曲が並んでいます。
その充実ぶりは、本作と同時期から現在に至るIRON MAIDEN作品のレベル程度は、軽々と上回ってゆくのみならず、80年代のキャリア全盛期にも迫ろうかというほどです。
やや、一部メタラーには毛嫌いされがちな、グランジやミクスチャー・ロックなどのUSオルタナティヴ・ロックも積極的に取り入れた幅広い曲調と、ダークな作風がに抵抗の無いリスナーならばマストといえる名盤ですし、それのみならず、一般のメタルリスナーまでを満足させうるポテンシャルを持った、野心的な傑作と言っても過言では無いでしょう。
|ヘヴィネス:★★★★★
|スピード:★★★☆☆
|ダーク度:★★★★★
|オルタナ度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作
Skunkworks|スカンクワークス
オリジナルアルバム – 3作目 (1996年)
ディッキンソンを除くメンバーが一新され、名義も本作に限って〈SKUNKWORKS〉と改められています。
ここでは、後にディッキンソンの右腕となる、新ギターヒーローのロイZも不参加ですが、無名の若手ミュージシャンを集めて、新世代ならではのリアルなモダンセンスの注入を試みた手法自体は前作と同様です。
ただし、作風はダークな前作から一転して、むしろ『Tattooed Millionaire(1st)』にも近い、明るく開放的な雰囲気も漂わせるようになっています。
前作においては時に濃厚にも感じられた、メタル的な過剰なドラマティシズムや美意識を弱めたような、ややナチュラルな作風は、同時期の〈RUSH〉や、〈GALACTIC COWBOYS〉などのアメリカ南部系のオルタナ・プログレ・ハードあたりも想起させる部分もあり、時には確かにグランジィな一面も見られますが、基本的な音楽性については前作からさほど大きな変化は見られません。
もっとも、当時はメタルバンドが少々オーガニックな音づくりにヘヴィロックを展開すれば、やれグランジに転んだのと全否定の嵐をとなった時代で、本作も例外ではなく、キラーチューンの弱さや期待の注目株ロイZの不在も重なって評価はは今ひとつでセールスも振るいませんでした。
とはいえ、派手さは無いものの高品質なアルバムであることは確かですし、後年には再評価の傾向も見られるなど、聴き手の認識にもいくぶんかの変化が見られます。
|ヘヴィネス:★★★★☆
|スピード:★★★☆☆
|ダーク度:★★☆☆☆
|オルタナ度:★★★★★
|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Accident of Birth|アクシデント・オブ・バース
オリジナルアルバム – 4作目 (1997年)
再び、これ以降も続くディッキンソンとロイZとのタッグを中心とした編成となりましたが、これまでとは一転して、IRON MAIDENの新作としても通用しそうな、オーソドックスなヘヴィメタル・アルバムに。
この、オールドスクールなスタイルにおいても、極めて高水準な作品が作れることを証明した力作に仕上がっています。
当時ブレイズ・ベイリーをフロントマンに据えて低迷していた、IRON MAIDENの作品を軽々と上回る、正統派のヘヴィメタルアルバムを世に出したことで、IRON MAIDENは完全にお株を奪われ面目丸つぶれとなってしまいました。
しかしこれは、よく問題視されていた両バンドのヴォーカルのスタイルや技量以前の問題で、そもそものバンドの方向性の選択の妥当性や、コンポーザーとしての力量とセンスに格段の差があることが明白となっています。
いずれにせよ、この時点でIRON MAIDEサイドが、「ディッキンソン復帰待ったなし!」の空気になっていたことは想像に難くありませんが、かといって、復帰後のディッキンソンにここで見せた力量を発揮できる機会があったのか?…については疑問が残ります。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★★☆
|ダーク度:★★★☆☆
|オルタナ度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤
The Chemical Wedding|ザ・ケミカル・ウェディング
オリジナルアルバム – 5作目 (1998年)
IRON MAIDE時代の盟友、エイドリアン・スミス(Gt.)が加わっての最初のアルバム。
前作同様の、古典的ヘヴィメタルへの回帰路線と呼ぶべきアルバムなのですが、そのベクトルは一変しており、重厚でドゥーミィなダークネスを強化した、重圧型ヘヴィ・サウンドと化しています。
そのため、アップテンポな楽曲もT-05やT-08程度とごくわずかで、前作に見られた疾走感とは無縁。(唯一のファスト曲T-11は日本盤ボーナストラックなので番外)
ヴィンテージ・テイストもスパイスとして散りばめられ、時に変則展開も見せる、圧倒的なヘヴィネスが充満したダークでダウナーなサウンドは、〈CATHEDRAL〉に代表される90年代ドゥームメタルの影響下にあるものであり、ブルース・ディッキンソン流のドゥーム/ダーク・メタルと見なして一向に問題ありません。
ヘヴィネス重視という点では、『Balls to Picasso(2nd)』にも通じますが、それと比較するとよりメタリックな質感で、また、エクストリーム・メタルへの接近も見られるものとなっており、叙情性やオーガニックな質感はときおり顔を出す程度という塩梅です。
いずれにせよ、ドゥームメタル/ダークメタルであると同時に、堂々としたストロング・スタイルのヘヴィメタルでもあり、また、キラーチューンを欠く弱みもサウンドのインパクトと個性で補っており、総合力おいては過去作に何ら劣るところのない力作です。
|ハード度:★★★★☆
|メロディ:★★★★☆
|大作度:★★★★☆
|マニア度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 通好み スルメ盤 実験作
Tyranny of Souls|ティラニィ・オブ・ソウルズ
オリジナルアルバム – 6作目 (2005年)
IRON MAIDENに復帰後のディッキンソンのにとっては、現時点では唯一となるソロ・アルバム。
本作は、『Balls to Picasso(2nd)』のメンバーにエイドリアン・スミスが加わえた編成で、お馴染みロイZ以外のTRIBE OF GYPSIESのメンバーも、久々に参加しています。
音楽性は、直近2作と同様のオールドスクール寄りのヘヴィメタル・サウンドですが、IRON MAIDENとの二足のわらじとなった兼ね合いからか、『Accident of Birth(4th)』で見せたような、往年のIRON MAIDENそのもののファストチューンの様な、現在のIRON MAIDENの存在を喰ってしまいかねない曲は、あえては自粛されている模様。
そのため本作の楽曲は、パワーメタル, メロディック・スピードメタル, ダークメタルなど、IRON MAIDENとバッティングしないスタイルのみで構成されています。
これまで同様に、90年代以降のIRON MAIDENの作品アベレージなど、軽々と飛び越えた上質なアルバムではあるのですが、IRON MAIDENへの忖度で余計な気を使ったためか、やや小さくまとまった印象は拭えません。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|ダーク度:★★★☆☆
|オルタナ度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 通好み