Contents
- 1ファンタジーが題材の世界観と、アメリカナイズで奇形化したドゥーミィな異形のUKヘヴィサウンドで、エピック・メタルの先駆者として再評価進行中の、メタル黎明期が生んだアメリカン・カルト・メタルの頂点!!
- 1...1ファンタジーの小説をテーマにしたバンド!!
- 1...2CIRITH UNGOLが属するジャンル『エピックメタル』とは!?
- 1...3CIRITH UNGOLは『エピックメタル』の老舗!?
- 1...4メタルシーンの裏街道を行くカルトバンド!?
- 1...5『エピックメタル』再評価でスポットライトが当たる!?
- 1...6CIRITH UNGOLはドゥームメタルでもある!?
- 1.1CIRITH UNGOL|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Frost and Fire|フロスト・アンド・ファイア
- 1.1.2King of the Dead|キング・オブ・ザ・デッド
- 1.1.3One Foot in Hell|ワン・フット・イン・ヘル
- 1.1.4Paradise Lost|パラダイス・ロスト
- 1.1.5Servants of Chaos|サーヴァンツ・オブ・ケイオス
- 1.1.6I'm Alive|アイム・アライヴ
- 1.1.7Forever Black|フォーエヴァー・ブラック
CIRITH UNGOL|DISCOGRAPHY
Frost and Fire|フロスト・アンド・ファイア
オリジナルアルバム – 1作目 (1981年)
IRON MAIDEN(アイアン・メイデン)などに通じる部分もある、アメリカンなチューニングを施されたNWOBHMといった印象のサウンド。
そのサウンドからは、ルーツにあるUKバンドとはひと味違ったアクの強さが感じられるものの、それほど極端にアメリカナイズされているわけではなく、あくまでも70年代のダークなブリティッシュ・ハードロックが基本となったもので、ほんのりプログレ・テイストも感じられます。
最も好き嫌いや評価が分かれるポイントとなるのは、やはりヴォーカルでしょう。
ハナから美麗にメロディ歌い上げる気はサラサラ無い、ヘタウマ系のダーティなハイトーン・シャウトで、技巧至上主義のリスナーには不評ですが、スラッシュ/デス/ブラックに先駆けた異形性の表現には成功しています。
全体に漂うB級臭は相当に濃厚なものではあるものの、NWOBHMあたりの平均水準は余裕でクリアしていますし、アップテンポなT-05などはメジャーでも通じるようなポップネスさえ持っています。
さらにキャッチーなスピードメタル・ナンバーの1曲でもあれば、RIOT(ライオット)並の人気者になっていた…かもしれません…。
|エピック度:★★☆☆☆
|ドゥーム度:★★☆☆☆
|ヴィンテージ度:★★★☆☆
|叙情度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作
King of the Dead|キング・オブ・ザ・デッド
オリジナルアルバム – 2作目 (1984年)
本作では、SAINT VITUS(セイント・ヴァイタス)やPENTAGRAM(ペンタグラム)などにも通じるような、ドゥームロック的なヘヴィチューンが目立つほか、UKロックをローカライズした際の塩梅によるためか、妙な異形度も増しています。
また、前作ではまだ感じられた、わかりやすいなポップテイストも後退しており、アンダーグラウンドな臭気が一層濃厚なものとなりました。
本作での変化は、まだエピックメタル様式美のスタンダードが定まっていないこの時代に、独自に大仰でドラマティックなヘヴィメタル・サウンドを試みた結果の奇形化とも言えるかもしれません。
オーソドックスなセオリーからズレた変則的なヘヴィメタル/ハードロック・サウンドに、ヘタウマなハイトーンが乗るサマは、ある意味では、UKハードコア・バンドDISCHARGE(ディスチャージ)が、後に2ndで試みるメタル・アプローチに通じるような印象も与えます。
また、これがさらにテクニカル&フリーキーに進化すれば、CONFESSOR(コンフェッサー)あたりに接近しそうなサウンドでもあります。
|エピック度:★★☆☆☆
|ドゥーム度:★★★★☆
|ヴィンテージ度:★★☆☆☆
|叙情度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
One Foot in Hell|ワン・フット・イン・ヘル
オリジナルアルバム – 3作目 (1986年)
本作では、スラッシュメタル/パワーメタルが全盛期を迎えたという背景が反映されてか、それに沿ってややエクストリーム化も進み、スラッシーなパワーメタルに近い作風も見られるようになりました。
相変わらず、一般的なメタル歌唱にならう気がサラサラないヴォーカルが素敵ですが、スラッシュメタルの台頭によって、従来の“お達者系メタル歌唱”から逸脱したダーティなスタイルが一般化したこともあって、以前ほどには奇異には感じられません。
特に新規リスナーであれば、抵抗なく聴くことができると思われますが、反面、相対的にCIRITH UNGOLならではの特異性は薄まってしまったと言えます。
またCIRITH UNGOLは、オーソドックスなハードロックからドゥーム・ロック、スラッシーなパワーメタル・チューンまで、意外にも引き出しの多いバンドなので、同じB級でも芸域が狭くて一本調子なグループの作品とは異なって、飽きずに聴き通せるアルバムに仕上がっています。
|エピック度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★★☆☆
|ヴィンテージ度:★★☆☆☆
|叙情度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Paradise Lost|パラダイス・ロスト
オリジナルアルバム – 4作目 (1991年)
前作と同様に、スラッシュ世代のパワーメタルといったナンバーが目立ちますが、ドゥーム/グランジ寄りのヘヴィロックや、グラムメタル系のポップメタル風まで、なかなか多彩な作風が並んでいます。
T-07などは、かなりエピック的なドラマティックなナンバーですが、エピックメタルが持つ過剰なクドさをさほど感じさせないのがポイントです。
いずれのスタイルでも、基本的にはそれぞれの定型に準じた作風ということもあってか、80年代にあったアクの強さはそれほど感じられなくなっているため、一般のメタルリスナーにもそれほど抵抗なく聴ける仕上がりと言えます。
しかしそれは、捉え方次第では“毒にも薬にもならない単なるB級メタル”に過ぎない…という結論にもなってしまうという痛し痒しな面もありますし、オールドファンにとって嬉しい変化なのかについても疑問。
なお、T-03はUKサイケのアーサー・ブラウンの名曲カバー、T-07はメンバーのジム・ブレーズがかつて結成していたバンドPROPHECYの曲でポップメタル風のナンバーです。
|エピック度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★★☆☆
|ヴィンテージ度:★☆☆☆☆
|叙情度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 実験作
Servants of Chaos|サーヴァンツ・オブ・ケイオス
コンピレーションアルバム (2001年)
ライヴトラックやレアトラックを集めたコンピレーション。
I’m Alive|アイム・アライヴ
ライヴアルバム (2019年)
Forever Black|フォーエヴァー・ブラック
オリジナルアルバム – 5作目 (2020年)
奇跡の再結成を果たして、ほぼ30年越しの新作スタジオアルバムとなった作品。
エピックメタルにラベリングされるCIRITH UNGOLですが、ここでは、他のベテランバンドやエピックメタラーの近作ように長尺曲を連発するでもなく、組曲形式の大長編にはしるでもなく、演出SEでゴテゴテにデコりたてるでもなく、ひたすら我が道を行っています。
ヴォーカルも相変わらずハードコアな自己流ダーティ・ハイトーン・シャウトを貫いていますが、表現力や安定感が大きく増して、時にKING DIAOND(キング・ダイアモンド)を思わせる部分もあります。
それは、楽曲面でも演奏面でも音質面でも同様で、あらゆる面で大きく底上げられており、かなりの向上と安定感が見られます。
作風自体は、久々にドゥーム色が強まっており、時にMASTODON(マストドン)やBARONESS(バロネス)などに代表される、ヴィンテージ・テイストを持ったドゥーム/ストーナー/スラッジ系の、新世代ヘヴィロックに通じる部分も見られます。
彼らがヘヴィミュージックの最新をリサーチして取り入れた結果の変化なのか、ダーティ・ヴォーカルとオールドスクールなヘヴィロックというCIRITH UNGOL本来の取り合わせが、1周も2周も回ってさらに現代的な音作りになったことで結果的にそう聴こえるのか、その判断は微妙なところです。
いずれにしても、細分化とタコツボ化進んだ今だからこそ、特殊なクラスタに熱狂的に受け入れられているのかもしれません。
|エピック度:★★★☆☆
|ドゥーム度:★★★★☆
|ヴィンテージ度:★★★☆☆
|叙情度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 賛否両論 通好み 実験作