Contents
- 1スラッシュ没落時代にダークでドラマティックなサウンドで独自の地位を築いた、孤高のエピックパワー/スラッシャーの守備範囲は、自作の創作ホラー神話からファンタジー, 戦記, モンスター, アメコミまで!!
- 1...1スラッシュ・ムーヴメント断末魔に咲いた徒花!?
- 1...2スラッシュメタルからパワーメタルへ!?
- 1...3エピックメタルとしてのICED EARTH!!
- 1...4ダークメタルとしてのICED EARTH!!
- 1...5ICED EARTHのバンド体制は!?
- 1...6ICED EARTHの中核ジョン・シェイファーとは!?
- 1.1ICED EARTH|DISCOGRAPHY
- 1.1.1Iced Earth|アイスド・アース
- 1.1.2Night of the Stormrider|ナイト・オブ・ザ・ストームライダー
- 1.1.3Burnt Offerings|バーント・オフェリングス
- 1.1.4The Dark Saga|ザ・ダーク・サーガ
- 1.1.5Something Wicked This Way Comes|サムシング・ウィキッド・ディス・ウェイ・カムズ
- 1.1.6Horror Show|ホラー・ショー
- 1.1.7Tribute to the Gods|トリビュート・トゥ・ザ・ゴッズ
- 1.1.8The Glorious Burden|ザ・グロリアス・バーデン
- 1.1.9Framing Armageddon (Something Wicked, Part 1)|フレイミング・アルマゲドン (サムシング・ウィキッド, パート・ワン)
- 1.1.10The Crucible of Man (Something Wicked, Part 2)|ザ・クルーシブル・オブ・マン (サムシング・ウィキッド, パート・ツー)
- 1.1.11Dystopia|ディストピア
- 1.1.12Plagues of Babylon|プレイグス・オヴ・バビロン
- 1.1.13Incorruptible|インコラプティブル
ICED EARTH|DISCOGRAPHY
Iced Earth|アイスド・アース
オリジナルアルバム – 1作目 (1990年)
まだスラッシュメタルとしても扱われていた時期で、確かにリフはスラッシーですし、ラフなヴォーカルも含めそれ相応のアグレッションは感じられます。
「ドラマティックかつ大仰でやや長尺なスラッシュ・サウンド」…という特徴だけ挙げると、その代表格でもある初期METALLICAなども想起されますが、スタイルはそれとは完全に似て非なるもので、基本は伝統的メタル様式を展開するエピカルなパワーメタルに近いものです。
これを「スラッシュの可能性を広げた」…などと見るのは好意的過ぎで、いいとこ取りを狙った結果どっちつかずで新鮮味のないサウンドになったというのが妥当でしょう。
“様式美系リスナーが聴きやすいスラッシュメタル”としての価値は認められるも、その層は技巧派ヴォーカルを好むため、ラフな歌唱がバンドのガンとして批判の的となる結果にもなりました。
いろいろとアイデアを盛り込んではいるものの、センスの欠如と稚拙さは否めず、これらの欠点込みでカルト的人気を持つアルバムという側面はあるものの、少なくともハードコアなスラッシャー向きとは言いかねます。
|ヘヴィネス:★★☆☆☆
|スピード:★★★★☆
|エピック度:★★☆☆☆
|ダークメタル度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論 スルメ盤 実験作
Night of the Stormrider|ナイト・オブ・ザ・ストームライダー
オリジナルアルバム – 2作目 (1991年)
オリジナルのダーク・ファンタジー・ストーリーを元にしたコンセプトアルバムで、基本的な作風はおおむね前作を踏襲したものと言えますす。
ただし、スラッシュ・テイストを感じられるのは、もはやヘヴィでクランチーなリフワーク程度で、より古典的で類型的なメタル的美意識とエピック的な過剰演出を追求した、様式美系パワー/スラッシュメタルとなりました。
スラッシュメタルとして聴くには不満が尽きませんが、トータルでのクオリティはいくぶん向上していますし、フレーズ単位では印象に残るパートも増えているので、ハナからそういった作風と割り切れるならば、コレはコレでありもしれませんし、事実、前作と並んでオールドファンからは人気の高いアルバムでもあります。
しかし、構成力やセンスがいまひとつでメリハリと変化に乏しい点は変わらずで、アルバム通して聴くと楽曲があまり印象に残ることがなく、その意味では、近年のIRON MAIDENがよく見せる無駄に長い曲に近い印象も受けます。
|ヘヴィネス:★★☆☆☆
|スピード:★★★☆☆
|エピック度:★★★☆☆
|ダークメタル度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
代表作 入門盤 賛否両論 スルメ盤
Burnt Offerings|バーント・オフェリングス
オリジナルアルバム – 3作目 (1995年)
今に続くICED EARTHスタイルの基本が完成され、加えて、音楽的にも大きな向上を見せており、ファンからは最高傑作に挙げられることも多い作品。
ここでは、ダンテの『神曲』を基にした、オリジナル・ストーリーを展開しています。
スラッシーなアグレッションに現代的なヘヴィネス,ダークネスを組み合わせ、そこにエピック的なドラマ性と演出が共存した作風は、同時期にSANCTUARYから改名して再デビューを果たしたNEVERMOREに通じる、ダークパワーメタルサウンドと呼べるもの。
スラッシーな要素を持っているとはいえ、スラッシュメタルであるという認識は捨てた方がいいでしょう。
ここでは、再度ヴォーカル交代があり、90年代のICED EARTH全盛期を支えたマット・バーロウ(Matt Barlow)が新たに就任。
バーロウはダーティ・シャウトとクリーン・ヴォイスを使い分け、類型的なハイトーン・スクリームもこなしますが、歌唱の基本となるのは、これまたNEVERMOREのウォーレン・デーンに通じる、中低音域主体のディープ・ヴォイスです。
これは、ドゥームメタル/ゴシックメタルに通じる暗さと深みと持った作風にはベストチョイスですが、一般メタラーからは好まれないかもしれません。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|エピック度:★★★★☆
|ダークメタル度:★★★★☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 入門盤 スルメ盤 実験作
The Dark Saga|ザ・ダーク・サーガ
オリジナルアルバム – 4作目 (1996年)
アメリカン・コミック作品『スポーン』を題材にしたアルバムで、本格的なアメコミ・ビックタイトルとのタイアップとしては、マーベルの『ウルヴァリン』をテーマにした、スウェディッシュ・デスメタルENTOMBEDの作『Wolverine Blues(1993年)』以来。
この『スポーン』は、本作のリリース当時、イメージ・コミックスの看板として、マーベル・コミックスの『X-MEN』と共に90年代アメコミ・ブームの中核を占め、アクション・フィギアブームを巻き起こして社会現象にもなった作品です。
シェイファーがイメージ・コミックスの代表トッド・マクファーレンに直接掛け合い、頼んで拝んで許可を得るなど苦労した甲斐もあって、メジャー感もアップして気合十分の充実作に仕上がっています。
スラッシュ・テイストはさらに後退しましたが、いまさら彼らにそれを求めるリスナーは多くはないでしょう。
バーロウ時代では、エピック的ドラマ性追求のための過剰演出や装飾が極力抑えられたタイトな作風であり、そこは、聴き手によって評価の分かれるポイントでもありますが、エピック的な様式美や演出が苦手なリスナーにとっては、全キャリアを通しての最高傑作となる可能性もあります。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|エピック度:★★☆☆☆
|ダークメタル度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤
Something Wicked This Way Comes|サムシング・ウィキッド・ディス・ウェイ・カムズ
オリジナルアルバム – 5作目 (1998年)
ICED EARTHにとってのライフワーク的テーマとなる、オリジナルのホラー神話的ストーリー、『サムシング・ウィキッド:邪悪なもの(Something Wicked)』を本格的に題材として取り上げ、そのタイトルがはっきりを明示されたアルバム。
ストーリー性はともかく、音楽的には前作同様に、過剰なエピック的演出や装飾に頼らず、純粋に楽曲によるドラマ性の表現で勝負するタイプの作風で、NEVERMOREのダーメタル・サウンド系のアプローチにさらに接近した印象もあります。
メランコリックなミッド・チューンから、スラッシーなファスト・チューンまでバリエーション豊かで、ややスタイルは異なるものの、前作と共に彼らのICED EARTHのキャリアのピークに位置するアルバムと言えるでしょう。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|エピック度:★★★☆☆
|ダークメタル度:★★★★★
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 入門盤 通好み
Horror Show|ホラー・ショー
オリジナルアルバム – 6作目 (2001年)
SADUS,DEATH,TESTAMENTなど、多数のバンドに参加したフレットレスの腕利きベーシスト、スティーブ・ディジョルジオ在籍時の唯一の作品ですが、ディジョルジオがリリース前に脱退したことでゲスト扱いとなっています。
ここでは、曲ごとに異なるホラー/怪奇モノのクリーチャーをテーマに取り上げており、題材となったモンスターは、“狼男”, “ ミイラ男”, “切り裂きジャック”, “ジキル博士”, “ドラキュラ”, “フランケンシュタイン”, “オペラ座の怪人”など。
そのいずれもが、すでに手垢にまみれ過ぎてファニーなホラーアイコンと化しているもので、どうしても『怪物大集合!』的なイロモノ感やレトロ・ポップ感が勝ってしまい、ユーモアを欠いたダークなエピック・サウンドとはお世辞にも相性が良とはいえません。
かといって、あえてシリアスかつ叙情的に表現し直すにはバンドの力量が足りていないので、テーマ選択や表現方法に工夫をが求められたところです。
テーマを抜きにしても、直近数作と比較すると曲調のバリエーションや展開の妙に乏しく、同じような大仰なだけの単調な楽曲が続くサマは、さすがにつらいものがあります。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|エピック度:★★★★☆
|ダークメタル度:★★★☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論 スルメ盤
Tribute to the Gods|トリビュート・トゥ・ザ・ゴッズ
カバーアルバム (2002年)
タイトルどおり、カバー曲オンリーのトリビュート・アルバムえ、取り上げたバンドは、BLACK SABBATH, BLUE ÖYSTER CULT, AC/DC, IRON MAIDEN, JUDAS PRIEST, ALICE COOPERS, KISSという、ド定番のレジェンド。
原曲は文句無しの名曲ぞろいですし、BLUE ÖYSTER CULTとALICE COOPERSのセレクトで“わかっている感”も見せていますが、カバーアルバムとしては選曲の意外性もなければアレンジのユニークさもない凡庸な仕上がりです。
この時期はまでは、まだ「これならオリジナル・アルバムを聴いた方が…」と思わせてくれていましたが、これ以降はそれすらも怪しくなります。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|選 曲:★★★☆☆
|アレンジ:★☆☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
賛否両論
The Glorious Burden|ザ・グロリアス・バーデン
オリジナルアルバム – 7作目 (2004年)
バーロウに代わるヴォーカルリストとして、JUDAS PRIESTへの加入で名を上げたティム・リッパー・オーウェンスが加入。
よりメタル様式美とストレートなエピック色が強まった。オールドスクール寄りのサウンドなり、彼らならではの独自性はさらに薄れています。
本作のテーマは過去の様々な戦争ですが、ジョン・シェイファーの米国保守的な右翼思想が強く出ており、ヨーロッパなどでは米国覇権主義/軍国主義の肯定と賞賛と受け取られ、不評を買う結果も招いています。
|ヘヴィネス:★★★☆☆
|スピード:★★★☆☆
|エピック度:★★★☆☆
|ダークメタル度:★★☆☆☆
|総合評価:★★☆☆☆
賛否両論
Framing Armageddon (Something Wicked, Part 1)|フレイミング・アルマゲドン (サムシング・ウィキッド, パート・ワン)
オリジナルアルバム – 8作目 (2007年)
The Crucible of Man (Something Wicked, Part 2)|ザ・クルーシブル・オブ・マン (サムシング・ウィキッド, パート・ツー)
オリジナルアルバム – 9作目 (2008年)
Dystopia|ディストピア
オリジナルアルバム – 10作目 (2011年)
Plagues of Babylon|プレイグス・オヴ・バビロン
オリジナルアルバム – 11作目 (2014年)
Incorruptible|インコラプティブル
オリジナルアルバム – 12作目 (2017年)