Contents
- 1アメリカのPOPミュージックビジネスと80年代のヘヴィメタルバブルが生み出した時代の仇花!!売れてナンボのビジュアル系マーケティング・ヘヴィメタル!
- 1...1売れれば正義の米国メインストリーム音楽シーンが生んだメタル界の鬼子
- 1...2グラムメタルは80年代べ以降のビジュアル系!?
- 1...3グラムメタル?L.A.メタル?ヘアメタル?
- 1...4メインストリームの売れ線ながら音楽性は様々!?
- 2グラムメタルの代表的なスタイルとバンドを紹介!
- 2.1グラムメタルの代表的バンド:ポップロック系
- 2.1.1QUIET RIOT|クワイエット・ライオット
- 2.1.2RATT|ラット
- 2.1.3CINDERELLA|シンデレラ
- 2.1.4POISON|ポイズン
- 2.1.5BON JOVI|ボン・ジョビ
- 2.1.6DEF LEPPARD|デフ・レパード
- 2.2グラムメタルの代表的バンド:バッドボーイR&R系
- 2.2.1MÖTLEY CRÜE|モトリー・クルー
- 2.2.2GUNS N' ROSES|ガンズ・アンド・ローゼス
- 2.2.3SKID ROW|スキッド・ロウ
- 2.1グラムメタルの代表的バンド:正統派ヘヴィメタルバンド
- 2.1.1TWISTED SISTER|ツイステッド・シスター
- 2.1.2W.A.S.P.|ワスプ
- 2.1.3LIZZY BORDEN|リジー・ボーデン
- 2.1.4DOKKEN|ドッケン
- 2.2グラムメタルの代表的バンド:異色の個性派バンド
- 2.2.1EXTREME|エクストリーム
- 2.2.2LILLIAN AXE|リリアン・アックス
- 2.2.3SHOTGUN MESSIAH|ショットガン・メサイア
- 2.2.4PANTERA|パンテラ
- 2.3あんなバンドまでグラムメタル化!
グラムメタルの代表的バンド:正統派ヘヴィメタルバンド
初期のグラムメタル勢は本来ブリティッシュ・ヘヴィメタルをルーツにしているので、売れ線狙いに転向する以前にはオーソドックスなヘヴィメタルを演奏していたバンドも少なくありません。
中には時流に合わせてグラムメタル的なビジュアルで飾っているものの、それとは裏腹に正統派に近いメタルサウンドを聴かせるバンドも少数ながら存在しました。
典型的なグラムメタルバンドのビジュアルは、ナルシスティックなアイドル風の演出がほとんどでしたが、初期メタルをルーツにする王道メタル路線のバンドには、あえてショックロック的なイロモノ感の強めたキャラ演出をする傾向があります。
TWISTED SISTER|ツイステッド・シスター
デビュー前の70年代からグラムロックバンドとして活動していたベテランで、QUIET RIOTと並びグラムメタル勢としてはひとつ上の世代で、立ち位置も少し異なる印象がありました。
後続がアイドル路線に走る中でも、オーソドックスなUSヘヴィメタル路線とキッズのアンセム的なポップロックナンバーの二枚看板を貫き、幅広いリスナーやミュージシャンから高い支持を得ています。
アイドル路線のグラムメタル勢よりも、むしろKISS(キッス)などに通じる存在と考えた方がいいかもしれません。
W.A.S.P.|ワスプ
血糊も飛び交う過激でシアトリカルなパフォーマンスで、MARILIN MANSON(マリリン・マンソン)らにも大きな影響を与えた存在として知られるバンド。
70年代ハードロックや初期メタルをルーツに持ち、それをアメリカンにローカライズした正統派のメタルサウンドと、TWISTED SISTER同様キッズ受けするパフォーマンスが人気でした。
中心人物のブラッキー・ローレスは、股間に回転ノコギリをつけたイロモノ感あふれるビジュアルながら知性派としても知られ、コンセプチュアルなアルバム作りにも定評があります。
後年はイロモノ度も抑え、アメリカを代表する正統派のヘヴィメタルバンドのひとつとなりました。
LIZZY BORDEN|リジー・ボーデン
LIZZY BORDEN(リジー・ボーデン)はW.A.S.P.ほどのイロモノ感はありませんでしたが、彼らと並ぶショックメタル系グラムメタルの代表格です。
NWOBHM直系のスピーディーなヘヴィメタルを、独自のローカライズを施したようなスタイルは、グラムメタルバンドとしてはまさに唯一無二で楽曲のクオリティも文句なしでした。
異色の存在だったためPOPメタルへの路線変更を余儀無くされた上、グラムメタルブームの恩恵はあまり享受できないまま解散。00年代に再結して、コスプレメタルブームの追い風も受け根強い活動を続けています。
DOKKEN|ドッケン
ポップ色は強いものの、グラムメタルに多い能天気なスタイルではなく、湿り気と哀愁を感じさせるサウンドに加えてパワフルなメタルナンバーも欠かさないことで熱心なファンをつかんだバンドです。
欧州バンドとは異なるUSスタイルながら湿り気を失わないなサウンドには、BLUE ÖYSTER CULT(ブルー・オイスター・カルト)やRIOT(ライオット)などの影響も感じられます。
グラムメタルの代表的バンド:異色の個性派バンド
当時は、メインストリームでハードロックをやるなら「化粧してパーティロックやらないとダメ」みたいな風潮が強く、ユニークな音楽性を持っていて他に本当にやりたいサウンドがありながらも、グラムメタルムーヴメントに飲まれて埋没していったバンドも少なくありません。
そういったタイミングに恵まれなかったバンドは、むしろヘアメタルブーム終了後に本来の個性で頭角を現して、それにふさわしい評価を受けることになります。
EXTREME|エクストリーム
ポップなグラムメタルに当時メインストリームだった80年代ポップファンクをプラスしたサウンドが持ち味で、ファンクメタル創始者のひとつとも言われています。
バンドの個性の源であるギタリストのヌーノ・ベッテンコートは、当時からミュージシャンズ・ミュージシャン的な高い評価を受けていて、その才能はグラムメタルの枠には収まらないものでした。
ヌーノ・ベッテンコートの個性は、むしろ後期や解散後のオルタナティヴなスタイルでより強烈な輝きを見せています。
LILLIAN AXE|リリアン・アックス
メランコリックでリリカルなメロディセンスが持ち味の彼らは、当初からその片鱗を見せていましたが、グラムメタルの能天気なポップロックスタイルではそれを活かしきることができませんでした。
グラムメタルのオワコン化にともなってグランジ的なヘヴィ&ダークなサウンドに移行したのが功を奏し、むしろTHE SMASHING PUMPKINS(スマッシング・パンプキンズ)などにも通じる彼らの持ち味が、ようやく本来の輝きを見せるようになり楽曲のクオリティも格段にアップします。
レコード会社の倒産などの不幸もあってブレイクのタイミングをつかみ損ね、現在は中心人物スティーヴ・ブレイズ(Gt.)のソロに近い形になりましたが、作品もリリースしつつ活動を続けています。
なぜか、DCコミックス系のアメコミドラマ『コンスタンティン』のライヴハウスシーンで、実名でゲスト出演して演奏していたことがあります。
SHOTGUN MESSIAH|ショットガン・メサイア
グラムメタルでひと旗上げてビックになるために、相方と一緒にわざわざスウェーデンからアメリカへと出てきたというティム・スコルドが結成したバンド。
当初はセンスの良さだけが持ち味でしたが、のちにヘヴィなインダストリアル・メタルにポップなロックミュージックを融合したスタイルで好事家の注目を集めます。
意欲的でハイクオリティな作品をリリースしますが、時代が早すぎたため残念ながらいずれも大きなセールスにつながらず消滅。
しかし、ティム・スコルドは後にKMFDMやMARILIN MANSONなどとインダストリアスシーンで活躍し、インダストリアル・メタルの重要人物となります。
最後の作品となるViolent New Breedは、インダストリアルメタルファンなら必聴の名盤!
Amazon Musicで『SHOTGUN MESSIAH.』の聴き放題をチェック!
PANTERA|パンテラ
グラムメタルバンドとしては全く鳴かず飛ばずでしたが、のちにヘヴィネスとグルーヴを強調した独自のグルーヴメタルスタイルを開発してブレイクします。
グランジ勢と共に自分たちの出自であるヘアメタルら80’sメタルにとどめを刺し、新時代の扉を開く役割を果たした重要バンドです。
かつてないグルーヴィーなヘヴィサウンドはヘヴィメタル界に革命を起こし、後続の新人からベテランまで、その後のすべてのヘヴィミュージックに大きな影響を与えました。
あんなバンドまでグラムメタル化!
80年代の中期にはヘヴィメタルのメインストリームはイギリスからアメリカへと移り、イギリスやドイツなどヨーロッパで活動していたバンドの中にも米国市場をターゲットにしたり活動拠点を移す動きが出てきます。
アメリカの第一線で活動するためには、それなりに実勢のあるバンドさえも音楽性やビジュアル面で米国市場向けチューニングを余儀なくされ、サウンドのポップ化を図るばかりかグラムメタル的なチャラいスタイルに変身するバンドまで現れます。
ドゥームロックのカリスマだったBLACK SABBATH(ブラック・サバス)のオジー・オズボーン、シャープかつメランコリックなサウンドを持ち味にしていた叙情派ジャーマンバンドのSCORPIONS(スコーピオズ)などがその代表格ですが、そろいもそろって既にアラフォーだったにもかかわらず、あらためて見ると赤面モノのビジュアルでがんばっていました。
そのファッションも当時のメタル業界ではイケてる最新モードとされていて、売れるための必須条件だった面もあるので同情の余地はありますし、今となってはいいネタかもしれませんが、彼らの初期を知る昔からのファンには複雑だったことでしょう。